二代目尾上忠義伝 三段目つづき(その5)

 

読んだ本 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10301710

参照した本 (コマ12)http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he13/he13_02378/he13_02378_0304/he13_02378_0304.pdf

 

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14

「つゞき」わがあづかりのりんしふん
じつとや家のあんき此身のおち
どおかがはせんととほうにくれて
たち給ふさて又仁木は大杉が
心てい一もつありとさつするに
たがはずほんぎやくどうしん
のていなるゆえ君にこいちや
けんじどくさつなさんと
はかりことをしめし合すに
大杉同心のていにもてなし
したくとゝのへまつ所へ
きくわんありて持氏卿

 

 

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 立出給ふにかねてよう
いのちんどくをこいちやに
てんじて奉ればすでに
のまんとし給ふをあやしき
けうきとせいすれば仁木は
おどろきあらがへば大杉
につことうちわらひいち
みと見せてほんぎやくを
見あらはさんわがけい
りやく君のおんばつ
これみよと松のしげはに
かのこいちやうちかくればねぐら
の鳥のはら/\と一度におちる
どくのありさまおそろしくぞ見へにける

 

 

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 ○持氏卿
さがみ
川を
わたらん
として
畑介が
ために
らくめい
し給ふ

 

 

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 茶番狂言早合点 絵入よみ本
式亭三馬著編
五渡亭国貞画
此さうしは茶番のはじまりを考訂しむかしの風中むかし
の風当世の風と時々に移りかはりたるさまをくはしくあら
はすのみならず当時名高き人々の戯れに作りたる狂言
まのあたり見るがごとく書あらはす且茶番趣向の考やう并ニ
条物の工夫或は席上において憚るべき詞或は禁忌の事等ニ
至るまで悉く書のせたりこれを見ればいかなる名才覚の人を
ともおのづから仕方をわきまへ忽ち上手の茶番師となるべし
江戸材木町一丁目
地本義大夫本問屋 西宮新六版

 

 

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 我預りの綸旨紛失とや、家の安危この身の落ち度、いかばせんと途方に暮れて立ち給う。さて又仁木は大杉が心底一物ありと察するに違わず、叛逆同心の体なる故、君に濃茶を献じ、毒殺為さんと謀を示し合すに、大杉同心の体にもてなし支度調え待つ所へ、帰館ありて持氏卿立ち出で給うに、予て用意の鴆毒(ちんどく)を濃茶に点じ奉れば、既に飲まんとし給うを、「怪しき香気」と制すれば、仁木は驚き抗えば、大杉にっこと打ち笑い、「一味と見せて叛逆を見顕さん我が計略、君の御罰これ見よ」と松の茂葉に彼の濃茶打ち掛くれば、塒の鳥のはらはらと一度に落ちる毒の有り様、怖ろしくぞ見えにける。

 

(左ページ本文)
この草紙は、茶番の始まりを考え証(ただ)し、昔の風、中昔の風、当世の風と、時々に移り変わりたる様を詳しく現わすのみならず、当時名高き人々の戯れに作りたる狂言を目の当たり見るが如く書き現わす。且つ、茶番趣向の考え様、並びに、条物の工夫、或いは、席上に於いて憚るべき言葉、或いは禁忌の事等に至るまで、悉く書き載せたり。これを見ればいかなる名才覚の人成るとも、自ずから仕方を弁え、忽ち上手の茶番師となるべし。