仮想空間

趣味の変体仮名

絵本江戸桜

読んだ本 https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2534292

 

 

3

絵本名所江戸桜

あか駒のはらばふ田い(為)水鳥のすたくみぬま

も神にしませる 大君のみとくに野な?

帰る道あらたまりて 市ひめの神のひとまへ

より大寺(おほてら)の墻(かき)のしりへまで 人どよまぬ所

もなきは めさましき都のさまならすや ま?

あそびめわざをきの家のあたりい??

かはそもからのごとくならされば 都とす?

 

 

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たらずと謝在抗(しやさいかう)がしるし置けんもうべ

なりけり いまやその名所のみつがひとつ

をえがきて桜木にうつしものせるは遠き

ちさとのいなかまても咲にほへとのしわざにこそ

けにも盛りの江戸桜あたし草木は物ならすと

ふところなる筆とうてゝ都めぐりの道の

ついてに此ふみのはしにかいつくるになむ

寛政卯正月  武埜樵夫書

 

 金龍山浅草寺

本寺は正くわんぜのん

ぼさつ浅草川より

あがらせ給ふ尊像

にしてれいがんいち

じるし よつて毎

日さんけいくんじゅ

する 毎日十七

日の夜 通夜

するもの多し

毎年十二月

十七日十八日 市の

たつ事他国の

人は目をおどろかす

ことなり

 

 

5

 東叡山寛永寺

比叡山をうつし給ひ

て東へい山と申す

とかや 根本中堂

には やくし如来

置し給ふ 坊数卅

六院 元三 慈眼の

両大師を順宿申

て毎月三日十八日は

参詣の人おびたゝし

ことさらさくら多

き御山にて花の頃は

よしのゝ春にもおとら

ず江戸第一の

風景なり

 

 待乳山之遠望

金龍山といふ本尊は大聖

歓喜天なり 霊験あらたに

まします 此山のふもとは

山谷舟の宿 のきを

ならべたり 山上より

東の方をのぞめば 向が

岡とて長づゝみあり

三めぐり 秋葉 角田

村 木母寺 すみだ川

は眼下をながれていさ

ぎよく 殊更雪の

ながめふかし 四時の

乗物こと/\゛くそなはり

て江戸遊人常にたへず

 

 

6

 真崎稲荷之景

石浜の庄といふ木立

ふかき所に 朝日神明

の御やしろ立せ給ふ

図する所 真崎稲荷

の社頭なり 近年は

茶屋多くありて

料理に風流をつく

すゆへ専ら江戸の

あそび所とせり 殊

に夏日はすゞみ舟

皆此所につなぎて

遊興すること日夜

たゆることなし

 

 新吉原之気色

明暦年中敷地にうつ

さるゝ 此内をくるはといふ

二町四方のかこみの

うち五丁のまち有

大門よりすぐに

ある町を中の町と

いふ 遊女町を江戸

町 京町 すみ町と

いふ あげや町はあげや

ありて園にぎはひ

まことにきけんじやうの

たのしみといふも

此外にはあるべからず

たことに太平の御代

 

 

7

 両国橋納涼図

武蔵国と下総にかゝる

ゆへに此名ありとかや

橋の長さ九十六間

ありて川上はすみだ

川なり 川下は海に

ちかし故にすな取

のたのしみあり 又

三ふくの夏の日は

舟をうかげて暑を

さくるものおひたゝし

く舟と陸のへ

たてなくにきはひを

なすこと目ざましき

風情なり

 

 洲崎弁財天社

当境内は海岸にさし

出 ひがしは安房 上総

の遠山 浪をひたし

南は羽田 鈴のもり 乾

は 江城うづたかく いづ

れの山と問ざる高

根の雪 北はつくば

ねのかすかにして 佳

景の地なり 三月

は潮干狩の興 あり

 

 

 富賀岡八幡宮

深川の総鎮守にて

別当は永代寺といふ

かまくらつるがおかの

同社にして御神体

菅神の御作なり 八

月十五日は放生会

祭礼あり ねりもの多

く出る 又三月廿一日は

山びらきとて別当

庭を諸人に見せうる

此社地に二軒茶屋

いふありて遊人興を 催す

 

 亀井戸天満宮

筑紫太宰府より勧請

申たる御やしろなり 古は

楼門回廊ありしか 今

はなし 本社へ参るに

三つのそりはしあり

かたはらに藤ありて

多面に棚をつくり

これにかゝる花の盛

のころは池水にむら

さきをそゝぎたるあり

さまなり 又とび梅の

わか木あり これはつくし

にて菅神御愛木の

たねをうつしうへられ たるよし

 

 

9

 本所五百羅漢

元禄年中建立成

就す 本堂東堂

西堂とならびて大伽

藍なり 五百の聖者

こと/\゛く礼をなす

やうに櫓をかけてめ

ぐらしむる工夫は 中

興開基 象先和尚

のはつめいなり 三ヶ

の津にまぐひなき

霊場なるよし 毎月

祈祷修行おこたらす

して殊勝なることいふ

はかりなし

 

 角田川木母寺

江戸第一の古跡にて

雲の上までもきゝ及

せ給ふ名所なり 都鳥

といふ鳥 此ながれに

ありて古き御歌も

あまたあり 此寺に

梅若丸のしるしの

柳あり 毎年三月

十五日は むめ若丸の

御忌日にて大念佛

供養なり 江戸中

さんけいす 川の向を

関屋の里と田家にて

佳景いふはかりなし

 

