読んだ本 https://dl.ndl.go.jp/pid/1466504/1/1
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讃嘲記時之太皷目録
一よしはら上らう善悪批判の事
一同やきてのかくの事
一同四つのめいぶつの事
一同かふろなつくしの事
一同をもひねの夢の事
一同いぬまくらの事
一同大ぜん元根記頃春の事
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さんてう記ときのたいこ
よしはらの水のながれはいかなえんてんにもたゆる事なく
五てうまちのはなは年月をやれともおきかぜにあわずさて
もうき世がきまゝにならばともへどもさくらの竹のすつて
/\すりさげたるいとこびんからはあせよりほかにでる事
はなしそがとのゝなき事とやらんでたま/\れき/\衆の末
座につらなつて心は高上に人にすくれておもへともやぶれ
たいこのならぬ身なればあふみが打たるしゃみのかわのは
り合もしらずかぶらきがいとをしきねじみもなし竹こま
のかる口たゝけど物ぎわにわ当世むきのさくらのばち
によそへてひらくばかりがのふ也
爰にある人よしはら袖かゝみよしはら根元記(こんげんき)をなして大
全といふさうしをたずさへきたりて此さうしのうちに
はなのあとの枝となりてをらぬやつもあり新樹(しんじゆ)の
わかばへの出来たもおほし所々にすみつけくれよと
いふわれはもしあげや町に二三年ほうかうしてあかり膳のく
らいこぼしのしる人もあり今時もぼていのよごれによごれ
たむさしばうのかうのものゝうりつけもあれは行(ゆき)つい
でのきく事もやすしもとよりなにもしらぬあをも
のやの身すぎなれはゆむぎの粉(こ)を水に入て筆を
とりはじめた
袖かゝみにいわくそれおほつてほかなきは天の徳なりの
せてすつる事なきは遊女のはら也はじめよりき
れいにしてすくるゝものはのぼつて太夫となりをとれ
るはくだつてはしとなる中わうはかうしたりもしそのす
がたおとろふるときは太夫たりといへどもその位(くらい)をえす
いわゆる留井外記(げき)かとうたりそのなさけすぐるゝ
ときわかうしたりといへとも御(をん)の字にあづかるいつみ
松か元か留井たりかるがゆへに太夫もかうしもいきをた
しなんで風情をもつばらとしはししんぞうのたゞいま
で諸げいをみがきて人にしられん事をはかるそも/\
此道にいたるに順合至見中(じゆんがうしけんちう)の五遊ありと花の
露にみえたり見といふは退戯心以探興行(しりぞききよらへてもつてサクルかうけうを=戯心て退き興行を以て探る?)といへり此
みちの至極成へし中(ちう)といふは五遊一味にしてもつて
知其邪を(そのよこしまをしる)とあるは見(けん)の位にまた一位をたてたる
までにして此みちにはいるべからず見の所にて此みちは
きわまれりくつきやうは理即(りそく)に同じといふがごとくに
してよしはらかゝみ水月(すいくわつ)のもんどうに有をもつて
鞠のしやうにたとふ水はくつ入のする事必定なり
九龍の位をはるにも第二の卦をもつてこれをさた
む半水を以て上々の敵となすとある人の物がたり也
またいわくけいせい極意相伝の書をみるにてきに大敵
よわてき若(わか)てき老(ろう)てきの四敵にむかつて強弱輕
重のはたらきあり
大てきといふはふたゆうきやらのおほき人をいふなり
これには強(きやう)のをきてを用(もちい)ていきはりを以てこれを
やくべし
老てきといふはとをりたる人をいふよしはらの内なに事
にもくらき事なくやうす作法よくしりいきぢはり合(あい)
のがてんよくしれる人をいふ也此てきにはそのくらいをたかく
してそゝげたる事なくよわみをみられざるやうに身の
おちどのなからん事をたしなみ大事にかまへて重(じう)の位
にてやくべし
わかてきといふはとしわかさにもかさらずしよしんぶる人を
いふ此てきには軽(きやう)のおきてを以てかる/\゛とあいさつし
ておもしろくおもわるゝやうにやくべし
6
弱てきといふはきやらすくなきをいふこれにははる
をつようむかへばきるしものなればいかにも位をさげて
よわくあふべし
また毛誌(もうし)の六儀(りくき)によせて陰陽順逆応和のや
きてあり此段左の上らうのえたるやきでのしな/\
によつてしりへにのするもの也
此だんをえずんばかいてもはいひがたしうたがいをも
つてたがひをはらいやきでを以てやきでをくれぬら
しを以てぬらさずんばいたれるとはいひがたし
たかをかふろはつ 京丁 三浦四郎左衛門内
袖かゝみにいわく太夫四天王の第一にして多聞
天の位にそなふこゝろあひなつかしうて
一度みえたてまつれはその様もくらまの御なさけ
らしき御ことばにあづかる時は大慈大悲の多聞
さまと申るるといへりまたいわくしやみせんも
きゝにくからぬねじみなれどもおし出してひかせ給
わぬ也筆はならびなくうつくしき手跡なり
たかをがはね字とて んの字に見所あっりをの
つから太夫にそなわりたる心さまつくろふわざす
こしもなく応和の変にしたがふ事ひゝきの初に
をしするがごとし生れつきまことに諸人にすぐれ
すがたをやかにやさしつねにわづらわ敷いさみ
きをふ事まれなれは妖桃の春にいためる如く
緑草の露にうちしほれたる御ありさまなり
この頃はすこしいろの黒みてみえ給ふはいかなる事
かとおもへば山谷の水あしうして此町にすみて
久しければかならずいろくろえるると云々根元
記にいわくある人聞ていわくつぼめるはなのいまだ
7(挿絵)
8
妙なるいろなきかことくとおへりこたへていわく此
きみかうえうのとききたしはほとけもこそまね
きあるべしと云々此段もんどうともにこゝろへ
られず此きみ十四五にもあらばいづれもことわ
りなるべし平家物かたり二代の后のまきに
御としは廿二三にもやならせ給ふらん御さかりはすこ
しすぎさせ給ひたれどもとあり今此たかをこと
しは廿かとおほゆさかりのまつさいちうぜんせい
のはなのときなればいつをかうえうのときといわん
や 紅葉は秋のときなれはおいてのち見所あらん
とやもろこしの杜牧か二月のはなよりくれない
なると作りしもいにしえわかきときをもひそめ
し女のとし月はるかにへて老てのちあひたる
ときのあいさつの侍なりよしはら四つのめい
ぶつのうちなこりの雁といふは今地景のかりと
いふある人此たかをのきみと惣右衛門が所にておい
