百人一首之内 大納言経信
夕されば門田のいなばおとづれて
あしのまろやに秋風ぞふく
金葉集秋の部に入る この詞書は師賢朝臣の
梅津の山里に人々まかりて田家の秋風といふことを
よめるにとあり 夕さればは夕暮のさまなり芦のまるや
とは芦にて造れる家にてその内田の稲葉へ秋風のそよぐ
風情ものかなしくえもいはれぬ趣きを述たるなり
六条に住ける頃
九月の月の夜に
きぬたの音聞え
ければ
から衣打こえ
きけば 月きよみ
まだ寝ぬ人を
空にしる哉
と詠じける
をりから
鬼神詩を
吟ずるの
図
百人一首の内 大納言経信
夕されば門田のいなばにおとづれて
あしのまろやに秋風ぞふく
金葉集秋の部に入る この詞書は師賢朝臣(もろかたあそん)の
梅津の山里に人々まかりて、田家の秋風ということを
読めるにとあり 「夕されば」は夕暮の様なり。
「芦のまろや」とは芦にて造れる家にて、その内田の稲葉へ
秋風のそよぐ風情、もの悲しく、えも言われぬ趣きを述べたるなり。
六条に住みける頃
九月(ながつき)の月の夜に
きぬた(砧)の音聞えければ
唐衣打つ声聞けば
「月きよみ まだ寝ぬ人を 空にしる哉」
と詠じける折から鬼神、詩を吟ずるの図。