艶姿女舞衣 酒屋の段

 

読んだ本   http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/856596

参考にした本 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/856456

  

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艶姿女舞衣 下の巻の切

こそ入相の 鐘に散り行く
花よりも あたら盛りを
独り寝の お園を連れて
父親が世間構わぬ十

 

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徳(じっとく)に 丸い天窓(あたま)の光
さえ 子故に くらむ黄昏
時 主の妻は灯をともし
表をしめにいそ/\と
出合い頭(かしら)にホホこれは/\

宗岸様 そちらに居ゆる
はお園じゃないか アイ母
様 おかわりもござりませ
ぬか という挨拶もどこ
やらに疵持つ足の踏所(ふみど)

 

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さえ 低き敷居も越し
かぬる 宗岸は遠慮
なく 半兵衛殿お宿にか
と 娘を連れて打ち通れば
妻は門(かど)の戸引き立ててサアサア

先ずお上がり なされませと
奥底(ぞこ)もなき詞の中(うち)
それと聞くより半兵衛が
一間を出るしぶしぶ顔
娘を連れて逝(いな)れたからは

 

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こちの内に用はない筈
何の為にござった事と
針持つ詞に妻は気の毒
イヤもう 人様に追従言わぬ
偏屈なこちの人 必ずお

気にさえられて下さり
ますな この間は嫁女の
帰って居られませ いかい
お世話でござりましょう ナンノ/\
半兵衛殿の立腹は皆

 

(以下画像省略)

 

尤も 三勝とやらに心奪わ
れ 夜泊まり日泊まりして
女房を嫌う半七 所詮
末の詰らぬ事と 無理
に引っ立て逝(いん)だのは 娘に

ひけを取ってすまい為おれが
気迷い それから思案
するに付け 唐(から)も倭(やまと)も 一旦
嫁にやった娘 嫌わりょう(れふ)が
どうしょうが 男の方から退い

出すまで 取り戻すという
理屈はない筈 コリャ宗岸
が一生の仕損ない と悔やん
でも後の祭り 園めも
昼夜泣き悲しみ 朝夕(ちょうせき)も

勧まねば もしや病が
起ろうと 見て居る
親の心は闇 おれも天
満(てんま)に年古う住んで居れ
ば 人に理屈もいう者なれど

誤りは詫びねばならぬと
年寄りのつら押し拭うて
来ました 何角(なにか)の事は
了見して 今までの通り
嫁じゃと思うて下され コレ

頼みます御夫婦と 誤り
入ったる挨拶に お園も
うぢ/\ 手をつかえ とと様の
逸徹(いってつ)で 無理に連れられ
帰りしが 一旦殿御と極まった

半七様 嫌われるは皆私
が不調法 どんに生まれた
此身の科(とが) 今から随分
お気に入る様に致しましょう
程に やっぱり元の嫁娘と

おっしゃって下さりませ
お二人様と後は詞も涙なり
何のマアそっちさえ其の
心なら こっちはかわらぬ
嫁姑 ノウ親父殿 そうじゃ

ないか イヤそうじゃない 昔
唐にも例(ためし)がある 太公
宝(たいこうぼう)とやらいう人の妻 夫
に隙(ひま)取り月日を経て 侘び
言(ごと)に来たりし時 鉢の水を

