仮想空間

趣味の変体仮名

黄素妙論

 

読んだ本 https://dl.ndl.go.jp/pid/2541834/1/2

 

松永久秀が愛読した養生本ということで読んでみたのですが、男女の営みを健康法として捉えた指南書でした。騙したな。持主の村上氏でしょうか、甞てこの本を所蔵していた方が実践に及んでいた形跡が漢方の使用法のところに残っており、それを見てちょっと「ふふっ」となってしまった。健康指南は、黄帝問うて宣わく、素女答えて云く、の問答形式で語られます。なので「黄素妙論」とは黄帝素女の妙なる論議という意味だと思われます。

 

 

2

○黄素妙論

むかしくはうていそちよにとふて

のたまはく・いにしへのせいじんはいの

ち・あるひは千二百さい・あるひは

八百さいをたもち・中ころにいた

りても・百廿さいをたもてつに・いま

どきはとく・数十歳にしてほろふ

それのみにあらすむひやうなるもの

 

黄帝素女に問うて宣わく、古の聖人は命、或いは千二百歳、或いは八百歳を保ち、中頃に至りても百二十歳を保てるに、今時は疾(とく)数十歳にして滅ぶ。それのみにあらず、無病なる者

 

 

3

すくなく・こしつのものおほし・か

くのことく寿夭大安危の不同あ

る事は・いつれのいはれぞや

○せぢよこたへていはく・それようせう

にして・やまひおほく・あるひは・なへ

にしてひいでず・ひいでみのらざる

はそのちゝひかずにしてたねをお

ろし・そのはゝたいをうけてのち・もろ

 

/\の事をつゝしまさるいはれ

なり・又ちゝはゝもけんこにして・その

こ・ようせうの時むびやうなりといへ

とも・廿卅になりてよりのち・ぜん/\

にびやうじやとなり・ひはづなるは・其

身ぶやうじやうなるいはれなり・それ

やうじやうとつは・いんしよくのほう

やう・おとこをんなのましはり・たゝ此

 

少なく、痼疾の者多し。かくの如く寿夭安危の不同有る事は、何れの謂れぞや。
素女答えて曰く、それ幼少にして病多く、或いは苗にして秀でず、秀で実らざるは、その父日数(秀ず?)にして種を下ろし、その母胎を受けて後、諸々の事を慎まざる謂れなり。又、父母も堅固にして、その子、幼少の時、無病なりと言えども、二十、三十に成りてより後、漸々(ぜんぜん)に病者と成り、繊弱(ひはづ)なるは、その身、無養生なる謂れなり。それ養生といつ(言つ・出つ?)は、飲食の保養、男女の交わり、ただこの

 

 

 

4

二にきはまれり・まさにせうねんさう

ねんの時は・けつきすてにじゆんたく

にしてこつずいまことにけんご也

此じぶんいんしよくをつゝしみ・くは

うかうをとをくいたさは・なにのやまひ

ありてか来り・いかんしてながいきを

えさらんや そんしまいらせそうろう

○くはうていとふてのたまはく・おとこ

 

をんなのましはり和違いかん

○そぢよこたへていはく・それてんち

いんやうかうがうしては万物をしやう

じ・なんによのいんやうましはりあひて・

しそんをしやうす・しかるあひだ・てん

地のいんやうましはらざる時は・四時な

らすばんもつしやうぜす・男女のいん

やうあはさる時はじんりんめつして・し

 

二つに極まれり。正に少年、壮年の時は、血気既に潤沢にして、骨髄誠に堅固なり。この時分、飲食を慎み、交合を遠く致さば、何の病有りてか来たり。如何にして長生きを得ざらんや、存じ参らせ候。
黄帝問うて宣わく、男女の交わり和違、如何に。
素女答えて曰く、それ天地陰陽交合しては万物を生じ、男女の陰陽交わり合いて、子孫を生ず。而る間、天地の陰陽交わらざる時は、四時ならず万物生ぜず。男女の陰陽合わざる時は人倫滅して子

 

 

5

そんたゆる・しかりといへともくはいがう

するにひでんのようじゆつあり・これ

まことにやうじやうのおうぎ・やまひを

いやすめうだうなり。いまこと/\くこれ

をのへん・ふかくつゝしみて・見たりに

人にしめすべからす・それ女人のいん

ねんいたらざるあひたは・おのこしい

てましはるへからす・をんないんよくの

 

せいねんいたるしるし五あり

一にはおとこ・をんな・ひそかにたいめん

しものかたりなとするに・にはかに

をんなのおもてあかくなるは・心の中に

いんじのねんきさすしるしや・その

時なんしのたまぐきを女のぎよくもん

にあてがふへし

二にはをんなはなをすゝらは・よくねん

 

孫絶ゆる。然りと言えども交合するに秘伝の要術有り。これ誠に養生の奥義、病を癒やす妙道なり。今悉くこれを述べん。深く慎みて、濫りに人に示すべからず。それ女人の陰念至らざる間は、男強いて交わるべからず。女淫欲の情念到る徴五つ有り。
一つには男女密かに対面し、物語などするに、俄に女の面赤くなるは心の中に淫事の念兆す徴也。その時男子の玉茎の玉門に充てがうべし。
二つには女鼻をすすらば、欲念

 

 

6

はいのざうにうこくとしるへし・すな

わち玉くきを少入へし

三にはをんな・めをふさぎくちをあき

したをさまし・いきつかひあらくな

らは・いんせいひのざうにいたるとしる

へし・其時ゆる/\とたまくきを

出入すへし・あまりにふかくいれへ

からす

 

四には女のきよくもんの中・あたゝか

にうるほひゆたかにしてほかにな

かればじんきのいたると心へて玉かと

のくちへたまぐきをぬき出し左

右をよこにづくへし

五には女のあしにて・おとこのこしをは

さみ・をんなのてにておとこのせなか

をいたきしめ・くちをすはん事を

 

肺の臓に動くと知るべし。即ち玉茎を少し入るべし。
三には女、目を塞ぎ、口を開き、舌を冷まし、息遣い荒くならば、陰情の脾の臓に到ると知るべし。その時ゆるゆると玉茎を出入りすべし。余りに深く入れべからず。
四には女の玉門の中温かに、潤い豊かにして外に流れば、腎気の到ると心得て玉門の口へ玉茎を抜き出し左右を横につくべし。
五には女の足にて男の腰を挟み、女の手にて男の背中を抱き締め、口を吸わん事を

 

 

