仮想空間

趣味の変体仮名

摂州合邦辻 下巻 万代池の段

 

読んだ本 http://www.enpaku.waseda.ac.jp/db/index.html
     イ14-00002-452  (参考イ14-00002-451 )


下巻

25  (万代池の段
一つ千余回の法(のり)の花始めて爰に咲匂ふ 上宮太子の救世(くせ)の恩末世の衆生
御誓ひに 洩れず詣でる貴賤都鄙(とひ)殊更衣更着時正(きさらきじしやう)の日 参詣群集は仏法の 繁
昌の世と知れけり 俊徳丸の云号浅香姫の中間入平 女房お楽も諸共に旅の草
鞋脚絆がけ 南門の石檀を仮の床几と立休らひ 何と見さしやんせこちの人 夥しい参り
の人 御繁昌な事じやござんせぬか ヲゝ其筈/\ 常さへ尊(たつと)む天王寺 殊にけふは彼岸の中日
他国からも皆参れば すさましい筈の事 ほんになア身の上に取紛れ 其心が付かなんだ 道くだり

も群集の中 冬に尋ねてもお姫様には得逢ず まして俊徳様らしいお方さへ見当
らず しんきな事じやないかいな サレバ/\ 云号の俊徳様 難病故に国遠を有しと お聞有か
姫君も又家出 必定恋君の御行方 尋ね給ふとお思ふ故こちら夫婦も跡をしたひ
人立ち多ひ所々方/\ 尋廻れど雲を闇 ほつと鍬をぬかした/\ サアしんどいと云て斯し
て居ては いつ迄も知れもせまい ちつと又参りの衆に 尋ても見たかよいと 云ふ中むら/\一ト連れ
の 下向を見かけ小腰を屈め 卒爾な尋ね事ながら 十五六なけたかい息女色白く鼻筋通り
?(ふたかはめ・二重)にて髪の艶 真黒繻子の大振袖 又一人は十七八 ちと申にくいが癩病人 一しよにか別々


26
か 其程は存せねど 若し御覧なされずやと 尋ねかくれば ヤ何と云はしやる 美しい娘とかつ
たいと テモ木に竹といふか 鉄棒に心太を 継ぎ合した尋ね者 エゝ聞へた コリヤ風雅な娘御で
茶めかした心中じやの 娘は何ぼも見たけれど 顔ばつかり見て居る故 振袖やら黒繻
子やら 一向対面仕らぬ シタガ今椎寺の門の内で 子供が大勢手をたゝいて 弱法師
/\と囃子(す)を見れば 目も見へぬ癩病人 傍(あた)りの人の咄しには 元はよし有人の子なれど どふ
でも過去で悪い事 した報ひじやといふ評判 俄か盲てよぼ/\よろ/\弱法師 もふ
見ずとおかつしやれ いちらしい者穢い物と 口々しやべりそこ/\に 教へてこそ行過る

夫婦は顔を見合して 疑ひもない俊徳様 そふでござんすこちの人 サアこい女房 ござん
せと 夫婦は競ひ勇み立ち椎寺さして「走り行 道が違ふて其跡へ 労はしや俊徳丸 思ひ
がけなき難病に 父の館をぬけ出て 国境より方々と 迷ひ歩きて漸と 此里
人の情けにて埴生の小屋に竹の杖 足も 痛げによろ/\と宿りに とぼ/\帰られしが
杖を力に立休らひ 前世の戒業拙くてかゝる難病盲目の 身と成果は過去
の業因嘆くは愚痴の凡心と諦めながら慈父の恩 送りからで朽人残念さよ 去ながら常
々深き御慈悲 殊に寄る年弱る御身 嘸や跡にて御嘆き 思ひやる程不孝の罪


