仮想空間

趣味の変体仮名

大阪錦絵新聞 第三十三号

 

 

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大阪錦絵新聞 第卅三号

なにしあふ角の芝居の大舞台。檜の火にはあらずして。
牡丹の花の火か松の。玉の振り毛のはげしきに。ちよつとうつりし
火がはつと。なりひゞきたる大一座。見物客(けんぶつにん)は表木戸(おもて)迄。張り
裂る程大入の。群集(ぐんじゆ)は同じ裏木戸(うらぐち)は。消防方が多人数。
駆付たるは川竹の。古来稀なる人気ゆへ。もしもの事が
あらんかと。兼て用意のなせしとぞ。亦舞台には火の玉も。
恐れぬ気性の肝玉が。さはがず火をばもみ消して。
残らず獅子の所化事(けいごと)も。目出たく
四月十九日。はてゝ囃子の打
だしに。ズット評判/\も。藝(げ)に親玉と
多見蔵(おとはや)を。誉め声満るそが中に。或る贔屓より
見舞として。金五十円送らしが。竹本君太夫即席に
(火水をも恐れぬ獅子の勢ひは三国無双えらひ肝玉)
と祝しければ。おもしろ獅子嬉しゝと。
カノ五十円を其儘に君太夫へ遣はせしとなん

 浪花画工
  笹木芳瀧述

 

 

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