給ひしにころはきさらぎひとりねてだにあけ
やすきにあかぬわかれのきぬ/\のおりしも雁金
なき渡りしにあきを田面(たのも)のかりだにもと一しほ
なごりをし/\わかれての後いかなるこゝろにかかり
を三つつくらせて惣右衛門に給わりて泉水のほ
とりにおかせらるゝさればなごりのかりとこそい
ふとさる人かたられしを今惣兵衛にたづぬるに地
景の雁とこたふあるひとのいわくおとゝし去年の
春の頃よりは今はすこしおとりてみえ給ふといへり
まんまことわきのたゆふを花とみは
なのみたかをはあきのもみぢ葉
よし野かふろにくや 同人うち
9
袖かゞみにいわく此きみあふぎおつとり
一さしまい給ふすがたはいにしえのしづか
がしづのおだまきもくりかへしてかへりてみす
へくもなく今ほとさかい町にてなをよぶ玉川主膳
があふぎの手もみたくないとあり顔のうちをも
わしからず上口びる少のびたるやうにてうちみは
よくもみえねど太夫にそなわる生れなればはる
ほどいとしらしき所あり此きみしんざうの時は
法にそむきてつようふられしなりいかさまちと
いたむきびもあり御(様?)馬かとわる口いふ人も多し
まひの手は
しつかなりけり よしの山
ふみまよふみちに ゆきふらでたも
せきしゆかふろつくし 白人うち
せいすしりもしてよきかゝりなり白はと
ちとすさまじとやいわん色も白しとはいひ
かたかるべしさりながら見入なるほどうつくしき顔
なりある人のわく此人をたどへといふはいろの黒き
ゆへかといふこたへていわくさにはあらず此きみにふる
れはみな人のきやらをやきつくすといふ心なるべし
大金にもなるほど神妙にてをとなしき人とありその
ごとくみな人をもひ入ふかく日にまし御ぜんせいのうへふる
とししわすの朔日より太夫の位にそなはり給ふま
ことに/\すがたかたちのまさる太夫はありとても心の
まさる女郎は又あるべしともをもわずとたかを
がよひをおもひとめ此せきしゆとそちぎられけるそれ
とたそとたづぬるに
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さみせんをてにもち月の駒かけて
引おふさかの関しゆさまかな
しかのかふろまり 新丁ほうじゆんうち
袖かゞみにいわくこえあぶら御きてすがたかり
さのみをもわしからずぶたのけをむしりたやう
なるとてくいたかる人もあちといへりかほのうちはなにとして
もたゆうのなをけがせはみるほと/\うつくしく/\ことさら目つき
まいげつきよしある人のいわくはなよりしたかみのかゝり上り
もとなにとやらんつやなきからにてうすくとはつきたるやう
にみゆるといへり心ちとまんきてにやわらかなる事なししよ
げいうとしといへり根元記にかた(??)ほのきみをしたてられし
をほめてかけり此段心得られずかたほのきみもしあしき
生れにてぶきやうなるそだちなるをよくしつけて太夫
にもいたされたらばもつとも御大義御てがらともいわんずれ
ともかゝほのきみは今ほど五てうまちにならべていわんかた
なきほどのきみなればくつわより太夫にいたす事にて候(?)
そのうへ水上の事を手がらといわんかなれども太夫ならぬ
かうしさへ太夫の水あげいたしそうじて水あげは女郎のて
がらのやうにてさのみてからにてはなくたのまるゝかいての
手がらにくしかやうのところのいさわり中々云にのべ
つくしがたき事にくし一へんに心得らるゝはよく此みち
をしらざるゆへにくし
さらなみやなみ/\ならぬまんきをや
しかのみやこのあれしといふらん
りしやうかふろうきよ 同人うち
色白くかみ黒くはたへこまやかにほねほそく
しゝつきせいのなりふり世かいの段上なり第一
目もとしほらしくいかなしわむしも此きみにころされたら
11
はきんちやくをわすれん人あひうつくしく道中第一ばんなる
へしある人のいわく此きみを鬼口といふこゝろはをく
にぬけあがりたはありてきばのはへたようなるゆへ
かととふ又人のいわく此きみうちむかいににつことわらふ
口もとあくまてあいきやうありて人をころせばくひ
ころさるゝかじやほとに鬼口といふといへりきたてうづ
たかくこうまんの心ありてことつたいをつけらるゝ心中
かんの水なるゆへすえとげてあふ人なしといへりある人のいわ
く此きみのこゝろねはいたいけなる所もあれどもやりて
のひさといふものわるきものにて此きみへそくらを
かうふるき女郎もやりてにわまわらでかなわぬにまして
この頃のしんぞうあがりなれば心まかせにならぬもとうり
なりといふ人もありちゝはひいき口かとをもわるゝ又さる
ものゝいわく此きみいまぜんせいのまつさなかといへとも一つ
のわけをしる人はさのみかうはしくもおもふまひとなり二つ
のわけとはうるとうらるゝとの事とそ
くやしくものちの世かけてちきりしや
うすきこゝろのかくとしらすて
かしほ 同人うち
みめすかたかみのかゝりここん第一なるべし
ものいひこえの色さみせんこうた太夫には
まれなるへしこの頃みうらのたかを第一にして四人の太夫
を四天皇となつけたる事あり此きみその時代はか
すみといひていまだしかのにつきてあるかれしゆへに人
しらすある人のいわく七高山(かうさん)のうちふじの山はいらずは
ぐれてたかきゆへ也此きみもまへの四天皇のかずには
いらはきよくなからんかひとりすぐれてならぶべききみも
なければふじにひとしとしるべしある人此きみをみて
12
いわく根元記にうつくしきかいわり玉子とかきてあれは
もつともうつくしからんかとはをもひたれともこれほとには
あかだとおもひつるほうしゆんがほうすあたまをふりきつ
てみるたびによろこぶといふはことわりなりといへり又人の
いわくさて/\うつくしき事いふにいわれぬ事なれとも
いものあとともみえず顔のうちにすこしくぼみたる所
のあるやうにみゆるはなんならんかしといへり此段さら
/\心得られずきよねんしわすの十八日御はつが所にて
見奉りし時にえんにははなのかけたるもえくぼとみ
ゆるときけばもしさやくなる事にてわが目になにの
なんもみえぬかと心をつけてつく/\゛とまばゆくをぼ
しめすほとみれとも/\みるほとうつくしくいとしらしく
けたかく心のきらくとするばかりにてかほのうちには
すこしのことのらあともみえねばみな人のわる口といよ
/\おもひしりぬさうしてはりの様(御)よき女郎にかたれ
がましきめだるきふりをなし又はわるきいさちにあ