大地に明けさせ その水を鉢へ
入れよ 元のごとくふう婦(夫婦)に
ならんと 太公望がいわれ
たと 日外(いつぞや)講釈で聞いて
来た それとちょうど同じ

事 こなたの方から無理
隙取って 今さら嫁と思え
とは いつ迄いうても返らぬ
事 口詞叩かずと 早う連れ
て逝なっしゃれ/\ とにべも

しゃ/\りも納戸ぐち
顔を背けて 居たりける
ヲヲその腹立ちは尤も/\ が重々
不調法は この天窓(あたま)にめんじ
了見して どうぞ嫁に

いやでござる ?めは勘
当したれば 嫁というべき
者もない筈 サアそれも
こらしめの為当座の勘当
イヤ当座でない 七生迄の

勘当 ムムその又七生まで
勘当した半七が替りに
こなたは何んで縄をかかった ヤア サア
半七とは 親でも子でもない
こなたが きょう代官所で 何の

為に縛られて戻らしゃっ
たと 思いも寄らぬ宗岸が
詞にびっくり驚く女房 嫁も
共々立ち寄って 肌押しぬかせば
半兵衛が小手をゆるめし羽(は)が

いじめ(羽交い絞め) 情けなや何ゆえと
嫁はうろうろ女房も取り付き
嘆けば宗岸が イヤまだ驚く事
が有る 聟の半七は人殺し
御尋ね者に成ったわいの と聞くより

二人は又びっくり それは何故どう
した訳 様子を聞かして コレコレ
半兵衛殿と 問え共さらに返
答は さし俯いて詞なし 宗岸
涙の目をしばたたき一昨日の

晩山の口で 善右衛門を殺し
たは 茜やの半七と噂を聞い
たときは 驚くまいかびっくり
せないか ひざも腰も抜け果て
しが 思えば/\不孝者 よい時

に勘当さしゃって 親に
難義のかからぬは まだこの上
の仕合せと思うたは他人の
了見 違うたこなた
縛り縄 科極まった半七が

命 一日なりと延ばしたいと
人殺しの科を身に引受け
縄かかったこなたの心は 真
実心に子を思う親の誠と
知ればしる程 宗岸が仕損ない

半七の身の難儀 こなた
勘当してしまい おれも娘
を取り戻したら 親にかかる首
縄(づな)もなく よい事したと世間
から 誉める人も有ろうが 親と成り

舅と成るが 大てい深い縁かいのう
こういう仕儀に成った時は
誉められるより笑われるが
親のじひ 片時(へんし)も早うと
連れて来た心はの 一旦嫁に

おこしたれば 半七がいやがる
なら ハテ尼にしてなとこの内で
御夫婦の亡き後の 香花(こうはな)
なりともとらし下され コレ手を
合わせ頼みます 侘び事が叶

わねば 引き放されたとつき詰め
て 短慮な心も出しおろ
かと 案じ過して夜の目も
合わす 母親はなしたった一人
あいつを思うおれが因果

こなたの縄目も半七が 科
人になったら猶(なお)可愛かろ 譬え
又勘当が定(じょう)でも 久離(きゅうり)切っ
たが誠でも 真実親子の
肉縁は切るに切られぬ血筋の

親 おれもこなた程はなけ
れども娘は可愛い まして勘当
はせぬ娘 愚痴なと人が笑
おうがおりゃ可愛い 不憫に
ござる コレコレ聞き入れてたべ半兵衛

殿と 是迄泣かぬ宗岸が
こたえにこたえしため/\を たくし
かけたる叫び泣き 我強う(がづよう)生れし
半兵衛も 舅の心根思いやり
ヲヲ道理じゃ/\宗岸殿と 後

は詞もないじゃくり 妻も
お園も一時に 四人が涙洪水
に樋の口あけし如くなり 半兵衛
涙の内よりも お園が顔を
打ち守り 何から何迄気を付けて

孝行にしてたもる こんな嫁が
尋ねたとて 最(も)一人と有る物じゃ
ない世間の人の嫁鑑(かがみ) 半七が
事は思わぬが そなたに別るる
半兵衛は よくよく不仕合せ いな

せとむない かえしともないとは
思えども こっちに置けばこの儘
若後家 おりゃそれが可
愛い いとしう(愛しゅう)おじゃる それで
侘び事聞き入れぬ 了簡して呼び

