古今名婦伝 楳(梅)素亭 玄魚記
下女お初
初女は 本名さつ 何某侯(なにがしとの)の奥中老尾上が婢(みづしめ)なり
節婦のきこえ高し女主(あるじ)尾上は
傍輩なる局岩藤に耻(はづ)かしめうけて
自殺すさつは
密(ひそか)にこれを
窺がひて
主の仇を
うつ直(たゞち)にその
殿に訴ふるに御(ご)
褒詞(ほうし)を給はり猶又
亡主尾上が跡を継せ
しむるとかや
ちいさきを花の
ゆくりや初茄子
初(はつ)女(じょ)は(本名さつ)何某の侯(との)の奥中老(ちゅうろう)
尾上が婢(みずしめ・水仕女)なり。節婦(せつふ)の聞こえ高し。
女主(あるじ)尾上は傍輩なる局(つぼね)岩藤に恥かしめ受けて自殺す。
さつは密かにこれを窺いて、主の仇をうつ。
直ちにその殿に訴うるに御褒詞を給わり、猶又、亡主尾上が跡を継がせしむるとかや。
ちいさきを 花のゆかりや 初茄子(なすび)