虚言八百万八伝(うそはっぴゃくまんぱちでん)です。
鷲のしょーもないオヤジギャグにうっかり吹いてしまった。しかもそれを合図にって。無いから。
読んだ本 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/9892460
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萬八伝
万八は築州の人也。父は滅法弥八。母は欺城(だましろ)屋の契情(けいせい)
虚言(そらごと)。大晦日の月の前に四角な卵を呑と夢みて。
天甫(てんぼ)八百年乙力(おつりき)の秋六月冬至の日万八を産り。万
八幼名は千三(せんみつ)。成長して弥次郎と云。天性聡明
にして才智鳥獣(とりけだもの)にもまされり。この故に鳥獣
を生捕こと極めて妙や。一とせ正月の三つ
ありを経て唐土に渡り。数転峯に登り。野
銕砲(でつはう)を放ちて乕(とら)??たり。其数一石六斗二升
八合なり。 帝王??しからぬ事を感じ給ひ。
著猪羅国(ちよくらこく)の??封じ給ふ。此時毛唐人唄て。
曰。著猪羅の仕??日本の。親玉で頼ます
と 云云 東夷南蛮北狄西戎を遍歴し。嘘を
筑紫のまに千年。嘘を筑波の山に千年。東海
道に九千歳浦々路/\三年三つき。九十九夜
にも来しかば。生年積つて萬八歳。則己が名に呼
?万八と改たりて。直咄なれば一つぱも。詐(いつはり)の無き。
神無月みそか四方屋本太郎 正直
正銘館にしるす
4
万八が曰 すゞめをとるには
庭のくぼみ/\へ酒を
こぼし 又
酒めしを沢山
庭のうちへ
まきちらして
おけ?すゞめ
おびたゝしく
あつまり酒めしをしたゝ
かくひ?の
酒を水と思ひ
のむほどに
段々えひが廻
つてあまた
のすゞめがあし
をとはよろ/\と
たつ事もならぬ
やうになるを見すまし
かやなつめなどのたくひ
はらり/\と
まきちらせば
すゞめども
その榧や棗
をまくらに
してこゝろ
よふねいり
す?/\
いひきをか
くを相図に
?ほうき
にて
はきよせて
かごの中へ
はら/\ /\
5
万八しなのゝ国に二三百年も
すみけるよし信濃はしごく寒国にて
冬の内は酒屋で樽ののみ口を
ぬくとつつとはしり出る
酒がじきにしやつきりと
氷るゆへそれを山刀
にてぼき/\と
打折その折れた
酒をなはにて五本
十本ないし七本づゝに
あみて置けば酒を
一れん買てこい
二れん取て来いと
かひにやつて火で
とかして
のむと
いえり
ある時何ものか
せ戸口へよき酒を
おとしをき
たるとて(?)ひろい
とり火にとかし
てのむにとんと
酒の味にあらず
よくきけばね
つびやうやみの
小べんのこほり
たるなり万八
むねをわるく
してたちまち
其小便をはきしがそのへど
下へ付くかつかぬ
内又氷りついて
大にこまつたとの
はなし
6
万八えちご
の国にも
二百四五十
ねんすみ
しがこれも
しごく寒い
国也冬は
朝早くをき
かごをせおひ
こしにかまを
さして田や
ぬまをあるいて見れば
がんかもが
いくらも氷り
付ているを
かまにてかり
かごへ入てかへる
はるのすえこほりの
とけたときかのがん
かものあしから
めをだします
をこと/\゛く取
てぞうさいにし
ます このはなし
それは何と申
すので
ござると
問へば
万八こたへて曰
がんそく汁
7
万八がいはく
小鳥をとるには
あきたはらの
中へはいり
手くびを
墨にて
まつくろに
そめ
米を手の
ひらへ
のせて
たはらの
内から
手は
はかり出し
ている
そこへ
小鳥がきて
米をひ
らふ所を
つかんでは
たわらの
うちへいれ
又つかんでは
入/\して
たわらに
せきの
なくなつた
ころてうど
日がくれます
8
きじをとる
には人ぎやう
つかひの着る
黒子といふ物を
きて木のかげから
なわを出してへび
のおもいれに遣つて
いると雉にはほんの
へびと思ひ
羽を上てまか
せる所を
いよ/\へびの
きどりにて
そろり/\とまき
かける きじはまかせ
すましておもいれに
はねばたきをしても
いつかなきれず此とき万八
え?をかけて雉子兵衛と??
