豆腐百珍 妙品 絶品

 

読んだ本 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2536494

 

 


29 右頁 最後

  妙品

七十六 光悦(くわうえつ)とうふ 酒を久しく煮て酒香なきほどにし豆腐
    羅皮(ぬのめ)をさり大田楽にし塩に和?(まぶし)狐皮色に炙(やき)右の酒
    へ入れ煮つらん

七十七 真のケンチエン 壱挺を十二ほどに切油にてさつと揚げ
    壱つを二片にわりて細くきり○栗子 皮牛蒡を針に
    きり○木耳 麪筋(ふ)細くきり○芹みぢんに?(ささ)みもし
    芹なきときは青菜を用ゆ○銀杏ふたつわりにし七品(いろ)合(あはせ)
    て大約(おほよそ)壱升ばかりのかたに油一合あまりの分量にて油よく
    沸(にたゝ)せ先ず銀杏牛蒡芹を入れ炒つけ次に木耳ふ豆腐


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    くりを入復(また)うちかへし/\して豆油(しやうゆ)にて味つけさまし置く
    ○腐衣(ゆば)を水に浸し板にひろけ七品の料(ぐ)をあつさ四五
    分まんべんにしきならべよく巻つけ干瓢にてくゝり ○
    又巻とめ口に葛粉水にてかたく溲(うね)たるをぬりつくるも
    よし油にてよく揚げ七八分づゝに切る尤も豆腐は油にて
    三次(みたび)揚ぐるなり○ケンチエン醋(そ)にて用ゆ
    ▲ケンチエン醋の方 上々の嚴(きぶい)醋 豆油と等分にして
    しぼり生姜おほく入れ絹ごしにして用ゆ
    ▲又一製あり右六品(いろ)の加料(かやく)を油にていりつけすり豆
    腐に?(まぜ)て腐皮(ゆば)は油を用ひず生の腐皮に巻くゝりて

    醤油と酒しほにて味つくる也是草(さう)のケンチエンなり

七十八 交趾(かうち)でんがく 常の如く串にさし香油(ごまのあふら)をひき辣茄(とうがらし)
    味噌のつけやき也

七十九 阿漕でんがく 豆腐をよきほどにきりさつと炙(やき)すぐに
    稀醤(うすしやうゆ)にて烹染(にしめ)汁気をさり香油(ごまのあぶら)にて揚げ復(また)味噌
    をつけて田楽にして炙なり すり柚かける
    ▲油を用ひず醤油のつけ炙にして少し乾し再び味噌
    をつけて炙也 炙調(やきかげん)だいじ也 両炙(りやうはう)ともやきすごすべから


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    ず是を再炙(ふたゝび)田楽といふ

八十  鶏卵(たまご)でんがく たまごを割り醤油と酒しほ少し入れ  
    酢を最も少し加へよく攪ぜ田楽にぬり炙(やき)にするなり
    ふくれるを度(ほど)とす○芥子と擦(おろし)わさびをく

八十一 真の八杯とうふ きぬごしのすくひ豆腐を用ひ水六杯
    酒壱杯よく煮沸(にかへし)後に醤油壱杯入またよくいかへし
    とうふを入る烹調「九十七」湯やつこの如し擦大根をく

八十二 茶豆乳(ちやとうふ) とうふ十挺に上々の茶壱片の分量(つもり)にて茶
    を煮いだし沸(にへたち)なる所へとうふの羅皮(ぬのめ)をさりて入れよく
    烹て茶色に染るを別に茶を烹て出ばなの所へ入れな
    をすべし さて茶をしぼり○煮かへしの稀醤油 花鰹
    山葵のはりをおく又山葵味噌よろし
    ▲山葵味噌の製はみそに油痲(しろごま)胡桃よくすり合を
    をき用るとき擦(おろし)山葵入るゝ也
    ○又胡椒みそもよし

八十三 石焼とうふ もと石にてやくを略して?子(くわしなべ)を用る也


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    炭火を武(つよく)し?子(なべ)に油を少し入れよくぬぬりまはし
    但/\油をひくといふよりは饒(おほ)くする也 豆腐を壱寸方
    あつさ三分あまりに切てなべにちよとをけばおどりうご
    くをぢきに鶏卵匕(たまごすくひ)にてうちかへす也すぐに用る也おろし
    大根生醤油にて用ゆ
    ▲青海苔を炙りよく細末し方盤(おしき)やうのものへひろげ
    油をよく沸(にたゝ)せ少しづゝすくひ海苔の上へおとし転ばし
    善く攪(かきま)ぜ文火(ぬるきひ)にしばらくかけ醤油にて味つけたるを
    右の豆腐につけて用るを炒とうふといふ
    ▲?子(くわしなべ)のかわりいにかにも古き犂(からすき)の?(さき)を用る是

