仮想空間

趣味の変体仮名

御入部伽羅女 巻之六

読んだ本 https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2554353?tocOpened=1

 

 

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御入部伽羅女巻之六  目録

名残は班女(はんじよ)があふぎ車

(廿一)遊色(ゆうしよく)一番難波(なには)の新町 一四筋不残女郎の名よせ

                               一ならびに内証友吟味する

                               一揚屋茶やの外芸者かゞみ

万歳(ばんぜい)うたふ神楽男

(廿二)五十三次一番の旅篭屋 一麁相は僕(やつこ)か手付がね/\

                    一主人の目にもあまり成夜中(やちう)の

                    一文作(もんさく)聞耳果報は城六内出し

                                   たり靏亀松竹

 

 

43

御入部伽羅女巻之六

  (廿一)名残は班女が扇車

すぎし頃加賀の梅田といふ大臣嶋原のあげまきに

よみをくりし名歌の内おなじ心によりもあはなん

と。いふ事を宇八勝久へおはなし申せばおぎりなふ

きげんよくいそぎ都の遊里を見んとあまたの末社

に仰付られ御荷物金箱(かねばこ)ともに四五日まへよりをくり

出せば。くるわ中。なごりををしみ赤子(せきし)の母をしたふ

がごとし時に勝久宇八にむかはせ。此たびはしめて天満の御

祓に見物せし。担(檀?)尻(たんじり)といふ物京の山鉾より乗心おもしろ

そうに覚ゆれば又なき仕出し我是に乗八軒屋まで帰るべし。

 

咄相手は太夫の分不残。其担尻にのせめん/\得られし程の

諸芸をのそむべしとの仰宇八承り太夫達にたのみ

ければ何が扨君の御所望いかやうともとの御請合

是をきゝ天職鹿恋はし女郎にいたるまで御見をくり

申度よし幸のことなりと十八軒の揚屋中扇風(せんふう)方へ寄合の

上其役/\をわかちて担尻をぞこしらへぬ扨太夫の分

は。不残だんしりに乗。下髪(さげがみ)にて。金もとゆひ。あふぎを

かざし諸芸の役なり引舟の分は一だん下のかまへにて太鼓

鉦をひかへはやり方の役也天神の分八十余人はだんじりの先へ

四十余人づゝ。両方へ立(たて)わかり。尤是も下髪銀のもとゆひに

て行列の品禿一人つゝつれられ銀の團(うちは)にめん/\の定紋

 

 

44

付禿後()うしろよりあふぎまいらす也。鹿恋(かこひ)の分は。十七人の末

社達と相役にてたんじりより先へ。散(さん)銭箱を指荷(さしにな)ひの

役也其跡より小天神の分は太夫衆芸づくしの番付(ばんつけ)

印持役也。猶はし女郎かげの分はたんじりの綱引也

同横町よし原などの月女郎と申は担尻の手木(てこ)つかひ也

此外分(わけ)と申位の方は勝久へ御め見えもこれなれゆへ此度の見

をくりも御ゆるし。残りの分だんじりの役目に出給ふ程の女郎を

爰に記(しるす)なり但し太夫達此度扇をかざし芸し給ふゆへ各の上に

扇と有は太夫はやしと有は引舟団(うちは)と有は天神箱とありは鹿恋

印と有は小天神。綱と有はかげ女郎。手木(てこ)と有は月

のかはり諸事合紋(あいもん)に気を付給へかし

 

大阪新町四筋不残 女郎位付并内証友吟味役人

             揚屋茶や諸商人の外芸者鑑

越後町二丁目南がは

  茨木屋妙了内

太夫の事也  引舟の事也

扇しづか    拍子やくも

同万太夫   同とやま

同うす雲    同おのへ

同さんご    同高津

同ながと    同かはち

同かほる    同もんと

同東路     同いくしま

同大野     同大はま

同花かき    同みつはし

同きり山    同津川

(下段)同妙了内

天神の事也       鹿恋の事也

団(うちは) 小いつみ  箱持(はこもち)やちよ

同よしだ          同わかやま

同やまと          同ながしま

同あり原         同いもせ

同山のい 此家のお見せ通

       筋一丁め南がはみせ

同みふね  女郎の分

同八へぎく  印持(しるしもち)みやこ

同ながはし  同みやま 綱引みや嶋

同こもんど  同きく川

同小井筒  同いづみ

 