万八きつねをとる伝に
いわく
きつねのたくさん
すむ野原/\ゆき
どつかりとすはり
ばかされたきどり
にて諸事わからぬ
事を云なから
たもとからむまの
ふんを出してまこと
むまいあづきもちだ
とくふをきつねが
見つけてなんとむまい
もちであらふ
などゝそばへよる
ところをどつこい
とらまへた
但しもちをくふ時まゆ
けへつはのはねぬやう
にするべし
9
鳩をとるには
糸のさきへ
白まめを一つぶ
しつかりと
ゆひつけ
其まめへはづと
いふ物を
ぬつて
置と
はとが
そのまめを
くふと
ぢきに
はらを
くだし
たちまち
ふんにひり出す其豆を
又ほかのはとがくふて
ふんいするとだん/\に
前のはとが
くつてはたれ
くつてはたれ
とんと
じゆず
つなぎに
して
とり
ます
鳩のかずは
なんでも
糸の長さ
次第
但し
十疋め/\に
はづをぬり
たして
よし
10
これも万八が
はなしそ
はこね
山の
とうげに
すみしとき
氷のつよき朝
あつい茶を
五郎八茶わんへ
くみ 茶せん
にてふるうち
茶のさけるに
したがつて
氷つて
来ます
茶せんの
うごきかねるやうに
なつたとき
茶せんを引上げ
しばらくおきて
とつさりと
うちあけたのが
かのかゝとを
あらふかる石
11
奥州の湯の原
などゝいふあたりも
ことの外氷りの
つよき所にて
万八かすみける
となりの うちの
おふころに
朝/\ばゝ様
茶ができた/\
といへどもきこえ
ぬか?いかのみに
こぬももつとも
そのよぶ声が
かべへこほり
付たと見へて
はるになり
よほどあたゝかみが
来てから
となり
さかひの
かべが
ばゝ様茶が出来た
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/\/\
12
万八
うはばみを
とりし
工夫は
くれ木を
井げたの
ごとく つみ上げ
すみ/\゛を
ひとつ/\
しつかりと
ゆひつけ
その中へ
は入て
いると
蝮が
人の
にほひを
かぎ つけて 来て
くれ木に まき ついた 所を
見すまして
くれ木の間から
こびきの大
のこぎりで
すいこう/\
13
丈ヶ一尺斗 丸のさし
わたし三寸ぐらひの物を
しぶ紙にて作りすへ
もちをぬりて
ゆきの中へさしこみ
そのうちへさかなの
わたを入ておくと
くひものにかつえた
からすが来て其を
つつこむとかしらへ
もちをべつたり
付て目が見へぬ
ゆへうろたえ
廻りて
からすとびに
飛ぶところを
万八すかさず
とつたひやろ
万八だんのうらに
すみしころ平けの
一もんほろびし所ゆへ
海中にてよな/\
陰火のもゆるを
見すましかみにて
ふくろをあまたこしらへ
いんくわをたくさんに
とりてかみの
ふくろに入て持て
帰り風のあた
らぬ所へいくらも
つるして置たとの
はなし それは
何になりますととへば
てうちんの
かはりにするよし
14
万八もろこしへわたり
千里つゝいたる
竹やぶへ五尺に
三尺ほと
あなを?
中へは入り
上へかづき
戸を一まい
ふたにして
をくととら
かけて来て
みつしりと
ふみぬく所を
其あしを
とらまへて
しばる とら
うろたえ
さわぎて又
かたあしふみ
ぬく所を同く
とらまへて
しばる とう/\
両足ともに
しばり戸板
ぐるみ引
づりて内へ
かへりながら
戸板/\
見さいな
とらを
戸板
見さいな
とへばとらも
いかりのまなこを
やはらけて
まづ足のほそ引を
戸板/\
15
万八大蛇を
いけどりし
はなしを
きくに
てんびんぼうの
まん中ほとを
ほそ引にて
丈夫にゆひつけ
こわきにかひこみ
大じやの
むかふへ
たちむかへば
大蛇は一口にのまんと
口をあんと
あく所へ
無二むざんに
とびこみ
上はあごと
下あごへ
てんびんぼうにて
こうばりをかひ
口をふさぐ事の
ならぬやうにして
とび出
すぐさまm
その細引で
よい蛇(じや)/\
16
万八嶋田の
駅にすみける
時うはばみの
子をかひをき
けるがわづか
百年ほど立
ければ長さ一里
の余にせい長
せり ある時
大井川こう
水にて川
どめの折から
かのうはばみを
嶋田から
かなや迄
大井川の上へ
はし
にかけて
御大名を
はじめ
ゆきゝの人
をわたして
金をもうへ
水の引た
時はてうちんの
やうに
たゝみて
置けるよし
万八が智恵にて
とうりうもなく
諸人のたすけとなり
たれどもわたる人は
いきたこゝちなくみな/\
口のうちにて
うはばみだんぶつ/\
17
わしのとり
やうはさるの
かはを丸むき
にして中へ
しやり小石
?を一はい
つめこみ石のこぼれぬやうに
?をぬひ岩の下などに
置ていきていたやうに
うごかすとわしが
来て引さき中
の小石をさるの
にくとおもひ
むせうに
つめこむと
はしが
おもく
成て
とぶ
事もならずうつ
かりとあきれて
ホンニわしとした事が
と云をあいづに
いけどる
18
万八もろこしやうずのさとに
すみし頃しんやう
の江のほとりに
酒をあまたたゝ
へ置ければ猩々
来りて思ふ
まゝにのみつくし
ぜんごもしらず
ね入たる時かのせう/\゛を
そつとはだかにして
おけば酒のにほひ
に蚊おびたゝしく
あつまりからだ一めんにとり
つきちをしたゝかにすひこみうご
く事ならぬ所をはねばうき
にてはらひおとして木へ
?けて?をしぼりせう/\゛ひを噴
出しこかね白かねいつみのことく万
才のよはひをたもちつきせぬこと
おしまい