ぢをわるくなしてはしのたつまゝに女郎いならぬなん
をいひつけあるひはあく人のさい人のうるさきものゝ
いやなるとのゝなとゝ根元記大全にきまゝに事つく
る用るにたらぬ事なるへしすみ丁のあつまはみな
人すみ人形とうそいふなるに色あくまて白しとかき
新丁のかつらは顔ほそをもてとのする事あやまり
の中のあやまりその外太夫にもあらざるを根元記に
のする事よくもしらざるゆへなるべし人の口をまねべ
からずもし此かしほのきみになんのいるゝはあまりいとし
らしきうつくしきゆへ人をころすをなんとして大あく人も
いわんか
しかしかしおもひあらあせぬこゝろには
13
みよの夢のわすれかたさを
よしのかふろみつ ?丁 彦左衛門内
袖かゞみにいわく四天皇の第二なれは持国
様と申といへり心あひ柔軟にして相応
のかくをそなへ給ふ相は廻なりといふててきにまわり
したがふをいふ応は変なりといふててきによつて変(へん)
化してそのときに応じてつよくもよわくもじゆんにも
ぎやくにもをもくもかるくもしたがつてゆくをいふ也
此きみ相応のやきでをそなへて温良にして
緊節ならさるゆへに上将のみちにかなへば持(ぢ)
国様となづけるる色白く目はなたてにくからずあい
きやうあるきみなりある人のいわく道中にてみたるゟ
床にてみたるはかほすこしおろついかにといふにはなのさ
きすこしわれてみゆると云々さみせんもよし吉原
四つのめいぶつのうち引あわせのびやうぶといふは
あるあげやにありしあふむ小町をえにかきたるびやう
ふなりある人此あげやにて此きみとはじめて参る
会の時此びやうぶを門まるくとりたる座のうへに
そいふしたるにたがひにうい/\しくおとこはめだるからん事を
かねてたとつて鷲鷹(しゆをう)のかくをそなへ
此だんはなの露にみえたり
よしのはいきをたしなんで強敵のそなへをまうけたる
まざるふせいをなす時によしの此びやうぶのえをみ
てこゝろをとふをとここたへてこれなるは大なごん行(ゆき)
家(いへ)これなるは小町なりさてもあさましきをとろへのは
てえをみるだにもうるさしよく心得給へといへばよし
のみをうらみさてもわれらが心あるときはながれぬ
なみだに人をうらみてかいなの袖をぬらしあるをときは
14
(挿絵)
15
こがれぬおもいに人をせかせてとりんぼうの心をやく仏日(ふつにち)
齋日(さいにち)おやの日といへども身をけがしゝ事天の御とがめも
をそろし/\つらき心は小町がなれのはてにもをとり候はん
といへばをとこはかつにのつて此びやうぶをしはし小所
としてあさからずちぎりけると也このゆへに引あわせの
屏風といふ今はよしだやが方にありとぞこれもよしのが
順応のやきでの第一のひじりなり
みやこにてめつらに(?)し(?)みるとりなりは
よしのゝきみにふりや似ぬらん
よした 同人うち
此きみにはいまたふれてみされはよしあしと
いわればし太夫にそなわる事なれは生れ
はよし根元記にいわくみめがよいとてこんじやうか人かと事
り(つわ?)此段ほいなし此人にあふ人に心みじかきくぜつ
をしてそしられたるときこえたりしかれどもいまだつの
くむかさのねよげにもみえぬほとのとしなれはなにの
いきはりのあらんやかやうのをさなきはみなやりての
心にてよくもみえあしくもみゆるそ
むねのけふりよしたゆへとはつれ/\と
けんこたはこをのむにやあるらん
ゆふきりかふろかすみ 新丁 九兵衛うち
袖かゞみに四天皇の弟順(?)にして広目様といふは
目のすこしおほきなればといふはあやまり
なるへし目のおほきなるにはあらずすこし
でめこゝろにてはき/\と月の出るがごとくなるゆへに
おほきなるとはみたりなるへしいつもはなやかなる御いで
たちしんぞうのごとくうつくしくかざり給へばあをきと
りんほうののばするもことわり也いにしえの?野がかく
16
をまなんでもどりの道中には切かみばかりをゆふて
みだしかみがすきにて?道中よりざしきにてみた
るはなを信ありてうつくしうちあひまたあしくずその
いひやわらか也いつぞや此きみと久右衛門が所にてつめ
にかゝりし時御なさけにしたゝかまいふし大きなるとり
はづしを??あまり/\りよくわいさはづかしさにそのまゝ
いまに御めにかゝらず心中かわりたるにては心ざな
くし
みわたせははなももみちもなかりけり
よしのたかををかくすゆふきり
いつみ 新丁 三浦九郎左衛門内
袖かゞみに四天皇第三増長様といふ心は
此きみはじめはよしたかさまといふてかうし
にてわたらせ給ひしがそのなさけふかくあたか春の日の万物
をやしないふるあめの草木をうるほすがごとくなれば
こひの山しげきをさゝの露にわけまよふ人もなをおく
山のたづねまほしく忍ふのうらのあまのそでもぬれぬさ
きこそやれたつなみもいとわめとみこしをとんとなげ
ぶしや日ほんつゝみのくさばの露にぬれてしつほり/\
かよふ人のおびはきれてもむすびもするがえんのきれ
たるむすほれぬとたがいにあらそひかけものすれば
ついに太夫の信にそなわり日ををつてぜんせいなれ
ば増長様と申也心だてうつくしくてきをあまさず
初客なじみのきやく親疎(しんそ)かたじけなくをもふ事風に
くさのをへふすがごとしかほのうちあいきやうありて
目もとにだてなる所ありしゝ御きとりなりいとしらさ
かわゆき所あり床にてちかくみればいものあとのすこし
みゆるもえんゆへか一しほうつくし
17
みうのはらわきてせかるゝいつみさま
いつみかとかとこめしかるらん
ふちなみかふろさぜん すみ丁 庄左衛門内
大川野へのふじなみのなみにはいかゝいふべき
さりなから此ほどはすこし色の黒みてみゆ
るはたかをが下に事のせたるるいなるべし太夫の信を
そなへてけ高くいやしめなしひたいはなみよりはす
こしおゝき也かるがゆへにけたかさ一しほなりさみせん小
うたも此頃の太夫にはめづらししんぞうのときは今一位
まさりてけたかりしなり心あいうつくしうなさけ
ふかしある人のわく此きみのやりての何がしこゝろはいつ
れのやりてにもすぐれたれば此きみの心ざしも一しほ
よくるるといへり又ある人のいわく道中あまりをそ
くも心たいをつけらるがなんなるへしと云々
ちきりをきしその日を松のなによせて
こゝろのそこにかゝるふじなも
あさつまかふろすみ 同人うち
色白くせいおほきしはじめはかうしなりしか
昨年六月ゟ太夫の信にそなわれちほんぢ
かうしの太夫なればみめすがたは垂迹(すいしやく)の太夫にはなら