27
又一つには浅香姫かゝる様子を聞ならば さこそ嘆かん不便やな 鴛鴦(おし)の衾(ふすま)に立去る悲しみ 比
目(もく)の枕に波の愁い 況(いはん)や人間有為の身の 妹背の縁もきへがての 雪共花共見へわかぬ
此世からなる闇路の闇 彼の一行の花羅の旅闇穴(あんけつ)道の苦しみも 斯くやと斗身にしみ/\゛
不覚の涙にくれけるが 折ふしさつと春風の すげなく誘ふ梅の花袖や袂に散りかゝれば ハゝ?(こと)
ならぬ梅の香り 色こそは見へね香やは隠るゝ飛花落葉は悟道の縁 元より神にも仏
にも 憎まれ果し病いの身 出離の絆は煩悩道切らではいつか仏意(ふつち)に至らん 思ひ出すまじ
思はじと小屋の菰垂そこ爰と探り廻つて入給ふ 跡へえいさら/\えい 地獄の沙汰も銭

次第 閻魔の御項(?みくし)地車に 乗せて勧化の道心者 参り下向をあてにして西門石の鳥居筋
に建立の閻魔王 壱銭二銭の多少に寄らずお志はござりませぬかな /\ たつた一文か二文で
閻魔様に近付きに成て置くは徳な物 死にしなのよい心便り 奉加/\といきせい張り 喋る
間に往来(ゆきゝ)の多勢 町々廻る閻魔の建立 彼岸をあてに爰へわせたの アゝしたが
悪い合点 当極楽土と有からは 此天王寺は直ぐに極楽 閻魔がわせては大きなさし合 コリヤ
門違ひじや有まいか ハテお前方は悪い呑込 アノ芝居を見やしやませ 実方が有れば嘆き役
も有 鬼が有ばこそ仏も有 畢竟地獄は極楽の出店 其出店の番頭は此わ


28
ろ 番頭の気に入って置かずば おもやの極楽へ何と出入は成まいがの 成程理屈じやそん
なら奉加に付程に いつもの様に悪身の教化か見たい/\ おつと夫レは心得た が跡で奉加を
いじむぢと 云しはせぬと尻かるに撞木追取声(こは)作り 惣して今の人心 弥陀や薬師や観音地
蔵 仏斗りを頼むのは片手打なる信心者 折には鬼や倶生神 閻魔王をは信心なされ 奉
加にたんと付人は少々悪い事をして 地獄へ落てもあつちに近付き そこらは譬への金次第 無間
の釜で酒の燗 焦熱地獄で肴を焼き 三途川の船遊参 釼の山行なんど迚極楽
浄土の楽しみよりやつとましなる遊び有り さすれば地獄極楽は元来一つの世帯と 善悪邪

正不二といふ 仏の教へはコレ /\ 此天王寺 八宗九宗とせり合へど溶ければ同じ谷河の
三水四石は未来の導き 後生願への種に迚朝題目に宵念仏 寺々の鐘の
音寒き霜夜は三界無庵の 諸国走り廻り後生願はゞなどか仏にならざらん 旁よ
此世は僅か仮の浮世になもだ/\蓮華経を唱ふべし いふにや及ばず安き間の事なれ
ば元来は無実なもだ/\と申そふずるには 余念涙もおかしけれ 夜半(よなか)夜念仏はそりや
誰が為ぞ 添はで別れしヤレ親の為 かねを叩いて仏にならば 鍛冶屋若い衆はヤレ皆仏
アレハサ これはサ 踊り出せ振り出せしやんと振り出せ今は念仏も空吹く風よ おいてもらはふ腥(なまぐさ)坊主


29
念仏無間 ヲゝ爰な修行者は念仏が剥けたか剥んかいつ見たぞヲゝ 仏も衆生も隔て
は有らじ 六拍子揃へて我身を見れば /\ さながら四季の/\ 物狂ひよの/\一夜明け
て/\ 否(いや)でもござらぬ其折にはしげり松山の物狂ひ 今は心も乱れ/\/\/\て
ソツチカサ こつちかさ ソツチカサ こつちかさ ソツチカサ さつさ龍田の花紅葉よいよ/\と
諸見物三銭五銭先番後番 奉加の銭のばら/\と 笑ひちらして別れ行
跡にとほんと道心合邦 アゝよい年からげて飛づ刎ねつ 是も仏の衆生済度 諷ふも舞ふも
法の声 體も糊と草臥れた 一睡やつて又奉加 暫く閻魔の相住みと 車の上にヤツころり

