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趣味の変体仮名

右大将頼朝 (武者かゞ美 一名人相合 南伝二)

 

https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1312411

 

  右大将頼朝
頼朝は義朝(よしとも)の三男なり 伊豆の配所より発(おこ)ッて
石橋山に義兵を挙てより後 義仲ヲ粟津(あはづ)に
討て平家を西海に亡し 多年の蟄懐(ちつくわい)を
開いて日本総追補使(にっぽんそうついふし)征夷大将軍となる
武将の棟梁たり 頼朝は天窓(あたま)
大きく方(けた)にして中眼(ちうがん)なり
口大いにして舌濃(こき)紅(くれない)なり
殊に耳長大にして頤(おとがい)の
髭少なく 背高からず中肉にして腹ノゆつたりと
大きく 実(まこと)に果報目出度貴相なりしが 常に
物言(いは)んとしては言止(いひやみ)又臣下と対話なすにも
下眼(しため)をして 種々(いろ/\)の眼遣ひをなす 是
 狐疑(こぎ)深き性(せう)にて偽り多しといへり