仮想空間

趣味の変体仮名

火水風災雑輯(一)37~38コマ

 

読んだ本 https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2592140?tocOpened=1

 

 

37

  風抜(かぜぬき)申一対(たい)之事

一我抔風邪(ふうじや)共之儀上方筋ゟおゝくれ/\とわら人形

などこしらへおくりこさせ無拠江戸中

数多流行いたさせ皆様へ対し

鼻水風はおろかづゝう身ふし

をいたませせんきすばくなど

もてつわせ湯やかみゆひ

床までも御なんぎ相掛候致

方仝以風邪にて玉子酒の上大

ねつをはつし前後ぼうきやく仕今さら

うはことの申訳も無御座候然る處既に法印

様え御願被成かじ御きとうにも可及候

處薬店(やくてん)方御さじかけんをもつてさ

つそくはつさん被致候段がた/\さむけ仕

なく奉存候然る上は向後急度悪心致し

はつくしやみにても致候はゞ大夜着を引かぶり

あせをとりふり出しかつこんとうにておひはらひ可申

万一右体の引風有也候節はあんまそく力をたのみ一合

引かけ相休さつそく全快致ぶりかへし申間敷候風邪の

ため仍てくしやみの如し

安心四年なんと正月  だら/\花水橋でたらめ新道 当人大坂屋元太郎

           いくじは中橋のう天横丁 仲人いたみ屋鉢五郎

 ひだちや 由兵衛殿

 

(下段)

風の神

邪鬼攘(じやきはらひ) 大津画ぶし

おに/\風の神。

おのれは此

家(や)へ入られぬ。

風の神

仰天/\。

ハイ/\

鐘馗さま

にやかなイや

せん。風の袋もち渋団扇。

おそれて逃いだし

他(よそ)の家へまいりましよ。

ヤレ/\につくい鬼め

だと。劔(けん)をぬいて。なんの

苦もなく。一打とおもへ

ば目が覚(さめ)。風気もさつ

ぱり醒ました  小林居長作

 ○作者曰此画を家内(やうち)に張置毎日此大津えぶしを

  謡(うたひ)たまはゞ風の神逃去事うたがひなし

 

 

38

蓬莱に聞ばや伊勢の神たより

 水下配る井戸のくみわけ

遠山も霞立けり江戸の春

 四方のちまたのけに静なり

はる雨につれ/\草のおきて書

 たしか時代は東山殿

風たゆくよりのもどらぬ縄すだれ

 軒端を伝ふ拍子木の音

いかめしきすがたも交る直居番

 おのづと消る庭のとふろふ

梅ちれは桃やさくらの花かさく

 ついじだらくになりし名が長閑さ

おゆるしが出るとひらきし山の木戸

 ほころびそめし海棠の色

ほとゝきす八十八声なきつれて

 きまゝに咲し卯の花の垣

 

 右一迎

 

(下段)

音曲 ほこり たゝき  三光才延玉作

〽只さへ?る雪寒に

ほり川へんにすまいして

後家のみさほも立月日

中老尾上先に立身の

行すへぞぜひもなきおり

から表へあるきの小助門の戸たゝいて

只今これへ信玄公御入なりとしら

すればハテ心得ぬかぢ原様の御入とは何にもせ

よお通し申せソレじひ蔵もてなせおくるが

案内に富田ノ六郎うら口さして入りにけり平次は

宿にいらるゝかとによつとはいるは広やの彦作ヲゝこち

の人戻らしやんしたか駄多右衛門さんもよふおいでとなせ

様は元より小浪ごりやうさぞ都めづらしからふ大仏さま御

らふしたかゆふにそばからこらへぬ岩永ヤア此瀧口を清盛

とはこゝちよいそちがかたらい申せし方は中臣のてうなんたんかい公ヤア/\

それはマアほんかいナアえかうせうとてお姿をえにはかゝしはせぬものをこれ

見給へ光秀どのみれんと笑ふて下さんすなつゝみし祝義ならふの香

でん四十九日が其間たましいちうにまよふときくかならず/\しで

の山三づの川の川がたて待ていて下さんせとよそのよろこび子心に

聞も無念さ松太郎わしやまけたか口おしい釜の中より五郎市がとゝ

さまのふとすがりつく身のあやまりに勘平が五たいにねつとうのあせを

ながしひれふる山のかなしみは身にくらぶれば数ならぬうねめもさすが

あいじやくに見るにさすがの貞任もすごにとりのき泣じやくりかゝる歎き

の其折から加藤か郎どう木村わだ蔵かけ集めて大音上ヤアいざりめ

さいぜんはよふ手ひどいめにあはしたナア人数は半分うら道へ廻れ/\といふ下や手

おいなからもぬからぬ本蔵残念/\さりながらきやつをばらさばふちうの

ふちう五十四げんや六十余とう数々鳥のむかいをばあわれをこゝにみち

のくやそこが濱なるうとうの宮けふはこけうと立別れでんぶうさつて 急ぎ行

 

 

 (仮名手本忠臣蔵伽羅先代萩、奥州安達原、近頃河原達引などなどいくつもの浄瑠璃がごちゃまぜになっており読みながら笑いが止まりませんでした。最早カオス。)