 

45

(上段)

扇 初ぎく  同かしは木

同のかぜ   同かしはぎ

同金太夫  同しつま

同半太夫  同あかし

同山しろ   同しな川

同なには   同市はし

同土佐    同朝づま

同しろたへ  同閊つま

同小太夫  同はせ川

  ↑当春みまかり給へとも残念ゆへ しるし侍る

 同丁南かは

  茨木や治右衛門内

扇あづま   拍子のざと

同わかくら  同しげ山

同きんご   同わりの  

(左頁上段)

同とのも  同とさき

團おほえ 印きりかへ

同ありま  同きり山

同やしう  綱とよさき

同もんど  同つやま

同つねよ  同みつね

同九重   此家世とつたへ

同はつ山  て太夫天しよくの

同やつはし ほまれおほしその

同八重崎 かみのあづまあるひは

同たかま  天職やしら木の間

事なとしるべの揚屋にてたふね

給へ第一女郎出世目出度家也

同一丁目南がはいづみや 次郎伊右衛門

(右頁下段)

団(うちは)あやめ  同しな川

同たかだ    同うき舟

同きよ原   同しらぎく

同いく勢    同大さき

同かりう    同はきの

同いなば   同みやぎの

同とこへ    同和こく

同くもい    同わかくさ

きんざん   同もなか

同きぬがへ   同わかくら

同八重ぎり  同みつしほ

同丁北がは

吉野屋勘左衛門内

おぐら  拍子野川

(左頁下段)

扇いづゝ  同はや川

同宇川 

同かりう

同丁茨木屋大八内

扇 大よど  拍子 のせ

団 さほ山  箱 八くも

さがみ   綱 かしう

同いろか  同みちのく

同みさほ   同大はし

同丁京屋妙知内

扇 花つま    拍子 しくら

印 玉かかしは  綱 水木

綱 きよ山    同八くも

 

 

46

(上段)

扇 越中  拍子あふみ

印 長太夫  綱 のかぜ

同やしう    同大野

同はつね   同大はし

つな 大くら  同おぎの

同八ちよ   同きん五

 同筋もつかう屋 吉右衛門

印 とみちよ  綱八りよ

綱 みなと   同おぎの

 同筋伏見屋半六内

綱 さもん  同新づま

同すみのへ  同きぬ川

同かよびぢ

(左頁上段)

 同筋木屋長右衛門内

扇 みはし  はやし はや川

團 はしば  同東の丁出見せ

つな たき川  同こかは

同いづゝ   てこ 山川

 同丁藤や兵左衛門内

つな 松さん

 同丁のまや六兵衛内

てこ ふじさき

 同丁天王寺や庄兵衛内

つな もろこし  同なには津

同みさを

 同かゞや清兵衛内

つな かつやま

(右頁下段)

綱 ふじ山  綱 せがは

同ふじさき  同はな山

 同丁南がは 高嶋屋花内

團 佐渡

同わかむら

同あふ坂

 同丁さかひ屋半平内

つな たきの  同きくのぜう

 同丁備前や惣兵衛内

綱 あやめ  同花の井

同ぬふてふ  同あさづま

 同丁桔梗屋半左衛門内

印 山しろ  綱 八重ぎり

(左頁下段)

つな やまじぢ  つな み山ぢ

同山きし    同まつざき

同やまと    同さがみ

 同一丁目京屋安左衛門内

印 とみざな  つな みやこ

つな つまさき  てこ かつ山

同 しきしま  同たみや

同わかむら   同みさを

 同丁あふみや玉内

てこ つま川  てこ はせ川

同まつかは  同さもん

同はつせ   同つまさき

是まで越後丁の分也扇廿八人拍子同

事團四十一人箱五人印持十一人つな引

六十三人てこつかひ九人も百八十五人

 

