仮想空間

趣味の変体仮名

豆腐百珍続編 妙品

 

読んだ本 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2536546

 


38 右頁中程より

 妙品

七十九 馬鹿烹登宇不(ばかにとうふ) 一丁に酒二升の分量(つもり)にて
    一夜浸けをき翌日烹つめるなり葛あんにお
    ろし生姜○南京のふた茶碗鳳凰様などよろし

八十  禅とうふ やきとうふを平鍋にぴつしりと
    ならべ多きときは層ねならぶるもくるしから
    ず上にふくさ味噌をべつたりととうふ見へ
    ざるほどにをき水気なしに文火(ぬるきひ)にて半日
    あまり烹るなりもし焦げつかんとすれば酒
    しほか薄醤油を少しづゝいくたびもさす
    なり○味噌とうふともにすくひよそひに
    よそふなりすり山椒をく○前編「六十三」茶(さ)れ
    いとうふとやゝ同じ製なり


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八十一 合歓(がうくはん)とうふ とうふと餅と同し大きさに平
    にきりて別々に湯煮し平たき奈良茶碗
    餅を上へ重ねよそひ○葛あんかけしぼり
    生姜花かつほ

八十二 岩石とうふ 豆腐よく水をしぼり鶉の肉
    葛粉少し右別々によくすり一つに合はせ
    猶よくすりよきほどにとりて湯がくなり 尤も
    豆腐水気をよくしぼりされは肉とよらぬ也

    ○別にだし醤油加減よく辛味見あはせに入る
    べし○鴨にても用ゆといへとも鶉最も佳な
    り○片桐石州?(せきしう公)のこのみなり
    従五位下・石見守・貞昌、宗関と号す(片桐石州のこと)

八十三 ナンチン豆腐 白葱を五分ぎりにして酒いり
    にし醤油の加減し豆腐をつかみくづし
    入れて煮る○青唐辛子のざく/\゛をく

八十四 織部とうふ 一丁を全ながら羅紋をさり


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    角とりて(円柱の図)棒の形になし焙鍋(くわしなべ)に転しやき
    にしよく焼く也 附録「三十」大玳琩環(おほぢくわ)の下見あはす
    べしさてつゝ切四つになし○鰹のだし醤
    油酒しほ薄加減にして汁多くし釜に中
    蓋をして半日あまり煮る○小わり胡桃
    みやうがだけのせん 山葵のはり 浅草海苔
    をく
    △焼とうふを醤油にぢき鰹にて終日煮る
    出すとき道明寺の糒(ひきいゝ)を少し炒りてふるを
    湊とうふといふ

八十五 厚やき豆腐 平鍋に油をひき豆腐をうちこ
    み水気なしにうどん粉少し入れ初めより酒しほ
    生醤油入れ和調(あんばい)し○わり銀杏 木耳 松
    露其他前編「十九」ヒリヤウヅの料(ぐ)見あはせに入れ
    強火にて煮るうちに金匕にて液(しる)をいく次(たび)
    もすくひとり去るなりよく煮て底少し
    焦げつくほどの煮加減にて鍋をうつむけにうち
    あげ焦げを削り去りいかやふもきりかた
    して温かなるを出す○又安部どうふとも


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    名づく

八十六 寧楽(なら)茶とうふ 「九十五」豆腐飯の下に見へたり

八十七 豆腐粥 とうふを□ほどの小賽の目に刻み葛湯
    にて煮る 焼き塩にて加減し出しさまに茹で
    青菜の微塵きざみをばつとかけ しぼり生
    姜をおとすなり○大賽に切るを潮煮(うしをに)といふ

八十八 天狗とうふ 鍋を四つならべたて一の鍋は胡麻

    油 二の鍋は白湯 三の鍋は酒 四の鍋は醤油
    こと/\゛に火を強くしくら/\と煮えたたし置き 一鍋
    に一人づつ四人かゝり銘々網杓子を携へ持ち さて
    とうふよきほどに切り置き第一の鍋へ入れ
    てくる/\と二三べんまはしすぐにすくひあげ
    て第二の鍋へ入る又くる/\と二三べんまはし
    直ぐに第三の鍋へうつす 又同じとほりにして
    第四の鍋へうつす 先だつて又一人茶碗を温
    め山葵みぞのしきみそをして待ちかけい
    るなり 第四の鍋よりしきみそへわたすなり


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    ○山葵みその製は前編「八十二」茶とうふの下に見
    へたり○前編「九十四」揚げながしと「四十」黄檗(わうはく)とう
    ふとをひとつにしたる調味なり 転供(てんぐ)とうふと
    あるべきを誤て天狗とうふといふなるべし

八十九 アンヘイ豆腐 おぼろ豆腐を小茶碗へ入れ中(うち)
    へ松露を一つ二つ包み入れ蒸すなり茶碗蒸し
    の製の如し○葛あん おろし山葵

九十  塩とうふ 「九十六」三清とうふの下に見へたり

九十一 東雲でんがく 白味噌をごま油にて和(と)き初めより
    豆腐にぬり焼くなり味噌焦げぬうちに裏へ
    火気よく徹(とお)るなり
    △てんがく薄醤油のつけ焼きにして白葛だまり
    の温かなるをかけすり柚子をおきを衛士(えじ)でんがく
    と名づく
      衛士でんがくの名未詳(つまびらかならざる)に或る人の説に
      絵事のあやまりなるよしいへり絵の事は素(しろき)
      を後にするなり如何なる好事の人


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      の穿ちて名づけたるやおかし
    ○白葛たまりは葛に醤油を入れず焼き塩
    焼酎を入れねりたるなり

九十二 出世でんがく 作腐家(とうふや)にあつらへ豆を挽くと
    き宿砂(しゆくしや)の粉をいるゝなり豆腐一はこに宿
    砂は両の分量(つもり)にすべし さて味噌に交趾(かうち)
    肉桂の細末を二分どをりすり混ぜるなり 田
    楽の製(しやう)尋常(つね)の如し豆腐少し硬しとい
    へども此田楽味はひ佳にして停食の患(うれへ)なし

    ○浪華(なには)四天王寺の古例に七種の割烹(りやうり)といふ
    ことある其一つなり

九十三 豆腐干(かん) 前編「十五」おしとうふを薄醤油にて
    炒りつけ放冷(さまし)て方一寸厚さ三分ばかりにき
    り油にて揚げ復(また)醤油にて味つけるなり○
    いり酒におろし山葵にて用ゆ

九十四 伽耶の油揚(あげ)豆腐 伽耶の油にて揚げやうしさい
    なし風味最も妙品なり調味好み次第


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    ○すり豆腐に加料(かやく)を入れ小さくとり伽耶の油
    にて揚ぐるを賽鶴羹(つるもどき)といふ