二代尾上忠義伝 三段目つづき(その3)

 

読んだ本 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10301710

 

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 12
「つゞき」けんいをもつておす時はことのみだれ
仁木公のおぼしめししだいわれ/\どもゝ
かくごありと思ひこんだることばのはし
正げんはいだけ高「ヤアうつけ
たるぐん代ども百しやうに
たばかられおくびやうの
こしぬけぶし此正げんが
申出せしこといはんせば
一々にくびをはね
きやうぼくせんと
のゝしれば大杉
ぐん代に打向ひ

 

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 「イカニモ仁木殿の
ことばもたち
其ほうどもが
百しやあうをあはれ
むしゆいも立やう
此大杉がさしづ
せんまづ百姓へ
きやうれうの
出金をゆるし
つかはし仁木殿へは
八ぐんのぐん代知行当年のぶん
一所にさしあげよこれ身をすてゝ
武士のきりやうを出すはこゝのところ
仁木どのゝ仰もやぶらず又百姓の心も

 

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 やしなひかつふせうながらそれがしが
ことばをたつるほうびとしてたゞ今
わが申かくる所の知行をもつてとう
ねんおしゆのうを八ぐんのしゆぢうへ
わかちあたへんとことを納める大杉が
大りやうぐんだいどもはひれふして
ハツトばかりによろこび入る「ハゝア
あつぱれのおさばきそれでこそ
此仁木もたつといふもの大けい
しごくとごうよくの仁木に
かはる大杉がじひをおもてに
そこいのほどしらず
しらがのぐん代ども

 

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 よろこび
いさみて
たち
かへる
又立出る
おそばつかひ
「大杉どのへ
じやうい「ハツ
「只今のけつだん
わがくをすてゝも
国政ををさむる大りよのほど
かんずるにあまりあり今日よりは
老分のやくめ中わうの間をつとむべし
すなはちおめしの大もんえぼし下しおかるゝ

 

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 又紙崎事は
そのみのふさい
をかへりみず
大杉をおく
ごてんへ入れ
まじと忠臣を
こばむねがひ
かさね/\゛
迷惑しごく
大小をとりあげ
御門前よりおひ
はらへと大杉が出
世にひきかへるうんめい
うすき紙崎が身は

 

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 いちじやうに定めなき
人のえいこの
ゆくすえは
我人
ともに
おのへの
ふちん
みな心をぞ
いため
ける

 

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 「ハイヤこれ大杉どの
そのどくイヤサ
こいちやの事は
かねてきでんも

 

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 「ホゝヲ
いちみと
見せたは
わがけい
りやく
うか/\と
大事紙
あかす
大だはけ
しゆくんの
おんばつ
こたへ
たり

 

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 「あつぱれ
大杉
でかした/\

 

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「続き」権威を以て押す時は事の乱れ、仁木公の思し召し次第。我々共々覚悟あり、と思い込んだる言葉の端、正げんは居丈高「やあ、虚けたる郡代共、百姓に謀られ臆病の腰抜け武士、この正げんが申し出せし事言わんせば、一々に首を刎ね喬木(きゃうぼく・晒し首?)せん」と罵れば、大杉、郡代に打ち向い、「いかにも仁木殿の言葉も立ち、その方共が百姓を憐れむ趣意も立つよう、この大杉が指図せん。先ず百姓へ経料の出金を赦し遣わし、仁木殿へは八郡の郡代知行当年の分一所に差し上げよ。これ身を捨てて武士の器量を出すはここのところ。仁木殿の仰せも破らず、又、百姓の心も養い且つ不肖ながら某が言葉を立つる。褒美として只今我申し受くる所の知行を以て、当年の収納を八郡の主従へ分かち与えん」と事を納める大杉が大量。郡代共はひれ伏して、ハッとばかりに喜び入る。「ハハア、天晴の御裁き、それでこそこの仁木も立つというもの。大慶至極。」と強欲の仁木に替る大杉が慈悲を表に底意の程知らず白髪の郡代共、喜び勇みて立ち帰る。又立ち出でるお傍使い。「大杉殿の決断、我が禄を捨てても国政を治むる大慮の程、感ずるに余りあり。今日よりは老分の役目中央の間を勤むべし。即ちお召しの大紋烏帽子下し置かるる。又、紙崎事はその身の不才を顧みず、大杉を奥御殿へ入れまじと、忠臣を拒む願い、重ね重ね迷惑至極、大小を取り上げ御門前より追い払え」と大杉が出世に引替える運命薄き紙崎が身は一定に定めなき、人の栄枯の行く末は、我人共に尾上の不沈(不尽?)、皆心をぞ痛めける。

 

「ハイヤこれ大杉殿、濃茶の事はかねて貴殿も
「ホホオ、一味と見せたは我が計略、うかうかと大事紙明かす大戯け、主君の御罰堪えたり。
「天晴大杉でかしたでかした。