仮想空間

趣味の変体仮名

古今名婦伝 静御前

 

「古今名婦伝」  

  静御前
花洛(みやこ)の白拍子なり 義経(ぎけい)
殿に深く想はれけるが
判官殿 鎌倉の
討手(うつて)厳
しく 落(おち)
玉ふ時
吉野にて名残を
惜(をし)み 皇都(みやこ)に止(とゞ)まり
其後 鎌倉へ召下され
右幕下(うばくか)殿の御前(みまへ)にて舞を
なせし名誉のことは 世の人の知る處なり
亦(また)静が心を想像(おもひはかり)て

  燈(ともしび)は あるに
    かひなし 雪の道

          柳亭梅彦記     「豊国画」