仮想空間

趣味の変体仮名

甘藷百珍 奇品 (凡例・目次) 

読んだ本 https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2536724


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凡例
一 甘藷(さつまいも)の製(しよふ)百余品何氏が豆腐百珍に習ふ
  て品を別(わかつ)こと四等(よいろ)なり 曰奇品 曰尋常品
  曰妙品 曰絶品也
一 製の同じきものは一條に記して其余は略す
  例へれば肉?(かまぼこ)いもの條下(した)に色付を用ゆるを「十八」
  五色の中とことはるが如し 余(よ)も準へ知るべし
一 切容(きりよふ)に巧(たくみ)ありて調和の烹調(かげん)にかゝわらざる
  ものは名目の下に切様をわづかに記して委し
  くせず 是は包人(りょうり)家の手段(てぎわ)にして筆談の及ぶ


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  べきにあらざればなり たとへは甘藷冷し物の
  たぐひなり
一 世の人常に制して烹調(りやうり)に決(くでん)なきものは制(こしらへよふ)をしる
  すにおよばす名目ばかりをしるす
一 形容(かたち)の弁へがたきは其條々(ところ/\)に図(え)をおきてしら
  しむ
一 ( 此印あるものは?(とりさかな)なり または烹物(にもの)にとり合
  つかふものは同しく此印ををく 印なきは菓子
  なりと知るべし

甘藷百珍目録

  奇品
「一」肉?(かまぼこ)いも 一丁  「二」玳琩環(ちくは)いも 一丁
「三」柴苔(のり)巻いも  「四」昆布巻いも
「五」板屋氷霰(いたやのあられ)いも 二丁  「六」御手洗いも 二丁
「七」茶巾いも  「八」苞苴(つといも) 二丁
「九」むすびいも  「十」友巻いも 三丁
「十一」まき鮓(すし)いも  「十二」切鮓いも
「十三」腐衣(ゆば)まきいも 四丁  「十四」鴬栗(けし)ふりいも 四丁


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「十五」まくりいも  「十六」射込(いこみ)いも
「十七」鶏卵割(たまごわり)いも  「十八」色つけいも 五丁
「十九」海鱒(くじら)いも 五丁  「二十」辛板?(かせいた)いも
「廿一」最中月(もなかのつき)いも 六丁  「廿二」未曽漬(みそつけ)いも 六丁
「廿三」醢(もろみ)かけいも  「廿四」水玉いも
「廿五」にしきいも  「廿六」鳥肉賽(とりもどき)いも 七丁
「廿七」小鳥賽(ことりもどき)いも 七丁  「廿八」取合せいも
「廿九」煮鶏卵(にぬき)いも  「三十」衣かけいも
「卅一」いも衣  八丁  「卅二」新衣かけいも  九丁
「卅三」シユブンいも 九丁  「卅四」饅頭いも

「卅五」水引いも 九丁  「卅六」なたねいも
「卅七」煮鶏卵様(にぬきなり)いも 十丁  「卅八」小倉野いも 十丁
「卅九」藕根射込(はすねいこみ)いも  「四十」いも?(もち)
「四十一」鶉やきいも  「四十二」牛蒡射込いも 十一丁
「四十二」氷柱いも 十一丁  「四十四」和(め)布巻いも
「四十五」松露いも  「四十六」しめじいも
「四十七」紅藍肉?(べにかまぼこ)いも 十二丁  「四十八」五色(ごしき)いも 十二丁
「四十九」おまん鮓いも  「五十」いも水纎(すいせん)
「五十一」蜜柑餅子(みかんべし)いも  「五十二」葭はらいも 十三丁
「五十三」河漏子(かばきり)いも 十三丁  「五十四」いもうとん


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「五十五」いもそうめん 十三丁  「五十六」いもあへ 十三丁
「五十七」まるめいも  「五十八」べにきんとんいも 十四丁
「五十九」はまぐりいも  「六十」いも酎(さけ)
「六十一」白雪?(はくせつこう:米へんに蒸)いも  「六十二」寒制(かんせい)いも巻 十五丁
「六十三」三種取合(みしなとりあはせ)いも 十五丁