 

47(挿絵)

 

 

48

(上段)

 同丁かしはや城右衛門

つな をとは

是より新町通

 あふきや伊兵衛内

扇 若紫  はやし みよし

同つしま   同はつせ

同みちとせ  同こづま

同かくやま  同にしほ

同かしはぎ 同よづま

同よしの  團 大いそ

團 みかさ 同そのはら

同ともへ  同みちのく

同つま川  同つまさき

同よし崎  同大さき

(左頁上段)

 同筋扇や四郎兵衛内

扇 みやま  はやし かづま

團 大くに  つな おのへ

同とよ川  同つまぎ よしをか

同やまと  同はつざき 藤やま

同みさほ  同かつらき

 同筋つちや理兵衛内

扇 かもん   はやし 大はし

團 ふぢ川  はこ しが

同からさき  つな かよひぢ

同大くら   同よし川

同むつら   同まんさく

同大かく   同はせ川

同大ぶ    同まんしう

(右頁下段)

是ゟ新町通筋丸屋九郎左衛門内

扇 するが   はやし せんよ

同奥州    つな かづらき

同松なみ   同ちさと

同おほすみ   同くもい

印 はつき   同かるも

つな わしう  同なるせ

同もろこし  同花つま

同まつ山

同筋あふぎや清月内

團 をぎの  つな 野かぜ

同せやま  同松ざき

(左頁下段)

同いこく   同金ざき

同八はし  同はつせ

同かしはぎ  同みさほ

 同筋扇や三郎右衛門内

扇 やしま   はやし いさご

團 あやめ   つな △つねよ

同みまさか   同せやま つまさき

印 くめ川   同たげんた よしさき

同ふじさき   同うねめ

 同筋大和屋彦左衛門内

團 かづらき  つな くに山

はこ さつま   同みくに

印 あふみ   同やまと

同みかさ

 

 

49

(上段)

團 花ぜん  つな わかを

つな 今川

 同筋井車や庄左衛門内

扇 奥州  はやし かづらき

印 小いづみ  つな ちとせ

同つまぎ   同△こが

同しぎの   てこ かづま

つな かしはぎ  同 かつやま こふぢ

 同筋えや吉兵衛内

團 あげまき  印 おくら

同大はし  同たき川

同みさほ   つな はや川

箱 ぎゞの  同むめかえ

印 八へぎり  てこ やしほ

同をきの   同まつ山 今川

(左頁上段)

伏見や新右衛門内

印 むさし  つな なほえ

つな かせん   同えもん あづま

同のせき   同かづらき

 あふきや万右衛門内

印 みちのく  つな あづま

同うかは   同花つま

同もしほ   同山のい

つな みつしほ  同和こく

(右頁下段)

 同筋山城や二郎右衛門内

團 ちよとせ  印 せやま

印 とよら  つな わかさ

 同づ路ご石や彦右衛門内

團 かせん  つな よづま

印 九重   同みつやま

同さはなみ  同かしはぎ

つな とやま  てこ いくよ

是まで太夫天職の有所先(さき)一

斗出す是より通筋ひがし

よりはし女郎の分不残

次第不同は宇八心いれ

あつての事なり

(左頁下段)

通筋一丁目北がはの分

えや善五郎

印 花かづら  つな 大はら

つな たかお  同はせ川

同あやめ   同かつ山

同かづらき  同よし川

 えなみやしゆん内

つな かつ山  てこ よし川

同つやま  同つま川

 伊せやようあん内

印 ちよとせ  つな あやめ

同ちよはし  同こむらさき

つな 花やま  同松やま

 伏見や喜兵衛内

 

 

50

(上段)

つな△高はし  同松かぜ

同たかつ  同山のい

同よし岡  同大ぶ

 大和屋忠左衛門内

つな 花むら  つな はせ川

同つやま  同わしう

同よしだ  てこ かせん 同大はし

同とさ  同たかはし

 南がは二丁目

 田中屋三右衛門内

つな 大ぶ

同よしの  つな 大さき

同大くに  てこ むめかえ

同よしさき

(左頁上段)