跡は鼾の肘枕 出入の月を見されば明け暮の 夜の境を 明ぞしらぬ 「早夕暮れ
も近付かんけふぞ彼岸の日想観 目は見へず共拝せんと 小家の菰垂れ押上げ
て 西に向ひて音(ね)をぞなく 心を阿字の門に入り 合掌してぞおはします 夫(つま)故思ひ 浅
からぬ 浅香姫は俊徳の 御身の上を聞くよりも有に有らねず和泉路をうかれ出つゝ御行方
尋ね迷ふもいつ迄か 万代が池に辿つき 恋しき人はそこに共しらぬはかはる俤(おもかけ)の 顔もけやけ
き悪相の臭気いかゞと袖覆ひ コレそこな乞食殿ちと物が尋たい 河内の国高
安殿の御世継 俊徳様といふ美しいお若衆様 そもじの様な病ふにて館の内を抜出給ひ


30
此国の内に迷ひおはすといふ噂 若し知てなら教へてと 尋る声は浅香姫 ヤレなつかしや
と云んとせしが待て暫し 我妻ながら恥しや斯く見苦しき姿にて 夫と名乗るも面テぶせ 偽
つて帰さんと思へど残る輪廻心 世になき我をヶ程迄慕ひ尋る志 嬉しい共 可愛ひ 
共 云んかたなきはら/\涙 綴褸の袖を絞らるゝ 姫は不思議と見廻し/\ 尋る事は答へもせ
ず 泣て斗ござるのは 若しやお前が俊徳様かそふならそふと名乗つてたべ 我こそ妻の浅
香姫と 立寄り給へば身を背け 嘆きの体に其人かと御不審は理ながら お尋の人に付き
哀れはかなき事有る故思はず落涙致せしと余所に饗なしましませは 詞の端を聞咎め尋る

人の身の上に はかない事とはどふした訳 早う語つて聞かしてと 気をせき給へば俊徳丸 さればお尋
の俊徳丸 去(さんぬる)頃迄此所に 我も同じ病人故 朝夕伴ひくらせしが 身の業病に世を見限り
我にも知らせず過ぎつる夜 此万代が池水に 身を投げ空しくなられしと 聞より姫はハアはつと
心は闇と呉織(?くれは)鳥あやも涙に正体なく ナニ我夫ハア池に 沈んで世を去り給ふとや
独り先立ち自らに 物思へとか曲もなや コハそも夢か現かと伏転びてぞ嘆きしが 漸に起き
上り 二世とかはせし恋人に別れて存命(ながらは)何楽しみ 同じ藻屑と身を沈め未来は
一蓮托生と 傍りの小石見まつめて帯や袂に拾ひ入 池の汀に欠け行を探り廻つて俊徳


31
丸 振の袂をしつかと取り コハ逸興也先ず暫く 死では亡者の為ならずと 引とめ給へばイヤ/\/\
いとしい夫を冥途の旅一人はやらじ追付かんと ふり切る袖を猶引とめ ヲゝ貞心の程尤も至極 今は
何をか包むべき 俊徳丸入水とは偽り 未だ此世におはするぞ 先ず々最後を留められよと いへ共姫は
聞入れず イヤ自らを助けふ迚偽りの間似合口 イヤ/\天地も照覧有れ 露斗りも虚言ならず
フウそんなら何処に我夫が ヲゝ五日以前の暁方 滅罪の為三十三所 巡礼の旅立有しが
申し置れし事迚は病身といひ長の旅 何国(いづく)いか成所にて身を終らんも計りがたし 若し我妻と名
乗る者尋来る事有らば身を万代が池水に沈んで死せしと伝へてたべ 咲出すも花散るも 

