見立多以尽
きれひに なりたい
年立(としたち)かへる朝まだき。霞て青む
柳湯へ。よろづ吉川町かけて
集ふ弦妓(げいしや)が左に右(とにかく)と。客
の噂のよしあしもなには
の事の何(なん)となく。恋の湊の
賑ひは。みな水船の水性(みづぞめ)。
冷たい中を極熱く。沸(わか)すは
胸の焔(ほむら)にて。角ふり立(たつ)る鬼
子母神。柘榴口には縁もある。葛藤(もつれ)
も竹の箲(さゝら)もて。奇麗に流す板の間の。
転ぶ気遣ひさへなくば。又澄かくる水かけ論。石鹸(しやぼん)の
泡と消(きえ)やすき。其争ひも娯楽(たのしみ)ならん歟(か)