仮想空間

趣味の変体仮名

平政子 (武者かゞ美 一名人相合 南伝二)

 


https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1312411

  平政子(たいらのまさこ)
政子は北條時政の女(むすめ)にして頼朝の御台所なり
実朝将軍幼年の内は廉を垂て政事を聞(きく)故に
世に尼将軍と言(いふ) 都(すべ)て行状漢の高祖の后妃
呂后(りよごう)にるいす 其相少し美色あるに似たれど
眼尻下り鼻の根もとに節ありて小鼻の
所に深き紋(すじ)あり 顋(おとがい)の骨きつとして
胸の間狭く腰の辺(あたり)の肉
薄く削るがごとし 是
嫉妬深く魂性(こんじやう)悪(あし)き
相なり 併(しかし)政子は女性(によしやう)に似
合ぬ利発なれば 己に心をゆるして悪行も
あれど善行もなきにしもあらず 後年上洛して
 二位に叙せられ又熊野へ参宮なす事あり