    をからすき炒(やき)といふ

八十四 犂(からすき)やき 右に出たり


八十五 炒とうふ 同しく右石焼の下に出たり

八十六 煮熟(にぬき)とうふ 鰹のだし汁にて尤炭火文武火(すみびのつよからぬひ)を
    用ひ終日(いちにち)あさよりくれまで煮る豆腐すだつ也

八十七 ?素(しやうじん)のにぬき豆乳(とうふ)右の煮調に(にかげん)に同じく昆布の


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    逹失(だし)汁に山椒を加へ終日煮る山椒を加ふること口伝也
    昆布をだす先(はじめ)より入るべし

八十八 骨董乳(ごもくとうふ) 全ながら切目を十文字に入れきりはなさぬやうに 半
    までにすべし葛湯にて全烹(まるに)にし盂(はち)へうつし○生(き)の煮沸(にかへ)し
    醤油をいけもりの如く底へ溜めをき花がつほを其上へ
    壱面にをき○広島紫菜(のり) 紅椒(とうがらし)のざく/\゛ 葱白(しろね)のざく/\゛
    擦(おろ)し大根を又右の上へのせもりもち出て座上(ざしき)にて混(ごちやまぜ)に
    し小皿子へもり出す也○又夏月に豆腐醤油とも生(き)にて
    も右の如く調ふひつきやうやつこ豆腐の変(かへ)調(りやうり)なり

八十九 空蝉とうふ 「五十七」寶蜆(しゞみもどき)の製の如くして猶々水をすくひ
    つくし煎りつかせて腐滓(から)の如くになるを香油(ごまのあぶら)しほ醤
    油を入雪花菜(から)を煎る烹調(かげん)にし鶏卵ともみ紅魚(だい)肉を
    入れ杓子にてよく煉る也○山椒 麻子(おのみ)を入る○一にホロ
    カベとうふと名ずく

九十  苗鰕(えび)豆腐 生の苗鰕(えひざこ)を割刀(はうてう)にてたゝきよく細末し
    雷盆(すりばち)にてするはあしく別にとうふをよくすりて右のたゝ
    き苗鰕をよくまぜ合せ「十」雷とうふの加料(かやく)を入れて


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    熱煎りにして味つくる也○苗鰕なき時節は海鰕(いせえび)を茹で
    てたゝき用ゆ

九十一 加須底羅乳(かすていらとうふ) 上々の古酒を煮沸(にかへし)酒香なきほどにし豆
    腐を全(まる)ながらとくとひたるほど入れ文武火(つよからぬひ)にて烹る一旦は
    ふくれて大きになり又始めよりしまりて小さくなるを度??

九十二 別山焼(べつさんやき) 温飯(うんはん)を手にて少しもむ是にて後に串にさす時
    くだけぬ也さて小さくつくね胡椒味噌に包み串にさし
    少し焼て温めをきたる小奈良茶碗に二つ入れ烹調よき

    うどん豆腐を羅匕(あみしゃくし)にてすくひざぶりとかける也
    ○別山は禅師(ぜんじ)の名なるよし

九十三 包み揚げ 大小このみ随に切り美濃紙にて沙金袋
    包みにつゝみ○板に渇きたる灰を厚さ四五分に敷き
    其上へ渇きたる布をしき又紙を一遍しき其上へ包み  
    たる豆腐をならべしばらくをき水気をさるなり水を
    しぼりすごせばかたまりてよろしからずさて包みながら
    香油(ごまのあぶら)にて揚げ紙をはらひ稀醤油かくし葛にて烹
    てすり山葵をく○雪白揚げともいふ


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   絶品
    
九十四 油揚(あげ)ながし よきほどに切り香油(ごまのあぶら)にて揚げ あげ鍋
    より直ぐに水へうつし入れて油気を去り○別に葛湯を
    くら/\沸たゝしをき油ぬき豆腐を入れ「九十七」湯やつこ
    の烹調(にかげん)にて山葵味噌かけ也○山葵みそは「八十二」茶豆
    腐の下に出たり