  尋常品
「六十四」むしいも 十五丁  「六十五」ひしほ漬いも 十五丁
「六十六」藷精(いもじん)  「六十七」飛龍頭(ひりょうず)いも 十六丁
「六十八」ソボロいも 十六丁  「六十九」煎餅いも 

「七十」栗子様(くりなり)いも  「七十一」花がたいも
「七十二」しら髪(が)いも  「七十三」いも飯
「七十四」いも米粥(かゆ)  「七十五」焼いも
「七十六」落葉いも 十七丁  「七十七」かす漬いも 十七丁
「七十八」塩づけいも  「七十九」凍(こほり)いも
「八十」いも雑炊  「八十一」はつ霜いも
「八十二」片(へぎ)いも 十八丁  「八十三」いもひやし物 十八丁
「八十四」いも三杯浸(さんばいづけ)

  妙品


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「八十五」水前寺いも 十八丁  「八十六」巻?(かんちえん)いも 十八丁
「八十七」加須底羅(かすてら)いも 十九丁  「八十八」片食(べいしん)いも 十九丁
「八十九」音羽いも 廿丁  「九十」ズズヘイいも 廿丁
「九十一」筆子(たけのこ)いも 廿丁  「九十二」鵆未曽(ちどりみそ)いも
「九十三」ひしほいも 廿一丁  「九十四」?(あげ)だしいも 廿一丁
「九十五」新制?出いも  「九十六」砂糖いも
「九十七」新制田楽いも  「九十八」あらひいも 廿二丁
「九十九」打こみいも 廿二丁  「百」薯蕷汁(とろゝじる)いも
「百一」黎明(あけぼの)いも  「百二」いも柚餅子(ゆひし)
「百三」雪花菜(きらず)いも 廿三丁  「百四」巻雪花菜いも 廿三丁

「百五」いも丸裏(まるつゝみ)あげ  「百六」藷(いも)まき松露(しやうろ)
「百七」水どりいも  「百八」いも?乳(とうふ) 廿四丁
「百九」羊羹いも 廿四丁  「百十」白羊羹いも
「百十一」パスいも  「百十二」月日(つきひ)いも

  絶品
「百十三」でんがくいも 廿五丁  「百十四」ハンペンいも 廿五丁
「百十五」南禅寺いも  「百十六」蒲焼いも 廿六丁
「百十七」ふは/\いも 廿六丁  「百十八」狸斟羹(たぬきしろ)いも
「百十九」いもとじ 「百廿」いも麻(ごま)豆腐 廿七丁


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「百廿一」藷仕立核桃豆腐(いもしたてくるみとうふ)廿七丁  「百廿二」しほやきいも 廿七丁
「百廿三」塩蒸しやきいも

甘藷百珍目録終

甘藷百珍
      浪速 珍古楼主人 輯
 
 奇品
「一」肉?(かまぼこ)いも 
生(なま)にて擦(おろ)し汁気をしぼり麺粉(うどんこ)少し
入れ板につけ烝すなり むしあげて罌粟(けし)かまた青
海苔のこ(粉)を付けて小口より切る また「十八」五色の中
にて好み次第色をつけるも奇麗にて佳(よ)し

「二」玳琩環(ちくは)いも
生にて擦し汁気をとい麺粉少し
入れ竹に巻き蒸すなり むしあげて酒を塗り火にかけ


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やき目を付け小口切にす

「三」柴苔(のり)巻いも
完(まる)にてむし(烝)皮を去り網篩(かなすいのふ)にて
みそのかたごしのごとく濾し浅草苔を展(のべ)その上へ厚さ
一分(いちぶ)位にむらなく延ばし小口より巻て切なり

「四」昆布巻いも
生にて擦(おろ)し麺(うどん)のこ(粉)少しはかり合せ
棒のごとくとりて上を極上の青昆布にて巻き
其上を竹?(たけのかは)にて包み糸にて括り蒸すなり

「五」板家氷霰(いたやのあられ)いも
生にて厚さ一分程に小口よりきり
(図)此如き銅(あかね)にて作りたる打抜きの道具にて押
切り丸き容(かたち)にとりて焙炉(ほいろ)に掛けて菓子に用ゆ