べていふべくもなし心あいすぐるゝをもつて太夫にな
られたるとしるべしこれらをみらるゝぜんせいとはいふべし
さみせんきようにしてきく人高山の仙人のげだつからの
こゝちして一衣(え)をもぬぎすて丸はだかになるをしらず
随の世のはんりよ曲陳のよの後庭花のひゞきあるか
なればきく人家をうしない身をほろぼす事あるべし
小うた上手にしてはり上る一きょくは林木をふるひゆらくも
もとゝまりぬべしと云々
18
なにたてるなかれのそうのあさつまを
いかにちきりてふかまとはなる
松かえかふろさんや 同人うち
あさつまとをなしとき太夫の信にそなわる
これもほんちの太夫なり色白く目すこしかい
たれてしはらしき事夕陽(せいやう)の山の端(は)に
いる三ヶ月のふぜいともいふべきにやある人はけつく目も
とがのやなともいふさればけたかきをはすげ肝(?)といひ
又いやしさとばかわよふりといふ心々のすき/\゛なればよし
といふもあしきといふもいらぬ事ぞ根元記にいわく
此きみ御としもくれ竹の世々をかさねたるにもあらね
ばすへこのもしと書たり此段まへたかをが下にかき
くわへたる評に同じく心得られす此元日ははつねにて
一入めでたきあげやかへり道中はよしはら第一なるへし
あらたまのはつねのけふはよわひより
ひきてこゝろののびしまつかえ
山の井 かふろたより すみ丁 太郎兵衛内
生れ太夫の位をそなへていやしからずこゝ
ろあひはいまだなれてみさねばしらすいか
なる事にか正月も七日八日頃まではあげや町の
道中なされしがそのゝちはみえず中ノ町へゆかせ給ふ
にや又御わづらいや
むすふ手のあかなくをもふしるしにや
なをすみ丁の山の井の水
小太夫かふろまつかわ 同人うち
山の井よりはるをとしをとりてみ給ふ
いまだしんぞうの太夫なればあげていふべき
かたなしみめすがたこゝろの事はいふにをよばす
19
をさなき時とさかりとはかくべつになるものなれば
今の評(ひやう)はいらぬもの也
とふ人にこたゆるふしもなよたけの
世のうき事もきみよりそろふ
うすくも 京丁 三浦うち
此きみは此ひつじの元日より出給ふ水上は
市左衛門後家所にてたかをのきみの引たて
なり御ぜんせいのゆくすえたのもし/\
今をたにうすへもみえぬなさけふり
のちはやきてのあつくあらなん
ときわ 新丁 仁左衛門内
此きみも此元日より出給ふすみのえの
引たてなりやどやはふるとしまてすみのへ
やりていたししくらをとこ五郎左衛門十兵衛あげやのあと
をふまへており?にて水あけ也生れきよらにして色
白く太ゆふめきたり今は少めちいさくみゆれどを
いたちのすえはいかゞあらん
ひさたつるなさへときはのひめ小まつ
とのともけふははつねなるらん
ふぢえ えと町 太郎兵衛内
是も此元日よりくもいのきみの引たて也
此家の太ゆふのなならびに同しもんを付て
せんせいのゆくすえをいはふ生れまことにすなほにし
て太夫の位もはづかしからずいまたちいさけれともふりしな
ものなれたりこはなちと今はめにかゝれどもおい
たちのすえはいかゝあらんか
あけをうぼうふぢえの色はむらさきの
よしのたかをのはなやもみちの
20
せんじゆ 新丁 三浦九郎左衛門内
よきなりふり也さりなからあまりほそ
すぎてそわうの御ちいんしゆのやう也顔の
うちもしくはなけれどもすゝか山の鬼神をたいじな
さるゝ時のきずのあとかほそ黒きものひたいにみえてあ
たら物也ある人のいわくひたいに黒くみゆるはあざなり
かほかゆへに此きみをかるたさまといふと云り又人のいわく
さにはあらすみな人かうをこのむといふ心なりこの頃太夫
になられし
たゝたのめこれもせんじゆのなにしおふ
かれたる中もはなのおなさけ
いつみ えと町 助左衛門内
このきみはこの頃太夫になられしめもとまゆ
けつきよししかれともしほらしきやうにていやしく
うつくしきやうにてうるさしある人のいわく此きみ上るり
いなばとおなしやうにかたらるゝしやみせんもよしといへとも
ちとたわけたる所あり大金にも物いひにあとなき所
ありと書るもたわけたるといわぬはかりなり
つゝいつゝいつみにかけしまるかいき
くやみけらしなはたふれぬまに
此さんてうき板にちりばむるは正月春ゟ也二月有(五日?)かほ
のきみ御とし十五にてかくれ給ふ金谷(きんこく)の花ちり洞庭(とうてい)に
月なきかもくなれば腹にをとしても見所なき事なれとすでに
なかば出来ぬれはやむへきにあらずこれをすり侍るある人かほ
のきみのわかれをしたひていたみをつくりてしがのゝきみにまいら
せたるを経世のきみのそうかゝう(り?)のいたみの文をかゝれしを見るしは
あわれなるなさけなれは茲に書くわへんとすれどまゝならぬ事も
あれは是をのせずあさ妻もさる事ありて此町を出給ふと聞し也
21
此書に題号をさる人にのぞみたれはさんてう記時の
太鼓となづくゆへにたつぬれば此さうしをみるに女郎
のいきはり心あいやきてのかたをくわしくのする事惣して
女郎にはしめてあふときは太鼓といふものありて女郎
のそなへたるかくに合て一座をとゝのふるなれとも此さうし
を御らんのかたはその女郎のかたをしろしめしてその御心得
にてあわせ給わんなれば太鼓もいるまししかれはこの
さうしをときの太鼓となされんにこそ又女郎の心あい
をしろしめされんとならば金なくてはならし此さうし
を御らんじてあまたの女郎の心あいをしろしめせば
心あいしろしめしたき時の金もいらぬましときの太鼓
にてはなきかと云々
根元記に太夫とのするにん(?)をりたるをこゝにかきたゝし
出たるをはこれをのぞく
外記かふろよし 京丁 三郎右衛門内
かほのかわちとあつめに顔のつや何とやらん
しわよりたるやうにみゆるはひが目やしんぞう
の頃はきめもなるほどうつくしかりしあまりさい/\手の
くびにて御よくあらへはかならず此きみのやうになるもの也
根元記にいわく此きみあふみにしの上るりめい人なるよし
書り此だんおぼつかなしわれらもさい/\此きみと一座い
たし候へとも上るりの事はをきてつぶやき小うたもなら
ずさみせんもひかずしかれともかくしげいにもやとをもひ
根元記別にいてゞの後よしはらにてにてきけどしる人なし
さやうなるげいあらばよき恋のつりばりなればをろし
さげてくいつかせたらばかうしにもおりられまいにむにん
べつか袖かゝみにいわく此きみ身をうづ高くせん事を
たくむかるがゆへに座はいしみこほりざぜんのゆかのことく
22
