仮想空間

趣味の変体仮名

人心両面摺 十返舎一九

 

読んだ本 https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/9892936

 

3

滑稽のことばに曰。おもて見さんせやくまい物

かとは。所謂悪(にく)い/\は可愛(かはゆい)の裏にして。又初会に客

の名を呼(よぶ)は。其裏を返させんか為なり。羽二重ずれの

大通(だいつう)が。結城じたても思の外(おもひのほか)。うらをみれば。背中に紋

所ありて。はつかけの奥に小紋の継(つぎ)々を顕すなど。衣服

の表と裏との違(たが)ひは。店賃の高下に拘りての物

好ならむ。只人情はうら表なき。両面摺(ずり)と題号

して。今年も戯気(たはけ)を尽す事しかり

  酉孟春   十偏舎一九誌

 

 

4

古語に曰 人心如面衆以不同(こんそんはおもてのごとししうもつてひとしからず)

といへり なんと子どものしゆよい

みやげをやりませふ これについていふことが

ある おさんどのゝいわく ばんはしのばゝ

うらからござれおもてくろゝどでぐはら/\

ひつしやりおとがするとうたのごとく

人の心にもうらとおもてがあつて

とかくそのうらといふやつがいやな

やつさ くちはわざはひのかどゝ

いつておもてぐちのうしろを

じゞりといふからおいどは

人のうら也うらとおもて

のてんちがいはしよかいと

なじみのざしきのごとし

大きくなめたらそうおふに

みなしやれるだろふがこの

こん/\ちきのふりそで

おもてを見るとべた/\と

さいしきをしてうつくしく

見へるがうらはこのとふりへん

てつもなし 女の心のおもて

むきはすきんしたの

かはゆふありんすの

なんのかのとかきのめす

そのうちをひつくちかへして

見るとねんぢうきやくをかきつゞけに

かきめすからその手くたびれぬ

よふにと手のさきへぼうをつけておく

 

わかいものはたゞそのうつくしき

かほばかりにみとれてこの

こん/\ちきのうしろをしらず

もしもはやくその心のうらを

みればかきのめさるゝしやうたい

あきらか也 とんだ手のある

やつだとくちにはいへ共どふいふ

手のあるといふことはしらずこの

きつねのてはうらから見ると

ばつにつけてある手にて人を

かきのめすその手のはたらき

あんばいなんとよくしたものか

こいつはとんだおつりきなことを

いふやつだときがついたら

じきにしりへ手をまはして

見るとしつぽがある

とかく人は心にうらも

おもてもおなじ

よふにするがいゝ

なんと子どもしゆ

もちうどもしゆも

がてんか/\

 

(右頁下)

「このいんきよがわるいことは

いわぬほどにてならひそろ

ばんをせいだしてうら

おもてなくおやたちへ

かう/\に

するが かんじん だ

 

おとつさんや

おかつさんに

しかられて

そんなよわい

きでつまるもの

かなぞといふ

いやをは

かならず

うたふめへに

 

「ほうもこれから

おとなしくしなよ

おぢいさんがこん/\

ちきをやろふと

 

「おぢいさんの

はなしは

おもし ろい

 

 

5

「名聞表(めうもんのおもて)」

とりわけてあそび

に行てはみへをおもて

とするゆへなくても

あるかほにてふところ

のあたゝかなよふに

みせかけるその

うらといへば

ないしやうには

ひのふるてやい

おゝしこの

さとへいりこみ

しやれのめす

つう人はとかく

こばんの

みゝをそろへ

てやることをこ

のまずなぜと

いふにかねでやつて

は人のめに

たゝぬゆへ

そこでかね

だかはすくなく

めにたつよふ

にするはこれ

みなするの

おもてなり たとへは

 

これにはたゝみの

おもてをよこ

そふのいや

すみをよこ

そふのなんの

かのとて五

りやうか七

りやうのものでも

くるまでひきこ

ませるみなその

めうもんの

おもてなり

あるところ

のつう人

ちややへこめを

しおくりしやふと

やくそくしてこめ

どいやのばんとう

をあやなして

ちややのうちへ

くるまでひかせ

そのばんにゆくと

大こくさまでもきた

よふにもてなさるゝを

うれしがるこの人さては

大かねもちかとおもへは

さにあらずたゞおもて

ばかりのみへ

ぼうなり

 

(右頁下)

