仮想空間

趣味の変体仮名

地震鯰の取調べ

 

読んだ本 https://dl.ndl.go.jp/pid/1303386

 

かしまさま
「くに/\゛の地しんどもの見せしめに
まづ江戸のぢしんめを
てひどくうち
のめししよにんの
あだをてきめんに
とるがよか ろう

鹿島様
「国々の地震共の見せしめに、先ず江戸の地震めを手酷く打ちのめし、諸人の仇を覿面に取るがよかろう。



「ハイ/\かしこまり
ましたこのあたまに
さしたるかなめ石お
さん/\゛にうちこみ
そのうへでせびらきに
してなまづの大かばやきを
こしらへしよにんへ
ほどこし ませう


「ハイハイ畏まりました。この頭に挿したる要石を散々に打ち込み、その上で背開きにして鯰の大蒲焼きを拵え、諸人へ施しましょう。


江戸
「アゝいたや/\
このうへの
おねがいには
いのちばかりを
おたすけくだされ
そのかはりには
いまよりして
なまづの
けんくわや
じやりの
うへゝでます
ことは
いたしません

江戸
「ああ痛や、痛や。この上のお願いには命ばかりをお助け下され。その代りには今よりして鯰の喧嘩や砂利の上へ出ます事は致しません。


くわん八しう
「わたくしは
どのくにゝも
あしをとめませぬ
くわんとうすぢをのたくり
あるきましたが
これからはきつと
つゝしみます

関八州
「私はどの国にも足を止めませぬ。関東筋をのたくり歩きましたが、これからは屹度慎みます。


(下段)
しんしう
「わたくしのつみをゆるして
くださるならば信しうも
かまどもなつちも いらねへ

信州
「私の罪を許して下さるならば、信州も竃も魚楑(なづち)もいらねえ。


田はら
「どうぞとがのせんぎは
をだはらになればいゝが

小田原
「どうぞ科の詮議は小田原になれば良いが。


えちご
「わたくしはえつちりえちごの
ぢしんゆへかくべえのやうに
さかきになつておわびを
まうします

越後
「私は、えっちり(越後縮緬?)越後の地震故、角兵衛の様に逆さになってお詫びを申します。


甲しう
「わたくしはかうしうの
うまれゆへ
ぶどうのやうな
ひやあせを
ながしておそれ
いります

甲州
「私は甲州の生れ故、葡萄の様な冷や汗を流して恐れ入ります。


大さか
「大坂をゆり
いだしてならの
はたごや
みわのちや屋
まですこしは
いたませましたること
いつわり なく
まうしあげ ます

大坂
「大坂を揺り出(いだ)して奈良の旅籠屋、三輪の茶屋まで少しは傷ませましたる事、偽り無く申し上げます。


(鯰の名前)
信州のぢしん
小田原のぢしん
えちごのぢしん
甲しうの地しん
大坂のぢしん
くわんとうのぢしん

信州の地震
小田原の地震
越後の地震
甲州地震
大坂の地震
関東の地震