二代尾上忠義伝 六段目つづき(その1)

 

読んだ本 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10301710

 

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「つゞき」ふぎのせんぎはおつぼね様からおさきへと
えんしよのせうこをいひ立られさすがの
岩藤せんかたなく此ばはこれぎりに
立わかれける折からつくるおかへり
ぶれあまたの女中ちうらう
をのへついのぼうしのいちやうに
むれいるさぎや鳥居さき
わしの善六岩藤のまへに出
「此間仰付られし金子とさし
出せば「くわぶん/\とうちみやり
「むさくろしいものつぼねのとり
あつかふやくじやないその金は

 

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 しんみやうのさはにわた
しやといはぬいろなる
山吹のつゝみとり
出し善六が「アゝ
町人はいやしい
もの神仏より
たつとう思ふ
此金をむさ
くろしいと
お手にも
ふれぬさすが
おれき/\殿
うなるほど
金もつ
ても
アゝ町人
といふ
ものは
なアト
つぶやき/\
おやしき
さして
いそぎ 行
あと見
おくりて
岩藤が「アノ
しやうぢきな
善六

 

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町人は
いや
しい
もの と
かん
しん
した
今の
やう す

これは
したり
わしとしたことが
つか/\とこなた
にはさしあひで
あつたものきの
どくなイヤ尾上殿
こな様の宿は金
持んじゃれど町人
かりおやしての
御奉公今わしが
いふた事「上へ」

 

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「それがし とても
心はおなじ たゞ
何事もじせつを
また
れよ

 

「下より」
気にあたりは
しませぬかとあぢな
とこからしかけるけんくわ
「何のまアわたくしが
きにさはるのなんのと
申ことがござりませう
仰の通り町人の身で
此やうなありがたい御奉公「次へ」

「モシもとめ
殿 かな
らずかはつて下さり
ますな

 

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不義の詮議はお局からお先へと艶書の証拠を言い立てられ、さすがの岩藤詮方なく、この場はこれ切りに立ち別れける。折から作るお帰り触れ、数多の女中、中老尾上、対の帽子の一様に群れ居る鷺や鳥居先。鷲の善六、岩藤の前に出で、「この間仰せ付けくれし金子」と指し出だせば、「過分、過分。」と打ち見やり、「むさ苦しいもの局の取り扱う役じゃない。その金は針妙の沢にわたしゃ」と言わぬ色なる山吹の包み取り出し善六が「ああ町人は賤しいもの。神仏より貴う思うこの金を、むさ苦しいとお手にも触れぬ、さすがお歴々様、唸るほど金持っても、ああ町人というものはなあ」と呟き呟きお屋敷指して急ぎ行く。あと見送りて岩藤が「あの正直な善六、町人は賤しいものと、感心した今の様子。これはしたり、わしとした事が、つかつかとこなたには指し合であったもの、気の毒な、いや尾上殿、こな様の宿は金持ちなれど町人、仮親しての御奉公、今わしが言うた事、気にあたりはしませぬか」と、味なとこから仕掛ける喧嘩。「何のまあ、わたくしが気に障るのなんのと申す事がござりましょう。仰せの通り、町人の身でこの様な有難い御奉公、「次へ」


左ページ上の科白
求馬「某とても心は同じ。只何事も時節を待たれよ」
早枝「もし、求馬様、必ず変わって下さんすな」