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趣味の変体仮名

近世狭義伝 生魚長次郎

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近世狭義伝 
 生魚長次郎(なまうをちやうじらう)

長次郎は素鎌倉の産 魚を鬻(ひさい)で産業(なりはい)とす 力量(ちから)
数十人に敵し生活逹(せいくわつだつ)なりしが いさゝかの口論により
人をあやめ谷七郷に身をおく処なく下総に走り
海上郡(うながみごほり)銚子に少しき由縁(ゆかり)を頼りしに 疾(はや)其人は
去年(こぞ)の秋霧の露ともに消たりと聞(きく)に さしもの長次郎
手術(てだて)渚の捨小舟かゝる島なく思ひしを其頃銚子の
五郎蔵なるもの久世観音に祈誓をなし 子分を
招くのをりなれば梅津由蔵はやくも是をきゝ付て
五郎蔵にしか/\゛のよしを語(かたり)ければ 急ぎ呼迎(よびむかへ)て子分
となし原(もと)雑魚場(ざこば)に有しを以て生魚と異名せり

 

 

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後に五郎蔵数百の子分の
白濱藤次郎 纂筆(さんぴつ)の
徳兵衛 長差の権次
樽の兵太 井岡の
捨五郎とて
十指ををら
ざる達衆とは
なりぬ

一家略伝史 山々亭有人

 

 

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