二代尾上忠義伝 十段目追考つづき(終)

 

読んだ本 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10301710

 

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「つゞき」かひがねの音ときのこえ「アゝラこゝちよや
と見やるしるしは二ツ引りやう和田
左衛門を
はじめ
として紙
崎小膳いげ
の忠臣小手すねあてに
身をかためとへはこへに
かこみしはのがるべうは
見えさりけり紙崎
こえかけ「主人をしひし
いへくにをうばはんと
はかるごくあくにん
はものをもちひず
竹やりにてなぶり
ごろしそれものどもト
ことばのしたつばなの
ほさきとつきだせば
何がはもつてたまる
えき大杉はおらいを
いつとうに切ころし
刀さかてにとり
なほすを四方より
竹やりにてつき
とほされはら切る
こともかなはずして
七てん八とうのたれ
じに主君の天ばつ
こゝちよき

と渡亭 国貞戯画

○赤松三郎
ほろびしかばその
よのざんとうも
ちり/\になり行
今はあしかゞけへ
あたをかすもの
なく京都より
御さたとしてをぢてんぜん
しざいいつとうを
ゆるされひきが
やつへながく
おしこめとなり
つぎめのりんし
後年家へ
さしあげ
花若丸
めでたく
御かとくあり
かまくいら二代の
くわんれいと
あふがれ給ふ

 

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これひとへに紙崎二代の
尾上が忠心による所と
おもくおんしやうありて
君臣まつたくいへとみ
さかえ冥利の
御代永久と
千代を
ことぶく

もと

國も



あん
ぜん
めで
たく

爰に
かきをきむ
めでたし/\/\
筆者
藍庭青牛

(左頁略)

 

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「続き」貝鉦の音、鬨の声、「ああら心地良や」と見やる印は二つ引両、和田左衛門を始めとして紙崎小膳以下の忠臣、小手脛当に身を固め、十重二十重に囲みしは逃るべう(べく)は見えざりけり。紙崎声掛け「主人を弑し、家国を奪わんと謀る極悪人、刃物を用いず竹槍にてなぶり殺し、それ者共!」と言葉の下、茅花(つばな)の穂先と突き出だせば、何がは以て堪るべき、大杉はお来を一刀に切り殺し、刀逆手に取り直すを、四方より竹槍にて突き通され腹切る事も叶わずして、七転八倒野垂死、主君の天罰心地良き。

○赤松三郎滅びしかば、その余の残党も散り散りにんり行く。今は足利家へ仇を課すもの無く、京都より御沙汰として、伯父典膳死罪一刀を許され比企谷(ひきがやつ)へ長く押し込めとなり、継目の綸旨、将軍家へ差し上げ、花若丸めでたく御家督あり、鎌倉二代の管領と仰がれ給う。これ偏に紙崎二代の尾上が忠心に依る所と、重く恩賞ありて、君臣全く家富栄え、足利の御代永久と千代を寿く竹本の国も豊に民安全、目出度くここに書き置きむ。めでたし、めでたし。