「古今名婦伝」
栢原(かいばら)の捨女(すてぢよ)
丹後国氷上郡(ひがみごほり)田氏(たうぢ)の
女(むすめ)なり 弱年(おさなき)より和歌俳諧を
好み 秀吟(しうぎん)多し
初雪や二字(にのじ)
ふみ出す下駄の跡(あと)
これ幼き時に よみしとぞ
同宗(どうそう)へ嫁(か)せしが早く寡(やもめ)と
なり 後(のち)盤桂(ばんけい)禅師に参(さん)しに
開悟(かいご)す 世に珍しき貞烈(ていれつ)なり
粟の津や
身はかずならぬ
女郎花(おみなへし)
柳亭梅彦記 「豊国画」