仮想空間

趣味の変体仮名

浴爵一口浄瑠理

 

様々な作品の人物や出来事がごっちゃになっていて面白かったです。

 

 

読んだ本 https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/9892853


3
春霞うら/\までも引きぞめは。門(かど)の錺の竹本に子の日
の松の常磐津あれば。民の竃も富本あり。梅ヶ河東を
みやこぶし。新内節の新板は。半太(はんだ)羽織に儀太もゝ
千鳥。唄かふ蛙も鶯も。実(げ)に春の日の長うためりやす
かわにかゝらぬ。青柳の。糸も三(み)すぢの三冊物。調子を
合せる半丁は。他人の作をきゝとり法文。?(しほから)声の
一口浄留理。ことしも馬鹿をつくし琴(ごと)の。曲亭
主人序(じよ)はかりしるす

 午の初春  本所業平橋
        在原艶美


4
爰にかんだやまと町に
しにせのあきんど八百や
半右衛門といふものあり
しが いさゝか金子に
手づかへし事ありて
山家や左四郎といふ
ものにきんす五十両
かりて もしそのかね
へんさいの日限きれ
しときは むすめ
お七を女ぼうに
やらんとやくそく
したりけり

下女おりん
こんなところへたすき
はづして
とんででるは
わつちが
かふめつたに
お七さんを
やるからは
なりませぬ

(中)
おのれとしよりを
いぢめたかわりに
その尺八をかへてくらへ

(下)
あんなこわひ
おとこの女ほう
になる事は
わしや
いや/\

(左頁上)
山家や左四郎は
金子日きりのび
たるゆへ お七を
つれゆき女ぼう
にせんと
むりにひき
たてゆかん
とするところ
へ 男だて安の
平兵衛かけ
きたり 半右衛門が
なんぎをす
くひ尺八にて
左四郎した
たかぶち
のめす

うぬがその
つらでお七を
女ぼうにし
ようとは
あきれて
ものがいわ
つきねぎ
ちん/\かもの
いりとりのか
わりにこの尺
八をくらつてかへれ

(下)
これさ
平兵衛
なぜ
をれ
をたたきごぼうにするのだ

しやう
もんが もの

いふ


5
お七があに八百や半兵衛は
日ころよしはらへはまり
いたりけるが なじみの
女郎つちや梅川と
いゝ合せ たんぼより
つれだちのかんとせしに
ふみつかいはやの喜介
に見つけられし
ゆへ ぜひなくきり
かけ手をおわ
せる

半兵衛
さん モウ
それで
ようおざん
す 人のみぬ
うちはよう
たちのいて
くださんせ

ぜひにおよ
ばぬ くわんねん
 ひろげ

かゝるおりふし
あさがほせんべい
主人伊兵衛のむかいに
きたりしが みち
にてこのようすを
みてさわぐ

アゝきつた/\
人ごろし
/\/\/\

(下)
喜介はなまえひ(生酔?)なれば
きられたをしらず
半兵衛め おれにみづを
ぶつかけあかつたな
さいわひのえいざまし
ひやりとしてよいき
みたやつ?さ


6
はや喜介きられ
し事は代官所
さたとなりて
ごぎんみきびしく
中にもかんだ大和
町は半兵衛が住所
なるゆへ せんぎ
あふせつけ
られ 十七間
のあい長屋の
人々あるひは
じゅんれい ふる
て かいせきぞろ
にばけて いえ/\
をのぞきのから
くり あめうり
なんど あり所を
たづねあるき
両ごくばしの
たもとに
おち合い
いろ/\と
ひやうぎ
 する

(下)
あめうりの
せんぎはあ
ますぎ
る??つ
てしれ
ぬと
ござ ろふ

(左頁上)
あの半兵衛ゆへ
はじめてこじきのまねをして
ああるいてみるが
中々きさんじて
おもしろいしやう
ばいだ いつそこや
えおちてこじき
になろうか しらぬ

からくりを
みにくる子ども
をだまして た
づねても
しら
ぬかほ の
半兵衛 さ

「大からくり」

(下)
たとへ半兵衛をみても
みのがしにするが とふ
せいはやる つうと
やらでござる


7
ほん材木町に
帯屋長右衛門と
いふものありける
が 日ころのしん
ぐわんにて いせ
さんぐうせんと
思ひたちければ
またとなりの
ふうふ ひとりの
むすめをもち
けるが このむすめも
大ぐわんあるゆへ さん
ぐういたさせ
たしとて
長右衛門を
このみける
ゆへ さいわい
なりとて
そのむすめ
おこまをつれ
同行二人道中
のとまり/\
にて こひは
しあんの外
ならぬ中と
ぞなりける