「いせや

さまは

おめへかへ

ほんてう

から

おこめが

まいり

やした

 

「このこめがちや

やのみせさき

につんであると

いりくるきやくが

ヲヤでいぶ

かい

こんだ

のと

いふと

ハイこれは

ほんてうの

だんなから

おしをくり

さといわるゝ

つもり なり

みなこれ

 

めうもんの

おもて也

 

「これは

ごく ろふ

ついでに

つかして

よこして

下されば

いゝのに

くふぶんは

こつちで

くふから

さりとは

きのきか

ねへだん

なさま だ

 

 

6

「其裏」

こめを人のところへ

おくりし人のないしやうを

きくにあるよのこと

なるにそのうちに

ふしぎなることあり

よふけ人もねいりしころ

だいどころにてある人

ごへするゆうへかないの人々

そつとおきてのぞきみれば

いふくのこらずならびいたる

中へこめびついでゝ何かめん

ぼくなさそふにいふをきけば

こめびつひそ/\と申にはさて

おめへかたへたび/\申すもき

のどくだかこのあいだからこめや

がふさがつて二せう三じゆうつゝ

こがいにいたすからわた

くしのふところがさみしく

なつてのらにはわんのかけ

たのやぜんのあしのもげ

たのをいれるよふに

なりけんぶつものゝふく

ろがやぶれてまめや

さんしやうぜんまい

からしがごつたになつて

いつそむさくろしく

なるとあぶらむしが

 

わいてのちには

くもかすをかけるよふに

なりますからそこであな

たがたへごそうだん申

のさ このまへもこんなことが

ごさりましておめへたがへ

おはなし申ましたれは

それではすまぬとうへだの

こそでさま

がごしんせつに

いわつしつて

おぬしが

じきになゝつ

やへいかしつて

わたくしのふと

ころのにぎやか

になるよふに

してくださり

ましたからそれ

でこんども又

おめへさまがた

へおねだり申たら

どふそさんだん

のなされ

かたがあろふ

とぞんじて

それでおたのみ申ますわたくしも

大きなからだてこめもねへくせにだいどころの

まん中にぶつすはつているもきのどくなものさ

 

(右頁下)

「ゆうきじまが見へぬが

これもせんどのはなぐはい

のときすつぽ

ぬけにしたと

みへる

 

「きこうの

みなさるとふり

いまはみな

ぶいきもの

ばかりになり

てこん

なそう

だんの

とき も

いゝ

おれ が

のみ

こん

だと

いふきれる

てゆいが

さつぱり

なしさ

 

「おいらはもふ

かたはひける

しりはいたむ

すそはきれるし

いくらおもつても

きばつかりで

 

なんのやくにマア

たゝねへとかく

わかいしゆで

なくつちやァ

こんなときの

そうだんの

あいてには

ならねへ

 

「かはりじまのはちでう

さまがごさつたじぶんには

たび/\ごむしん申て

ごやつかいをかけやしたが

そのじぶんにはわたくしが

ことしいふと八てう

さまがうけこ

みの

よふで

あつた

 

 

7

「遊(あそひ)の表」

ながばをりにみじ

かいおたちをちよいと

きめたるはどこぞの

はらつふくれでやいと

おもいのほかとふらひ

がへりの四五人づれちや

屋でぐいのみのずい

かへりとしよふとずつと

なじみのうちへあがり

ちよびとのんでかへる

つもりのところひとつ

ふたつのむといやとう八

はどふしたおりんでも

きいてもらをふたゞしは

おいまでのもふかと

いふきになりちや

やでもけふはどふ

いたし奉せふと

このあいだのせかいへ

おいでなされますか

いやそんなら

このまゝでもかへられ

めへからちよびと

いつてやろふといふ

きになりそれから

おくられてなじみの

ざしきへゆくとまた

 

おもしろくなり

ひがくれかゝると

すぐにおいで

なされませと

いへばすなをに

そふさ/\とせう

ちするわかいもの

がだんなもしと

わらいかけると

じきになんりやう

ふたつだしてやり

むちうになつて

しやれのめし

をりあしく

そのよにあめが

ふりだしこいつは

いゝあしたもがつと

ながしたといろ/\

大きなことばかり

いつてうちの

よふすがどふ

だかこふだか

人がしらぬで

もつたものおもて

むきはとんだ

かねでもあるやふに

見へてもこのてやいの

うらのほうをひつ

くりかへしてごろうじろ

 