 折屋加左衛門内

つな のさは  同八そしま

さがみ   同かしは木

同ながはし

 あはぢや仁兵衛内

印 なるとせ  つな わかさ

同たかせ   同わかむら せやま

つな ともへ  同かづらき

同しゝか(?)ぢ  同かじさき

 吉野や妙え内

つな 万太夫  同はなさき

同いづも  同うきやう

同よしの  同きん太夫

 山崎屋久兵衛内

(右頁下段)

つな よしさき  てこ たき川

同きりしま  同せがは

同あづま

 くしろ屋きち内

つな うきやう  てこ とさ

同大ぶ

 つち屋甚九郎内

印 たかだ  つな きぬ川

つな 大すみ  同よしの

同のむら  同あさづま

 はりまや吉内

つな かつやま  てこ よしの

同をかやま  同もがは

同いつみ

(左頁下段)

 伏見や小四郎内

印 すみのほえ  つな わか松

つな 花さき  てこ 津山

同大さと  同のかぜ

 くしろや喜兵衛内

つな やまぢ  てこ 大はし

同大ざと  同いくよ

 京屋長左衛門内

印 きよ原  つな あつま

同やしう  同ふぢをか

つな いつみ  同きしなみ

 ふしみ屋ふかう内

印 とさ  つな 小源た

つな△大ぶ  同きりぬへ

同すみのへ  てこ ていか

 住吉や長左衛門内

 

 

51

(上段)

印 とよ川  てこ とさき

同はせ川  同ふじ川 つま木

つな 花の  同よしの

 田中屋三郎兵衛内

印 もんど  つな いもせ

同みまつ  同きん五

つな おぐら  同みはし

同花の  同さもん

同梅かえ  同やよひ

 天王寺やていじゆ内

印 ぬふてふ  つな ちとせ

つな大ぶ  同つねよ 大さき

松屋七郎兵衛内

つな おぎの  同きよふね

(左頁上段)

つな とさ  同きよ川

 伏見屋喜兵衛内

印 とよ川  つな すみのえ

つな 八重ぎり  同山川

同みはし

 大和や宇兵衛内

つな 松ざき  同高はま

同八重やま  同ちよはし

同たきなみ  同きん五

同大かく  同大くに

 車や庄兵衛内

てこ 松かぜ  てこ みづ木

同さはだ  同はや川

同八ちよ  同みふね

(右頁下段)

印 おたまき  つな なかば

つな すみのへ  同大ふね

同はつせ  てこ いさご

同つまさき  同小ざくら

 つたや市郎兵衛内

印 わかまつ  つな さん五

同わかくら  同大さき

つな みはな

 あふみや勘右衛門内

印 玉ちくさ  つな 玉むめ

同玉づま  同玉よ 玉ぎり

同玉むらさき  同玉ちとせ

つな 玉ふね  同玉ちよ

同玉のせ  同玉ぎく

 もず屋権左衛門内

(左頁下段)

印 しけ山  つな こさくら

同山しろ  同まつえ

つな こさつま  同さもん

同をかやま  同むめかえ

 あふきや伊左衛門出見世

つな あふ坂

同 さはだ   同よしをか

 伏見や太郎左衛門内

印 きよはら  同きよはし

つな 高はし  同ちとせ

同みふね  同△めいざん

同わこく  同大はし

 京や後家いし内

つな ?きし  同ちよとせ

 

 

52

(上段)

是よりあはざ東ゟ一丁め南がは

伊せ屋からあん出見世

つな わかやま  てこ さはた

てこ きく川  同みちのく

かみや岩まつ内

つな あやめ  同さはなみ

同のかぜ   同いせ川

同はつしげ  同みかさ もんど

同ふし川   同かほる

 いせ屋清右衛門内

つな しきふ

 花田屋平兵衛内

つな 大はし  てこ みはし

てこ いづゝ

(左頁上段)

