体内十界之圖

 

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 体内十界之圖         昇旭斎國輝画(三代 歌川国輝)

夫れ人の子たる物ハよく親にした
かひて善なる道を習ふ可し
抑此胎の図ハ善悪二ツの道にしてよき事
を為者は上図の如シ又悪事をなす者ハ遂にハ
下の図にをちゆる故假令ひ如何なる虫にても無益にこれを
痛るハ宜しからず且又小さき動物をむごくするよりして
追々これに慣れ我同類の人を扱をにも慈悲の心を失ひ遂には大悪無道の働を
為すに至るへし故に人若し不圖したる出来心にて斯る虫を殺さんとすることあらハ則ち我身に
立返り若我身体より数倍大ひなる怪物ありて我を苦しむること今我この虫を扱ふが
如くならバ其苦痛如何ばかりならんと身に引替て虫のいたさを思ひ知るべし

 

それ、人の子たるものは、よく親に従いて、善なる道を習うべし。
そもそもこの胎(はら)の図は、善悪二つの道にして、良き事を為す者は上図の如し。また、悪事を為す者は、遂には下の図に落ちる故、たとえ如何なる虫にても、無益にこれを痛むるはよろしからず。かつ、また小さき動物(いきもの)を酷くするよりして、追々これに慣れ、我同類の人を扱おうにも慈悲の心を失い、遂には大悪無道の働きを為すに至るべし。ゆえに人、もし、ふとしたる出来心にて、かかる虫を殺さんとすることあらば、すなわち我身に立ち返り、もし我身体より数倍大いなる怪物(ばけもの)ありて、我を苦しむること、今我この虫を扱うが如くならば、その苦痛いかばかりならんと、身に引き替えて虫の痛さを思い知るべし。