仮想空間

趣味の変体仮名

女用訓蒙図彙

読んだ本 https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2554828?tocOpened=1

 

 

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女用訓蒙図彙(おんなようきんもうづい)序

天地(あめつち)むら気そめ陰陽となづけしより人論は

じまれり 国さかへ里さかふるなり しかあれば有(う)

情(じやう)にをいて妹背のことはりなくては かなはず

人論夫婦のことはりは天になぞらえ地に

かたどりて 高きいやしき そのくらい そのほど

に随ひて 男女の縁をむすびて天長く地

ひさしき道をまもりて 類葉(るいよう)枝をならべ 袖を

つらぬるはじめを婚礼と称し 嫁礼(かれい)祝言

といふ さて吉月吉日をえらびて祝言の儀

 

 

4

式を さはやかに幾万代(よろづよ)のすえかけて かはら

ぬいりを松が枝に住吉高砂の相生になぞらへ

行末長く栄え久しきを 岩月の亀 蓬莱の嶋

にとどまるなり しかあれば此道は人身のはじ

めなれば 祝言は人の大式として 此作法すくな

からず これによりてその品々の道具 し

つけかた 風流のすがたをしるしあつめて 図

にあらはし 詞にのべ 女用訓蒙図彙(じよようくんもうづい)と名づ

けるものなりし

                 洛下 奥田松伯軒

 

夫(それ)祝言のこしらへ かず/\゛の道具は其人により とり/\゛

の物ずき 今やうのめづらかなるをも集め もちゆる事

こゝろにまかすれば 其品かぎりなし 然れども大概(おほむね)

式法さだまりたるを図にあらはし侍るものなり

聟の方へ道具持たせ行く奉行人は其家の中老

の役なり 聟の方に請取役人は家の年老又若(わかう)

人(ど)にても家にすぢめ有者罷出うけとりおさむる

なり 日限(にちげん)日取は老中遠く国境いをへだてたるには聟

の方え道具いるゝ日を吉日にさだむる也 然ればこなたの家

出るには あながち撰ぶねからず もとより出るも入るも吉日に

あたり侍るは ひとしほめでたき幸いなり

 

 

5

(挿絵)

 

女器材(をんなうつはもの:きざい)小 袖櫃(こそでびつ) 長持(ながもち) 挟箱(はさみばこ)

 

 

6

葛籠(つゞら) 貝桶(かひおけ) 行器(ほかい) 荷桶(におけ)

 

衣桁屏風(いこうびやうぶ) 衣桁(いこう) 屏風(びやうぶ) 几帳(きてう)

 

 

7

翠簾(みす) 御厨子(みづし) 黒棚(くろたな) 料紙箱(りやうしばこ)

 

見臺(けんだい) 硯箱(すゞりばこ) 墨筆(すみふで) 短冊箱(たんざくばこ)

 

 

8

筆臺(ひつだい) 文箱(ふみばこ) 文函(ぶんかう) 双紙(さうし)

「むかしおとこ ういかうふり してならの 京かすがの さとにしる よしして かりにいに」

 

歌賀歌多(うたがるた) 和琴(わごん)やまとごと 水引(みづひき) 三味線(さみせん)

 

 

9

双六盤(すごろくばん) 碁盤(ごばん) 象戯盤(しやうぎのばん) 角赤(すみあか)

 

乱笥(みだればこ) 手箱(てばこ) 鏡台(きやうだい) 櫛笥(くしばこ)

 

 

10

櫛臺(くしのだい) 手拭掛(てのごいかけ) 耳盥(みゝたらひ) 角盥(つのだらひ)

 

鏡架(かゞみかけ) 寄懸(よりかゝり) 粉黛(ふんだい)箱  手葛籠(てつゞら)

 

 

11

重箱(じうばこ) 觴(さかづき)盃(同) 銚子(てうし) 提子(ひさげ)

 

鉌(すゝ) 椀家具(わんかぐ) 瓶子(へいじ) 懸盤(かけばん)

 

 

12

臺膳(だいのぜん) 長足(ちやうあし) 縁高(ふちたか) 三方(さんばう)

 

菓子盆(くはしぼん) 食篭(じきらう) 弁当(べんたう) 提重(さげぢう)

 

 

13

御伽(おとぎ) 雛(ひいな) 雛道具(ひいなだうぐ) 犬張子(いぬはりこ)