「六」御手洗(みたらし)いも 生にて擦(おろ)し麺粉(うとんこ)少し入れ金柑の
   大さに取て蒸あげ青竹の串に五つ宛(づゝ)さし砂糖
   豆油(せうゆ)につけやきにする

「七」茶巾いも 蒸熟(むしあけ)て馬尾篩(すいのふ)にて濾し「十八」好み次
   第色付布綿(ぬのきれ)にて程を究め裏(つゝみ)て捻る


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「八」苞苴(つと)いも 生にておろし麺末(うとんのこ)少入蒸熟(むしあげ)て棒の
   如く取 竹の簀に巻き暫時(しばらく)おきてとり入し調味好み
   に随ひ用ゆ

「九」結(むすび)いも 生にて巻剥(まきむき)にして又旧(もと)のごとくに巻て
   小口切にほそくきり稀豆油(うすぜうゆ)を烹(に)たゝせ右の
   いもをさつと烹上て結ぶなり(図)隙(ひま)とり
   ては切るなり

「十」友巻(ともまき)いも 大きなる薯を生にて剥きざっと湯烹し
   「六十四」蒸薯を馬尾篩にて濾し剥いもに展(のば)し小
   口より巻き小口切にす ○濾しいもを色付にした
   るは猶々佳(よ)しいろ付「十八」に記るす

「十一」巻鮨いも 随分大きなるいもを生にて剥きざつと
   湯烹し攤(ひろげ)其上へ飯をニ分程の厚さにむらなく一
   面に置 ○蒸薯の馬尾篩濾しを紅藍染(べにそめ)青粉(あおこ)
   染 爵金(うこん)染 三色(みいろ)にして模様とりよろしく置
   ならべ小口より巻 布綿につゝみ緊(しか)とかためて


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   小口切にす

「十二」切鮨いも 生にて方(かく)にきり夫(それを)竪(たて)に分(ぶん)半(なか)ほどの
   厚さに片(へぎ)ざつと湯烹し鮨桶に竹?(竹冠に択の旧字・たけのかわ)をしき
   右のいもをひしとならべ ○常の鮓の如く飯に
   加料(かやく)好次第交(まぜ)あわせ いもの上へ三四分位にならべ
   置 またいもを一遍置 又飯いもと幾重もしき
   て竹?(かわ)にておさへ壓(おし)を掛(かけ)鮓のよふに切て大鉢
   に盛るなり

「十三」腐衣巻(ゆはまき)いも 「六十四」蒸いも馬尾篩(すいのふ)濾しにして平(ひら)
   腐尤(ゆば)水に浸置(ひたしおき)板にのばし いもを一分ほどの
   厚さに付け巻て小口切製(こしらへ)「三」紫菜巻(のりまき)いもに同し
   いろ付け好次第「十八」にしるす

「十四」鶯粟纏(けしふり)いも 生にて擦(おろ)し蒸して円(まろ)く取 罌粟(けし)に
   て纏(まぶ)す ○紅染の罌粟(けし)を用ひてよし

「十五」まくりいも 生にて擦し麺粉少し交ぜ蒸て打展(うちのば)し
   未噌をよく擂(すり)その上へ一分程敷(しき)て小口より巻て


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   きるなり

「十六」射込(いこみ)いも よく熟したる柚(ゆ)を小口少し切 中の瓢(み)
   を去り ○いも生にて擦し麺粉少し入 右の柚の
   中へつめ蒸てk序口切にし いり酒にて遣ふ
   △柚の代(かはり)に饅頭の餡を去りて用ゆるもよし

「十七」鶏卵?(朶にりっとう)(たまごわり)いも 蒸いも馬尾篩濾し紅にていろつけ
   白磐(めうばん)少し入交(まぜ)あわせ棒のごとく取 ○「六十六」いも
   の精(じん)を水にてとき稀葛(うすくず)のごとく?(こき・なべぶたに口に志)冷し置き
   是にていもの精(じん)の末(こ)をだんごのごとく溲(たね)一分程
   に展(のば)し右の紅染の棒のいもを巻きざつと蒸し
   て冷し小口切