(右頁下)

「ぬしやァかめやのてつ

さんにそのまゝで

おつさァ

 

「むしたちや

ちつとは

なしをや

めてさか

づきを

よこ

さっし

 

きせるを

もつている

きやく人が

いつちす

かねへ人

でざん す

 

こふ した

とこ ろは

おいら

がいつち

いろおとこだ

ろう

 

「若しおいらんへ

こういふきのそ

ろつたなさけも

またあるめへ

わつちらァ

わるふざけ

はきらいざ

やろうが

つぎごと

いふもんだから

おいらんたちのごき

げんをとつてあそばにやァ

ならねへといふかなしいみのうへさ

おめへかたもくがいだから中にやァ

くだらねへ事をいつてあやまらせる

きやくをとることもあろうがおいらは

ついどぶう/\やなんどをいつたことが

ねへかはりなげられたこともなしさ

なんてもおめへたなにはだをあは

 

びれた

がくた

アゝくち

しゆう

たべや

どれ一つ

ねへのき

はとれ

でいごき

からこゝ

いふもんだ

いくとして

 

 

8

「其裏」

「コウぜんてへかたじまいのやくそく

であがつたものだからぬしたちやァ

ちややのやくだからおむかいとかなんと

かいつてくれるとまくがきれるものを

おいらがくちからひるばかりのつ

もりだからもふけへろうとひを

ともすをみかけてきたなびれ

たことがいわれるもんじやァ

ねへそしてきんこうわかい

ものにやつたいちぶはぬし

もわりまいをださつし

「ヲヤとんだことをいふもんだ

ぬしにやァれいをいつたろふが

おいらにやアれいもいはねへから

わりやいをだしちやアか

ねへそのかはりかごちんはおれが

ひやくよけいたてかへた

「そんなら

おいらも

どてのちやだい

をだしたはどふだ

「ぬしもきたねへ

ことをいふもんだ

ちやだいぐらいは

いゝわなおいらは

馬みちでだん

ごをくつたぜにを

 

みんなはらつておいた

 

(下)

だん

なかた

とんだ

きまつ

たこと を

おつ

しやる

ハゝゝゝ

ハゝゝ

 

「そして

てうちん

もちに

にしゆ

とかいて

あつたか

ありやァ

だれが

さし

づた の

 

 

9(左頁)

「りんきの責」

すこしつゝむかふの

ためにもなれはなんざらでもなくもてな

されてむしやうにいろ

おとこのきとりにて

すこしのことにもこの

べらぼうめのふんばり

めのとあくたいをいゝ

これかきにくはぬの

あれがすまぬのと

いなかしばいの五郎

をみるよふにやたら

アゝきえたい

へいらくばかり

いつてたゞけても

かねがいはせること

ゆへたれもかまい

つけずおまへのご

むりはごもつともと

あやなされかつにのつ

てあいかたをなを/\

いぢめるあそびにきてさへ

こんなにおいらんをいじめるから

さぞうちではやかましくて

ねんぢううちのかゝしになまきづは

たへまいとおもいのほかこゝがおもてとうら

とのちがいそれつぎをみなせへ

 

「わけもひやう

たんもいる

ものか

 

「たれぞ

きてお

くんなんし

アレエ/\

 

かん 

にん

して

おくんし

これには

わけの

ある

ことで

ざん す

 

 

10

「其うら」

あぞひにいつてやたら

つよいことをいつてひとを

いじめるてやいさだ

めてうちてはなをの

事みなてのしたのざ?人

あさからばんまで

かましくいつて

いるだろふとおかめ

のすいりやうとは大ちがい

うちではねこのよふに

なつてちいさくなり

かゝしにねんぢういじめ

られてくつともいふこと

ならずせけんへでると

すっむのすまねへのと

いつてりきめどもうち

ではあさもかゝしよりはやく

おきよるはかゝしをさきへ

ねかしてそのくせなんぞと

いふといじめられへこんで斗

いるはどふでもこゝろがけが

わるいからかゝしゆへあてがう

ものもあてがはれずふじゆふを

さしておくからなんと

いわれても

いちごんも

なし

 

「なんのそん

なにはいしゃぐ

ことはねへ

これから

あそびは

きつと

やめる

から

いく

ぶん は

 