7

もとめば・かんのざうのきいたると

心えて玉ぐきをふかくぎよくもんの

おくにさしつめてしづかに左右(ひだりみぎ)を

こづべし以上かくのことく五ざうに

いんよく・せいいんのいたるをしりて

しつかにひじゆつをおこなつて・女

人びくはいのせいじゆうおほくなか

れて玉かとのおくびくめきうこく

 

事やみ・をんなためいきをつき・

しめたるてあしくつろく時・おとこ

のたまくきをぬくべし・もし此

とき女のかたよりしりをもちあけ・し

きりにすりまはりて・こえをいだし

うめくとも・おとこあはてゝあらくぬ

きさしをすへからず・かくのごとくして・

おとこせいじゆうをばつねにたもちて

 

求めば、肝の臓の効いたると心得て玉茎を深く玉門の奥に挿し詰めて静かに左右をこづべし。以上斯くの如く五臓に淫欲、情念の到るを知りて静かに秘術を行って、女人美快の精汁多く流れて玉門の奥びくめき、動く事止み、女ため息をつき、締めたる手足寛ぐ時、男の玉茎を抜くべし。もし、この時女の方より尻を持ち上げ、頻りに擦り回りて声を出し呻くとも、男慌てて荒く抜き差しをすべからず。斯くの如くして男精汁をば常に保ちて

 

8

みたりにしば/\もらすへからす・もし

五ざうのきいたらさるに・なんしし

いてたまぐきをさし入・たまかと

もいまだうるほはざるに・きびし

くいでいでいりをいたせば・なんしのせいじゆ

う・はやくもるゝもの也・たとへは・む

なしくたからをすてゝ・ようにたてさ

ることし・よく/\此ことはりを心

 

えて・たへなるみちをおこなふひとは・

ひやうほうじやのこだちにて・もろ/\

のたうぐをおさめ・一人してばんて

きにかつがことし・おとこわかくさかんな

るとき・玉ぐきしば/\おゆるにまか

せ・しげくましはりあふといへとも・此み

ちをまなひなき人なれは・むりにせい

しゆうのみをもらして・ぎよくもんび

 

みだりに屡々洩らすべからず。もし五臓の気到らざるに男子強いて玉茎を差入れ、玉門も未だ潤わざるに酷しく出入りを致せば男子の精汁早く漏るるもの也。例えば虚しく宝を捨てて用に立てざる如し。よくよくこの理を心得て妙なる道を行う人は、兵法者の小太刀にて諸々の道具を納め、一人して万敵に勝つが如し。男若く盛んなる時、玉茎屡々生ゆるに任せ繁く交わり合うと言えども、この道を学び無き人なれば、無理に精汁のみを漏らして玉門美

 

 

9

くはひのところにもあたらず・をんな

のせいきもやらしめぬは・たとへは

てきにあふてうすでをもおほせずし

て・むなしくいぬじにをするがごとし・

又をんなのよくしんすでにうごきて

たまかどはりふくれ・うるほひほかに

ながれいつるに・おとこたまくきおえ

ずして・をんな心のそこののぞみをか

 

なへざれば・しだひにそのおとこをに

くみきらふ心いてくるものなり

○くはうていとうてのたまはく・まじはり

あふにそのほうあまたありや

○そぢよこたへていはく・かたじけなくも

せいもんをうけていかてかこたへさ

らんや・いんらんのせつにあらす・かうがう

のおくでんやうじやうのしんじゆつ也

 

快の所にも当たらず女の精気もやらしめぬは、例えば敵に会うて薄手をも果せずして虚しく犬死にするが如し。又、女の欲心既に動きて玉門張り膨れ、潤い外に流れ出るに、男玉茎生えずっして女の心の底の望みを叶えざれば、次第にそのとこを憎み嫌う心出で来るものなり。
黄帝問うて宣わく、交わり合うに、その法数多有りや。
素女答えて曰く、忝くも聖門を受けて、如何でか答えざらんや。淫乱の説に非ず、交合の奥伝、養生の神術也。

 

 

10

しかれはましはりのみちに・事のほう

五あり

 

 第一 龍飛製(りうひせい)

をんなをあふのきにふさして・その

またをひらかしめ・なんしそのもとの

あひたにより・はらのうへにかゝり

ふし・まずくちをすふへし・をんなは

こしをはり玉かとをもりあけ・たま

 

ぐきをうくべし・おとこは玉ぐき

にて玉かとのあはせめをなてゝ・う

るほへるにしたかつて・しつかにたま

ぐきをいるゝなり・しかうじて女のいん

ねんもはなはたうごきて・五ざうのき

もいたらは・しつかにたまくきをうこ

かし・八しん六せんのほうを・おこなふ時

ふうふともにたのしみ・百びやうた

 

然れば交わりの道に事の法、五つ有り。

 第一 龍飛製(りゅうひせい)
女を仰向けに伏さして、その股を開かしめ、男子その元の間に寄り腹の上に掛かり伏し、先ず口を吸うべし。女は腰を張り玉門を盛り上げ、玉茎を受くべし。男は玉茎にて玉門の合わせ目を撫でて、潤うに従って静かに玉茎を入るる也。而して女の陰念も甚だ動きて五臓の気も至らば、静かに玉茎を動かし、八深六浅の法を行う時、夫婦ともに楽しみ、百病た

 

 

 

11

ちまちきえうせぬ

 

 ○第二 虎歩勢(こほせい)

女人をうつぶきにははしめ・おとこ

そのしりへにかしこまり・をんなのこ

しにとりつき・すなはち玉ぐきを

いれへし・五せん六しんのほうをおこ

なふ時・たまかとはりふくれ・しんえき

外になかれ・ぎよくもんのうちやはら

 

かなるものなり・おとこの心ゆるくの

ひをんなよろこひてたかひにけつ

みやくつふす

 

 ○第三 猿摶勢(えんはんせい)

なんしざしてれうのもゝをあはせ

れうのあしをそろへさし出す・をんな

両のもゝをひらきおとこのひざの上

にざし女の二つのあしにて・おとこの

 

忽ち消え失せぬ。

 ○第二 虎歩勢(こほせい)
女人俯きに這わしめ、男その尻江に畏まり、女の腰に取り付き即ち玉茎を入れるべし。五深六浅の法を行う時、玉門張り膨れ、津液外に流れ玉門の内柔らかなるもの也。男の心緩く伸び、女喜びて互いに血脈通ず。