 丸や九左えもん内

てこ かしは木  同をきの

同まつえ   同一のぜう

同きりがえ

同のかぜ   同大さき

 丸や嘉えもん内

てこ たまよ  同玉をり

同あやめ

 しほや六右衛門内

印 こながと  つな こしば

同こむらさき  同ふしなみ みkさ

おぐら   てこ やまと

同よしの   同はぎの

同あやめ   同なみえ

(右頁下段)

つな ?つかせ  つな ふぢがえ

 大坂屋半右衛門内

つな きんご  同たまの

同かつやま  同△かつの

 車屋庄右衛門内

つな ふじさき  同ふじやま

同小ぎん   てこ まさ川

同くにやま  同まつがえ

是ゟあはざ一丁め北がは

 松原や作右衛門内

印 かよひぢ  てこ とやま

つな まさ山  同あやめ もなか

 銭屋長左衛門内

つな とき   てこ はつせ

(左頁下段)

てこ なるせ  同くめ川

同 たつ

 かはちや孫さえもん内

てこ 八重ぎり

 ひろしまや源左えもん内

てこ しきぶ  同きり山

 やまとや吉右衛門

てこ みやこ  同からさき

 すみよしや与左衛門内

てこ さこん  同松山

てこ さもん

 京屋九郎右衛門内

つな もりをか  同みやこ

同むめがえ  同たかを

てこ あふ坂

 

 

53

よし原東より爰は南がは

ばかりの丁也

 やかたや清右衛門内

團 おはら木  てこ みよし

てこ きよはら  同花がき

同こさつま   同くめ川

 ひぜん屋惣兵衛内

てこ きよたき

 いばら木や伊左衛門内

てこ そでしま

(下段)

是より吉原ひがしゟ

 永楽や甚左衛門内

てこ とよまき  同えち川

同やま川   同まき山

さかひ屋六左衛門内

てこ のざは  同なみきし

同なみえ   同うこん

同そめ山   同小げんた

此度檀尻に乗(のり)芸づくし太夫の分四十壱人はやしかた引舟

同前行(ぎやう)れつ天神のぶん八十七人散銭箱もち鹿恋十一人印

もちしほのぶん五十七人つな引かへのぶん二百八十二人てこつかひ

お月様百十二人惣合(さうあいして)六百三十壱人也此内さんせんばこ持十一人にて

役めつとまり不申ゆへつな引のうちよりきりやうすぐれ諸事

 

端めかず行れつ役にもにくふないかげんのぶん勝久どのめきゝ

にて六人まで御やとひありさんせんばこをたのみ給ふ此女郎

のぶんには△かうしたる合紋名の上にあり此衆中へは勝久さか

づきまでをくだされしかばあつはれ見せながらも一せ一代

のほまれなり此ほか揚や中檀尻の御供但しめん/\か(?)ゝへ

の座頭に三味小弓(こきう)のほか。得たるほとの芸をつくさせ其身は

長上下に立えほし也

 九軒町揚屋の分東ゟ

かみやとよ五郎 さとう つ屋都

川屋彦左衛門 同城つね

井筒や太郎右衛門 同高都

京や新右衛門 同つね都

吉田や喜左衛門 同城猶

住吉や喜多郎 同さき都

(下段)

新町四十五軒かぶ茶やの分東口

南よこ丁 京屋利右衛門

    同かはちやつね

    同木や平三郎

    同ひのや久左衛門

    同ひのや長右衛門

    同森口や長右衛門

 

 

54

(上段)

山口や勘兵衛  同若都

住吉や四郎右衛門 同城介

 〆八軒堺や市左衛門と申揚や今はなし

越後丁あげや

 あふみや伊兵衛 座頭林都

 いばら木や二郎三郎 同藤山

 折や伊右衛門 同城つぐ

 高嶋や作右衛門 同慶春

 をりや妙智  同八十崎

茨木や万五郎 同城吉

戸那や弥左衛門 座頭他行

いよや長右衛門 同断

あはざ揚屋

 山崎や長右衛門 同城民

(左頁上段)