あるめへ

おがむ

からもふ

しつかに

してくりやな

くはいぶんが

わりい

あやまつ

た/\

 

大きな二ほん

ぼうだこの

ざまァ

みな

 

ちへも

ねへ

くせに

女郎

かいも

きが

つえゝ

わたしなればこそ

りやうけんして

いるがほかの人

ならとうに

あいそがつきる

 

「鏡面(かゞみのおもて)」

おんなはばけもの

なれはけしやうけわい

してかみかたちすつぱり

といきにしてずつと

えりをぬきだしのえ

もんつくろいかゞみにむ

かつてみたところがヲヤ/\

われながらとんだうつくしい

とうぬぼれにむしやうに

いゝきになつているとていし

もまたおらがかゝしも

つくつたところはまんざら

でもなへとうれしがる

てんぎの心からいゝとおもへは

よくみゆるわるいとおもへは

わるくみゆるものをうつすは

かゞみのとくにしてしろい

ものかしろくうつり

くろいものは

くろくうつ

れどもみる人

の心によりて

白きもくろく

みゆるはよくと

いろにまなこの

くらみしてやい也

つゝしみたもふへ し

 

「ヲヤ/\

わつちやァ

とんだつくり

ばへがするよ

どふりて

人がいきな

としま

だと

いつそ

ほめ

やす

うれしい のふ

 

「てめへよりは

おいらが

うれしい

こんないゝ

にようぼう

をもつと

いふはしや

わせもの さ

 

「それだ

から

わつちを

でへじ

にしな

さるか

いゝそまつ

にすると

ばちが

あたる

 

「ヲゝ

そふ さ

/\

 

 

11

「かゞみの裏」

そのうつくしい

にようぼうがある

ときかゞみのうらを

みているをていしゆ

そつとのぞきみれは

すつぱりうつくしい

とおもひしきりやうが

なにかむしやくいしやと

してそして一めんに

ぶつ/\としたかほつき

がかゞみへうつるさては

かゞみのうらだからなん

てんのぶつ/\したやつ

だとおもいによう

ぼうのかほをみれは

やつぱりぶつ/\と

したかほつきさては

にようぼうのかほへ

かゞみがうつつた

のかたゞしはかゞみへ

あのかほがうつつたのか

何にしろ今までは

うつくしいとおもいし

きりようたちまちこの

よふにばけるとはふしぎた

とおもふぜんてへこの

おんなこはめしでつくつた

 

おにゝそのまゝの

かほなれ共じやうず

ものにていしゆをよく

あやなしかけて

おきしゆへていしゆ

もあやなさ

れてまんざら

でもなく思ひし

心からきにいる

にしたがつてき

りやうもよくみへ

しがすこしこの

せつこのおんなに

あきがきたゆへ

たちまちしやうの

ものがしやうで

見へいやだ/\と

おもふほどだん/\゛

きりやうがわかく

みへるかゞみのおもて

にうつくしく見へ

たるもうらがへして

見るとあゝ女のかたち

あらはれしはこれていしゆの

こゝろのうらがへりたる也

とかくうつりやすきは

人のこゝろはじめから

うらおもてなくつきやつ

ているがかんじんてう/\しき

はしげぬものなり

 

(右頁下)

「さてはこはめしの

おにめがかゝあ

をくらつてし

まつてわざ

とかゝアに

ばけて

いた

のと

みへる

 

「たゞのぶは

はつねのつゞ

みを見てきつ

ねのせうたい

をあらはしこの

かゝしはかゞみの

うらにあるなん

てんの木をみて

こはめしのせう

たいをあらはす

りくつと

いるはあら

そはれぬ

ものなり

 

ヲヤ/\

いつのま

にかわつ

ちがかほは

そばかすたら

けに

なつ

た よ

 

「そばか

すもき

がつえゝ

べちやア

ねへかいぶし

にしよふと

いふかほだ

 

 

12

「小判表」

めでたく

かしくのつり

ばりできやく

をつりしはむかしのことなり

いまのつう人その

てゞはゆかずかねで

かはるゝおいらんが

かねをもつてきやく

をつりよせるから

けうげんか

よつぽと

むつかしく

なりしなり

しよくはいから

べつたりとしかけ

うらにはおそろ

しくあやなし

かけあたまで

きやくのくはんめを

ひいてみてそれそふ

をふにあてがつて

つかはすさんだん

うらに行とすぐに

べつたりとしかけて

もしどふぞこれから

いついつかにきて

おくんなんしこう

いつちやァ

 