花あれか此世に残るべき 来世は半座の臺(うてな)を分け長き契りは替るまじ 御身は未だ二
八の齢(よはひ)いか成人にも身を任せ末の栄へを待給へ 必ず恨みと思はじと伝へくれとの遺言ぞや
早々故郷へ立帰り 命全ふ生存(いきながら)へ命 思ひ出する折々は亡き俊徳の後世菩提 弔ひ
進ぜさつしやるが 誠貞女の操ぞと余所/\しくは云ながら切なる姫の心底を思ひやる
程 胸せまり零るゝ涙を隠さんとしほ/\立て小屋の内 心残して入給ふ 姫は猶しも泣憧れ
いか成る人にも身を任せ末の栄へを楽しめとは 二人の夫を持ちそふな自らじやと疑ふてか 過し逢瀬
のかねごとは 皆偽りとの事か 難面(つれない)わいなと斗にて 恨涙ぞやるせなき 境内残らず尋


32
尽し是非なく戻る入平夫婦 ヤアお姫様かと走り寄り 何故爰に御愁嘆 先ず御安体嬉しやと
背な(せな)撫で擦り介抱す 姫は涙の顔ふり上げ 夫の行方の覚束なさそなた衆に様子も云 
ず 国を抜出爰かしこ 尋ね廻つてアノ小屋の 癩病の盲人に夫の行方尋ねしに 五日
前迄此所にましませしが 西国三十三所の観世音 巡礼の為行き方なふお成なされた
悲しい咄し 今そなた衆に逢たのは悲しい中にせめての悦び 爰から直ぐに自らも夫の跡追い
供に巡礼 サア連れて行てたも早う往来(いこ)と小褄からげて気をせき給へば入平は最前の噂
といひ小家の乞食 合点行ずと姫女房かたへに小招き囁き合 小屋に立寄り声咳(しわぶき)

フウ何んとおつしやる スリヤ俊徳様に巡礼とな 然らば片時も道を急ぎ 先ず熊野路へ
御供せん サア/\お出と三人は態(わざ)と足音どし/\/\ 遥に行過ぎ又そつと 差足抜足立
戻り 小影に窺ひ聞ぞ共しらぬ難目(めしい)の悲しさは 思はず小家を転び出 姫の行方
はそなたぞと 目は見へね共打守り暫し涙に くれ給ひ 思ひ切ても凡夫心恋し
床しと思ひ妻 名乗らで返せし残念は そちの思ひの百倍ぞや 必ず恨みそ浅香
姫 去ながら斯く斗世に浅ましき我姿 夫と名乗も恥しく 一つには継母(けいぼ)の恋慕 某
が跡を慕ひ 国遠を有し噂を聞けば 若しもや外(ほか)人漏れ聞へ 俊徳爰にと知り給はゞ 尋ね来り


33
給はんと夫レのみ気づかひ 二つには かゝる病も前世(さきせ)の業 仏の道に入ずんば罪の滅
する事有じと 煩悩の迷ひ晴さん為 難面(つれなく)はもてなせし 唯悲しきは母上の我父といふ夫を
猶 不義の恋慕の家出なれば 父高安殿御怒り強く 終には捜し出されて 無慙の最後
を遂げ給ふも 皆我故と思ふにぞ 業に業を積み重ね 来世もいか成地獄
の苦しみ 思ひやるさへはかなきぞよ とはしらずして巡礼の長の旅路の甲斐もなく 尋ね
逢ずば身も労れ 我を恨みて死もやせん 不便や可愛やいぢらしや なつかしの浅香姫 せめ
て目なりと暗からずば姿なり共見んものを 現在の妻にさへ見違へられしはいか斗 見る目

