仮想空間

趣味の変体仮名

大阪錦絵新聞 第五十五号

 

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相州江の島の漁父(りやうし)松本作兵衛の娘おとらは
今歳十九にて片瀬村森田安次郎方へ
同村寅次が媒酌(なかうど)にて嫁入なし 翌日(あくるひ)
親類へ巡(まは)り媒酌の家に行き寅次の
女房おくめに挨拶せんとして思はず
ブウと大きな放屁(おなら)を落せしが おくめ
もだまつて居ればよきに これは/\初めて
のおいでに何よりのお土産 なぞといろ/\
あざけり笑ひしが 嫁は顔を真赤にして
其場は宅へ帰りしが 親類へもはづかしく
人に笑れるが残念との書おきをして死せしが 安五郎
は大いに驚き おとらの死がいの首を切 書おきとともに
寅次が宅へ持行おくめに見せしに おくめは見て驚き わたしが
過言(いゝすぎ)により花嫁を殺せし事言訳なしと自殺(じがい)せしが 安次郎は
寅次に言訳なしと身を投しとぞ 放屁一つで三人が
命を落すとは落し所のわるい屁で有と諸新聞紙に評なり

 行(ぎやう)たひは尻筒それた一発で
  三人ころすとんだ屁の玉  羪水

大阪錦絵新聞 第五十五号

 

 

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