 

10

 千葉山秋葉社

満願寺とて祈祷に

おこたりなき霊場

境内ひとくして

梅さくらなど多

ありて春のながめ

をそなへたり 泉水

あり 築山ありて

これに上れば すみだ

川のながれ眼下に

渺/\たり 此門前に

茶屋多ありて 川魚

を調味するに あぢ

はい尤よろし

 

 不忍池弁才天

東叡山のふもとに有

て池のめぐり角十

町余ありて 夏日は

水西の見へさるほど

荷葉生し 花いよ/\

多くして見物の

人くんじゅす これに

中嶋ありて 竹生

島の弁才天

うつし奉りて

巳待の日は

夜すがら

さんけいおび たゝし

 

 

11

 湯嶋天満宮

別当は喜見院と

いふ上野の御未

なり 祭る所は菅

丞相御真作の

木像なり 御祭礼

は毎年二月十日

十月十日 両度也

二月の神事には

砥餅とて角なる

もちを氏子中の

屋并にこれをいたゞ

かしむる こと今に

たへせぬ事 なり

 

飛鳥山之桜花

王子権現のこなたにて

少しこだかき山なれ

ども上りて眺むれば

荒川の流 白布を

引 目のとゞまる所は

つくば根 日光の

御山まで見へわたり

佳景は江戸第一也

殊更桜多くして

春の日の長きおし

むは此地の春色なる

べし 鳴風郷といふ人の

しるせる碑あり

 

 

12

 日暮里之遠望

図する所は諏訪別当

浄光寺の住庵なり

あたはらに人丸大明神の

やしろあり 此地高き

㡍にして見おろす所

三河島村 戸田の

ながれ 細々と見へ

たり 絶景こゝにと

どまる 西のかたには

寺院の庭をつくり

遊人の弄びとせり

花のころは都人のやとゞ

ながめくらせり

 

(挿絵内)つくば山 見ゆる

 

 雑司谷法明寺

日蓮宗の寺なり 鬼子

母神堂は古松しげりて

いと殊勝の法場なり

十月の会式は もみぢ

見物をかねておもしろ

きゆへ 諸人くんじゆす

此所の名物やぶのそ

ばといふあり 風味

他にこへだり

当所は古跡

多くして

八景 ある よし

 

 

13

 目白台不動堂

本尊は弘法大

師の御作なり

世に貴き㚑仏

にてまします故

つねに参詣 あり

また堂の前に

榎あり

けさかけの

えの木と いふ

 

 王子之両社頭

熊野三所をくわんじやう申

せし御やしろなり 楼門 神

楽堂 拝殿 本社となら

びて ものふりたる宮立

なり うしろのながれを

瀧野川といふ 尤其名

たかし 又すこしへだ

たりて稲荷の御やしと

あり 関東の惣祠と

して毎年十二月卅日

八ヶ国の狐 此所にあつ

まりて火をともす 此

火にしたがひて田畑の

よしあしをしるといへり

 

 

14

 染井之植木屋

花屋の伊兵衛といふ

つゝじを植し おびたゝし

花のころは貴賤群

集す 其外 千草

万木かずをつくす

となし 江都第一

の植木屋なり

上々方の御庭木

鉢植など大かた此

ところよりさゝぐる

こと毎日/\なり

 

 愛宕山之眺望

別当を圓福寺といふて

麓にあり 本社は頂上に

ありて詣るに数百の

石檀を上る 尤海上

を見はらして風景

いふはかりなし よく

晴たる日は相模浦

安房 上総の すな

どりするわざまて

くわしく見へ

わたりて

終日 眺て

あくこと なし

 

 

15

 芝明神宮之景

飯倉神明宮と申

奉る 樹下しん/\と

して伊勢両宮へ

ぬかづくこゝりせり

毎年九月十四日

より十六日まての

間 まつりにて 賑ふ

市の産物

曲物の小櫃 𦥑

杵 木鉢 菓類

土生姜抔を多く

ひさくことなり

 

 品川口高輪図

東海道より江戸入口なり

左は御殿山とて御くら

多くあり 花のさかり

は貴賤くんしゆす 右は

海にて渡海の舟出

入ありて 三国一の湊也

殊更海上眺望なゝ

めならず 安房 上総

まで見わたしたる風

景 詩歌のために筆

紙をついやすことおび

たゝし 漁家多ありて

芝ざかな 品川のりの

名産あり

 

 

16

 目黒不動堂図

開基は慈覚大師なり

本尊は則大師の

御作なり 霊験殊に

いちじるし 本堂の

下右の方に瀧あり

独鈷の滝といふ 尤

名水なり 参詣

のともがらこれにて

垢離をとる 又 石

檀の下に鷹居松と

いふ名木あり 当所の

名物 花もち あめ 粟餅

正月廿八日は参詣おびたゝし

 

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(下段)

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画図勢勇談 石燕筆 全三冊

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絵本琵琶湖 全三冊

絵本松のしらべ さいしきすり 琴うたを 図にあらはす 全一冊

東都事路 絵本江戸桜 さいしきすり 江戸名所 つくし 全一冊

 書林 通油町南側中程 蔦屋重一郎版