九十五 辣料(からみ)とうふ 鰹の出汁稀醤油にていかにも
    たつぷりと鍋にたゝへ生姜を擦(おろ)しいかにも饒(おほ)く入れ
    終日(いちにち)烹る也○凡そ豆腐壱挺によく?(こえ)たる一トにぎり
    ほどの生姜十をあまりの分量(つもり)にすへし

九十六 礫(つぶて)でんがく とうふを八分方 あつさ四五分に切ひと串
    に三つづゝさし「二」雉子やき田楽の如く狐皮色に
    炙(やき)串ぬきて其まゝ楽陶(らくやき)の蓋茶碗に入れ芥子酢みそ
    かけ芥子づる也

九十七 湯やつこ 八九分の大骰(おおさい)に切り又は拍子木豆腐とて五


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    七分の方(かく)長さ壱寸二三分の大きさに切をき○葛湯
    至極ゆだまのたつほど沸たゝし豆腐を壱人分入れ蓋
    をせず見ていて少しうごきいでゝまさにうきあがらんとす
    るところをすくひあげもる也 既にうきあがればはや烹調(にかげん)
    よろしからず其あんばい端的にあり尤器をあたゝめ
    おくべし○生醤油を沸し花がつほをうちこみ?(ゆ?)?
    少しばかりさし又一へん沸し絹ごしにして別猪口に
    入れ葱白のざく/\おろし大根唐辛子の末(こ)入る
    ○京都にて是をたゞ湯とうふといふ浪華(おほさか)にて湯
    やつこといふ豆腐の調味において最も第一品たるべし

    ○古法は?水(しろみず・一度使った水)にて烹るとあれども葛湯にはしかす

九十八 雪消飯(ゆきげめし) 「百」うどん豆腐の如く切り「八十一」真の八杯
    とうふの如く烹て小寧楽(こなら)茶碗を温めをきたるに入
    れおろし大根をおき其上へ湯とり飯をよそひ出す
    也 風味きゆるが如し是亦(また)清味(せいみ)第二品にくだらず
    ○湯とり飯は最も?(しろづき)の飯をたき沸湯へ入れ撩()かきまはし
    笊籬(いかき)へあげ復(また)もとの釜へ入れ火気のある竈へ
    かけよく熟(うま)す也
    ▲「十八」しき未噌菽乳の上へ右の湯とり飯をよそひ


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    又は「四十九」備後とうふのうえへよそひ或は木のめでんがく
    の上へよそふみなすべてうづみ豆腐といふ

九十九 鞍馬とうふ 壱挺ふたつ切ぐらいにして油にて揚げ
    皮をむきとりてまろく造り湯煮して梅醤かけ芥子
    にても胡麻にてもふる○又酒塩薄醤油にて煮
    てすり山椒をくもよろし

百   真(しんの)うどん豆腐 鍋ふたつをならべ二(ふた)なべとも湯を最もよく
    湯玉のたつほど沸(たぎら)しをき切たる豆腐を羅匕(あみしやく)にて

    すくひ一方の鍋へ羅匕ながらつけひたしたるまてに
    て直(ぢき)にあたゝめをきたる器へよそひ今(ま)一方のにえ
    湯をそゝぎ入れ出す也 烹るにおよばすして烹調(にかげん)最も
    妙なり幾数十人に供(もてな)すといふも始終烹調
    少しもかわらづ○汁は豆油(しやうゆ)壱升酒三合だし
    汁五合ひとつに煮かへし別の中ちよくに入れ擦し
    大根 辣茄(とうからし)の末(こ) 葱白(しろね)の微塵刻み 陳皮の細末
    浅草紫菜(のり)を加料(かやく)に用ゆ○或は胡椒一品にても
    ○切やうは凝菜(ところてん)のつき出しさきの羅(あみ)を絹糸にて
    造(こしら)へ温湯(うんとう)の中へむけてつき出すなり尤其つきいだ


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    す手もとにで湯へつかるやうにすべし 幾百人に
    供(もてな)すといふとも即時に切いだすべし
    ○うす刃にて削(きり)いだすはまづよきほどにあら切をし
    左の方を左の掌にておさへ左の方より右の方へ
    むけてきりゆくなりよきほどにきりて左の掌と
    うす刃とにてそつとはさみうちかへして又始の如き
    きりゆく切る中(うち)にひたものうす刃を水につけ/\
    してきりゆく也是すべて豆腐をきるの術なり
    ○一法にうす刃に酢を少しひくもよし

 

 以下漢文略 オワリ