「十八」色付いも 何色にても蒸いもの馬尾篩(すいのぶ)濾しを
   用ゆへし△赤色は紅藍(かたべに)を押交てよく浅紅(あさくれない)深(こう)
   紅(ばい)好みによるへし△青色は青粉(あをこ)を押交てよし
   黒色は釜底墨(なべすみ)を用ゆ 五色(ごしき)に染る時は黒色を
   除(のけ)て紅に青粉交(ませ)合(わ)せ紫色を作るべし△白色は
   「六十六」藷精(いものじん)にて色を付る至て白くなるや△黄色は


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   山巵子(くちなし)をきざみ水に浸しその汁を交てよし 爵(う)
   金未(こんのこ)を用ゆるは香(におひ)悪しきゆへよろしからす
   △右のいろ付の藷五色ともちいさく圓(まる)め色を取
   合せ菓子(くわし)に遣(つか)ふて志よし 尤砂糖を交合すべし
   是を五色(しき)いもといふ

「十九」海鰌(くじら)いも 生にて擦(おろ)し釜底墨にて色を付蒸し
   筥(はこ)の内へ二分程にむらなく敷き其上へ其儘の擦(おろし)い
   もを一寸計(ばかり)入れ蒸熟(むしあけ)切て麻油(あぶら)にて少し?(あげ)る

「二十」辛板(かせいた)?いも 蒸藷(むしいも)馬尾篩(すいのふ)濾し百目 粳米粉(もちこめのこ)五十目
   砂糖廿匁 辣茄末(とうからしこ)二分 溲合(こねあわ)せ箱に入れ蒸あげ
   二日ほど置き一分程に切て乾し?子(やきなべ)にて焼き 用

「二十一」最中月(もなかのつき)いも 「六十六」藷精(いものじん)を「十七」鶏卵?(けいらんわり)いもの如く
   溲(こね)て展(のば)し二寸ぐらひの圓(まる)に切 乾上 焙炉(ほいろ)にかける
   石蜜末(こほりおろし)を入て溲るもよし

「二十二」味噌漬いも 生にて薄く切 味噌一層(いっぺん)紙一層いも
   一層と幾層に漬るなり


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「廿三」醢掛(もろみかけ)いも 生にて小骰(こざい)に切 醢(もろみ)を雷盆(すりばち)にてよく
   擂(すり)いもをかけて出すなり

「廿四」水玉いも 生にて渦(うづ)にむき 剥(むき)どめを其儘置 舊(もと・旧)
   の如く緊(しか)と巻 小口より分半(ふんなか)ほどづゝに切 麻油(あぶら)よ
   く烹(にへ)たゝせ?(あけ)る◎(渦巻き)此如く玲瓏(すきとおり)たるよふになる也

「廿五」錦いも 「六十六」藷精(いものじん)石蜜末(こほりおろし)入 溲(こね)て打展し色をつけ
   焙炉(ほいろ)にかける 切よふ好次第

「廿六」鳥肉賽(とりもどき)いも 生にて擦し蜀黍末(とうきびのこ)を少し交合せ
   竹?(たけのかは)に五六部程に付て 片々(ひら/\)と切 少し油にて
   ?(あげ)る 調味好次第

「廿七」小鳥賽(ことりもどき)いも 生にて擦し榧寞(かや)の皮仁(かはみ)とも
   交(まぜ)小鳥の肉の碎(たゝき)ほどにとりて麻子(をのみ)二三粒入 油
   にて?る 調味好にしたがふ

「廿八」取合(とりあはせ)いも 生にて擦し青色黄色黒色の三色を


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   取合せ筥(はこ)に入蒸小口切 ○紅藍染(べにそめ)を蒸時は白磐(めうばん)
   少し入てよし 色付しよふ「十八」に記す

「廿九」煮鶏卵(にぬき)いも 生にて丸剥にして長(ながさ)一寸五分程に
   きり蒸て中を刳抜(こりぬき)蒸藷(むしいも)の馬尾篩(すいのふ)濾を紅藍
   にて色を付中へ入小口切