 ○第三 猿摶勢(えんはんせい)
男子座して両の腿を合わせ両の足を揃え差し出す。女両の腿を開き男の膝の上に座し女の二つの足にて男の

 

 

12

こしをはさみ・すなわちれういん和合

して・たまかとうるほふ時・玉ぐきを

さし入へし・おとこのてにて・女のしり

をかゝへ九しん五せんのほうをおこなふ

時・しんえきなかれいてゝ百びやうやかて

いゆ

 

 ○第四 蝉付勢(せんふせい)

をんなうつふきにふし両のてをつき

 

ひだりのあしをさしのへ・みぎのあし

をかゝめて・おとこそのしりへにひざ

まつき・すなはち玉くきをさし入

て・しやくしゆをたゝき七しん八せん

のほうをおこなふへし玉かとをひ

つみはるによつて・おもひの外なると

ころにあたり・のこりなくせいじゆうを

いだす也

 

腰を挟み即ち両陰和合して玉門潤う時玉茎を差入るべし。男の手にて女の尻を抱え九深五浅の法を行う時、津液流れ出て百病やがて癒ゆ。
 
 ○第四 蝉付勢(せんふせい)
女俯きに伏し両の手を突き、左の足を差し伸べ、右の足を屈めて、男その尻江に跪き即ち玉茎を差入れて赤珠を叩き、七深八浅の法を行うべし。玉門を歪み張るによって思いの外なる所に当たり、残り無く精汁を出だす也。

 

 

13

 ○第五 亀騰勢(きそうせい)

によにんをあふのきにふさしめ・お

とこの両のてにて女のれうあしを

とらへ・をんなのちのとをりまて女の

あしをからめ・すなはち玉くき

をさしこむ時・をんなのよくせいをの

つからどうじてびくはひをきは

め・えきじゆうなかるゝ事かきり

 

なし

 

 ○第六 風翔勢(ふうせうせい)

をんなゆかのうへによこさまにあふ

のきにふさしめて・みつから両手のてにて

れうのもゝをかゝへ・両のあしをはら

のうへにからめをく・おとこはゆかの

したより立なから・玉くきをふかくさし

入てぎよくもんのおくをひだりみぎ

 

 ○第五 亀騰勢(きそうせい)
女人を仰退きに伏さしめ、男の両の手にて女の両足を捉え、女の乳の通り迄女の足を絡め、即ち玉茎を差し込む時、女の欲精自ずから動じて美快を極め、液汁流るる事限り無し。

 ○第六 風翔勢(ふうせうせい)
女床の上に横様に仰退きに伏さしめて、自ら両の手にて両の腿を抱え、両の足を腹の上に絡め置く。男は床の下より立ちながら玉茎を深く差入れて玉門の奥を左右

 

 

14

をこづべし・女をのつからこしをさう

にうこかすとき・九しん八せんのほうを

おこなふへし・まことに此せいは・いん

やうひじゆつのくでん也

 

 ○第七 兎吮勢(といんせい)

おとこあふのきにふし両あしをさし

のへ・女はおとこのもゝのうへにのり・

をんなのおもて・おとこのあしくび

 

のかたにむかふへし・女のてにてたま

ぐきをにきり・ぎよくもんにあてゝ

きんげんにのぞましめ・うるほひを

なす時・ふかくさし入て・せんしんのほう

をおこなふへし・をんなの心の中

ひくはいひなる事たぐひなし

 

 ○第八 魚接勢(きよせつせい)

をんな二人をもちいるほう也・ひとりの

 

を小突べし。女自ずから腰を左右に動かす時、九深八浅の法を行うべし。誠にこの勢は陰陽秘術の口伝也。

 ○第七 兎吮勢(といんせい)
男仰退きに伏し両足を差し伸べ、女は男の腿の上に乗り、女の面、男の足首の方に向かうべし。女の手にて玉茎を握り玉門に当てて琴弦に臨ましめ潤いを成す時、深く差入れて浅深の法を行うべし。女の心の中美快なる事類いなし。

 ○第八 魚接勢(きよせつせい)
女二人を用いる法也。一人の

 

 

15

をんなをはあふのきにふさしめて

もゝをひらき・一人の女はおとこの

ましはりあふときのことく・うつふして

むねをあはせ・あふのきたるをんなの

もゝのあひたにかしこまり・ふたりの

女のきよくもんをあはせ・たがひに

いだきあひ・おとこはふたりの女のしり

へにかしこまり・上下のぎよくもん

 

をなかめ・ふくれうるほふ時・まつした

の女のぎよくもんに・たまぐきを

さし入て・しつかに出入するものなり・

うへのぎよくもむうらやみを・おこし

しんえきはなはだながるゝ時・すなはち

うへの玉かとにさしうつして・しつ

かにせんしんのほうをおこなふ・又下の

ぎよくもんうらやみをなしすりまわる

 

女を仰向けに伏さしめて腿を開き、一人の女は男の交わり合う尅のごとく俯して胸を合わせ、仰向けたる女の腿の間に畏まり、二人の女の玉門を合わせ互いに抱き合い、男は二人の女の尻江に畏まり、上下の玉門を眺め、膨れ潤う時、先ず下の女の玉門に玉茎を差入れて静かに出入りするものなり。上の玉門も羨みを発し津液甚だ流るる時、即ち上の玉門に差し移して静かに浅深の法を行う。又、下の玉門羨みを為し擦りまわる

 

 

16

とき・又したの玉かとにたまくきを

さしうつして・ゆるくせんしんのほう

をおこなふ・かくのごとくして・おとこ

のせいじゆうをはかたくもちて・あはてゝ

もらすべからす・まことに此ほうむねの

うちの・つもるきをはらひ・一さいのや

まひをしりぞくるなかだち也

 

 ○第九 靏交勢(くわくかうせい)

 

をとこかべによりかゝりているをんな

のてにておとこのくびをひきよせ・女

のみぎのあしにて・おとこのこしをう

ちまとふ・おとこのみぎのてにて・女の

ひたりのもゝをおしあけ・女のあし

くびをおとこのひだりのかたにうち

かけさせふたりの身をしとゝあはせて・

女のてにて・たまくきをにぎり・ぎよく

 

時、又、下の玉門に玉茎を差し移して緩く浅深の法を行う。斯くの如くして男の精汁をば堅く持ちて、慌てて洩らすべからず。誠にこの法胸の内の積もる気を払い、一切の病を退くる仲立ち也。

