本朝廿四考 第五

 

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     イ14-00002-741

 

 
97(左頁) 
 第五
甲斐越後両家の戦ひ 四度の軍術互角にて 勝負一時に決せんと釼
の刃音鯨波 山河もうごく斗なり かゝる所へ北条氏時村上左衛門義清 軍
兵数多引連て暫しと石に腰打かけ コレ/\村上 某が思ひの通り両家の滅亡
今此時 なんと村上味いでないかと 人喰馬に相口の左衛門 ハアゝいか様おつしやる通り
此所が双方の戦場 両人ながら籠の鳥 必気遣ひ仕給ふなと 詞斗は達者
でも脛はがた/\胴ふるひ 軍兵共口々に アレ/\爰へ数多の人音 暫く是へと森の


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内 かゝつし所に武田信玄 勝頼弾正引連れ団扇打ふりの給はく 只今の注進は
必定味方の勝ち軍 此勢を失ふへからず 急げ/\と血気の大将両人はつと領掌
白毛の駒轡をはましてかけ出る 思ひも寄ぬ岨(そば)かけより 長尾謙信是に有 見参
やつと呼はる勢 雲に羽を伸(のす)龍虎のいどみ 馬も達者乗る人も達者 真一文字に
乗かけ/\真額(かう)二つと切付くる打ち刀 信玄透さず軍配團(うちは)にはつしと受留 引かば付入
受身の勝 謙信呉子春秋戦国時代に著されたとされる兵法書武経七書の一つ。古くから『 孫子』と並び評されていた。しかし著者ははっきりとしない)が秘術を尽せば 信玄孫子が心をひねり 両方互角の大
将自身の働き生死の境目さましくも又危けれ 信玄猶も床几をさらず 又打込を

團の払ひ かゝる折からかけ来る高坂弾正 山城が是はと驚き立寄ば どつと寄せ来る北条勢
右往左往になぎ立/\追廻し跡を慕ふて かけり行 又もかけくる信玄が謙信やらぬと打
かゝる コハ/\いかにと双方を見れば寸分かはらぬ信玄 以前の信玄兜を脱ぎ捨て ヤア誰かはしら
ね共 我にかはらんと思ふ志は忝けれど 所詮運を天に任せし此両人 サア謙信おくれしか 勝
負せよと有ければ こなたの信玄兜を脱げば山本勘助 二人が中にわつて入 ハアゝ其お詞は重け
れど此勘助が察するには 御両人共に国家の為に此軍 北条村上を討亡さんとの謀 とく
より知て某が五百騎の勢を廻し 両人共に早搦捕たり ヤア/\両人 氏時村上を引かれよ


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と 詞の中武田四郎勝頼 長尾三郎景勝両人を引すへさせ 天下を騒がす
極悪人思ひしれと両人を 指し通し/\凱哥(かちどき)上げて都入 嫁入国入悪人退治 天一
天上先勝の二人の 大将二人の弾正 名を末代に山本氏御代ばん
ぜいとぞ祝ひける

  明和三年 丙戌 正月十四日
  作者 近松半二 三好松洛 竹田因幡 竹田小出 竹田平七 竹本三郎三清

 

   おしまい