戻さぬ コレ嫁女 必ずむごいと
恨んでばしたもんなや 一人の
倅は御尋ね者 あすより誰を
力にしょうぞ 孝行にしてたも
ったが 今では結句怖ろしいと

せき上げせき入る舅の背(せな) さす
るお園も 正体なく伏し沈
むこそ道理なり 半兵衛
漸く顔を上げ 云わねばならぬ事
もあれど 孝行な嫁女の

手前 棟につまって言いに
くい 宗岸殿 奥の間で
言い明かさん コレお園 そなたを
さら/\嫌うじゃない 気に
かけてたもるなや 舅殿へ

咄す中 暫く爰(ここ)にと 三
人はしおしお奥へ泣きに行く 心の
内ぞ哀れなり 後には園が
憂きおもい かかれとてしも 
鳥羽玉(うばたま)の 世のあぢきな

さ身一つに結ぼれ解けぬ片
糸(かたいと)の くりかえしたる独り言 今
比は半七様 どこにどうしてご
ざろうぞ 今さら返らぬ事
ながら わしという者ないならば

舅御様もお通にめんじ子
迄なしたる三勝殿を どくにも
呼び入れさしゃんしたら 半七
様の身持ちも直り 御勘当も
有るまいに 思えば/\此のそのが

去年の秋の煩いに いっそ
死んでしまうたら こうした難儀
は出来まいもの お気にいら
ぬと知りながら 未練なわたし
が輪廻故 添い臥しはかなわずとも

おそばに居たいと辛抱して
是まで居たのがお身の仇(あだ)
今の思いにくらぶれば一年
前にこの園を死ぬる心が付か
なんだ こらえてたべ半七様

わしゃ この様に思うて居ると
恨みつらみは露程も 夫を
思う真実心 猶弥(なおいや)勝る
憂き思い あすはとうから父
様に 又連れられて天満へ逝き

半七様のひょっとした はか
ない便りを聞くならば 思い
死にに死ぬであろ とても浮世は
立たぬかくご 嫌われても夫の
内 この家で死ねば後の世の

もしや契のつなにもと
最後急ぐ心根は余
所(よそ)の見る目もいぢらしし
かかる哀れも知らぬ子の 泣き声
に目やさましけん 一間を出でて

乳飲もう乳がもみたい おば
/\/\と お園が膝により
添う子の 顔見てびっくり抱き寄せ
ヤアそなたは美濃やのお通
じゃないか 爰へはどうして

おじゃったと ふしぎながらも
抱き上げれば 半兵衛宗岸母親
も 一間の内を転び(まろび)出で ヲヲコレコレ
嫁女 忝いその心 障子の
内で聞く度に 拝んでばかり

居たわいの 礼いう事もたん
とあれど 心のせくはこの子の事
美濃やのお通といわしゃ
ったは 半七と三勝の アイお
二人の中に出来た お通と

いうはこの子じゃわいな ヤアヤア
親父殿きかしゃったか ヲヲ聞い
て居る そのまたお通を ナナ・・
何で捨て子にしてこちへおこ
した こりゃ訳があろう 嬶(かか)

