読んだ本 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10301710
二段目 梅沢村
出茶屋の場
「前のつゞき」あのかう/\なこゝろに
まんじむすめのやうに思ふて
どうぞよいほうかうにん
にしてあげたいなんと
わしが
むすめの
尾上に
おあづけ
なさらぬか
とあつきこと
ばに十内
おや子は
ふしおがみ
おはつも
ともに
とくしん
なし
「ごおん
かさなる
だんな様
ごおん
ほじの
ごほうこう
ねがふても
ない
尾上
さまの
おめし
つかひ
命を
かけても
お礼
の寸志と
思ひこん
だる初一念
尾上があたを
むくひしも
ふしぎの
きえんと
のちにしる
日がらを
やくして
わかれけり
○源蔵はうぶすな
まうでして
かへる所
かねてぬひの
介とふかく
いひかはせし
手越の里のけいせい
道芝といふもの此所へたづね
来りしいはれをたづぬるに「次へ」
「前の続き」「あの孝行な心に免じ、娘のように思うて、どうぞ良い奉公人にしてあげたいなんと、わしが娘の尾上にお預けなさらぬか」と熱き言葉に十内親子は伏し拝み、お初も共に得心為し、「御恩重なる旦那様、御恩奉じの御奉公、願うてもない尾上様のお召使、命をかけてもお礼の寸志」と思い込んだる初一念、尾上が仇を報いしも、不思議の奇縁と後に知る。日柄を約して別れけり。
源蔵は産土詣でして帰る所へ、予て縫之助と深く言い交せし手越の里の傾城道芝という者、この所へ訪ね来たりし謂れを訊ぬるに、「次へ」