見立多以尽

見立多以尽  もつと降せたい

見立多以尽 もつと 降せたい 客の量目(くわんめ)をひく三味線の。糸し可愛も止吹(やまぶき)の色には出さぬ体(ふり)ながら。光りをたのむ金春の。雨故借る簑布団八重か一重かしら紙に。包んだまゝの楮幣(ぺらさつ)を。上から探(おし)て荷(かゝへ)…

見立多以尽  御座つきをつけたい

見立多以尽 御座つきを つけたい 松は大夫の打かけは蔦の模様に藤色の。チンテンとんだ面白い。遊びも初手は交際(つきあひ)がいつか増長(こう)じて陰密(こつそり)と。おやかましふの声も絶(たえ)。話のやうな文がらを。綺語(のろけ)の種に巻かへし…

見立多以尽 どふもねむッたい

見立多以尽 どふも ねむッたい 唐土に日に三たびねぶる柳あり。之を号(なづけ)て眠柳(みんりやう)といふ。人に比(たと)へていふ時は。依るを以て昼の出稼に。春初鴉の声をきかず。秋桂花(あさがほ)の盛見す。昨日に今日と替(かはり)ゆく。客に枕は…

見立多以尽  手があらひたい

見立多以尽 手か あらひたい 西日を除(よけ)て蛭釣に絆(もや)ひし船も首尾の松。見て見ぬふりの船頭が。捨(すて)てお庫(くら)の石垣を。出這入る蟹も舟虫も。手のたんとある婀娜(あだ)ものは。涼しく過ると青簾。おろして絞る肌の汗。嬉(うれし)…

見立多以尽 よいのがだしたい

見立多以尽 よいのが だしたい 摘(つま)むた形(なり)がつく羽根のかたちに似たる煎餅を。妬(やく)といふ字も白絲の染るに易き柳巷(さと)習ひ。恋風吹な。ナアふくなと。金の羽子板夫(それ)ならで金玉(きんぎよく)よりも尚尊き。押絵の二字は俳優…

見立多以尽 どうかかちたい

見立多以尽 どうか かちたい 夫(そり)や卑怯です鉄砲を。隠してうつは怪(け)しからない。唯一戦に花々しく。勝負をなさいと鹿児島拳。おも城山の篭城も。纏頭(はな)の軍費に勢ひ労(つか)れ。終に果敢(はか)なく降参して。身代限りとなる者あれば。…

見立多以尽 きれひになりたい

見立多以尽 きれひに なりたい 年立(としたち)かへる朝まだき。霞て青む柳湯へ。よろづ吉川町かけて集ふ弦妓(げいしや)が左に右(とにかく)と。客の噂のよしあしもなにはの事の何(なん)となく。恋の湊の賑ひは。みな水船の水性(みづぞめ)。冷たい中…

見立多以尽 はやくもらひたい

見立多以尽 はやく もらひたい 君より他に好男子は。ないと思ふも気の狭い。吾儕(わたし)はとんと江湖(せけん)見ず。井の中に住む舩宿の。櫓(のき)にばらつく霰の音の。霽(やめ)ば夜中に聲問(おとつれ)る靴の音より憂し強面(つら)し。安積(あさ…

見立多以尽 もうひとつのみたい

見立多以尽 もうひとつのみたい 足る事を知るは身の慎み足らぬといふは世の人の。口九試(くせ)なれど最(もう)一つ。思ひ酌(ざゝ)れて泥酔(へゞれけ)に。成た容儀(ふり)して周諄(くだ)まいて。欝憤(ぢれつ)たいよの枕々(ちん/\)を。沢山(…

見立多以尽 ゆめにも見たい

見立多以尽 ゆめにも見たい 夜の衣をうちかへし恋しき人を夢にだに。見たい願ひの宝船。遠の眠りの音なしい。少女情(おとめごゝろ)の胸の闇。こゆるた(?)かたき大灘を 照す。燈台もと暗く。母親さへも不知火の。こゝろつくしの果しなき。思ひは七福即生…

見立多以尽 おしゃくがしたい

見立多以尽おしやくがしたい 割煮(かつぱう)の善悪を論ぜず酒の多きを喜び。容貌の美醜によらず酌は髻(たぼ)に限るといふは。下等の藤八社会。料理も美がよし。酌も亦。絶世の別品に期すとは。中等の髭連中 偖(さて)また下物(さかな)も口取の。滋味…