一座のしんげうかぶろなとにしつけがましき事をいひて
わるしきをあんじあそびうきたつ事なければ
ゆうぢよのやうにわあらず床へ入てもおつぼねさまと
ちきりたるやう也されどもはだへこまかにしゝあいよく
そのあぢわい他人のしる事にてにてなし根元記以後
かうしにおりられし
花月かふろさくや 京丁 高嶋清左衛門内
かほほそおもてにしてはなながく中にふし
みえてよくもみえずたゞしさかり過れはなに
事もかわるならいなればことわりにてぞしかれどもかの
兼好(けんこう)がふでのあとはなはさかりに月はくまなきを
のみみるものわとてしかる人もありげにはひさしう
不儀(?)とも御とめられよろづ物なれ給ふゆへにざしき
つきいつさりとして大住院(ちういん)のたてはなをみるごと
く也ある人のいわく此頃は高しまいへぶはんじやう
にして此きみもかうしにおりられたりいとをしき事也
と云々
留井 新丁 ほうしゆんうち
此きみ生れつきたゆうにそなわる事な
れはるかほとよし利生とをなし時の
しんぞくにておとらぬかたちなりしかれともわつらわ敷
不義を御とめざれはしる人すくなくかうしにおりられ
今は外山さまと申候ある人のいわく此きみれいがんしま
新川三つ目のはしのうろ/\ちやふねの与次兵衛と同し
所の人なりとうろ/\かむすめは江戸にかくれもない
みめよしなれともふしあわせの事ありてかゝらぬ也なも(?)
此きみもみめかたちよけれども御ぶしあさせういるく(?)
左京 高嶋清左衛門
23
根元記に太夫にのせり此段あやまれり
此きみ太夫たりし時しもあり然れども根元
記ゟはるかさきにおりられし
かほる 三浦四郎左衛門内
根元記に太夫にのせこれ又あやまり也
此きみはたかをかふろはなといひし?なり
いまだしんそうなりついに太夫にそなわら
すかふろの時よりよしこの頃惣兵衛所にてちらと御めに
かゝりさて/\御せいじんといへはしらぬとの御事きよくなし/\
小太夫 かふろきちや えと町 助左衛門内
此きみははしめ内記といひてすこしのま
太夫にてありしが是も根元記よりはるか
まへにおりられし
よしはらをもひ話の夢
はし女郎よりはじめてかうし女郎の事くわしく吉
原大全にしるすしかれども評判あらましにして
のこりおほき所ありつたへきく孔子にすぐれたる
弟子十人ありこれを十哲(じつてつ)となづく今又こうしの内
すぐれたる十人をえらんで十徹(てつ)となづけて二たび
評をくわふるのみ かうしの十てつ
かるもかふろかしを 二丁目 二郎左衛門後家内
目はなだてひたいつうつくしく利はつに
又あいきやうなりてけいせいに生れつきたる
かたちしこえのにをひうるわしく小うたさみせん五丁
まちにならびなし上留り又いなばにもまさらんか
さみせんのひきやうにかるもがはねばちとてよせいに
だてなるひきやうありよしはら大全に世のもてなし
は此きみなるべしといへりその心うきたちてうれ
24(挿絵)
夕部聞道
25
へたるいろなくそのはりつようして大てき水(すい)てきを
もちりひしぐ強(きやう)のかくをもちいをしかけはり合の手段
をこのむよしはら四つのめいぶつの内そいねのつゞぢと
いふは此kみよりのな也此きみ市左衛門が所にましまし
け家にあるてきはらやへきたれり帰られぬしゆびに
てやひとり書院の月にむかつて江風(こうふう)をあかつきにてつ
してぬる事を得ずとふるき詩をずしおるに
やりての女小袖につゝぢの枝をそへてもちきたれり
みれば黒ちりめんにもみのうらつけたるふり袖に
をつかうのうち二つとぢをぬいにつけたるにとるても
くゆるばかりにたきしめたるきやらのにほひいふに
いわれず是はこの小袖をきてわれにそふとおもへとの
御なさけにや又つゝぢはありあわせたるはなの枝なれ
どもいわねばこそあれとの歌御心入りかとかたじけなく
ひきかぶりめしたれども中々心はみだるれともぬる事
はなしねられぬまゝのてすさみに庭におりてなにと
なくつゝぢをさしたればその枝よく御きて今に花
さきねりぬきみが袖のうつりかやと帰りけんにをいも
ありしと長蔵がかたりしこれをそてねのつゝぢと申
と云々小袖はあくるひうらかへしてたゝみてかへされたれ
はさこそとの給ひしとなりよく心得られたるにぞ
われからのねをこそなかめうらむまし
あまのかるもにつくあふらむし
金太夫かふえおさけん 京丁 三郎兵衛内
みめすかたよしある人のいわくみめすかた
よし心なをまさりなるへししんそうの時より
はつて公儀を御そめられしゆへか至りて上手なりその
心しとやかにしてそゝけたるふりなく陰のかくをもちひ
26
てなるほどをんびん也陰のかくといふはおりに入たるよ
しをかげよりとをすふんべつをしてつれなどにしみ
/\゛とおもふふりをみせあるひはやどのかしなどにひそかに
おもひ入をおとこにいわするたぐひなりねこにねこ
またけいせいにけいせい又とは此きみならんかしかり
そめにはなしたる人も一座にてふかくおもひ入てかわ
らぬとなりある人すみ町のあさつまいまだかうし
なりしときふかくまじわりてのうへに金太夫が事を
たつねけいせいまたとはなにをかいふらんみなしよ
しんなるものゝたくされての事なるへしわれ金太夫
にゆめ/\しうしんなししかれども心あひをみて人のた
らさるゝをわらわんなればきみはしらぬふりして
たゞ一座参会をゆるせとのぞまるゝあさつまも
ふかき中の事なればくるしからじとて一座をゆるす
にまことなにたる女やらん此人の心をまよわしうし
をへたとうちぬき二度あさつまか所へかへさず大
金にも心はつめいにして此道巧者なりと有さのみ
みめはよからねどもあいきやうありてにたらぬ女郎也
きはらしととんてまわるはひやう金太
ゆふちよにそあるふかきいきぢは
ある人のいわく此両人のかく陰陽の二つとによつて
ふうぞく天地雲泥のちがひたりといへども本来むい
のやきでなればきわまる所はをなしぜんせいなり
この頃ばけものそろへといふ物のほんを見るに此二
人をけいせいまたといふはけものたるよし書り
かつらふろとらや 新丁 ほうじゆんうち
色白く目もとちとさかつりりはつなる
ふうぎなりたゞし顔まるめなるがゆへに
27
太夫にならざるかこえようして小うたもさみせんも
よし心だて陽のかくを用(もちゆ)陽のかくといふはもしをと
こあやまりあればきさんじにそのことばをはなし
あらわにかたちに出しそさまにかやうにをもわれては
命いきてもかはもなしとおもひ入たるやうにやきつく