 ○第九 鶴交勢(かくこうせいせい)
男壁に寄り掛かりている女の手にて男の足首を引き寄せ、女の右の足にて男の腰を打ち纏う。男の右の手にて女の左の腿を押し上げ、女の足首を男の左の肩に打ち掛けさせ、二人の身をしとどに合わせて玉茎を握り、玉

 

 

17

もんにあてがひばくしにおよばしめ

て・玉かともしきりにうるほひ・たまく

きはなはだかたくは・こくしつにさし

こみてしづかにうごかし・九せん一しん

のほうをおこなふ・玉かとびくはいのと

ころにしぜんにあたるとき・しんえ

きなかれいづる事かきりなし

おとこ・女ともにきめぐり・ちつふし

 

てもろ/\のやまひ・たちまちいゆ

るなり

○くはうていのたまはく・九せいのよう

じゆつすでにきく事をえたりいん

やうましはりのみちに・出入にせん

しんのじゆつりかいそんえきのほう

ありときく・ねかはくは・われにこ

れをつげよ

 

門に充てがい麦歯に及ばしめて、玉門も頻りに潤い玉茎甚だ堅くば、谷実(五寸)に差し込みて静かに動かし九浅一深の法を行う。玉門美快の所に自然に当たる時、津液流れ出ずる事限りなし。男女ともに気巡り、血通じて諸々の病、忽ち癒ゆる也。

黄帝宣わく、九勢の要術既に聞く事を得たり。陰陽交わりの道に出入りに浅深の術利害損益の法有りと聞く。願わくば我にこれを告げよ。

 

 

18

○そぢよこたへていはく・それをんな

のびくはひならしむる事あなが

ちふかく入るにもよらす・又たまく

きの大なるをこのむにもあらす・あ

るひはそのときのけうにより・あ

るひはそのをんなのこのむとこ

ろにあたる時・ひくはひなる事

かきりなし・そのときはぜんこを

 

ばうきやくし・はちをもおほえ

ず・かんにたへかねて・はをくいつ

め・身をすくめふるはかし・はないき

あらく・めをふさき・そゞろに

こえを出しおもてあかくねつし

しんえきおほくなかるゝもの也

 ○一寸入を琴弦(きんけん)といふ

 ○二寸入を菱歯(はくし)といふ

 

素女答えて曰く、それ女の美快ならしむる事、あながち深く入れるにも依らず。又、玉茎の大だるを好むにも非ず。或いはその時の興に依り、或いはその女の好む所に當る時、美快なる事限りなし。その時は前後を忘却し恥をも覚えず、耐え兼ねて歯を食い詰め身をすくめ震わかし、鼻息荒く目を塞ぎ、そぞろに声を出し面赤く熱し津液多く流るるもの也。

 ○一寸入を琴弦(きんげん)という。 

 ○二寸入を菱歯(ばくし:麦歯)という。

 

 

19

 ○三寸入を嬰鼠(えいそ)といふ

 ○四寸入を玄珠(けんしゆ)といふ

 ○五寸入を谷実(こくしつ)といふ

 ○六寸入を愈鼠(ゆそ)といふ

 ○七寸入を昆戸(こんと)といふ

 ○八寸入を北極(ほくごく)といふ

以上かくのことくせんしんに八のなあり

しかるにましはりのみち・ふかくいるゝ

 

事を一せつにいむなり

一 こくしつにつねにいたらしむれは

  かならすかんをやふるゆへに・めを

  やみ・なみたをなかす

二 ゆうそにつねにいたれは・はいのさうを

  やふりてこゝちわるく・からえつきし

  て・こしをいたましむ

三 こんとにしげくいたれは・かならすおも

 

 ○三寸入を嬰鼠(えいそ)という。

 ○四寸入を玄珠(げんじゅ)という。

 ○五寸入を谷実(こくじつ)という。
 ○六寸入を愈鼠(ゆそ)という。

 ○七寸入を昆戸(こんと)という。

 ○八寸入を北極(ほくごく)という。

 

以上、斯くの如く浅深に八つの名有り。然るに交わりの道、深く入るる事を一説に忌む也。

一、谷実(こくじつ)に常に至らしむれば、必ず肝を破る故に、目を病ましめ涙を流さしむ。
二、愈鼠(ゆそ)に常に至れば、必ず肺の臓を破って心地悪く、空悦喜して腰を痛ましむ。
三、昆戸(こんと)に繁く至れば、必ずおも

 

 

20

  てのいろきにして・こししひれ・もゝ

  すくみ・はらいたむ・ひのざうにあたる

四 ほくこくにいたらしむれは・しんの

  ざうをやふり・おとこをんなともにや

  まひをしやうず・又はなはだ・いそか

  はしく・玉くきを・出入し・すこやか

  におこなふ事をきらふなり・あいて

  いそくときは・かならす・きのみちを

 

  やふり・むねのうちに・もろ/\のや

  まひをしやうず

○くはうていとふてのたまはく・八しん

六せん九せん一しんとはなにといふ事

にや  ○せいぢよこたへていはく・八しん

六せんとはふかくさしいれて・いき八そく

をつきあさくぬきあけていき

六そくをつくなり・ふかく入て八たび

 

て(面)の色、黄にして、腰痺れ、腿すくみ、腹痛む。脾の臓に中る。
四、北極(ほくこく)に至らしむれば、心の臓を破り男女ともに麻痺を生ず。又甚だ忙わしく玉茎を出し入れ  し、健やかに行う事を嫌う也。相手急ぐ時は必ず気の道を破り、胸の内に諸々の病を生ず。

黄帝問うて宣わく、八深六浅、九浅一深とは何かという事ぞや。 

素女答えて曰く、八深六浅とは深く差入れて、息(いき)八息(そく)をつき、浅く抜き上げて、息六息をつく也。深く入れて八度

 

 

21

つき・あさくぬいては・六たひつくこと

にはあらす・あさくとは・きんけんより・

けんしゆにいたるをいふ・ふかくとは・えい

そより・こくしつにいたるをいふ

みぎ此あさくふかきひじゆつをこゝえお

えて・つねにおこなふへし・はなはだ

あさきときは・女のこゝろびくはいなら

ず・あまりふかき時はおとこ・をんなの

 

ために・とくとなることおなし

○くはうていとつてのたまはく・おとこ・女

ましはりあふみちに・五しやうのほう

ありとはいつれにや

○そぢよこたへていはく

一にぎよくもんふくれず・うるほはざる

あひだは・たまぐきをいれるべからす・し

いているゝときは・はいのさうをやふる

 