(中)
江戸へもどつ
たら かゝさんや おまへのおばさんに
かくしてわたしをかこふて
おいてくださんせ

(下)
そなたは
十四 おれは
三十六 つり合ぬ
いろ事も おいせ様の
おかげであろふ

(左頁上)
けい政といふ
座頭 京都へ
くわんにのぼり
けるか くわなの
しゆくにて長右衛門
おこまと あいやど
にとまりけり

あいやどのどうしゆく
しうは女中のつれが
ござるの

(下)
さようで
ござりますとしはつり合
ませぬが い?
らしい
身ふりで
ござり ます


8
八百屋半兵衛は
金子五十両とゝ
のへて左四郎が
かたへかへしに行
道にて おひおとし
にあい なんぎ する

やい こゝな
おいぼれめ
此さいふ
のうちに
十両
あると
いふ事は
たしかに
みておいて
する仕事
こまごといわずと
はやくわたせ

(下)
斧定九郎 半兵衛をふみ
たをし ふところの五十両
うばいとる

これさ
その 中に
あるは
やき
めし
でござる

(左頁上)
おやのいけん
ありがたく
半兵衛
梅川
心中
をとゝ
まり
しるべ
のかた

おも
むく

半右衛門は五十両のかねを
うばはれしのみならず
はいたる あしだのはなを
までふみきり なんぎのおり
から半兵衛梅川は人ごろしのとが
身にせまり てん中せんと思ひさまよい
きたる道にて おや半右衛門がていをみて半兵衛は
木かげにしのび梅川にかいほうさせる

(下)
はなをゝすげ
ました
さあ/\
おは

あす
ばせ

半右衛門 梅川としり
ながら しらぬふりにて
半兵衛えの
いけんを
よそ事に
いゝきか
せる


9
おびや長右衛門江戸へ
かへり女ぼうを
おきざりにして
おこまもろとも
小石川へんに
たながり
したりけるが
引こしの夜
あい長屋の
人々をまねき
さけをふる
まいければ
みな/\その
さけのいつ
ぱいきげん
にて ねだを
おとしてのおほ
さわぎに長右衛門
おこま もてあ
ましけり

長右衛門
ふうふは
このさわぎに
あきれて
ちぐらもてす
だんまりでいる

(下)
ふりそで
の女ぼう
をもつた
あゝもて
たいと
きけば
あい
つ ら
ふたり

きは
まづい

(左頁)
すゝやの丹七が
あはしま大ほし
由良之介がめ
かくしほてい
市右衛門がからこ
あそびの
しよさ事
みな/\
おいへの
ちやうす
がいにて
はらを
かへさ
せる

かゝるところへ
いとやのあね
むすめの
おふさむこ佐七
いもうと
小糸が
かくれが
ときゝ
ちがへ
おぢ
十兵衛をつれこの
やへたづねきたる

(中)
とらまいて
さけのま
しよ

なんとごふうふろがや
ぢううちそろうた
げいしやでこんやく かの


10
大坂町に
一寸徳兵衛
とてたて
ひきよき
男あり
けるが 女ほうは
おたつとて人に
しられしだて
しやにてあり
けるが八百屋
半兵衛このおたつと
みつゝうなし てい
しゆ徳兵衛がるす
をうかゞいきたり
て おふいちゃつきに
いちやつく

半兵衛ほころびを
ぬふてもらふ

これおめへのよふな
うつくしいてきゝな
女ぼうか からにもあろうか
ほんに徳兵衛はあやかり
ものだそ

(下)
そんなあは
なしはうちへ
もどつて
梅川さんに
いゝなせへ
人ちがい
でご さん せふ

(左頁)
此ごろめを
つけておいた
女ぼうめが?てぶり
さては ま男は半兵衛
めだな はからへておいて
四つにせねば此徳兵衛が男がたゝぬ


11
一寸徳兵衛は両人が
いちやつきを立聞/\
こらへかね うちへはいり
うちはたさんとぬいて
かゝりければ半兵衛も
さるものなれば ぬき
あはせてきりむすぶ
ところへとなりの
三庄太夫きかゝり
ありあふひやうぶ
にて両人のぬき
身をとつておさへ
徳兵衛をなだめて
女ほうおたつをわが
うちへあつかり
たちかへる

