読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

冥途の飛脚 道行相合かご

冥途の飛脚 床本

 

読んだ本 http://www.enpaku.waseda.ac.jp/db/index.html (イ14-00002-789 )

 

20
 忠兵衛 梅川 あいやひかご   下之巻


すいちやうかうけいに まくらならべしねやのうち なれしふすまのよすがらも
四つもんのあとゆめもなし さるにてもわがつまの あきよりさきにかならずと あだし
なさけの世をたのみ 人をたのみのつなきれて よはのなかどもひきかへて 人めのせきにせ
かれ行きのふのまゝのびんつきや かみのわげめのほつれたを わげてしんじよとくしをとる
手さへなみだにこゞえつきひえたるあしをふともゝにあひやひごだつあひごしの かごの

いきづえいきてまだ つゞくいのちがふしぎぞと ふたりが涙 こぼれくち あけぬ間は暫し
とて かごのすだれをあげてさへ膝くみかはすかごの内 せばきつぼねのありしよの 逢瀬に
にたは似たれ共 炭のうづみ火いつしかに 明日の霜と をきかへてよはの嵐によばれてはこ
たふるのべの禿松すぎし そのよが思はれて いとゞ涙の種ならん 何くど/\と思ふぞや
これぞ一れんたくしやうと慰めつ又なぐさみに ひよくぎせるのうすけぶりきりもたへ/\゛
はれわたり むだのはらへにかぜあれてあさでのしづや火をもらふ 野守が見るめはづかしと
かごたてさせてひまをやる あたひのつゆも命さえおしからぬ身はおしからずなをもおしま
ぬかちはだし おしむはなごりばかりぞや ついにきなれぬわだぼうし わしがかほよりこな
さんの はだにこれをとかぜふせぐびらりぼうしのむらさきや いろであひしははやむかし


21
今日はしんみのめをとあひ 頼まばねがひ庚申 庚申堂よとふしおがみ ふりかへり
見る しやうまんのあいぜん 様に愛嬌を 祈るしばいの子どもしゆや だうとんぼりの
いろ/\やなれしくるわのそれそとは 紋でおぼえし提灯のなかにはかなやつち屋うち
此もつかうにうちそひて私がもんのまつかはの まつのちとせをいのりしに さだめぬちぎり
ちやうちんのきゆる 命のゆふべには此もんつけてわがなかの きやうかたびらと観念し
めいどのはちを此やうに手をひかふぞやひかれふと 又とりかはしなぐなみだそでのこほりと
とぢあへり たがせきすへぬみちなれどとひ/\ゆけばはかゆかす けさのすがたを其なりに
すあしにせきだしみづけば そらにみぞれのくもりあられ まじりにふくこのはひらり
平野にゆきかゝり こゝはしる人おほければ こちへ/\と袖おほひ さとの裏道あぜみちを

すぢりもぢりてふぢいでら あれ/\あれを見や どこのいなかも恋の世や せどになを
つむ十七八かかどにたつたは忍びの妻かえ のかぜ身の毒こちはひらしやんせえ よそのむつ
ごと 嫉ましく それ覚えてかいつのこと かの初雪のあさごみに 寝巻ながらにをくられし
大門口のうすゆきも 今ふる雪もかはらねど変り果てたる身のゆくえ われゆへそめて いと
ほしやもとのししっらぢを浅黄より 恋は誉田の八幡に起請誓紙のふでの罰 そなたをよけ
てとなく涙しばし 人めのゆるしはあれど 申これなふさりとては わしが身とてもまゝには
と すえは涙にはてしなくのべの 三つおりしぼるにも裾にやつるゝ をざゝはら しもに枯
のゝすゝきはらばう/\さら/\さつとなつなは我をおつ手のたづぬるよと おほひかさなり
かげかくしふりさけ見れば 人にはあらで つまごひどりのはをとにおぢる身となるは いかなるつみの


22
むくひぞと くどき嘆きて ゆくすがたなくかわらふか富田林のむらがらす せめて一夜の
心なく とがむるこえの高間山あのかづらきの神ならで昼のかよひぢつゝましく 身をしのぶ
みちこひのみち われからせばきうきよのみちたけのうちとうげそでぬれて いはやごへとて
いしみちや のこへやまくれさと/\゛こへて ゆくはこひゆへ