「三十」衣かけいも 生にて切 麺粉(うどんのこ)水にて解(とき)豆油(せうゆ)少し
   入 藷をまぶし油にて?(あげ)る ○又いもと生姜同じ
   く細(ほそ)きりにして取合右の尤かけ油にて?たるもよし

「卅一」藷衣(いもころも) 銀杏 栗子(くり) 祇園坊 茨菰(くわい) 牛蒡
   筝子(たけのこ) 豆油(せうゆ)にて味つけ ○いも生にておろし麺(うどんの)
   粉(こ)少し入たるを衣にかけ油にて?(あげ)る

「卅二」新衣かけいも 生にて擦し蒸してよろしく取
   麺粉に青粉合せ水にてとき豆油(せうゆ)少し入衣
   に用ひ油にてあげる

「卅三」シユブンいも 「六十六」藷精(いものじん)を絹篩(きぬふるひ)にてふるひ糊(のり)の如


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   くに焚き堅め ○此位に取 湯(すいもの)にも菓子にも好み
   次第つかふ

「卅四」饅頭いも 藷精に麺粉交 溲(こね)合せ醴(あまさけ)にて展し
   濾しいもに砂糖入たるを餡にして饅頭のとおり
   にこしらへ焙炉(ほいろ)にかける よくかわきたるを蒸すなり

「卅五」水引(みづひき)いも 生にて竪に片(へぎ)て細く切 中をくゝりて
   焙炉(ほいろ)にかけるなり 手ぎわ第一也

(左頁重複)


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(右頁重複)

「卅七」煮鶏卵様(にぬきなり)いも むしいも馬尾篩(すいのふ)濾しにして爵(う)
   金(こん)の粉にて染 鶏卵(たまご)の黄子(きみ)の大さにまるめ ○藷(いも)
   の精(じん)稀葛(うすくず)のごとく焚きて藷の精の粉を堅く
   溲(こね)上をまきて蒸 小口切

「卅八」小倉埜(こくらの)いも 焼いも馬尾篩濾しにして大納言
   赤小豆煮て入 石蜜末(こほりおろし)にて仕立る 中は「六十六」藷精
   に石蜜末合せ煮て製す

「卅九」藕根(はす)射込(いこみ)いも  藕根長さ二寸ほどにきり よく


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   湯煮し蒸いもの馬尾篩ごしを「十八」色付にして
   竅(あな)の中へ入れ小口きりにす

「四十」いも?(もち・次の下に食)粳米(もちこめ)蒸てよく搗(つき)其中へ蒸いも皮を去(さり)
   搗まぜちいさく取り砂糖・味噌・油揚・石蜜(こほり)
   末(おろし)撒(ぶり)抔よろし

「四十一」鶉焙(うづらやき)いも 生にて擦(おろ)し麺粉(うどんのこ)少し入 溲(こね)て赤小豆(あづき)
   の餡をいれ饅頭のごとくに取り蒸熟(むしあげ)て米の
   粉を?(まぶ)し焙目(やきめ)二つ斜(すじかへ)に付る

「四十二」牛蒡射込いも 牛蒡三寸ほどにきりざつと湯(ゆ)
   烹(で)て中の心(しん)を取稀豆油(うすせうゆ)味つけ ○蒸いもの
   馬尾篩(すいのふ)ごしを牛蒡の中へ入小口切 色は見合付よし

「四十三」氷柱いも 生にて細くきり葛粉にて?(まぶ)し湯烹(ゆに)
   し調味好に随ふ

「四十四」和布巻(めまき)いも 生にて宜くきり相良和布にて巻き酒
   と豆油(せうゆ)等分にて烹るなり ○和布を巻とき葛の


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   粉か麺粉(うどんのこ)を和布(め)に付て巻 糸にて括り烹(に)る


「四十五」松露(せうろ)いも 生にて骰(さい)に切ざつと湯烹し食?(みそこし)に
   入て振廻し角(かど)をとり調味好みにしたがひ用ゆべ
   し 烹すきては砕けてあしゝ

