仮想空間

趣味の変体仮名

豆腐百珍続編 佳品

 

読んだ本 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2536546

 

 

   佳品

廿一  牡丹とうふ 一丁を角とり(円筒の図)棒の形にし
    丸揚げにして小口ぎり四つにし昆布だし汁にて
    山椒くわへよく煮る醤油加減薄くすべし
    さんしやうは昆布をだす始めより加ふべし○さて
    平き奈良茶碗によそひ浅草海苔を解きて
    べつたりとかけおろし生姜おく

廿二  御手洗でんがく 中体にきり笊籠にてふりま
    はし角をとりうどん粉にまぶし細いき青串一本に
    五つづゝさし参照醤油のつけ焼にす串ながら


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    引ものに用ゆ

廿三  実盛とうふ 薄くよきほどにきりだし汁
    薄醤油にて煮て汁すくなくよそひしぼ
    り生姜かけ上へすりたる黒胡麻を豆腐の見へ
    ぬほどに密しりとおく也

廿四  白花(うのはな)豆腐 とうふを油にてさつと揚げ一時ばかり
    過ぎて醤油一杯水一杯酒三杯にて煮たてる也
    但し器に汁を溜めず上に薯屑(じよこ)をふるなり

    ○じよこの製は前篇「五十四」なでしことうふの下
    に見へたり
    △じよこのかわりに煮ぬき卵の黄身をふるを
    やまぶき豆腐と名づく

廿五  たまぶきとうふ 右に見へたり

廿六  小もんとうふ 豆腐をよくすり濾し黒海
    苔を焙り細末にしてかきまぜ布に包み茹でる


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廿七  小笠原豆腐  よきほどにきり葛湯にて煮加減よく
    辛味見あかせに入れ葛あんかけ花がつほを葛
    のみへぬほと一面におく

廿八  腐?(ろくじやう)俗に六條といふ 一丁八つほどに薄片きり塩を
    塗し夏日の炎天に曝すなり○僧家(ぼんさま)花がつ
    ほのかわりにけづりて用ゆ○腐衣(ゆば)を製(こしらへ)たる
    後の硬き豆腐を腐?といつはりて売るもの
    あり歯汁(にがり)おほく凝りて毒ありもし買ひ
    用るときはよく/\吟味すべし

    ○一種高野山にて製する腐?あり豆腐一挺
    を焙り網に藁をしき炭火のぬるき火にて炙り後
    に?(かはか)してけづり用ゆ

廿九  松風様(まつかぜとうふ) とうふ六分ふくさ味噌三分卵一分
    山椒の粉を入れよくすり合せ酒しほにてよ
    きほどにのべ炒鍋に油をひき右のすり豆
    腐をまんべんにのべしきて芥子をふり焼くなり
    よきほどにきりて肴に用ゆ


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三十  横雲とうふ 一丁をひらに四つほどにきり
    て青海苔の細末を厚くふりまき其上へ同じ
    とうふを合せておし豆腐にするなり○前篇
    「十五」おしとうふの下見ありすべし

卅一  氷條(つらゝ)とうふ 前篇「四十五」線麺の下に出たる?(しべ)豆腐
    葛粉にて転(こか)し湯煮するなり其うへ調味好み
    に随ふべし

卅二  蕎麦とうふ 前編「四十五」線麺とうふに蕎麦の花
  
    こをまぜてつねの蕎麦切りの調味にす

卅三  海鰌(くじら)とうふ 豆腐の水をよくしぼりさり長さ
    杉のはこに一はいにつめ入れ其上へ又とうふに百
    草霜(なべすみ)をすり合せたるを一層をきしばらくおしを
    かけをき○蒸しはこをわりてとり出し小口
    ぎりにし色つかぬほど胡麻油にて揚ぐるなり○百草
    霜のかはりに昆布の黒やきを用いるもよし
    ○一製に白胡麻をよくすりこしてとうふにすり


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    まぜ右の製にし丸揚げにして後にきる尤も
    佳なり

