二代尾上忠義伝 序開 

 

読んだ本 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10301710

 

コマ5

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 序開(じょびらき) かまくら山 かりくらの段」

「よみはじめ」
頃は延文夏の空
かま
くらの
くわんれい
持氏卿
六浦
金澤の
山々
けもの
がりを
もよほし給ひ
御とも
には
和田
太郎
仁木
正げん

 

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紙崎少将(?)
などあまたの
せこをしたがへて
かりいだすほどに
しゝさるうさぎ
かす/\のえもの
ありてきげん
ことにうるはしく
見え給ふかゝる
所へ山合より
せこにおはれて
子鹿一疋かけ
来るを持氏卿
御らんじて
たれかあるうち
とめよとありければ
紙ざき少将てつ
ぽうたんれんの
あしがる源蔵と
いへるものに下知して
アレうちよめよとあせれ
どもたゞへいふくしてゆうよする

その
ひまに子鹿は
のがれてはしり
ゆきぬ
持氏卿
きげん
はなはだ
そんじ
わがこと
ばをもちひず
のがせししさいを
たづねよと
けしき
かはつて
見えければ
紙崎は
源蔵を
ちかく
まねき
きびしく
たづね
とひければ
源蔵つゝしんで
こたえけるは
「わたくしことは
もとかりうどおやたる
ものゝ申おきしはおよそ
しやうあるもののおやを
うたば子たすけ
子をころさばおやを
たすけよ

 

 

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ねを
たつて
はを
からすは
不仁なり
とおやめが
いましめおそれ
おほき君命
ながらやむ
ことをえず
そむき
奉る
身のだい
くわのがるゝ
わるびれも
せずおそれ入て
申にぞ
持氏卿
かんしん
し給ひ

 

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下郎
にはおく
ゆかしきしんてい
ちくるいとても
おんあい
の心は
おなじ
父が
ことばの
せつを
守り
身の
とがを
かへりみず
仁義の
いちごん
かん
ずるに
あまり
あり
やかたへ
かへらば
源蔵に
ほうび
とらせよと
「次へつゞく」

 

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序開き 鎌倉山 狩倉の段

頃は延文夏の空、鎌倉山管領持氏卿、六浦金沢の山々、獣狩りを催し給い、お供には和田左衛門、仁木正げん、紙崎小膳など数多の勢子を従えて、狩り出だす猪、猿、うさぎ、数々の獲物有りて機嫌殊に麗しく見え給う。斯かる所へ山あいより、勢子に追われて小鹿一匹かけ来るを、持氏卿御覧じて、「誰かある、撃ちとめよ」とありければ、紙崎小膳、鉄砲鍛練の足軽源蔵といえる者に下知して、「あれ撃ちとめよ」と焦れども、只平伏して猶予する。その隙に小鹿は逃れて走り行きぬ。持氏卿、機嫌甚だ損じ、「我言葉を用いず逃せし子細を訊ねよ」と気色変って見えければ、紙崎は源蔵を近く招き、厳しく訊ね問いければ、源蔵謹んで答えけるは「私事は元狩人、親たる者の申しおきしは、凡そ生あるものの親を撃たば子を助け、子を殺さば親を助けよ。根を断って葉を散らすは不仁なり、と親めが誡め、畏れ多き君命ながら、止む事を得ず背き奉る。身の罪科逃るる所無し」と悪びれもせず恐れ入りて申すにぞ、持氏卿感心し給い、「下郎には奥ゆかしき心底、畜類とても恩愛の心は同じ。父が言葉の説を守り、身の科を顧みず仁義の一言。感ずるに余りあり。館へ帰らば源蔵に褒美を取らせよ」と「次へつづく」