懐かどこぞに書いた物でも
ないか 早う尋ねてみや という
内に わくせき明ける守り袋
内よりはらりとおちたる
一通 取る間遅しと封押し切り

ヤア何じゃ書置きの事と書いて
ある ヤア/\コレ/\嫁女 そなた
のよい目でちゃっと読みや
/\ アイアイ ナニナニ 十たび契りて
親子となる 父の御恩は山

よりも高きとの世のおしえ
我が身にも弁え居り候えども その
御恩も得送らず 儘ならぬ
義理にからまあれて 心にも
あらぬ不孝の罪 御ゆるし

下され度(たく)候 わけて母様の
御養育 申し お前の事で
ござります ようお聞きなされ
ませへ ヲヲよう聞いて居ます
わいの 聞いているさの障子より

もれ出ずる月はさゆれど胸の
闇 エエ時も時と隣の稽古
そしてその後は何と書いてあるぞ
アイ 母様の御養育 海より
深き御恵み 親父様の機嫌

あしい(悪しい)時は 陰になり日なた
になり 幾千万のお心遣い
も 泡と消え行く我が難儀 人を殺
せし身となり候えば 思い設けぬ
御別れ エエそんならやっぱり半

七様は ヲイノウ嫁女 善右衛門を殺し
ましたわいのう ハア あの善右衛門
と言うやつが 大ていや大かた悪
い奴じゃないわいの あんな悪
者でも喧嘩両成敗 我が子

の命を解死人(げしにん)に取らるると
思えば/\宗岸殿 口惜しいわい
の/\ 無念にござると述懐
涙 見聞くお園は以前の剃
刀(かみそり) なむあみだ仏と覚悟の

体(てい) これはと驚く母宗岸
叶わぬ手にも半兵衛は よう/\
押さえてコレ嫁女 年寄りばかりを
後に置き 死のうとは胴欲じゃ
わい/\ エエこれが死なずに居られ

ましょうか 放してくだ
さんせ ヲヲ娘尤もじゃ/\/\わい
ア老少不定(ろうしょうふじょう)の世の中と 聞き
流したも今身の上 みづ/\と
した若い者 義理にせまって

死ぬるとは ノウ半兵衛殿 宗岸殿
思い廻せば廻す程 チエヽ口
惜しいわいの/\ 鴛鴦(おし)の
かた羽(は)のとぼとぼと 子に迷い
行くさよ千鳥 むざんやな

半七は 今宵限りの命ぞと
三勝伴いしおしおと 心にかかる
我が子の顔 名残にせめて
今一目と 供に戸口に夜の
露 内にはそれと白髪(しらが)の母

心ならねど書置きを 又取り
上げて読む文章 人を殺し一日も
生きながらえる所存はなく候えども
お通と申す娘一人ござ候て
殊にかよわき生まれつき 不憫さ

あまる親心 それに心が引か
されて きょう迄ながらえ候得共
所詮助からぬ身に候えば 思し
召しも顧みず お通を遣わし候え儘
私のちいさく成りしと思し召され

/\ ドレドレばば見しゃいの/\ エエ
私のちいさく成りしと思し召され
御養育の御世話の程 くれ
ぐれ頼み上げ候 子を持って親の
御恩を知ると お通が不憫さ

いぢらしさに お二人様の御恩
の程 猶さらこの身にしみこ
たえ ありがたく存じ奉り候 又々
心がかりは親父様の御勘当
相果て候後にても 御赦し下

され候よう 母様宜しう御取り成し
これのみ黄泉(よみじ)の障りにござ
候/\ ヲヲ道理じゃ/\/\/\ 可哀
やとなく声もるる表には半七が
身にこたえ かかる嘆きも我故と

思えば今さら空恐ろしく 身を
悔んだる男泣き 袖や袂を
かみしめ/\ 泣く音(ね)とどむる
憂き思い こなたはお園が猶
涙 なくなく取り上げる書置きの

よむもはかなき世の中に
女はその家に有りて 定まる
夫一人を頼みに思う物に候所
その頼みに思う我等が身持ち
いつしかあいそらしい言葉も

かけず ついに一度の添い臥しも
なく候えども その色目も残さ
ずして 夫大事 親たち大事
と 辛抱に辛抱なされ候
段(だん) 山々嬉しくぞんじまいらせそろ 今

まですげのう致せし事も
さらさら嫌うではなく候えども
三勝とは そもじの見えぬ先
からの馴染みにて 子まで設けし
中に候えば 互いに退き離別(さり)も

成りがたく それ故疎遠に打ち
過ぎまいらせそろ 併し(しかし)夫婦は二世と申す
事も候えば 未来は必ず夫婦
にて/\候 ヲヲこりゃまあ誠か
半七様 ほんまの事で

ござんすかいな コリャヤイ娘 未来は
夫婦と書いて有るかいやい アイナア
未来は夫婦と書いてござんす
わいな ヲヲそれはマアいっちよい
事が書いてあるの 未来は未来

じゃが 一日なりとこの世で女
夫(めおと)にしてやりたい/\ 何としてマア
この半七は 善右衛門を殺しまし
たぞ ドレドレ娘 もちっとじゃ ドレ
おれが読みましょう イエイエ私に読まして