まおとこのおこない
には上中下とある
まあ此おやぢがいふ
事をきゝやれさ

(下)
みつけられたが
ひやくねんめ せうぶは
たがいのうで
つくだぞ

(左頁上)
いそかしい
ところだが
ちょつと
いはふ ひやう
ぶをきいて
けぢをなせはどふだ

いんきよさん
よいところへ
きてくだ
さんした とん
としうくわく
といふみだ

これさ となりの
いんきよ
いらざる所へ
きてこの
徳兵衛が
つらへどろ
をぬるのか
そこ のけ さ


12
おびや長右衛門は
ひごろよりかづさ
もめんといみやう
をとりし ぜう
なしおとこなれば
いつしかおこま
をすて八百やの
むすめお七と
しのびあい せけんの
とりさたをふせ
ぎかね八百やの
うちをさそい
出し お七を
せなに
長右衛門は
寺みち
へんの
しるべを
たのまんと
あさくさくわん
おんの地ないを
とおりて
みち
いそぎ
ゆく

(下右)
これお七 そなたと
ふたりでしよたいを
もち茶みせをだして
そなたをみせにをき
いえ名をかつら川とつ
けようと思ふがなんと
よい思ひつきか

(下左)
長右衛門さん
わたしや おまへ
ゆへなら たとへ火の中へでもはいる
きでござんすほどに おまへも
これまでのような じやう

なしならぬぞへ

(左頁上)
白木
屋の
丈八と
いふ男
かねて
お七に
心をか
け その
ぐわん
かけに
いんぐわ
ぢぞう
さまへ
百日参り
をする
道すがら
此よう
すを
みて
むねん
がる

(下)
扨はあいつに
せんをこされ
この丈八がね
がいは茶
になつ
たか
いま/\
しい


13
三庄太夫何と
なくおたつを
あづかり両人
をなだめ つい
にきゃうだい
ぶんのさかづき
をさせて しよ
じまうrくする
それより
三庄太夫はもち
まへのわるだくみ
おこりて ぜけんを
よび おたつを
よしはらへ
うらんとそう
だんするこそ
おそろしき

おたつたちぎゝ
して このよふす
をきゝ きもをつぶ
すこそどふりなれ
さて/\おそろしい
いんきよさまじや

(下右)
これもあんまりあんまり納が
ひどいから 五わり
をかりべいとおもふ
たところへ さて
よい事がふつて
わいたとは この
事じや

あのおたつ
ならば二十
両つめ五
ねんで
百両
いま
手を
うち
ませ う

(左頁上)
おたつ三庄太夫がたくみを
きゝ これといふもわがみ
のたゝしからぬゆへと あり
あふ 火ばしをやきて
かほへをしあて 一へを
のこしてあまとなり
おつと徳兵衛のわびこと
ながらにくろかみをおし
きり あまとなりざい
じやうざんげのため
一つにはごせうあんらく
のためしつかなるところに
さとりをすま
しそのげ曰
昔は宮裡(きうり)に遊んで蘭奢を焼(たく)
今は禅林に入って面皮を煤(こがす)
四序(しじょ)流行亦(また)此(かくの)如く知らず
誰か是
固中移(くのうらにうつることを?)
これでみればおたつも
むかしはれき/\につかへし○

(下左)
○ものならん
なんでもくう
まんなもの
なり

(下右)
いんきよさん
なんと
これ
ても
くる
わへ
やら
れ ま す かへ

なむさん
だいじの
うちものへやき
がねをあてたか
それでは三文に
おならぬせんだ だ


14
八百や半兵衛は代官所
せんぎきびしくされに
よつてこもそうとす
がとをかへありしとき
梅川ぢもとへかよひ
し事を思ひ
出しまいにち
よしはらへしゆ
きやうにきたる
そのころ山しなや
の菊の井といふ
せんせいなる
おいらんにほれ
られにち/\
こもそうの
すがたにて
あいにきたる

これきくのや
いつもの
しものちや
やへいつて
まつて
おいで
なんしいまに
いきいすとそつと
いつてきや

(下)
おいらんへ
いつもの
こも
そう
さん が

きなん
した
にへ

(左頁)
なるほど
こもそう
といふものは
きれいな
もんださだ
めし女郎と
さぞいろ
ごとができる
であろう

あのこもそうもよく
まいにち/\くるぞおゝ
かた女郎衆といろことが
できたであろう

さらばこの
おくりもの
をよそ ほい
さんの
ざしき
えもつ
ていつて
きやく
しん
から
しう
ぎを
しめ
このうさきた


15
徳兵衛は三庄太夫こゝろざしにて
半兵衛ときやうだいぶんになり
しかどとかく半兵衛いぜん喜介を
ころしたるゆへたつねきびしけ
れば此ことをいゝきかせんとよしはらへ
たつね来りしにはや半兵衛なる
事をしつたるものおはてこの
ことをうつたへしかばとりての
人々来りしゆへやねへ
かけあかりしゆへ
徳兵衛もつゝいてあかり
とりてにまぎれ半兵衛
くわんざいをわたし
そのみのきるものと
とりかへきて
半兵衛を
徳兵衛に
したて
おとし
やり
その