 大和弥吉右衛門  同慶しん

此度勝久当里に遊興の内

諸事御用聞金銀のかけ屋

天王寺屋 浅右衛門

呉服所 かしはや 治郎べえ

同   あふぎや 二郎右衛門

諸事こま物 京や 甚兵衛

同      てんまや 伊左衛門

同      てんまや 太郎兵衛

萬紙類  一はしや 藤八

儒者  御厨玄正

醫師  明石三盛

同   小林養安

同   藤井寿仙

(右頁下段)

北よこ丁  同さぬや市太郎

       同まつや小まん

       同ならや九兵衛

       同三木や七兵衛

       同平のや吉右衛門

       同大いそやつや

新丁筋中のよこ町

       天王寺や善兵衛

       同姫松仁左衛門

       同八木や宇兵衛

同西南よこ町 住吉や宇右衛門

       同かはちや惣兵衛

       同みなとや長兵衛

       同ふなはしや武兵衛

(左頁下段)

同北よこ町 同白都や利右衛門

       同住吉や清九郎

       同いつみや市左衛門

       同えびすやきち

佐渡や町 へいぢや甚左衛門

       同住吉や栄寿

       同中村や八郎兵衛

同ふかえや徳兵衛

同えちごやきよ

同さかひや吉兵衛

天王寺や伊兵衛

同すみや宇兵衛

吉はら丁  高せや利兵衛

        同津の国やしも

あはざ町  同わたや金兵衛

       同大和や市左衛門

       同松原や源兵衛

       同古橋や長右衛門

 

 

55

(上段)

針師  村上藤左衛門

同    桂伊慶

茶湯指南 江村旦正

同     玉棠奈仙

手跡指南 孫沢きち

拍子鳴物指南 林森右衛門

うたひ指南 伊坂小左兵衛

(下段)

あはざ丁西  八木屋八兵衛

     同 川口やきよ

     同 京や八兵衛

     同 しまや惣兵衛

えちご町  久ほうしや彦左衛門

     同 池田や二郎左衛門

     同 大黒や利左衛門

     同 平のや清兵衛

大臣とうりうの内御やとひなされし

髪ゆひ   くま

同   ふり

同   さよ

同   庄介

此四人はつねにもくるわを

めぐり女郎かふろの髪ゆひ也

右の女郎不残八軒屋まておともの次第御さんせんばこ二行

にならべ宇八弥四郎は鹿恋にましりのこりの末社

神主出立いつれも妢(けち)えんのため松梅(しやうばい)のため心ざしをなげ給へ

 

けちえんとは五分どり松梅とは松むめ是はむかし百(はく)

斎国(さいこく)にて無間の鐘をつきぞこない日本へかけおち

の末孫(まっそん)当地の遊里をつくしあげこれより都の西州

かの君達の腹へあがるとをりしまひか遠島といふ義

を祝て嶋原と申里へすぐに御行の大臣とわめけば。下地

大気な大坂者何かはしらず嵯峨の釈迦善光寺の御かへ

りにひとしくばらり/\と蒔ほどに打こむほどに。

めつそうにありがたがり我一ととふみあひせりあひ漸

爰で思案ばし東へわたつて八軒やより大臣末社

乗のふねいづれも姿の見える間はさらば/\といふ

かげとをく是より皆々遊里へ帰れは大臣は都の方へ

 

 

56

御のほりのよしさきだつて飛脚到来に付長者町

善かたより家内の人/\廿四五人ふしみまでおむかひ

乗物末社駕籠十七挺。大黒屋にかきこいければ父母

自身台所までかけ出たまひ勝久どの手を取て御

本復の御悦ひまつしやも不残奥にめされ此度の

御礼だん/\見事成御さはきすなはち末社十七

人に五軒口の御屋しき普請勝手は望次第

に宗善どのより御まかなひ此ほか勝久命の

かぎりは年中に百両づゝ人別に御助成(ごじよじやう)との

証文をいだしたまへば何も是はかたしげ有馬の薬

師様へまいるもあれば八幡(はた)様へは宇八弥四郎城市は

 