「四十六」?(しめじ)いも 生にて擦し?(しめじ)の笠の如く扁目(ひらめ)にとり
   
   ?子(やきなべ)に油を塗り炭火にかけ焼目をつけ ○藷の
   しんを細く展し紙につゝみ蒸て(円筒形の図)是ほと
   に切り柱(ぢく)につけるなり

「四十七」紅藍肉餅(べにかまぼこ)いも 蒸いも馬尾篩濾し紅藍を交
   合せ板に付かため其儘切て用ゆ

「四十八」五色いも 「十八」色付いもの條下(した)にみへたり

「四十九」おまん鮓いも 生にて片(へぎ)て塩少し入ざつと湯
   煮し箱に竹の皮しき藷を一面に置き其上へ飯を
   二分程置き又いもをびっしりとならべ竹の皮を敷き
   め此五層ばかりならべ蓋をして圧しをかけ能き


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   くらひに切てよし 加料(かやく)好み次第

(旧漢字に変換するのがめんどくなってきた)

「五十」いも水鑯(すいせん) 「六十六」藷の精(じん)一合二合馬尾篩(すいのふ)にてこし
   水仙鍋にいれて煮る 切り様製法水仙と同じ

「五十一」蜜柑餅子(みかんべし)いも 柚釜(ゆがま)のごとく蜜柑の瓤(み)をとり
   濾しいも百目 粳米粉・砂糖各三十匁捏ね合せ 蜜
   柑の中へ入れ薄醤油にて煮 陰乾にして切て遣ふ
   ○丸箸五本廻(ぐる)りよりはさみ糸にて括り小口
   切にするもよし ☆かくのごとくになる也

「五十二」葭原(よしわら)いも 生にて丸切りかまたは角切りにして梅
   酢に浸けよく/\赤み付いたる時梅酢づけの紫蘇
   にてまき砂糖に漬け置き小口切にして遣う


「五十三」河漏子(そばきり)いも 生にておろし蕎麦のこ等分交ぜ合せ
   「六十六」藷の精(じん)薄葛のごとく炊き冷まし是にてこね
   あわせそば切のごとく打ちて蒸しあげて達失汁(だししる)葱白(しろね)
   のざく/\ おろし大根 山葵の加料(かやく)
   △蕎麦の粉を饂飩の粉にかゆるを藷饂飩(いもうどん)といふ


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「五十四」いも饂飩 前にしるす

「五十五」いも素麵 藷精(いものじん)にて仕立て葛素麵の仕様同前や

「五十六」いもあへ 蒸しいもにても焼き藷にても馬尾篩(すいのふ)
   濾しにして潔素(しやうじん)もの何にても薄醤油にて味
   つけ 右のいのにて和え物にする

「五十七」まるめいも 生にて擦りおろし蒟蒻の細ぎり うす

   醤油味つけ 粒胡椒の二つ割り 鹿の子三粒 五色(ごしき)
   ひとつに丸め油揚げにする

「五十八」紅藍(べに)きんとんいも 「六十六」藷精(芋でんぷん)に石蜜末(こほりおろし)まぜあわせ
   蒸して餡を入れ金柑のくらひにとり ○蒸しいもの
   すいのう濾しに石蜜末合せ紅にていろ付け まるく
   とりたるいもにまぶし付ける

「五十九」蛤いも 生にてをろし蒸して蛤の肉(み)の形に造り
   はまぐり殻の中へいれ醤油少しさして貝と共に


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   焼きていたす

「六十」いも酎(さけ) 「六十六」藷精を寒中に制する時 頭汁(いちばんしる)をのけ
   おき鍋にて煮かへし火酒(焼酎)少し合せば銘酒の
   ごとくなるや 下戸の人賞翫すべし

「六十一」白雪糕(はくせつこう)いも 「六十六」藷精に 寒曝しの糯粉 石蜜末
   合せ 肉桂末 丁子末 少しばかり加へ葛水に
   て捏ね 蒸して白雪糕のごとくきり 日に乾して用ゆ

「六十二」寒製いも巻 蒸しいも馬尾篩濾し「十八」色を三色
   か五色につけ棒のごとく取 「五十」水鑯(すいせん)にて巻き小口切

「六十三」三種取合せいも いも 栗子(くり) 慈姑 三色等分
   おろし蒸しあげてよろしくとり調味好きしだい