るをいふ大全にも山もかゝりそありしかれどもこれ
ははりの半うちあいなるほどよしそうじてほう
じゆんか家のかく大やうをかまへかたれずかまるす
いきんをたてしとやかになれむすぶなるゆへにほう
じゆんか家みうらか家をよしとする也此きみはてがわり
ものにて人をふる事上手也こゝろのほかの上手をい
ひをきそのほかにをもしえおきてだてにてふられし人おほ
しある人のいわくはじめてのきやくをふる事あまたのしさい
ありそのをきてみな/\もつともなるしんりよなりかるが
ゆへにしよしんなる人をふらぬ也しかるに此きみのをき
ての外に人をふる事いかにといふにみめすがたこゝ
ろことば相違して第一の所ことのほかあらしく一度に
ていやとをもふきやくあへけれはそのたしなみなり
といへり此たんまたわる口なるへし
よわくみえててさにはりあひつよけれは
まけてかつらのてたてなるらん
此三君をかうしのうちにかんえんびんしけんしろといふと
云々いづれもそのかくあふたる所あり太夫より此三
君になれていきぢはりあひはしるべし此外の女
郎はみなうる女郎なれば第一よわきをもとゝする
ゆへにはりあひのいきぢにゆくべからず
るい 京丁 三浦四郎左衛門内
しあわせをもにしからずかうしにをりたもふ生れ
28
つきみやびやかにしていやしからすさみ
せんもまた聞よし三浦がいへといひ
太夫くだりといひ御としざかりといひ
なみにはいひがたしある人のいわく人中少くほみ
過てはなより口とひをかけたるやうにてみにくし
といふこれらも小を大にゆいなすわる口也
うすなさけまたるいさまをきみにみは
あつかましとぞきみはいわなん
みよし かふろ六 京丁 三うら内
よきとりなり也いまたしんそうなれはさのみ
物なれ給ふやうにわあらねともさすか三浦内
にてそたち給へはしとやかにしていやしきふうぎなし床
の内のあひさつとしまのはづべき所ありとぞある人この頃
此きみとたゝかりそめの新枕に花ほり月かすむよの心ちして
みはてぬゆめのうつゝともしられずしらぬ時をこそ今
のをもひにそへて恋しきといへると云々
なもみよしなれてしみよしかほかたち
すかたかゝりもみよしなるらん
いこく かふろかくや すみ丁 市左衛門内
此きみの御ぜんさい申もなか/\をろかなりふる
としのせつには元日よりかならず太夫になら
せ給ふへきよしいひならわすゆへさゝみをたてゝうけ
たまはれともそのさたなくいまだかうしにておわしますをかく
こそありとも語には太夫の核をふまへたまわんといへりしか
れとも此きみの家もよからぬうちにをわしませはふしあわせとも
いわんかほだちりはつにして目のうちことにすぐれあゆみふり取
なりあつた物にてなしある人のいわくきよねんなつ中よりの
しんぞうふはかほと此きみならんかほはすいしやくのたゆふな
29
れはけたかくして位あり此きみはかうしなればうち
みかしほなどにわあらねども見入るほどうつくしさ又
かしほもおよぶべからずやりてにはなん年ともなくとし
へたるかめのすほんがつきたり
京丁や新町さてはわか町に
たくひなきゅへいこくとはいふ
玉川 かふろきさつ すみ丁 五右衛門内
かほかたち目もとはなつきけい?いに生れ
つきたり小うたなとりなくこえの色すく
しゝしてよしさみせんもねじ?にあかぬ所ありよしはら
四つのめいぶつの外(ほか)につくり枝の山吹(ふき)といふ事この
きみにありいつの頃にやらん玉川のひとりかうしの内に
手ならひしてをわしまししにかうしをほと/\とたゝくを
とすかぶろ出てたそととへはつかいらしきをとこうち
をさしのぞきて玉川さまは井うちに御ざらやととふか
ぶろ又いづくからといへば此御文のうちにこそとてお山吹
のつくり枝にたまづさをそへてわたして帰りぬさりとは
/\をくゆかしくやりてのをんなをちかつけてといはん
べりし玉川ふみをひらきみるに
玉川の水にうつれる山ふきも
いわれぬいろは口なしにして
とあり筆もあとのいつくしさまたさきの世にいかな
る宿世やありけん此玉づさをみるより玉川も心そゞろ
になりふみのぬしゆかしう物をもひのたねとなりてかの
作りえだをかうしのうちにたてをきてわすれぬつまと
なしけるとそこれを作りえたの山吹とてみな人み
るしをわれらも人にひかれて見し筆もありのちにきゝ
るれはついにはふかき中となり給ひしと也ある人
30(挿絵)
31
のいわくよしはら四つのめいぶつといへとなごりの雁
ひきあわせのびやうぶそいねのつゝふぃのみしりて
その一つをしらずなにをかいふや新町のちや屋の
彦左衛門かいわくわれゆきゝの人の物がたりをきくに
あれなる八左衛門が土蔵のまへの松をみる人かこづ
けのまつとはあの事なるといへりさればあの
かこつけの松を入て四つといわんやと云々
八左衛門此町をさりて後土蔵もこわしのけて
松一木(き)のこれり松山にてさいぎやうほうしかわれ
すみうくてうかれなばとつらねし事もをもひ出
てあわれなりかこつけのいわれは彦左衛門にとへ
としらずといへりふかき心もあらんや
きつねかや人をまよわすそのこえは
こんろんさんお玉川かうた
みはるかふろきぬえ すみ丁 権左衛門内
色しろくきめこまかにしてかみ黒くうつ
くしさいふはかりなりことさらえりのまわり
きれいにしてすこしにくもきたなげなき
きみなりある人のいわくいづれの女郎もしんぞう
の時はさのみはやらざるもの也しかれどもちかくは
金太夫かるも此みはる今はいこくならん出るゟ
ひまなく大義いたされしゆへざしきつきさしあい
いきはりをそらくはとしまのかたもはつかしからん
こぞのなつそでをもとめられたるよくきしてさ
て/\いかいたわけものか金を入てをもふきみのす
かたかゝりをもあしくいたしたらんと心もとなく五
六日過て道中見物に出てみたてまつりた
ればをもひしにかわりてをとなしくけたかく一きわ
32
まさりてうつくしく見事なりそこで別のびやう
きんおこりてかんにんもなりがたければやりてのはる
をまねきて御ひまをとへはだん/\やくそくつゞきて
此月中はならずといふさてもぜひないえだもし
今更御てきやくかへられて夜中にて御かへりあらば
御ことばにてもかわしてなぐさまんとこゝかしこに
たちまわりてよをふかしくらびれにのぞんてかう
しのきわにふせり候へは辻番にことのほかとがめ
られあしはやににげんとしたれはかなぼうにて
やれぬす人よとてさん/\゛にたゝかれちめだまも
まわりに候(?)