ない/\天照(てんしやう)大神ぐうへ立願こめしねがひ事成就

いたせば先第一に御礼参宮といたすべしとおもひたつ

時は昼の八つ過よりかの証文をまもり袋の内外ともに

其身のきたうと只一人長脇ざしさいた心地は急度

して馬駕籠もよける気の前後は追分よりはや

ほのぐらく池の川の針屋も見せさしもうくらふても八

丁までは是から九丁と走りいの水打越見れば大津の

方よりはやしかた二三十人の提灯を星にまがへかやせ

/\の太鼓鉦天にひゞかせたづねまはる城六是を詠扨は大

津にも高い鼻の人有天狗につまゝれての仕合(しあはせ)ならんとたづ

ぬる人/\の中にやりてかふろ。らしきか太夫様をかやせと泪の

 

 

57(挿絵)

 

 

58

かず/\かてんゆかずかの小女をとらまへ城六むりにやうす

をきけば柴屋町にてかくれもない井筒屋の大和様とて

唐土(もろこし)にもないはやり女郎此月ののはじめつかたに。淡路嶋の大

庄屋様八丁どまりの夕ぐれ夜見せ御見物よりかの和州様

に御なづみ。替名を二番様とて。たばこ屋といふかほりのある

揚屋にて御あひ。あそばし五六日も御逗留の上に身請しもは

や明日あさつてに淡路へつれゆき不断でこのぼまは

ししてたのしむべしと二番様の御よろこび乗物まで

けつかうに出来し夜は一入に酒おもしろふあげやにて御あそ

びの時いつにない太夫様ひよつと取はづさせ給ふよりこれを

 

はづかしうおほしめして裏の藪がれおしわけさせ

何(いづ)くへやら御出くるは中のさはぎけふ三日になれ

ど影も見えずかの大臣様御なげきたとひそうした

音毎晩にても出物はれ物柴屋町しやとて所を

きらふやうはなしと。此入めも皆二番様御気をはらせ

られてのことまで咄せば城六聞それは残おほひ。とり

はづしにはそれじやとおもはせぬやうにぎし/\と

いふ。ましなひ有て京大坂の女郎衆はしつての事

じやに流石やさしくも大津とて御存ないといへば

かのかぶろそのましなひは柴屋町の女郎さん

たちは度/\のことゆへ三味線より大事にかけて覚(おぼへ)

 

 

59

てい給はねば勤まりませねと此太夫様は不器用

に御さんすといひずてにして又かやせ/\

  (廿二)万歳(ばんざい)うたふ神楽(かぐら)男

飛鳥(あすか)川渕にもあらぬ我が宿も瀬にかはり行(ゆく)物にぞ有

けると読し歌はむかし大和寺継蔭がむすめの伊勢

宇多帝に仕へ奉り行明親王を産(うめる)後は七条能因町

にやもめ住せしが子細有て住なれそめし家を売ける時

よめる歌なりきのふは衰へて読けふは栄へて家を

もとめしも天性神明の利生にかなひ城六は目出

度も参宮を相勤下向には随分夜をこめいそぐみち

ほとなふ草津の入口より宿を望めどひとりは御法

 

度きびしくいづかたにもかてんせす是非なふ宿(しゆく)のまん

中ほどにてよしや今宵は此縁にて一夜の夢あけても

くれても高が此世は人間皆かりの宿とさとつたる油(ゆ)

単(たん)をひらきせめて御祓様を縁よりうへにと戸ぶちなる

釘にかくれば内より女の声してたれじや大津の吉蔵どの

かとまりならむかひへやつて今夜は二階も座敷もつん

だと見もせずに当推(あてずい)おかしく城六声をやはらげぬけ参

の男一人ひとり宿御法度ゆへ宿取かねての仕合今でも大

津へ行人なればつれ立てまいる者しばらく爰に情をたの

めば此女戸口に出。かしかす。分は。くるしからずおしたく

をなされましたかおひとりは法度なれどおはらひ様

 

