寿式三番叟

 

読んだ本 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/856506

 

 

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寿式三番叟

夫れ豊秋津洌(す)の大日本 国常(とこ)立ちの
尊(みこと)より天津神社七世の後 地神の始め
天照大神 岩戸に籠らせ給ひし時
世は常闇と成りけらし 其時に四方津

 

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3
八百万の御神達 神集めに集め給い
燎火(にわび)を たいて庭神楽 神すぐしめと
木綿(ゆう)襷 太祝(ふとのりこと)の 神歌や 式三番の
其謂われ おさ/\申すも恐れ有り とう/\た
らり/\ら たらりあがりらヽりとうちり

やたらり/\ら たらりあがりらヽりとう
所千世迄おはしませ 我等も千秋さふ
らはん 鶴と亀との齢(よわい)にて 幸い心に
任せたり とう/\たらりたらりら ちりや
たらり/\ら たらりあがりらヽりとう 鳴る

 

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4
は瀧の水/\ 日は照る共たへずとうたり
あかりどう/\/\たへずとうたり 常にとう
たり 君の千年(ちとせ)をへん事は 天津乙女
の羽衣よ 鳴るは瀧の水日は照共たへず
とうたりありうどう/\/\ どう/\と鳴る

鼓 宇佐の神の御役にて 笛の初
音も高円(たかまど)や 笛吹きの大明神 大鼓(どら)
は高野の大明神 太鼓は熱田の源
大夫いづれも 秘曲(びきょく)の打ち囃子 鳴るは
瀧の水 日は照る神の勇めされば

 

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5
春日の大明神 翁の袂ひすがへす
扇の手こそ面白や あげまきやと
んどうやひろばかりやとんどうや 座し
て居たれ共 まいらふれんけりやとんどう
や 千早振る神のひこさのむかしより

ひさしかれとぞ悦び そよやりちや
とんどうや凡そ千年の鶴は 万歳楽
と諷ふたり 青にぎて 青丹よし 奈
良の都の 三笠山 かげもあらたに慈
悲万行 七五三の歩の大事 十五の拍

 

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6
子とり/\゛に 万代の池の亀は 甲に
三曲を戴いたり 瀧の水麗々と落ちて
夜の月あざやかにうかんだり 渚の
砂(いさご) さく/\として 旦(あした)の日の色をらうず
天下 泰平 国土安穏 今日の御祈

祷なり ありはらや芦原や なぢよ
其翁共あれはの翁共 そや
いづくの翁とう/\そよや 千秋万歳
悦びの舞なれば 一舞まはふ万ざい楽
万ざい楽 万ざい楽/\ 長久国満足

 

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7
才延命 今日の御祈祷なり おさへ/\
おふ悦びありや 我此所よりも外(ほか)へは
やらじとぞ思ふ 物の音に連れて立まふ
小忌(おみ)衣 千歳は近江なる白髭の御神
なり 黒き尉は住吉の大神鼓は浪の

とふど打音は高間が原なれや岩
戸に向ふ神かぐら ほそろぐせりと吹く笛
も ひいやひしぎの音色迄 春は霞の
立ち姿 物に心得たる相(アド)の大夫殿に
げんぎう申そふ てうど参って候 誰(たが)

 

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8
お立候ぞ 年頃の朋輩連友達
御相(アド)の為に罷り立って候 今日の三番叟
猿楽きり/\尋常に舞うておりそへ
色の黒い尉殿 此色の黒き尉が 今
日の御祈祷を千秋万歳 所繁昌

と舞納めふずる事は 何より以て安ふ
ぞう 先ず相の大夫殿は 元の座敷へお
も/\と御直り候へ 某(それがし)が元の座敷へ
直らふずる事は 尉殿の舞よりもいと
安ふぞう 御舞なふては直り候まじ御舞

 

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9
候へ 御直り候へ 御舞候へ あらやう
がましや さらは鈴を参らせふ そおなた
こそ 初日は諸願満足円満 二日
の日は又二つ柱 鈿女の神子が舞の
袖 五月(さつき)のさ女房が笠の端(は)を列(つら)ねて

早苗おつ取り打ち上げて諷ふた 千町万町
億万町 田をばぞんぶりぞ/\ぞんぶり
/\/\ぞ 御田を植えるならば笠かふて着
せふぞ 笠かふてたもるならば猶も田を
植ふよ 三日は福徳寿福円まん

 

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10
子(ご)徳人の子宝 車座にならべた たつ
まついるまつかいつくひつ付 火うち袋
にぶらりと付けて候ぞ 是式三の故
実にて 三日是を舞うとかや 三社の
神の 舞楽より 国常闇もほがら

かに人の面(おもて)もしろ/\゛と 面白やの
詞を始め今人の世の俳優(わさおき)に 神
といふ字のへんを取り猿楽と申すこ
そ 実に恐れ有り神遊び 四海浪風
納まりて 高砂の松の葉もちるやた

 

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11
らりは真言秘密 狂言綺語(きぎょ)の道直ぐに
三仏乗の因縁謂われ ワキ能しゆら事か
つら事 柳は緑わきは紅(くれない)数々や 濱の真
砂は尽きる共尽きせぬ 和歌ぞ敷島の 神
の教への国津民治まる 家こそめでたけれ

 

 

『道八芸談』より「壽式三番叟」 コマ111   

 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1125452