 

簇(しいし) 絹張(きぬばり) 綾巻(あやまき) 帯箱(おびばこ)

 

 

14

臥座(ござ) 枕(まくら) 毛氈(もうせん) 畫筵(えむしろ)

 

幕(まく) 長刀(なぎなた) 守刀(まもりがたな) 乗物(のりもの)

 

 

15

轅(ながへ) 車(くるま) 立笠(たてかさ) 轅(ながへ)

 

衣服

十二一重(ひとへ) 緋袴(ひのはかま) 裾袴(もはかま)

 

 

16

下帯(さげおび) 脇開(わきあけ)振袖(ふりそで) 抱帯(かゝへおび)帽子(ぼうし) 脇塞(わきふさ)

 

丸綿(まるわた) 手覆(ておゝひ) 足袋(たび) 三尺手拭(てぬぐひ)

 

 

17

?容(?)衣(よるのもの) 蒲団(ふとん) 蚊帳(かちやう) 鈍帳(どんちやう)

 

褥(しとね) 乗物蒲団(のりものふとん) 帯(おび) 被(かづき)

 

 

18

茶湯具(ちやのゆのぐ)

台子(だいす) 袋棚(ふくろだな) 茶入(ちやいれ)茶碗(ちやわん)

 

花生(はないけ) 花瓶(くはびん) 花桶(はなおけ) 花臺(はなだい)

 

 

19

化粧(けしやう)

黛(まゆずみ) 眉拂(まゆはき) 楴枝(かうがい)

 

鑷摺剪(けぬきはさみ) 剃刀(かみそり) 爪伐(つめきり) 櫛(くし)椎くし

 

 

20

鏡(かゞみ) 髢(かもじ) 紅粉(べこ) 軽粉(おしろい)

 

漿子(じやうず) 渡金(わたしがね) 附子箱(ふしばこ) 油桶(あぶらおけ)

 

 

21

花露(はなのつゆ) 鐘筆(かねふで) 鉄漿壷(はぐろつぼ) 鐘続(かねつぎ)

 

花車(きやしや)

伽羅(きやら)薫物(たきもの) 香炉(かうろ) 臥籠(ふせご)

 

 

22

香盆(かうぼん) 伽羅割(きやらわり) 香包(かうつゝみ) 手帞(ふくさ)

 

匂袋(にほひぶくろ) 扇(あふぎ) 団(うちは) 笠(かさ)

 

 

23

頭巾(づきん) 尻切(しりきれ) 紙入(かみいれ) 数珠(じゆず)

 

所作具(しよさのぐ)

綿挽(わたひき)塗桶(ぬりおけ) 針箱(はりばこ) 針休(はりやすめ)

 

 

24

針指(はりさし) 掛針(かけばり) 糸入(いといれ) 糸巻(いとまき)

 

指物(さしもの) 抓板(かきいた).裁刀(ものたち) 火熨(ひのし)菪莨盆(たばこぼん)

 

 

25

機(はた) 筬(おさ) 績纏(へそ) 績桶(おこけ)

 

篗(わく) 糸繰(おゝわ) 紡車(いとくるま) 舞羽(まいは)

 

 

26

木綿車(もめんくるま) 腸繰(わたくり) 繀(くだいと) 綿弓(めんきう)

 

湯殿具(ゆどのゝぐ)

湯巾(ゆて)手盥(てだらひ) 明衣(ゆかた)風呂敷(ふろしき) 湯続(ゆつぎ)掻器(かいげ)

 

 

27

洗粉(あらひこ) 糟袋(ぬかぶくろ) 盥(たらひ) 金盥(かなたらい)

 

産所(さんじよ)

苧(お) 海馬(かいば) 押桶(おしおけ)篦(へら)

 

 

28

御府(ごふう)札(ふだ)守(まもり) 椅子(いす) 屏風(びやうぶ)腰掛(こしかけ) 胞衣包(えなつゝみ)

 

宮参(みやまいり)髪置(かみをき)

筒守(つゝまもり)守刀(まもりかたな) 御伽婢(おとぎぼうこ) 魴鮄(かなかしら)石(いし)

 

 

29

雛(ひいな) 松橘(たちばな) 末広(すえひろ)白髪綿(しらがわた) 熨斗(のし)