 

60

にお気がつけばたしかなお人まがひなし先こなたへ

はいり給へと。風呂敷も其身持おひもじくは御勝手次第

に居(すへ)風呂もあとなれどあついぶんがお徳くりと食(めし)にも

気を付汁もあつうどこもかもつまつてあればひそかに

してこゝに御寝(ぎよし)なれ奥座敷武家がたなればひ

とりとめなは。かくす事次は皆/\御家来衆とさゝや

いて蒲団をかせば台所の片脇に神明様のおかげと

うれしく見れは三人の下女はたらきしまふて

たばこ一ふく呑やのまずに二人はすこし顔色(けはひ)つくろ

ひお竹(たけ)往来(いてかう)たのむといへば寝過(ねすご)しやんなとおもてへ

出た跡をしめるは廿三四ふとり肉(じゝ)にて色赤黒髪のちゞみ

 

一しゆの女引切(ひつきり)枕ふとんかぶりしな行灯吹けすと水上(みかみ)山の

百足(むかで)もをよばぬ鼾すさまじ處へそろ/\人音這寄(はひより)

しなに行灯にあたれば女これにうなりを留たれ

じやとは鑓持の角内(かくない)裏口ての約束たがへずこれは

露の心ざしと銭五六十渡す様子女うけとり手の内

でよみけるにや是は六十五六文もあるべし十九の年

から七年のはたごや奉公ついに百よりうすい銭見ず

今三十が御大義にもあらふけれどあすの焼物杓子

にて心すればまんざらのそんでもなし殊にこうした雪

よりしろい太股むりにとは申ませんとすこしせかすに

僕(やつこ)もがき。三十や四十は後ほどに次手もあるべし

 

 

61

先爰をとふとんへはいるをはてさてくらがりのあき

なひそれ見ませいではわけがたゝず。おいやならこの銭

そつちへ。寝あたゝまつてほこ/\する身をつめたい石尻(いしべ)

の女郎衆とはちがひますとさりとはぬからぬ商口(あきないくち)僕

もこれにたまりかねそんなら其銭はそこにおきやれ

三十文とつてまいるとそろり/\とはひもどり茶半ぶ

くも呑まにやあらんついそろ/\とさぐる手を女とらまへ

とれ銭はと手をさしいだせば角内は物もいはずにわたす

銭四十四五文。あり明がなふとも是ほどはいとしさがちがひ

ますかと無言行義に唯鼻息とすたく音としはら

く深田をかけちらして休むていさう所へ最前の本の角内

 

堂にまよふておそなはり申た三十文有といふ時女

むくとおきあがりねていた男をとらまへるをと角内

はびつくりしてこれやどうじやとさぐりとらまへし帷(かた)

子(びら)はにせ男が袖口引はなし。にげんとすれば角内はな

さずとこい非切(びきり)すりはさせぬとぎしむ時女声かけわしは

爰にいます。にけいといはしやつても懸(かけ)の残り六十壱文たら

ぬがあれば是をとつて跡は夜明までもといふに

角内気がつき最前の銭もどせといふ女は後の男

にたらずまへくせといふくらがりにてとんづはねつつか

むやら女はなくやら亭主が声して飛でくれば

二階の客も有明片手にしかつべらしい男下(おり)夜中(やちう)の

 

 

62

事御りやうけんあそはせといづをしるにふたりのやつこ

は奥へにげゆき女はそこらまきちらかせし銭あつむる

とき城六は片隅よりおきればはや夜もあけの日は京へ登(のぼり)

勝久とのへ此僕(やっこ)が咄申せば大笑ひの種蒔銭代金子の山かさ

ね/\露を請千秋万歳の門松繁り妻女は則伽羅姫君兄

何かし殿御入部の時宗善方へ立寄せ給ふ事は京中に

かくれなく目出度御代に相生ぞうたひ亀(き)

 

 于時宝永七寅九月中旬 

         板本 老松喜作兵衛

御入部伽羅女巻之六終

 

      おしまい