突き、浅く抜いては六度突く事には非ず。浅くとは琴弦(きんげん)より玄珠(げんじゅ)に至るを言う。深くとは嬰鼠(えいそ)より谷実(こくじつ)に至るを言う。
右これ浅く深き秘術を心得て常に行うべし。甚だ浅き時は女の心美快ならず、余り深き時は男女の為に毒と成る事多し。

黄帝問うて宣わく、男女交わり合う道に、五傷(しょう)の法有りとは何れぞや。
素女答えて曰く、
一に、玉門膨れず、潤わざる間は必ず玉茎を入れるべからず。強いて入るる時は肺の臓を破る。

 

 

22

二にをんなのいんせいすでにうこくと

 いへとも・おとこそれをもしらず・やうや

 くをんなの心のうち・けうつき・とき

すぎて・ましはりあふときは・かならす

ながちのやまひとなる

三にわかくさかんなるをんなに・としおひ

 たるおとこあひて・玉くきかたからず・

 なまじひに・すこしおゆるといひて

 

 しいてましはりあひ・せいじやうをも

○らせは・めんをやみついにまうもく

 となる

四にをんなの月水いまたやまさ

るに・しいて交合すれは・たかひ

にじんをやふる

五におとこ・事の外さけにえひて・かう

がうし・をんなのびくはいなる事

 

二に、女の陰精すでに動く(動かず?)と言えども、男それをも知らず、漸く女の心の内、興尽き、時過ぎて、交わり合う時は、必ず長血の病と成る。


三に、若く盛んなる女に、年老いたる男合いて、玉茎堅からず、生強いに少し生ゆると言いて、強いて交わり合い精汁を漏らせば、目を病み、終に盲目と成る。


四に、女の月水未だ止まざるに、強いて交合すれば、互いに腎を破る。


五に、男、事のほか酒に酔いて交合し、女の美快なる事

 

 

23

 すき・をはりたるに・久しく出入

 を・おこなふ時は・かならずおもて

 きなるやまひをしやうず

○くはうていとふてのたまはく・をん

なのいんせいに十のおもひうかふ

といふ・しるしありとはいつれそや

○そぢよこたへていはく

一にはおとこえひふしたるに・をんな

 

 ひそかに玉くきをにきり・そろ/\

 とうごかしみつからきよくもんを

 よする事あらは・女の心野中

 にいんねんきざすいはれ也

二にはをんなの・おとこにあふたひ

に・ことばにてたはふれ・めにて

こゝろをかよはす事あらば・いん

よくうごくとしるへし

 

過ぎ終わりたるに、久しく出入りを行う時は、必ず面(おもて)黄なる病を生ず。

黄帝問うて宣わく、女の陰精に十の思い浮かぶという印有りというは何れにや。
素女答えて曰く、

一には、男酔い伏したるに、女密かに玉茎を握り、そろそろと動かし、自ら玉門を寄する事あらば、女の心の中に陰念兆す謂れ也。

二には、女の男に会う度に言葉にて戯れ、目にて心を通わす事あらば、淫欲動くと知るべし。

 

 

24

三にはをんなのあしのゆびにて

 たまぐきをはさみ・しむる事

 あるは・いんしをもよほすとしる

 へし

四にはおとこ・をんな・たかひに久し

 くこゝろをかよはし・まれにあふ

 て・すてにましはる時・をんな・しつ

 かに/\といはゞ・おとこのせいじゆう

 

 はやくもれん事を・かねてかなし

 むとこゝろへて・しつかに・せんしん

 のほうを・おこなふて・久しくたゝ

 かふへし

五に人なくしつかなるところにたゝ

 二人いて・をんなのいきあらくな

 りて・おもての色あかくなるは・いん

 じのねんきざすとしるべし

 

三には、女の足の指にて玉茎を挟み締むる事あるは、淫事を催すと知るべし。

四には、男女互いに久しく心を通わし、稀に会うて既に交わる時、女静かに静かにと言わば、男の精汁早く漏れん事を、兼ねて悲しむと心得て、静かに浅深の法を行うて、久しく戦うべし。

五に、人無く静かな所に只二人居て、女の息荒くなりて面の色赤くなるは、淫事の念兆すと知るべし。

 

 

25

六におとこをんなすでにかう/\゛する

 に・をんなのてにて・おとこのせなか

 をきびしくしめ・下よりうごき

 はたらき・上下ひだりみぎへすり

 まはらば・びくはいのさかりとこゝろ

 て・おとこのかたよりも・つよくぬき

 さしをせよとのしるし也

七にましはりあふ時・をんなあふのき

 

 にふして・手あしをさしのべ・うこか

すといふとも・はなはた・いきあらく

して・あしの大ゆひをそらさば・こゝ

 ろのうちに・びくはひはなはたかきり

 なしとしるへし

八にましはりあふときをんなみづから

 ふたつのてにてふたつのあしをも

ちあけ・ぎよくもんをさしあけて

 

六に、男女既に交合するに、女の手にて男の背中を酷しく締め、下より動き働き、上下左右へスリ回らば、美快の盛りと心得て、男の肩よりも強く抜き差しをせよとの徴なり。

七に、交わり合う時、女仰退きにに伏して手足を差し伸べ動かすというとも、甚だ息荒くして脚の大指を反らさば、心の内に美快甚だ限りなしと知るべし。

八に、交わり合う時女自ら両の手にて両の足を持ち上げ、玉門を差し上げて

 

 

 

26

 たまぐきのいづるをおしみ・し

たびに・おとこのつくとき・しかと

 こたふるは・いんねんはなはだうご

 きて・玉かとのおくのそこに・たま

 ぐきのいたらん事をのそむと

 しるへし

九にましはりあふ時・女えゝるがごとく

 玉ぐきをぬかせず・おとこのこしを

 

 てあしにて・ひし/\としめて・み

 つからたてよこにこぢ・こえを

 出して・われをわすれば・たまか

 との中に・かゆきところありて・玉

 くきにあたるとしるへし

十にくはうがいうのとき・おとこしつかに

 せんしんのほうをおこなふ時・をん

 なみつからとうようしすてにきう

 

玉茎の出ずるを惜しみ、次第に(四度に?)男の突く時、しかと応うるは、淫念甚だ動きて玉門の奥の底に玉茎の至らん事を望むと知るべし。

九に、交わり合う時、女酔えるが如く玉茎を抜かせず、男の腰を手足にて、ひしひしと締めて自ら縦横に抉じ、声を出して我を忘れば、玉門の中に痒き所有りて玉茎に当たると知るべし。

