二代尾上忠義伝 序開のつづき~二段目の文句

 

読んだ本 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10301710

 

コマ6

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 つゞき
ありがたき仰をかうふり源蔵は
身にあまりめんぼくをほどこしぬ
かゝる所へ京都のしゆつじ細川頼ゆき
あそん伊豆箱根へ御代参のかへりがけ
きうに申入たきとありとてかりばへ
すぐに入来あれば持氏卿れいふく
とゝのへかりやにてたいめんあるに
さきだつてほろびたる赤松が
ざんとううらみをふくみ
こゝかしこにかくれすみて
事をはかるのきこえ
あり 御用心あつて
しかるべし又御内意に
よつてそのもとの
弟縫之助
殿へめあは
せよとて
さきだつて
つかはしおきし
わがむすめ
みさをひめ
いまもつて
こんいんなし
将ぐんの上意も
おもきことなれば
何とぞちかきに
こんいんをとゝのひ
給はらば大けいしごく

 

 

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 とのべ給へば持氏も
りやうしやうあり
さすが親兄のいつ
くしみおんあいこもる
おれそれにやがて
きくわんとうながせば
花とくらぶる武門の
れいぎいさましくこそ
立わかれ 給ひける

 

 

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 これより

「二段目のもんく」
所も名にあふ
あづまぢや梅
沢村に出は茶屋
みせあしがる
源蔵がつまのお来(らい)
をつとのたすけの
ほまちもの折から
もどる源蔵に久し
ぶりでのこちさうにと
となり村まで酒かひに
出行あとに源蔵も
どりやわれらもうぶ
すなまいりとこれも
おなじく出て行
ところに又いまはらう人なる
十内といへる老人あり

 

 

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 さいつ?
つまなるものゝ
ながわづらひ
ひんくのなかに
むすめの初が
かう/\あつき

 

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 かんがく(?)にやう/\にほん
ふくなしむすめを
ともなひうぶすなへ
れいまいりせし
もどりみちきよろ/\
まなこのわしの
善六うしろから
こえをかけ
「ヲイ/\らう人
どのイヤなに
十内どのいつ
ぞやかした
五両の金
いのちがはりの
大おんあれど
ぐつとまけて
やすりそく
にして元利十両
サア今もどすか又
それもできずはほれて
いるおはつをくれるかへと
のつぴきさせぬなんだい
さいそくいかにわびても
きらはれねば十内ももてあまし
らうにんしても金のかはりに
かけがへのないひとりむすめを
人でなしめにはやられずととても
命をいひわけにとかたなのつかに手をかくる

 

 

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 かゝる所に人立の中をおしわけて
ひとりの老人立よりて
「身は舟が谷のあきうど
坂間伝兵衛と申すもの
身うけますればわづかな
金ゆえきつい御なんぎ
たれしも老人はおなじ
こととふところより
金子十両とり出し
善六にあたへしやう
もんをとりもどせば
善六はつらふくらし
「いやもう世の中
にはすいきやうもの
もあるものじやと
つぶやきてこそ
たちかへる
十内おや子は
ぢごくでほとけ
ほねにこたえる
うれしなみだ
伝兵衛はことばを
あらため「さて
見ますれば
としごろな
よいおむすめ
ごをおもち

 

 

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 なされた
わしが
むすめも
三年いぜん
あしかゞの
おやしきへ
御奉公に
あげまし
たが
ありがた
いこと
には
今は
お中老
にまで
出世
しま
した
かう
申せば
いらざる
せわとも
おぼし
めさうが
「つぎへ」

 

 

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「続き」有難き仰せを被り源蔵は身に余り面目を施しぬ。斯かる所へ京都の執事細川頼ゆき朝臣、伊豆箱根へ御代参の帰りがけ、急に申し入れたき事有りとて、狩場へすぐに入来あれば、持氏卿礼服調え狩屋にて対面あるに、「先立って滅びたる残党恨みを含みここかしこに隠れ住みて事を謀るの聞えあり。御用心あって然るべし。又、御内意によってそのもとの弟縫之助殿へ目合わせよ、とて先立って遣わし置きし我娘、操姫、今以て婚姻無し。将軍の上意も重き事なれば、何とぞ近きに婚姻を調え給わらば大慶至極」と述べ給えば、持氏卿も了承有り、「さすが親兄の慈しみ、恩愛籠るおれぞれに(?)やがて聞かん」と促せば、花を比ぶる武門の礼儀、勇ましくこそ立ち別れ給いける。

これより「二段目の文句」
所も名に合う東路や、梅沢村に出る茶屋店。足軽源蔵が妻のお来、夫の助けのほまちもの(?)折から戻る源蔵に、久しぶりでの御馳走にと、隣り村まで酒買いに出行くあとに源蔵も、「どりゃ我等も産土参り」とこれも同じく出て行く頃に、又今は浪人なる十内といえる老人あり。「さ、いつ頃妻なる者の長患い、貧苦の中に娘の初が孝行厚き漢学に、ようように本復成し、娘を伴い産土へ礼参りせし戻り道」きょろきょろ眼の鷲の善六、後ろから声をかけ、「おいおい浪人殿、いやなに十内殿、いつぞや貸した五両の金、命代りの大恩あれど、ぐっと負けて安利息にして元利十両、さあ今戻すか、又、それもできずば惚れているお初をくれるか」と、のっぴきさせぬ難題催促。いかに詫びても聞き入れねば、十内も持て余し、「浪人しても金の代りにかけがえのない一人娘を人で無しめにはやられず」と、とても命の言い訳にと、刀の柄に手を掛くる。かかる所に人立ちの中を押し分けて、一人の老人立ち寄りて、「身は舟が谷の商人、坂間伝兵衛と申す者、見受けますれば僅かな金故きつい御難儀、誰しも老人は同じ事、と懐より金子十両取りおし、善六に与え証文を取り戻せば、「いやもう世の中には酔狂者もあるものじゃ」とつぶやいてこそ立ち帰る。十内親子は地獄で仏、骨に堪える嬉し涙。伝兵衛は言葉を改め、「さて、見ますれば年頃な良いお娘子をお持ちなされた。わしが娘も三年以前、足利の御屋敷へ御奉公に上げましたが、有難い事には今はお中老にまで出世しました。こう申せば要らざる世話とも思し召そうが「つぎへ」