あつさゆみはるとしきけは引しめて
はなすにあかぬ あけ夫なるらん
たかよかふろさけん よみ丁 太郎吉内
是も色白くきめこまかにうすかわにして
なるほときれいなる子なりさみせんは
太郎吉が家のふうをよく引と袖かゝみ
にみえたり小うたまたしほらし大全にしほらし
きふうぎなりとありむつくりとして又むからず
目もとちとしりさがりなるといへどもしほらしさ
いふはかりなし心あひもにくからずおもひ入のおほ
ききみなりある人のいわく玉川千之丞にに
たりといふといへどもこの頃も心をつけてみるに
千之丞よりはなをまさりてにつくべくもなし
とこたへていわく今の千之丞にはすこしも似ず
このまへ千之丞がさかりなりし時に似たりと云々
高世にかくたをまきしと人とわは
33
いかゝやりてのかつはこたへん
いなは 江戸丁 助左衛門内
此きみはつくりかつこうなみよりもあし
くみめもまたよからず中々此十人の内ゟ
入へきにはあらねどもみめすがたきだて
かゝりは人のすききらいにてわか同し(?)つにさだめかたし
しかれば此題号をおもひねの夢と上る事はわが心
よりみたるといふこゝろ也さるにより此いなばをい
るゝはいなばはあふみがゝりの上留りよしはらの元祖(ぐはんそ)
にして世にあふみぶしのをもしろきといふも此いなば
ゟこれりたかきもいあやしきもをひたるもわかきも此
いなばが上留りをあしゝといふ人なければけつく
まえの九人の女郎よりはまさるべきなりよつて十人の
女郎をえらびてかうしの十てつと申はんべる
たちわかれいなはの山のみち行を
かたるときかはまたかへりこん
そも/\をくやうかうべんさんしうよたつの八境かいはなに
事にもはなれぬものなれはほむるもそしるもきに
かけ給ふへからす林にたけたる木はかならすかせにくたく
るといふ事ありとても讃嘲の頃にある人長疑廣便(?)
の品善悪好嫌のたくひを一つ事にあけて犬まくらと
なづけてをかれし事をうつしてしりへにかき加へるのみ
なかきもの
一日本つゝみ 一ぬしのくぜつ
一ふら(?)るゝよ 一つぼねのきせる
一かうしをのぞくはなあげ 一いせやがくわえん
一松がえがをもて 一ときおかがこゝろ
一はじめてあふよのなかだち 一せつく正月のおさしかみ
34
一したぬきにあふちいんの恨 一みなとがさね
みじかきもの
一しみてあふよ 一はじめてやるふみ
一よしたがきだて 一おりべかかみのけ
一たかよかあと 一しやみせん太兵衛がゆび
きゝたきもの
一かくしまぶのな 一はなす女郎のうわさ
一きやらのうつりが 一かるも花夕かつれふし
一まんよがしやみせん 一いなばが上るり
みたきもの
一のちのあしたの玉づさ 一ちいんへつかわすせいし
一はなす子どものかへり 一よきわかばへのゆくすえ
一むごさをんぼうのなれのはて 一みうらがよしのゝまひのて
にくきもの
一くつわとちいんするけいもじ 一なかどしいふおくつ
一あぶらむしのからさわき 一たはんのしよもう
一市左衛門(?)がかめ 一太左衛門が女房
一いくよがきだて
かわゆらしきもの
一彦左がよしのゝこゝろいき 一山もとのりしやう
一彦左かぢよらうあたり 一?右衛門が女房のみかけ
一つしまか目もと 一さむきよ女郎のとこはなれのかへるさ
たのもしきもの
一みうけするちいん 一みうらがいんきよ
一わかさやかとりもち 一女中のきやうだいけいやく
一京町のせきしう
たのもしげなきもの
一土手のやばん 一いなばがしんてい
35
一わかとりのつゝけがい 一たび/\せいしをかく女郎
一新てうりしやうが心中
あさきもの
一とびかゆるちいん 一いつみがきだて
一半蔵がふんべつ
ふかきもの
一ゆふぎりのおなさけ 一くまがへがさ
一あげや清十郎 一わかながこゝろ入
一宗右が女房のよくしん 一いちまぶ
やかましきもの
一くわちの大よせ 一ぜにやが女房
一やらよが座はい 一めしませいといふ市やくども
一せんだいやがまへのせつくの人主 一ちや屋の二かいのやんやこえ
しつかなるもの
一しよくわいのざしきつき 一水あげのしんぞう
一太夫おりのかうし 一梅がえが心だて
一つねよがざしきぶり 一やしほが床のうち
手のわろきもの
一やどやできらするよこばん 一小ぐつわの女郎ども
一こ人数のあげやのりやうり 一久はがないしやうがい
一せいしのつきめのかくし文字 一あしをやがくまて
一はつせがとび口 一せつくまへのやりてのあいさつ
手のよきもの
一たかをたんしうが手せき 一みうらほうじゆんが女郎
一ぐたりつれたるついのkぶろ 一をためづくのぬらし
一はやる御の字のねだうぐ 一しのいてきたる大名のこ
一れうやどの小ざしきをつくりてはなすちいん
36
せゝこましきもの
一大神文をのするふみの上かき 一えびやがざしき
一びやうぶてしきるよつのとこ 一丸ほんで出す仏事
一松ばやと三九郎があいだな 一山ざきがかほ
ひろきもの
一大門口 一まさつねが口
一ほうじゆんがかうし 一ぜにやがざしき
一女郎のおひのはゞ 一かしわきがおちやつぼ
せかるゝもの
一しよくわいにさらぬさかづき 一かへるあしたのそらねいり
一さわぎものゝとなりざしき 一よのちいんのうわさばなし
一こそでにつくるおてきの後 一あしのおそきからしり
きびのよきもの
一いきる女郎のあけほし 一ふりつけらるゝやうきもの