半兵衛
となり
あよう
きところを
きりぬけいづくとも

なくにげのびけるぞ
さて/\ぎのつよい
たのもしき男なり

半兵衛とつた
いややさこれこれを
はやくとつたか
いひ

(右頁下)
徳兵衛そん
ならなさ
けをむには
せまいずい
ぶんぬかるな


16
それよりいよ/\半兵衛がせんぎ
きびしくなりければ徳兵衛も
たまりかね半兵衛がしのびすがた
をわがすがたとけさうちかけて
あみがさのまゝけつだんしよへかけ
こみ徳兵衛なりといつはりとが
をうけんといふけつだん所とふじ
かまくらのけんめいにちゝぶの庄司
五郎しげたゞあいしたがひて?
永さんもんすゝみ出これはこもそふ
かはておもしろいさいわいかげ
きよが女ぼうあこやを
よび出しことにあわせ
て一きよくうけ給はんと
いふに徳兵衛尺八の心がけ
なきゆへにこれには
すこしてこずり
けるがしげたゞひつ
とりまづ/\それは
をつての事
ひとまづ
ごくやへひく
べしと
ありし
ゆへほつと
いきをつ
きける

そのうち
かまくらにて
わかきみ
より家公
御たんぜう
ありし
ゆへひ
ぜう大
しやおこ
なはれ
しかば
徳兵衛も
なんなく
いのち
たす
かりける
はや
こゝら
から
そろ/\
めでたく
なりかゝ
りける


17
長右衛門を
すゝめ出しいろ/\
くめんしけれ
どもとかく
いきていては
つまらぬと向ふ
じまへわたり木
母寺のねんぶつを
みらいのどふじと
たのみkつら川にあらぬ
すみだ川のそこのみく
ずとならんとすでに
じゆすいとみへし
ところへ
白えん
いんきよ
よばなし
やらはい
かいやうのかへ
りにこのてい
をみつけひた
すらおしとゞ
めわがいほりへ
ともないかへる道
すがらこふぶくじ
のまへにさしかゝれば
人のさゝやくこへしける
をてうちんのあかりで
みればあやしきていゆへ

御いへのしばらく/\と
こへをかけよく/\
みれば心中のてい也
半兵衛かの菊の井と
ふかくなりたがい
のみのうへたゝず
ことに徳ひやうへ
わがかわりにいの
ちおとせしときゝ
ぎりたゝずまた
きくのいはおや
かたまへつまらぬ
ゆへ半兵衛もろおtも
このところへしのび
出よにまぎれて
たがいにしなんとかく
ごきはめし所也
これもひらにおし
とゞめともにいほりへ
ともないきたりし
門大しやにつき
墸こくまで
ざいくわまぬ
かれしときゝ
さては徳兵衛も
いのちたすかりし
なりしからばわが
みももはやご
めんなるべしとの事

○さとりみな/\白えん
いんきよのなさけにて
そのみのたつよふにして
やりしかばやつぱり
さがしらかぶなり

ぶたいのしばらくは
一せい一だいでしまつ
たがこゝはまたし
ばらく/\/\ウ

やつばり
めてたし
/\

(右頁中)
菊のいかくごは
よいかなむあみ
だぶつ/\

(下)
半兵衛 さん
はよふ
ころして
くださん
せい
のう


18
此十五てうながら
ほんのことかと思へば
きやうげんさくしや
さくら田治介か春きやう
げんのニばんめのうでを
とりければしきりに
ねむけきたりつく
えにもたれどろ/\
せしおりから
みたる夢なり
それゆへちとつま
らぬところも
あれどこれはよい
しゆこふをたくさん
えたれとよろこび
しは大抵上上吉
無類とびきりの
めてたきことなり

女ほう
ねぼけを
さまさんと
にばな
くわしたんす
などもち
出る

「成平榻見作」

 

   (おしまい)

 

 

 

人物の出典を分かる範囲で書き出してみました。

伊達娘恋緋鹿子 八百屋お七
仮名手本忠臣蔵 下女りん
新版歌祭文   山家屋左四郎
雁金五人男   安の平兵衛
冥途の飛脚   梅川 伊兵衛
心中宵庚申   八百屋半兵衛
助六由縁江戸桜 あさがほせんべい(朝顔仙平)
桂川連理柵   帯屋長右衛門
恋娘昔八丈   お駒 白木屋の丈八
仮名手本忠臣蔵 斧定九郎 由良之介
関東小六後雛形 丹七
雁金五人男   市右衛門
心中重井筒   おふさ
桜本町育   佐七 小糸
伊賀越道中双六 十兵衛
夏祭浪花鑑   一寸徳兵衛 おたつ
由良湊千軒長者 三庄太夫
出世景清    景清