下さんせ ハテ扨 誰が読んでも
おなし事じゃ イエイエ私が読みます
わいな これは又片意地な こっ
ちへおこせ イエイエどうぞ読まして下
さんせ アアコリャヤイコリャ そのように引っ

張ったら エエモやぶれるがな
とかく不孝の我等に候え共
死後には嘸(さぞ)やお二人や 宗
岸様の御嘆き 随分/\
力を付け 此の身にかわって御孝

行になされ給わるべく候 申し
残したき事どもは 数々に
候えども 涙に字生(じしょう)も見え難く
あらあらおしき筆とめ申し候
只々お通が事のみ頼み上げ候

此上は な(亡)からぬ後のお念仏
南無阿弥陀仏/\/\と
読みもおわらず宗岸親子
又臥ししずめば半兵衛夫婦
お通を中に抱き上げ 初(うい)孫の顔

が見たいと 心に思えど世間の
義理で これまで逢いも見も
せなんだ 斯ういう事と知ったらば
顔見ぬ内がましであった あい
らし盛りのこの通 半七と

いっしょにくらすなら よい
楽しみであろうもの コレばば見
やいの アレなんにもしらず 手打ち
やあババばっかり ヲイ こりゃ
孫よ モウとともかかもない程に

このばばと一所に寝いよ とは
いうものの乳もなく 今から
先の寝起きにも 嘸や嘆かん
親々が 知らずに居るが胴欲者
むごい心いぢらしやと いう声

もるる三勝が 思わず乳房を
握りしめ 乳は爰にあるものを
飲ましてやりたい顔見たい/\
乳がはるわいのうと身を
ふるわせ かけ入らんも関の戸に

空音(そらね)もならず羽抜け鳥
親はそともに血の涙 子は
やすかたの安からぬ 悲しさ
せまる内とそと 一度にわっ
と湧き出ずる涙浪花江いづ

み川小きんをくみ出す如くなり
半七は歯をくいしめ かば
かり深き御なさけ是非も
なや勿体なや 不孝を赦
させたまわれと 悔やみ嘆けば

三勝も皆我ゆえの御事と
俱(とも?)に詫び入れ中(うち)に半七 いつ
まで泣いても返らぬくりごと
親父様の御縄目 はよう
ほどくは身の最後 イザイザ

急がんサアおじゃ と立ち上がりし
が今生の わかれにせめて御
顔をと差しのぞけば三勝も
お通を一目と延びあがり 見れ
ども親子隔ての関 なんと

千万無量のおもい 両
手を合せふしおがみ おさ
らば/\という声も 嘆きにうづ
む我が家のうち見返り/\
死に行く 身のなる果てぞ哀れ

なり 半兵衛はっと心付き この
書置きの文体(ぶんてい)では 今宵
最後と極めし半七 宗岸
殿も手わけして 行方を尋ね
んサア早う/\/\と身つくろい

立ち出でんとする所に 思いがけ
なく表より ヤアヤアかたがた 善
右衛門を殺せし科人 茜や
半七 召し捕ったりと呼ばわって
庄九郎に縄をかけ 立ち出ずる

宮城十内 半七が殺せし
今市の善右衛門は 国元にて
用金を盗みし盗賊 召し捕りに
来たりし所 一昨夜半七に殺
されし由 則(すなわち)善右衛門の同類

たる庄九郎を召し捕り 彼が白
状にて 半七親子に科なしと
立ち寄って半兵衛が縄目ほど
けば四人が悦び 夢ではないか
とふしおがみ コレ/\/\親父殿

 

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十内様のおなさけで 半七が
命もたすかるといのう どうぞ
命のあるうちに とめて下され
半兵衛殿と あせるを聞いて
十内が 何半七は死にに出た

とや エエおそかりし残念
/\ 役目なればこころに
まかせず 夜明けぬうちに
はやお行きやれと十内が
花も実もあるさくら

 

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井の 掟(おきて)やわらぐ国の名も
大和五條のあかね染め
今色上げし艶(はで)すがた その
三かつがことの葉を 爰(ここ)
にうつしてとゞめけれ