一かつしがこゝろいき 一たしまがおちや
一わか松がさかつきのした打 一上らうにとらるゝしんき
をくゆかしきもの
一あげや町へとさるのか物の内(?) 一かふろのもてゆくふうじふみ
一まをへだてゝきくふかまのいきぢ
をかしきもの
一はづみのよきでき口 一しよしんものゝざしきつき
一さかづきのさしぞこない 一ふられて御なぐさゝめごと
一となりざしきのかの事 一をくだいじうち市大が遊女様
おもしろきもの
一ないしやうまぶ 一床のうちのつけざし
一おもふなかのこいさかかい 一花夕があいさつ
一とさかざしきふり 一みよしがとこつき
さびしきもの
37
一しのびてかよふあさかどり 一みあがりのひとりね
一三郎兵衛がかうしのまへ 一中町のゆきあたり
一あげや町の大つもごり 一おちやでいるかうしのうち
一わかさが座はい 一しらぎくが道中
をそろしきもの
一むごきくつわ 一たかをが目さし
一よぶかにかへるどてみち 一女郎をにくむきやうしや
一くぜつしてのそしきしやう 一新てうのかしのばけもの
一やだねつきたるふかま 一さしちがへてしにたるあげや御や
一すみのへがこゝろだて
みくるしきもの
一虚労の口あきてするひるね 一みやこが右のかた
一ちいんにことはかくるやつくかへり 一かづらきが道中
過にしかたこひしきもの
一おもふ女郎のふりそでのむかし 一よき御の字の道中
一やりてにつなぐ女郎 一しゆらいをにじるきやく
一正月ほんまへとをさかるちいん 一毎(?)もちゆるつぼねのあんどう
一けんどん 一うけぎり
一まんよがてくだり
まわるもの
一さんやの水くるま 一山手からせんじゆかいだう
一さへらず?のをんぼう 一ちとせがしたさき
一新てうのつしま 一やどやの理た(う?)つ
一しらぬざしきのさかつき 一むしんまへのいきぢ
ふるもの
一しさいらしきはつのきやく 一三浦がるい(類い)
38
一あかでわかるゝふかまのなみだ 一松がえが道中
一さし手たるさかつきのしつへ(く?) 一長春がこつぶり
むじやうなるもの
一田中のほとゝぎす 一はしばのけふり
一かふろどものねすがた 一だうてつがしやうごのをと
一ふくるよのしやみせん 一花月がしんきやうのこえ
一さごろもがをもだち
うつくしきもの
一みうらがいつみかうほばせ 一あさつまの心だて
一からさきのまゆのかゝり 一いこくがふみづら
一みえや茂兵衛 一ちや屋の七兵衛
ねぶたさうなもの
一どてのばん太郎 一よをつゝけたる女郎
一長酒のしやくとりむし 一あげやのねずのばん
一みなとがめつき
うるさきもの
一やきばのにほひ 一しらなやきで
一女郎のなかごと 一はらみたる遊君
一女郎のかつてはいり 一せんじゆがわらいがほ
一みやこがうば口 一たいこの次郎
一玉かつらがきやうげん 一九郎右衛門がちよ
一たてたしのくら 一わたやがかゝ
一かたことかきつけたるちわふみ 一初会のみゝざうたん
つよきもの
一わがはなす女郎のひいき 一すへをとぐるかいて
一さくら木が床入 一きんしゆかさけ
一玉かせかちから 一小太夫のはり
ふときもの
39
一太兵衛がなり 一よしたがこゝろ入
一一かくがものごし 一久右衛門がだう
おゝきなるもの
一玉かづらがはな 一玉川があたま
一はつ山がしり 一二ばんばへのたゝく口
一あげつめにるるかい手のかほ
たかきもの
一みうらたかをが名 一からしりのだちん
一はしのあげせん 一たんしうがはな
一しきぶがわらひ 一ちやうがいびき
一かるもがわらひごえ 一高くらがせい
一やまとやがかみのまきあげ 一いづみがかの時のによい/\こえ
ひくきもの
一うねめがはな 一いちこつのぢこえの小うた
40(41に重複)
41
一ねやのまめこと 一かしのりものゝてんじやう
小太夫かふろこまつ みうらいんきよ内
此きみさんてうき板のちさんぬるもゝのせつ
くゟ出給へばこゝにしるすしんぞう太夫の
第一なるへしずいぶんよき生れかほ以後の出来物加へし
なには すみ丁 市郎右衛門
右同断なるゆへこゝにしるすうつくしさあつた
ものでなし此きみは鯉魚さまといふは人のつ
きしたかふ事黄鯉魚にうみ川のうをのしたかふことしといふ
こゝろかまた恋ふるといふ事をこいになそらへていふかこたへ
ていわくま(?)へのかうしの十てつにちなんで一の子といふ心ならん
さんてうのことは浸潤(しんじゆん)の請(しん)をはぐに似たりといへとも
毛詩(もうし)に言之者(これいふもの)は無罪聞之者(つみなくこれをきくもの)は足以自戒(みづからをもつていましむるにたれり)これ
を風といふとあれはやむ事をえすすくになんぬ
42
爰にじばの元祖吹上氏(ふきあげうぢ)かわずのすけ安方(やすかた)とて
朝暮彼(かの)地へかよふ人あり帰るさの道すからうたふ
小歌の声もかれ竹のよその見る目もはゞ
からすいせすりはちのすりからしりにうち乗もろ
こしまでもかくれなき日本つゞみの長土手を過て
我(わか)やにきたりつく/\と思案しけるはまことにあわ
ましと思ふてきにはつらなし弓の矢やねつくれは引に
かひなききみが袖とうしみもなきさま立にあひやと
矢のあぶらむしにならんもくずれかまとの口をしく侍ればせ
めてえにうつし容㒵(ようほう)の善悪(せんあく)をかきとめあさ夕これを
みめと思ひこうはつゞくるものかは
うろこかたや加兵衛開板