読んだ本 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10301710
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「つゞき」いかにごうもんするとも
三郎がゆくへよも
いふなじもはや
たつねぬあんど
して死ねたゞ
いひきかすいち
じやうは今朝なん
ぢにつかはせしその
かたなはわが父兵衛
まんゆうをうつときむねん
こつてくひ付しはがたあり
そのかたなにてはらきれば
しゆう/\゛ともにうち死どうぜん
娘もわれもういまごのかほも
見ずにころすいんぐわのこる
ばゝもえんきつたぼだいなど
とむらふなトまだいいまいふも
のこすなさけ「母んはおかまひ
なきなればあねが身のしろ
百両のかねていもとがつい
ぜんくようト
のこる方なき
紙ざきが出る
をやらじと
犬ぶち藤内
こゝろえ紙崎小づかの
しゆりけん来かゝる雪平ぬくより
はやく
藤内が
くびうち
おとし
わかれ/\て
出て行
「六段目つるかをか ざうり打の場」
かけまくもふとしく立てし
宮ばしらわくわうのちりも
かげ清きときはかきはの
かぐらうた千代をことぶく
つるが岡弓矢の神の鳥居
さきくんじゆはたえま?
なかりけりあしかゞけの
おく女中つぼね岩ふぢ
中らう尾上花の方の
代参として武うん長久
花若?の御身のきねん
花の方の心をこめし
ぐわんしよほうのう
ことをはり尾上をば
べつとう方へさきへ
やりまちあはせる
岩藤がまへにつくばに
わしの善六「ヲゝまち
かねし善六いさいは
きのふのふみのとほり
いつぞやもんぢう
所でとりおとした
みつしよたしかに
尾上めがひろいおつた
スリヤそのぶんにすて
おかれぬゆへけふのしゆかう
いさいの?はずは
かんぬし方で「のみ
こみましたトうな
づき合ひ人くひ
馬のあひくちと
うちつれ
やかたへいそぎ行
○つぼね岩藤は
こしもとさえだと
いひかはせしもゝの井
もとめにこゝろをかけ
善六をもつてえん
しよをおくりけるに
もとめもむねあしき
岩藤なれば何げなふ
文をうけとりかへりかへりことは
此方よりと一寸のがれにして
おきしが心ぐわんのことありて
八まんへさんけいなすをり
からさえだにあひて
つもるはなしをするうしろへ
つぼね岩藤
こひのいこん
のふぎよば
はり二人は
ほつと
もてあまし
「つぎへ」
如何に拷問するとも三郎が行方よも言うまじ、もはや訊ねぬ、安堵して死ね。ただ言い聞かす一条は、今朝汝に遣わせしその刀は、我が父兵衛、満佑を討つ時無念立って喰い付きし歯型あり。その刀にて腹切れば主従共に討死同然」「すりゃ主人の最期のこの刀で、姫も我も初孫の顔も見ずに殺す因果、残る婆も縁切った。菩提など弔うな」とまだ今際にも残す情け。「母にはお構い無きなれば、姉が身の代百両の予ねて妹が追善供養」と残る方無き紙崎が、出るをやらじと犬渕藤内、心得紙崎小柄の手裏剣、来かかる雪平抜くより早く、藤内が首討ち落し、別れ別れて出て行く。
「六段目 鶴が岡草履打ちの場」
かけまくも太しく立てし宮柱、和光の塵も影清き、常磐堅磐(かきわ)の神楽歌、千代を寿く鶴が岡、弓矢の神の鳥居先、群衆は絶えまの無かりけり。足利家の奥女中、局岩藤、中老尾上、花の方の代参として武運長久、花若?の御身の祈念、花の方の心を込めし願書奉納、事終り尾上をば別当方へ先へやり待ち合せる。岩藤が前に蹲う鷲の善六、「おお、待ちかねし善六、委細は昨日の文の通り、いつぞや門注所で取り落した密書、確かに尾上めが拾いおった。すりゃその分に捨ておかれぬ故今日の趣向、委細の手筈は神主方で」「呑み込みました。」と頷き合い、人食い馬の合口と打ち連れ館へ急ぎ行く。
○局岩藤は腰元早枝(さえだ)と言い交せし桃井求馬に心をかけ、善六を以て艶書を送りけるに、求馬も胸悪しき岩藤なれば何無う文を受け取り、返り事はこの方よりと、一寸逃れにしておきしが、心願の事ありて八幡へ参詣なす折から、早枝に逢いて積もる話をする後ろへ、局岩藤恋の遺恨の不義呼ばわり、二人はほっと持て余し、「次へ」