十に、交合の時、男静かに浅深の法を行う時、女自ら動揺し既に急

 

 

27

 にもちあげ・おとこのこしをかゝへ・

 下よりしきりに・ぬきさしをなさ

 は・びくはひのきはまりぬと心へて・

 たまかとのおくの・ひたり・みぎに

 たまくきをあたらしめ・玉かとより

 しんえきのおほく出るをまちて・

 しづかにたまくきをぬくへし

○くはうていとふてのたまはく・おとこ

 

をんな・こんがうせしむるに・しせつ

のぜんあくましはりに・きつけう

ありや  ○そぢよこたへていわく

 ○天地しんどう  ○大風  ○急雨

 ○らいでん  ○つごもり  ○朔日

 ○大かん  ○大しや  ○日しよく

 ○月しよく  ○かのへさる  ○甲子

 ○立春  ○立夏  ○立秋  ○立冬

 

に持ち上げ、男の腰を抱え下より頻りに抜き差しを為さば、美快の極まりぬと心得て玉門の奥の左右に玉茎を当たらしめ、玉門より津液多く出るを待ちて、静かに玉茎を抜くべし。

黄帝問うて宣わく、男女婚合せしむるに時節の善悪交わりに吉凶有りや。
素女答えて曰く、
 ○天地振動 ○大風 ○急雨 ○雷電 ○晦 ○朔日 ○大寒 ○大暑
 ○日蝕 ○月蝕 ○庚申 ○甲子 ○立春 ○立夏 ○立秋 ○立冬

 

 

28

 ○春分  ○秋分  ○夏至  ○五月五日

 ○冬至

みぎ此・日・時は・かならすましはり

あふへからず・もしあやまつてまし

はりあふときは・てんちそのいのち

をうばふ也

 ○じんじや  ○ぶつかく

 ○せいけんの像前  ○いど  ○かまど

 

 ○くり屋のほとり  ○日月光下

みぎ此まへにてましはるへから

す・もしあやまりてましはるとき

は・きじん・かならすその身にわさは

ひをなす

 ○うきうれいにまこゝろをつく

  したる時  ○ふんぬにきをさか

  のほらしめたる時  ○久しくあり

 

 ○春分 ○秋分 ○夏至 ○五月五日 ○冬至
右この日時は必ず交わり合うべからず。もし誤って交わり合う時は、天地その命を奪う也。

 ○神社 ○仏閣 ○聖賢の像の前 ○井戸 ○竈 ○厨の辺り ○日月光下
右この前にて交わるべからず。もし誤りて交わる時は、鬼神必ずその身に禍を為す。

 ○憂き憂いに真心を尽くしたる時 ○憤怒に気を遡らしめたる時 ○久しく歩

 

 

29

  き・久にたちて・すち・ちから

  をつくしたる時  ○さけにえひ

  ぼうしよくして・はい・いくる

  しめたる時  ○もろ/\のや

  まひ此ころいへて血気いまた

  とゝとはさるとき  ○こをうみ

  ていまた一つきにもならばる

  あひた

 

みきこのおりふしくはいかうす

べからず・もしあやまつてまし

はりあふときは・けつきやふれ・

すぢ・ほね・かはき・おほきなるや

まひとなる・ふかくつゝしむへし

又をんなのかみ・きいろに・かほ・身の

いろはなはだくろく・ほね・たかく・に

くあれ・きはめてやせ・おとこより

 

き久しきに立ちて、筋力を尽くしたる時 ○酒に酔い暴食して肺(脾胃)苦しめたる時 ○諸々の病この頃癒えて血気未だ整わざる時 ○子を産みて未だ一月にも並ばる(満たざる)間
右この折節は会合すべからず。もし誤って交わり合う時は、血気破れ筋骨乾き、大きなる病と成る。深く慎むべし。又女の髪黄色に、顔、身の色甚だ黒く、骨高く肉荒れ極めて痩せ、男より

 

 

30

としたけ・おほくこをうみて・身か

しけ・うるほひなく・こゝろはなは

だたけく・わきのしたくさく・

ぎよくもんかわき・しぶり・しらち・な

がちなとあるをんなには・たまさ

かにもましはるへからす・おもひよら

さるにましはるときは・おとこのた

からをそんするなり・つゝしむへし

 

○くわうていとうてのたまはく・おと

このせいじやうをもらすに・とし

のかすにしたかひてそのほうあ

りや

○そちよこたへていはく・おとこ廿さ

いにいたらは・三日に一たひ・せいをも

らせ・卅さいにいたらは五日に一とも

らせ・四十さいにいたつては七日に一

 

年長け、多く子を産みて、身傾げ、潤い無く、心甚だ猛く、脇の下臭く、玉門乾き、渋り、白血、長血など有る女にはたまさかにも交わるべからず。思い依らざるに交わる時は男の宝を損ずる也。慎むべし。

黄帝問うて宣わく、男の精汁を洩らすに年の数に従いて、その法有りや。
素女答えて曰く、男二十歳に至らば三日に一度精を漏らせ、三十歳に至らば五日に一度漏らせ、四十歳に至らば七日に一

 

 

31

ともらせ・五十よりうへは・十五日に

一たひもらせ・六十よりうへは・しい

てみたりにもらすへからす・いまどき

はみな此ほうをしらす・みたりに

交合して・廿さい・卅さいのさかりな

るしぶんは・一日・一やのあひたに・せい

じゆうを・三と・四たひもらし・あるひ

は・五六とにおよふゆへに・その人

 

としなかはにもいたらすして・かみ・

ひげ・しらかになり・五たいかしけ・い

まだとしよらさるに・すぢ・ほねす

くみ・こしをいため・ついには・も

ろ/\のやまひほうきして・いのち

つゞまるなり・ふかくつゝしむへし

○くはうていとふてのたまはく・をん

なとましはるに・くすりのじゆつを

 

度漏らせ、五十より上は十五日に一度漏らせ、六十より上は強いて濫りに洩らすべからず。今時は皆この法を知らず、濫りに交合して二十歳、三十歳の盛りなる時分は一日一夜の間に精汁を三度四度漏らし、或いは五、六度に及ぶ故にその人、年半ばにも至らずして髪、鬚、白髪になり、五体傾げ未だ年寄らざるに筋骨すくみ、腰を痛め、終には諸々の病蜂起して命縮まる也。深く慎むべし。

黄帝問うて宣わく、女と交わるに薬の秘術を

 

 