妨嫌(いぶせく)成つらん 浅ましさよとどふど伏し前後 正体泣給ふ 隠れ聞たる三人はこらへ兼
て大声上 わつと斗に泣出せば 扨はそこにと驚き周章(あはて)あら恥しやと逃給ふを 縋り付
て浅香姫 心強い俊徳様 譬へかはりしお姿迚恥も遠慮も人に寄る 夫婦の中を
恥給ふは分け隔ての有お心か そりや余りじや 聞へませぬ 是程焦れて尋廻る妻の心
をちつとでも 不便と思召しならばたつた一言可愛ひと 云て給はれ胴欲な とは云ものゝ労(いた)
はしや玉を欺くあてやかな お顔も手足も此様に かはればかはる物かいのと 或ひは恨み或は
託ち抱付いてぞ泣給ふ 俊徳丸も今更に有し事共詫び涙 入平夫婦手をつかへ いか


34
成悪病難病も 仏神の力医薬の能(のふ) 御本復なき事や候へべき 御夫婦諸共
我々が知るべの方へ御供申し 何角の様子御物語 イザ/\御手をと姫女房 取々介抱する所へ
姫の行方を方々と尋廻つて次郎丸 家来引具しかけ来り ヤア恋人是に居なはるか アノ
うそ穢いどふ乞食に付廻つて心中立てか 悪い分別よしにしいや 五体まんそく何所もかも ぎん
ばり返つた次郎丸 連れて逝んで今夜から有難いめに合しましよと 引立てかゝるを突飛し ヤア獅子 
舞鼻の 千松顔(せんまづら)儕が持た太鼓の撥 お姫様には不相応 鼓の胴へ押込で片手業が
前髪相応 但し奴がやつかいに成て見るかと嘲笑ふ ヤア糟奴め小物云はすな ばらして

しまへ家来共 承はると抜連れ/\ 切てかゝれば入平夫婦 得たりと銘々かけ向ひ 落
花微塵と切散せば コリヤ叶はぬと逃ちる主従 何国迄もと追て行 跡には姫はハア/\/\
先も気遣ひ爰も気遣ひ うろ/\としておはする所へ 刀脇指打落され 丸腰ながら
次郎丸 サアしてやつたと走り付き 姫を引立行かんとす 難目(めくら)掴みに俊徳丸 狼藉者
と足首に 取付給へばエゝめんどい 兄弟のよしみだけ踏殺してとらそふと 振放して?(せぼね)を
三つ四つ なふ悲しやと浅香姫 支へとめてもかよはき手先 こつちへこんせと引ずる後ろ 昼
寝の合邦小家の菰 引ちきつて前髪天窓 すつぽりかぶせて引抱へ コレ/\申お姫


35
様 こいつはわしが請取た 俊徳様をアノ車に お前は綱を早う/\ ソレ其道を右へ廻れば
鳥居筋 西へ/\と走つた/\ 跡からわしも追付くと 教へ嬉しく俊徳の 手を引車に法の 
人 どふしたよしみに此お世話 ハテそこ所かは急な場所 様子は内て咄しせう ちやつと/\と
気をせいても ?(かよはき)姫の力業 地動きせねば思はずしらず エゝ埒の明かぬと手を
放し 走りかゝつて押出す車 爰ぞと姫は一世の力足に任せて 引て行 菰なげ
捨て眼の埃こすり/\も次郎丸 追かけ行をどつこいどこい 儕をやつてはこつちの南
門 是にかへ牛頭天王の社の方へコリヤ/\/\ 引き戻されて次郎丸 につくい朶頭(づくにう)老

耄めと 掴みかゝれば四つ手に組 年は寄ても皺腕でも まだ前髪に負ふか
と 投つ投られ擲き合 組つ踏んづ七転八倒 はづみに取たる大髷(たぶさ)片手を
内股に引かつき 此万代池の水 泥棒武士に捨扶持と どうど投こみ
逸散に見返りもせず