卅四  蒲鉾とうふ 胡桃をむきしばらく湯に浸けをき
    しぶ皮をさりよくすりつぶし豆腐よく水をしぼ
    り七分腐三分胡にまぜすり合を杉板に蒲鉾の如
    くつけよく蒸してすこ/\焼くなりよきほどにきり
    て煮物のさしこみに用ゆ○肴に用るときは初めよ
    り醤油酒しほにて味つくるなり
    △右の如くよくすり合を前編「十九」ヒリヤウヅの加

    料(かやく)みあはせに入れよきほどにとりてうどん粉の
    衣かけ油にて揚ぐるを胡桃ヒリヤウヅといふ

卅五  胡桃ヒリヤウヅ 右に見へたり

卅六  五瀬(いせ)とうふ 豆腐 かき鯛 おろし芋
    三品を別々によくすりひとつに合をて猶又
    よくすり卵白を加へ杉のはこにしき布して
    入れはこながら湯煮してよきほどにきり奈良
    茶碗によそひ鳥肉味噌をかけすり胡麻すり


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    山椒おくなり
    ○鳥肉味噌は何にても鳥肉よくたゝきよくすり
    小鳥ならば骨も入れよくたゝき味噌等分に
    よくすり合せ酒しほ水にてゆるめ炭火のぬるき
    火にて久しく煮るなり

卅七  双の胡麻豆腐 胡麻を水磨(びき)にひきおろし濾して
    水にいせ上水を去り豆腐をすりまぜ蒸す
    ○真の胡麻豆腐は附録に見へたり

卅八  裏(つゝみ)とうふ 一丁を二つに切まん中を抉りて胡
    桃(くるみ)味噌を入れ又とうふにてふたをしみの紙に
    てつゝみ湯煮す其上の調味随(しだい)なり
    ○胡桃味噌は白胡麻胡桃等分によくすり合す
    又味噌にする合せるなり

卅九  粟(あわ)豆腐 しき葛あんにおろし山葵をきおぼろ豆
    腐の煮加減よきを湯をしぼりてもり其上へ卵
    の煮ぬきの黄身ばかりを密(ぴつしり)とふるなり


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四十  いらたか豆腐 「六十九」千歳とうふの下に見へたり

四十一 長崎ケンチエン 前編「七十七」ケンチエンの製に豆芽(ふんどうのもやし)
    を油にて炒りつけ入るゝなり
    ○豆芽(もやし)を造る法 大擂鉢に沙(すな)を入れぶん豆(緑豆)を
    捲き水を一寸ばかりため土室へ一夜いれおけば
    芽を生ずるなり
    ○ケンチエン酢の製も前編「七十七」に見へたり

四十二 板焦(やき)とうふ いかにも薄き杉の板大きさ見あ

    はせに蕗菜味噌をべつたりとぬり尤辛味見あ
    はせに入るゝべし 豆腐一丁をひらに四つか
    五つ切ぐらい中しぼりにし味噌ぬりたつ上へ 
    のせ又上へも味噌をぬり同じく杉板を上へも
    のせはさみ武火(つよきひ)の遠火にして板を焦がし
    又板ながらうち返して焼く也 さて上の板をそ
    つととりて下の板ながら皿にのせて出だす也上の
    疎(まばら)に着きたるもかまはずもやうに用ゆべし
    ○板は引ぺぎにするもよろし


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    ○又一種豆腐をよきほどにきり杉のいたになら
    べ大あぶりこに炭火をのせ上より炙る板やき
    あり 調味はこのみじだひ也

四十三 うずみ豆腐 丸ながら美濃紙に包み藁を焼き
    て其熱灰にうづみ半日にても一夜にてもおき
    とり出し酒醤油等分にてよく煮染め小口切に
    す○前編「十五」おしとうふの別製なり○一説に
    是をあつやきとうふといふ「八十五」別製のあつ
    やきとうふあり○又同名異製にて飯のうづ