どふかぬし

をみくびるよふで

おつすがこん

どきなんす

とつてかねはいりや

せんわつちが

どぐともつがうして

おきんすぬしも

うらまできてお

くんなんしたから

これぎりにして

おくんなんすとほう

ばいしうのてまへも

すみやせんわけが

あつすからこりやア

わつちがおたのみ

でおざんすといふ

ところへわかいもの

ちよびとしたはち

ざかなとてうしを

もちきたりだんな

たゞいまはありがたふ

ござりますとれいをいつ

て行きやくはふしぎがるを

おいらんありやアぬしのな

まへでわつちがしうぎをやつて

おきんしたこよひぬしがわかい

しゆにちかづきになつておきなん

せぬとわりい事がおつさア

 

(右頁下)

「とこで

わかい

ものにはな

をやるはちか

ごろのはやあり

ものにてそう

するとわかい

ものだいのもの

といふところ

をちよびと

したくち

とりですま

すすこしでも

 

わかいものゝみいりのよいよふにとの

くふう也三くはいめにおいらんかいつかく

はづんでわかいものへやりしは三くはいめ

をふみにてつりよせるさんだんなり

されどそのきやくによりてこいつは

どふしても三もんにもならぬ

といふきやくにはこんな事は

かたでせぬ也かねはありそふでも

しはいきゃくとみたかさい

こかねをみせてつり

よせる から

この

えさ

には

ひつ

かゝり

そふ

もの

そこ

この

こば

んの

うら を

ろふ

じ ろ

 

 

13

「小ばんの裏」

わかいものにちかつきにさせて

おかぬと二くはいめからふみを

やるといふさんだんができぬ

ゆへそこでいつかくはりこんで

おきさてそのゝちいよ/\

いついつかにはしまつている

からこいといつてよこす

もちろんみなこちらに

つがうがしてあるから

ぜひ/\゛こいとのふみに

こたへられずもとより

かねはいらぬといふことを

きいてぜひいくきになりて

かけだすしかしおいらんのほうからいかにかねが

いらぬといつたとつて

あつかましくいちもんも

もたずにいくものもない

ものなりかなし/\゛も

つとめぐらいはもつてゆかねは

ならすさきでもじつはこの

ばんはほかのきやくでしまつて

いるばんにてみあがりをした

といふにはあらずそのしまいの

かねをきやくからとつておいてこよい

かのぞうよふにつかいつとめのかねは

 

つりよせたきゃくに

ださすつもり女郎の

てからきやくへかね

をわたしてこれで

はなをやりなんし

といふからこゝで

ぐつとくらいこむ

ももつともなり

のちにはだん/\

たゞあそぶ/\と

おもいながら

ほしべりのたつ

ことにきづかす

とう/\゛けつのけ

までぬかれる也

おいらんがかねを

もつてつりよせた

そのかねをほんの

かねとおもふがふか

くきつねのこばん

もおなじこと

うらをひつくり

かへしてごろうじろ

まよいごふだと

かはりやしたたまし

いはおるすになり

そとをいへとし

しやうばいをわす

れいろにまよつた

まよいごはかねたいこで▲

 

▲たづねても

たましいの

ゆきどころ

がしれず

ほんしんの

ほんたくへ

かへることを

わするゝ

もの也

 

 

14

「身代面(しんだいのおもて)」

そのみのぶんげんを

しらずしてみぶん

ふそうおふにおもて

むきをかざる人あり

たとへきん/\゛に

ふそくなくとも

あきんどはやはり

あきんど也みをたか

ぶりおごりてはついに

しんせうほろぶる

ものなりきんぶす

まのきらび

やかなる

ざしきに

とうづくへを

なをしおかいこに

くるまつてにしの

くにでひやくまん

ごくもとるよふな

がんしよくにて

いつもつきよと

こゝろへてみそか

やみのあることを

しらずついには

チヨン/\のひやうし木

きんふすまのどうぐ

だてそれかうりやした

 

「このさく

しやめ

も人の

事をば

わるくいふ

かうぬが

ぶんげん

をしらず

いゝ

ものを

きたがつて

うめへものを

くいたがり

そして

あそんで

ばかり

いたがる

やつさ