32

もつてたへなるきどくをうるこ

とありや

○そぢよこたへていはく・おひたる

をわかくなし・よりきをつよくし・

かはけるをうるほす事・みなこれ

くすりのくのうなり・なんぞ房中(ばうちう)

において・いじゆつなからんや

 

○縁鶯膏(えんわうかう)心のふかき女にもちいへし

 

○ちやうじ(三りう) ○さんせう(四りう)

○さいしん ○りうこつ ○かいへう

 せう ○みやうばん(をの/\すこしにる)

右六いろをこまかにふるひて・なま

なる・みつにて・こねて・おとこをんな

ましはりあふ時・すこしはかりぎよく

もんのおくにいれて・せんしんの

ほうを・おこなふとき・玉かとの中

 

以て妙なる奇特を得る事ありや。
素女答えて曰く、
老いたるを若く為し、より気を強くし、乾けるを潤す事、皆これ薬の功能也。なんぞ房中に於て医術なからんや。

○縁鶯膏(えんおうこう:緑鶯膏=りょくおうこう)心の深き女に用いべし。
○丁子(三粒) ○山椒(四粒) ○細辛(さいしん) ○龍骨 ○海螵蛸(かいひょうしょう) ○明礬(みょうばん) (各々少し煮る)

右、六色を細かに篩(ふる)いて、生(なま)なる蜜にて捏ねて、男女交わり合う時、少しばかり玉門の奥に入れて、浅深の法を行う時、玉門の中

 

 

33

かゆくふくれ・あたゝかにして・みの

しるながれいづる事かぎりな

し・ふかくつゝしむをんなも・人

めをもおもはず・こえを出し・び

くはひのすかたをあらはす也

○玉鎖丹(きよくさたん)なんしのせいじゆうをも

らしめぬ・くすり也

○りうこつ(一ふん) ○かし(一しゆ)

 

○しゆくしや(二しゆ) ○しんしや(五分)

右四しゆをの/\こまかにこにし

てもちのりにて・あつきつぶほと

にぐはんじ・ましはるまへに・七

りうさけをあたゝめてのむへし・

女三五人にあふといふとも・おとこ

のせいじゆうもれさるへし

○如意丹(によいたん)玉かとをよくうるほし

 

痒く膨れ温かにしてみの汁(津液)流れ出(いず)る事限り無し。深く慎む女も人目をも思わず、声を出し美快の姿を現す也。

○玉鎖丹(ぎょくさたん)男子の精汁を漏らしめぬ薬也
○龍骨(一分) ○訶子(かし、一朱) ○縮砂(しゅくしゃ、二朱) ○辰砂(しんしゃ、五分)

右、四種各々細かに粉(こ)にして、餅糊にて小豆粒程に丸(がん)じ、交わる前に七粒、酒を温めて飲むべし。女三五人に合うと雖も男の精汁漏れざるべし。

○如意丹(にょいたん)玉門を良く潤し

 

 

34

あたゝかにふくらかしむくすり也

ざくろのかは ○もつかう

○さんやく ○しやしやうし

○ごシゆゆう

右をの/\こまかにこにして・いつ

れもおなじほどにあはせ・ましはり

あふとき・つばきにてねやして・玉

くきにとろりとぬりぎよくもんに

 

さしいれて・せんしんのほうをおこ

なふへし・おひたるをんなたりと

いふとも・まことにわかきをんなのた

まがどのことくなるへし

○壮腎丹(さうしんたん)おとこのおとろへたる

じんをおきのひ・きりよくをまし・

たまぐきをつよくす

○ちやうかう ○ぶし ○りやうかう

 

温かに膨らかしむ薬也。

○柘榴の皮 ○木香 ○三薬 ○蛇床子(じゃしょうし) ○呉茱萸(ごしゅうゆう)
右を各々細かにして、何れも同じ程に合わせ、交わり合う時唾にて練ねやして玉茎にとろりと塗り玉門に差入れて、浅深の法を行うべし。老いたる女たりと言うとも誠に若き女の玉門の如くなるべし。

○壮腎丹(そうじんたん)
男の衰えたる腎を補い、気力を増し玉茎を強くす。

○丁香 ○附子(ぶし)○良姜(りょうきょう)

 

 

35

○につけい ○さんしゆゆう

○がうふん(をの/\一匁) ○みやうばん

○いわう(をの/\七匁)

右こまかにこにしてねりたるみつ

にてぐはんし・むくれんじほとに

して・くうふくのとき・三りうづゝ

あたゝめざけにてのむへし・もし

つまなきおとこはそつじにのむへ

 

からす

○西馬丹(さいはたん)すぢほねをやしなひ・

たまぐきをなかく大にする也

○ぢんかう ○にうかう ○もつやく

○もつかう ○としし(をの/\五分)

○ういきやう(一分) ○はごし(一匁)

○とうふん(四十ヶ)

右八しゆこにして。ねりたるみつ

 

○肉桂 ○山茱萸(さんしゅゆ) ○蛤文(ごうふん)(各々一匁)
○明礬 ○硫黄 (各々七匁)
右、細かに粉にして練りたる蜜にて丸(がん)じ、無患子(むくろじ)程にして、空腹の時、三粒ずつ温め酒にて飲むべし。もし妻無き男は卒爾に飲むべからず。

○西馬丹(さいばたん)
筋や骨を養い玉茎を長く大にする也。

沈香 ○乳香 ○没薬 ○木香 ○菟絲子(としし) (各々五分)
茴香(一分) ○破故紙(はこし)(一匁) ○桃仁(とうにん 四十個)
右、八種粉にして練りたる蜜

 

 

36

にてこねて・くるみほとにぐはん

じて。くうふくに一りうづゝあたゝ

めざけにてもちいへし・一月にお

よへは・たまぐきふとく・なかく・なり

て・一だんつよくなる也

○寸陰方(すにんはう)をんなのこゝろのそこ

をよろこはしめ・そのおとこをなか

くわすれざらし

 

○じやしやうじ  ○こくつのはい

○につけい(をの/\三分) ○てうぶん(二分)

右四いろこまかにおろして・ましはる

とき・ついきにて・ねやし・たまく

きにぬりて・せんしんのほうをおこ

なふときは・をんなのおとこをおもふ

事あさからす

 

○くすりのこしらへの事

 

