仮想空間

趣味の変体仮名

絵本江戸紫 下

読んだ本 https://dl.ndl.go.jp/pid/2575202

 

 

3

笑顔(わらいかほ)

いかほと

おかしき

事ありとも

目顔を

しかめ

又は

其ほとり

まて も

 

響(ひゞく)ほとも

高笑(たかわらひ)をし

畳に 臥(ふし)て

人の 見る めを

はゞ からぬ は

人からを

見おと

さるゝ もの なり

 

 

4

 手様(てつき)

人と 物がたり なと

するに 塵を ひねり

襟を かき 合せ

手を もさ/\と

するは

いと見

ぐるし

 

手は膝の

上に 置

ものと しるべし

懐手(ふところて)なとは

つゝしむべし

慎(つゝしみ)とは 人の

見ぬ ときを

第一と する也

 

 

5

 指様(ゆびつき)

もの ごとに

つけて 手水(てうず)を

つかひ

手さき に

垢(あか)なき やうに

奇麗に

すべし

 

こと さらに

いやしく きたな

げ なる

もの は

爪の ながく

はへて 垢そみ

たる なり

 

 

6

 襟様(えりつき)

引しめて

着たる は

余り

すげ なし

また

 

首筋の

あらは なる も

いかゝ ならん か

或(ある)人の発句(ほく)に

「こふほねや

 水を はなれ て

濡(ぬれ)ぬほと

 

 

7

裲襠(うちかけ)

礼儀の 為に

着る もの なれば

男子(おとこ)の

麻上下(あさかみしも)を

着(ちゃく)せし こゝろ

 

なれば

模様 なと

物ずき に

まかせて

非礼なる 事の

なき やうに

有 たし

 

 

8

 帽子

むかしは

髪の

はへ際(きは)を

かくす為

ばかり にぞ

有ける よし

今 は

 

礼服と

なり

やれば

年相応の

品(しな)あり

はやり ことの

はで なる は

つたなし

とやいはんか

 

 

9

 帯(おび)抱帯(かゝへおび)(こしおび)

人の世を

いとなむ 事は

諺(ことわざ)に 世帯(せたい)と

いふ心は

高すぎ たるも

下すき たるも

悪(あし)し

 

しめ過(すぎ)たる も

ゆるきも

わるし

よきほとに せねば

何事も すまぬ もの

なれば

世に帯(おひ)

するといふ

心とかや

 

 

10

 裾(すそ)

脛(はぎ)のあらは

なるは

遊女風(ゆふぢよふう)

なるべし

傾城も

心ある

名高き

ものは

 

脛を

あら

はさず

衣服の

仕立(したて)やう

猶(なを)心得(こゝろへ)

あるべき

事か

 

 

11

 内衣(ゆく)

人の 好み は

様(さま)/\ なれと

ゆくは 見へぬ こそ

礼儀と

いふべし

左(さ)にしるす

歌の心

 

さとり 給ふべし

春の夜(よ)の

闇はあや

なし 梅(んめ)の花

色こそ 見へぬ

かやは

かくるゝ