仮想空間

趣味の変体仮名

古今名婦伝

古今名婦伝 遊女地獄

「古今名婦伝」 柳亭梅彦記 「豊国画」 遊女地獄泉州(せんしう)堺(さかい)高須の遊君(ゆうくん)なり 容顔(ようがん)並びなく全盛にして 気象高く 自ら地獄と呼(よび)て 衣類皆地獄変相(いるいみなぢごくへんさう)の図を画(えがゝ)しめたり 暇…

古今名婦伝 静御前

「古今名婦伝」 静御前花洛(みやこ)の白拍子なり 義経(ぎけい)殿に深く想はれけるが判官殿 鎌倉の討手(うつて)厳しく 落(おち)玉ふ時吉野にて名残を惜(をし)み 皇都(みやこ)に止(とゞ)まり其後 鎌倉へ召下され右幕下(うばくか)殿の御前(み…

古今名婦伝 栢原の捨女

「古今名婦伝」 栢原(かいばら)の捨女(すてぢよ)丹後国氷上郡(ひがみごほり)田氏(たうぢ)の女(むすめ)なり 弱年(おさなき)より和歌俳諧を好み 秀吟(しうぎん)多し 初雪や二字(にのじ) ふみ出す下駄の跡(あと) これ幼き時に よみしとぞ同宗…

古今名婦伝 掃溜於松

「古今名婦伝」 掃溜於松(はきためおまつ)芝三田の局見世(つぼねみせ)なり その身 賤しき身ながら 心清くこの女の異名を 掃溜(はきだめ)お松といふにぞ 或時塵塚(ちりづか)の歌は詠(よみ)たり是よりして 其名一時に高く 実(げ)に珍しき 女なり …

古今名婦伝 小野小町

「古今名婦伝」 豊国画 小野小町(おのゝこまち)出羽の郡司か女(むすめ)とも 小野好実(おのゝよしざね)が猶子(ゆうし)ともいふ 和歌は衣通姫(そとをりひめ)の流れを汲で 其頃の歌仙なり あるとき内裏の歌合(うたあはせ)に大伴(おほとも)の黒主…

古今名婦伝 巴御前

「古今名婦伝」 応需 梅素亭記 巴御前 巴は木曽義仲の妻にして粟津の戦(たゝかひ)破れて石田為久がために義中をうたれ 我はまた和田義盛に生捕(いけどら)るゝに 義盛巴が力量を感じて右幕(うばく)下(か)に許(ゆるし)を乞て妻となして一子をまうく …

古今名婦伝 常盤御前

古今名婦伝 楳(梅)素亭 玄魚記 常盤御前(ときはごぜん)常磐は夫(つま)義朝(よしとも)野間の内海(うづみ)に亡びて後三人(みたり)の子を供なひて街(ちまた)に漂ふ平宗清(たいらのむねきよ)は清盛の命(おほせ)をうけてこれを捕(とらへ)福原…

古今名婦伝 下女お初

古今名婦伝 楳(梅)素亭 玄魚記 下女お初初女は 本名さつ 何某侯(なにがしとの)の奥中老尾上が婢(みづしめ)なり節婦のきこえ高し女主(あるじ)尾上は傍輩なる局岩藤に耻(はづ)かしめうけて自殺すさつは密(ひそか)にこれを窺がひて主の仇をうつ直(…

古今名婦伝 万治高尾

古今名婦伝 楳(梅)素亭 玄魚記 万治高尾元吉原なる三浦四郎左衛門が家の名妓二代の高雄は下野国下塩原郷塩釜村の産(さん)にて父を長助といふ高尾万治三年庚子十二月廿五日江戸にて没す彼古郷にあまたの紀年(かたみ)を送(おく)しといへども皆失ひて今…

古今名婦伝 中万字の玉菊

古今名婦伝 楳()素亭 玄魚記 中万字の玉菊亨保の頃新吉原中万字屋(なかまんじや)の遊女玉菊はさはかりの美女にもあらねど其素性(さが)よきうまれにして諸人に愛せらるゝ事廓中に比ぶものなし其頃拳相撲(けんすまう)といふこともつぱら流行せしが玉菊…

古今名婦伝 加賀の千代

古今名婦伝 楳()素亭 玄魚記 加賀の千代千代は加賀国松任(まっとう)なる福増屋(ふくますや)六兵衛といへる旅店(はたごや)の女なりいとけなき時より風雅の志ふかく行脚の俳人を家に止宿させて俳諧をたしむ廿三才の時京にのぼり勢州にいたり麦林舎乙由…

古今名婦伝 新町の夕霧

「古今名婦伝」 新町の夕霧浪花新町扇屋の遊女なり心優しく書に妙を得たり惜哉早世す今も寺町浄国寺に此妓の墓あり花岳芳春(くわがくほうしゆん)信女といふこの妓の着たる褂(うちかけ)今猶存せり夕霧が冬九軒吉田屋にあり且板行して好事家の玩となれりか…