    み豆腐あり前編「九十八」雪消食(めし)の下に見へたり
    △大小このみ随にきりみの紙に丸く包み口を紙
    縒(こより)にてくゝり前編「十五」おしとうふの如くにし
    紙をさり煮染るを丸おし豆腐といふ
    △一丁を角より角へきり右の如くみの紙に包
    み煨(あつはいにうづむ)紙をはらひ油にてさつとあげ味つ
    くるを鰒魚(あわび)とうふと名づく

四十四 まるおしとうふ 右に見へたり


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四十五 とうふ鮓(すし) 前編「十五」おしとうふを大ぜんにき
    り煮沸たる生醤油へいれさつと煮染めさましを
    き○湯葉を酒しほ醤油にて味つめたるを板へひ
    ろげ精(しろつき)の飯をしきのべ酢を少しうち刻み木耳
    慈姑 梅酢漬の姜(はじかみ)山椒をぱらりとまんべんにを
    き右の煮染とうふをならべよく巻たて竹の皮に包
    み押しをかけ二時(とき・約4時間)ばかりをきとり出し小口ぎりにす

四十六 松木とうふ 鰹の出し汁に初めより醤油をいれ
    ふくさ味噌をのべいれ強火にて煮たたしとうふをよき

    ほどにきり入れそれより強火にて半日ほど
    煮る也すり山椒をく 器は楽焼の升皿などよし

四十七 吾妻でんがく つねの田楽の如く焼きて芥子を水にて
    和(とき)一ぺんひき焼き干(かはか)してすぐに葛かけ田楽にす
    るなり○芥子のかわりに観心寺寒曝しの粉を水
    にてときぬりて焼きふくれるをほどゝす 山椒
    味噌 又一種の製なり
    △糯米を水に浸をきよくすりて田楽につけ焼き
    にし生の煮かえし醤油におろし山葵にて用るを極楽豆

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    腐といふ

四十八 一種のやまぶきとうふ 大骰(さい・サイコロ)にきり笊籠(いかき)にてふりま
    はし角とりて梔子にて色つけ薄醤油のつけ
    焼きなり○又「廿四」白花(うのはな)とうふの下に出たるやまぶき
    とうふあり

四十九 霞とうふ 豆腐水をしぼりおろし大根又よく水をし
    ぼり尤もとうふ六分に大根四分よくすりまぜ沸(たぎり)
    たる湯へ匕(すく)ひいるればよくよるなり羅匕(あみじやくし)にてす

    くひ椀中へ浅草海苔少しいれ生の煮かへし
    醤油に唐辛子の粉いる

五十  西洋(なんばん)田楽  麻子 榧 山椒 三品よく炒て粉にし
    又あぶら炒りにし味噌にたゝき混ぜるなり○又
    味噌にすりまぜてみそともに油炒りにしてたゝ
    くもよし 酒しほにてのべ田楽にす

五十一 あら玉豆腐 卵の煮ぬき丸にて尤も煮ぬきたて
    を茶碗へよそひ其上へ前編「十」かみなりとうふ


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    をざぶりかける也 加料(かやく)も雷とうふと同じ

五十二 霙蕎麦 おぼろ豆腐を出汁醤油にて尋常(つね)
    よりからめに煮加減よく○蕎麦きりをつねの
    如く茹で器へよそひ右の豆腐をざぶりとかく
    るなり 豆腐をそばよりは少し多くすべし
    ○白葱きざみ おろし大根 おろし山葵 つねの
    如し

五十三 一種の今出川とうふ 一丁三つきりぐらいに

    してさつと焼き 出し汁にてよく煮て一方を金匕(かなさし)
    にて割すき芥子をときてくりたるところへ入れ
    もとの如く合せ薄葛あんをかけ出す也 ○前編
    「卅九」今出川とうふあり 調製少しく異也

五十四 加料(かやく)黄檗(わうばく)とうふ 前編「十」雷とうふの下に
    見へたる黄檗とうふの如くにして木耳 長いも
    わり銀杏 揚げ蒟蒻 麩のほそ切 胡桃
    慈姑 牛蒡のさゝがき 各(みな)あぢつけをきた
    るを打こみ山椒の粉