にて捏ねて胡桃程に丸じて空腹に一粒ずつ温め酒にて用いべし。一月に及べば玉茎太く長くなりて、一段強くなる也。

○寸陰方(すにんほう)
女の心の底を喜ばしめ、その男を長く忘れざらしむ。

○蛇床子 ○狗骨灰(くこつばい) ○肉桂 (各々三分) ○定粉(じょうふん 二匁)
右四色細かに下ろして交わる時芋茎(ずいき)にて練やし玉茎に塗りて浅深の法を行う時は、女の男を思う事浅からず。

○薬の拵えの事

 

 

37

○ちやじ はなふしをさりそのまゝき

ざむ・ひをいむ也

○さんせう あぶりて・つちのうへにふた

をして・しばしをき・とりあけてしろ

みをさる

○りうこつ 一やさけにひたしやき

こにする

○かいへうせう いかのこうなり・こそけ

 

てつかふ

○みやうばん やげんにておろして

すいひす

○かし かみにつゝみ・あつはいにう

つみ・よくういしてけつりあぶる・き

ねはもちいず

○しゆくしや ぬのにつゝみ・水にてよ

くあらひほして・うすかはをさり・い

 

○丁子(?)花房を去り、そのまま刻む。火を忌む也。
○山椒 炙りて土の上に蓋をして暫し置き、取り上げて白身を去る。
○龍骨 一夜酒に浸し、焼き、粉にする。
○海螵蛸(かいひょうしょう)イカの甲也。刮げて使う。
○明礬 薬研にて下ろして水簸(すいひ)す。
○訶子(かし)紙に包み熱灰に埋み、よく煨(うい)して削り炙る。杵は用いず。
○縮砂 布に包み、水にて良く洗い干して、薄皮を去り、炒

 

 

38

りてつかふ

○しんしや すいひす・ひをいむ

○せきりうひ みづにつけて・うら

をさりあふる

○もつかう ほこりをはらひその

まゝきさむ

○じやしやうし 一やさけにひたして

あぶる

 

○ごしゆゝ あつきゆに七たびひた

し日にほしてあぶる

○ぶし ういしあつはいのうへにて

ころばしかはをさる

○りやうかう ろづ(蘆頭:傷物)をさりて手にあ

ぶらをつけて・よくもみあぶる

○につけい あらかはをさり・きさ

む・ひをいむ

 

炒りて使う。
○辰砂(しんしゃ) 水簸す。火を忌む。
○石榴皮(せきりゅうひ)水に浸けて裏(根皮のことか?)を去り炙る。
○木香 埃を払い、そのまま刻む。
○蛇床子 一夜酒に浸して炙る。
○呉茱萸 熱き湯に七度浸し、日に干して炙る。
○附子 煨(うい)し熱灰の上にて転ばし皮を去る。
○良姜(りょうこう) 蘆頭(ろず:傷物)を去りて手に油を付けて良く揉み炙る。
○肉桂 荒皮を去り刻む。火を忌む。

 

 

39

○さんしゆゝ 一やみつにつけて・か

はをとり・あぶる・きねはもちいす

○いわう すいひす

○がうふん はまぐりのからなり・や

きてすいひす

○ちんかう いかにもくろくしるのあ

るをもちゆ・そのまゝきさむ

○にうかう そのまゝくたきもちゆ

 

○もつやく そのまゝくたきもちゆ

○としゝ よるひる三日さけに

ひたしくたきもちゆ

○ういきやう 一やさけにひたし

いりもちゆ 一もつこうほこりをはらい 其まゝきさむ

○はごし 一やさけにひたしいる

○たうにん あつきゆにしはらく

ひたし・かは・とかりをさりている

 

○山茱萸(さんしゅゆ) 一夜水に浸けて皮を取り炙る。杵は用いず。
○硫黄 水簸す。
○蛤文(ごうふん)蛤の殻也。焼きて水簸す。
沈香 いかにも黒く、汁の有るを用ゆ。そのまま刻む。
○乳香 そのまま砕き用ゆ。
○没薬 そのまま砕き用ゆ。
○菟絲子(としし)夜昼三日酒に浸し、砕き用ゆ。
茴香 一夜酒に浸し、炒り用ゆ。 一、木香 埃を払い、そのまま刻む。
○破故紙(はこし)一夜酒に浸し、炒る。
○桃仁(とうにん)熱き湯に暫く浸し、皮、尖りを去りて炒る。

 

 

40

○くこつ いぬのかしらのほね

なり せきにてやきてつかふ

○ちやうふん たうのつちなり・すい

ひしてつかふ

○さいしん よくあらひつちけを

さり・あるひはろづをさりてきさみ

あふる

○さんやく 一やみつにつけ・いし

 

はいをよくあらひおとしあふる

右此一さつは・たいめいこくより・えづ

のかたちをしるしたる印本(いんほん)・わか

てうにきたるといへとも・そのむね

のおもむき・深淵・幽微にして・あ

さく・まなふともから・そのじゆつ・には

かにならひがたく。そのほうたやすく

おこなひがたし・かゝるゆへに・その

 

○狗骨(くこつ) 犬の頭の骨也。せき(石?)にて焼きて使う。
  ※狗骨には柊の葉の意も有る。漢方薬には狗脊(くせき)と称す植物が有る。
○ちやうふん たうのつちなり(←?) 水簸して使う。
○細辛(さいしん)よく洗い土気を去り、或いは蘆頭(ろず)を去りて刻み炙る。
○山薬(さんやく)一夜水に浸け、石灰をよく洗い落とし炙る。

右、この一冊は大明国より絵図の形を記したる印本、我が朝に来たると雖も、その旨の趣、深淵、幽微にして、浅く学ぶ輩、その術俄に習い難く、その法容易く行い難し。かかる故に、その

 

 

41

ことば・まことに卑俗なりといへ共

たいめいのもんしを。やまとことば

にやわらげて・人として・いんやうわ

がうのみちをしりやすく・婚合

のことはりを・おこなひやすからし

めむとするものなり・あながちいん

せいをもよほし・ゆふけうをことゝ

するにはあらす・これたゝてんのま

 

まさしき・いたりいるたからをたも

たしめ・寿算をなかくひさしく

ならしめんとのみ

         持主 村上氏

 洛下二条仁王門町長嶋与三

 休興開板

 

言葉、誠に卑俗なりと雖も、大明の文字を大和言葉に和らげて、人として陰陽和合の道を知り易く、婚合の理を行い易からしめんとするもの也。強ち婬情を催し遊興を事とするには非ず。これ唯天の真(まさ)しき至り居る宝を保たしめ、寿算を長く久しくならしめんとのみ。
    持主 村上氏

 洛下二条仁王門町長嶋与三 休興開板