二代尾上忠義伝 六段目つづき(その3)~七段目

 

読んだ本 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10301710

 

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「つゞき」イヤちぎやう
ぬすびとト持たる扇
ふりあぐる尾上はわが
身にあやまちありては
主人の御せんど見とゞ
くるものもなくおや/\
のなげきとむりに
こらへるくやしなみだ
「ムゝあひてにならぬは
おくれたり此岩藤が
おそろしいかコレみさつ
しやれやくにたゝずに
かゝつてたびもさう
りもすなまぶれ
コレ尾上どの


此ざうりの
よごれふいて
たもれ「アノ
わたくしに
「いやか「じやと
いふてこれが
まア「おく
びやうのこし
ぬけに

 

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 は
もの
よご
しせう
より
さう
おう な
此ざう
りトつち
ざうり
にて尾上
がかしら
てう/\
てう
コレハ
あま

と女
中たち
「モシ
これ/\
さわぐ
まい此
尾上を
ごいけん
の御ちやう
ちやく
わしや
あり
がたふて/\

 

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身ふしにこたへて
かたじけない
此おざうりは
御きやうくんの
一トしな申請て
わたくしが
守りにトおし
いたゞき
くわい中
したる大
じやうぶさすがの
岩藤あきれきり
「イヤおそろしい
しんぼうにん
いごをきつと

おたしなみドリヤゆきましよ
トかへざうりかへる岩藤のこ
れるをのへかみもみだれて
われながらかほはあかねとせき
のぼせこらへ/\しためなみだ
いちどきにわつとなきしづむ
あまたの女中が立より
てげにおだうりと
いさめなぐさめ
たすけてやかたへ
かへりけり

 

 

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○さてもそのよく
じつにいたりお初は
主人尾上のさがり
おそれをあんじ
むかひにいづる
長らうかきのふ
尾上がちじよく
をうけしと
ごてんいつ
はいのとり
さたあんじ
かさなる
おはつが
ぬめ

藤は


がなと
むりを
いひつけ
お初

りよぐわい

 

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させんと
しかけても
もとより
はつめいもの
にてたゞあや
まり
入て
さか

はね


藤も
せん
かた
なく
折も
こそ
あれ
おかみ
女とさより
をぢご

典春殿
御ししや
として
御出なり と
おとなふに
岩藤は
出向ひぬ
「次へ」

 

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「いや知行盗人」と持ったる扇振り上ぐる。尾上は我が身に過ちありては主人の御先途見届くるものも無く、親々の嘆きと無理に堪える悔し涙。「むむ、相手にならぬは遅れたり、この岩藤が恐ろしいか、これ見さっしゃれ、役に立たずに掛かって、足袋も草履も砂まぶれ、これ尾上殿、この草履の汚れ拭いてたもれ」「あの、わたくしに」「いやか」「じゃと言うて、これがまあ」「臆病の腰抜けに刃物汚ししようより相応なこの草履」と土草履にて尾上が頭ちょうちょうちょう、これはあまり、と女中達、「もし、これこれ騒ぐまい。尾上を御意見の御打擲、わしゃ有難うて身に堪えてかたじけない。この草履は御教訓の一品、申し請けてわたくしが守りに」と押戴き懐中したる大丈夫。さすがの岩藤呆れきり、「いや怖ろしい辛抱人、以後を屹度お嗜み。どりゃ行きましょ。」と替え草履。帰る岩藤残れる尾上、髪も乱れて我ながら顔は茜とせきのぼせ、堪え堪えし溜め涙、一度にわっと泣き沈む。数多の女中が立ち寄りて、実にお道理と諌め慰め助けて館へ帰りけり。

 

(これより七段目だと思われます。)
○さてもその翌日に至り、お初は主人尾上の下がり遅きを案じ、迎いにい出る長廊下。昨日尾上が恥辱を受けしと御殿一杯の取沙汰、案じ重なるお初が胸。岩藤は何がなと無理を言いかけ、お初に慮外させんと仕掛けても、元より発明者にて唯誤り入りて逆らわねば、岩藤も詮方なく、折もこそあれ、お上女、土佐より伯父御典春殿御使者として御出でなり、と、おとなうに岩藤は出向かいぬ。「次へ」