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趣味の変体仮名

松平の禅尼(武者かゞみ 一名人相合 南伝二)

https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1312418

 

  松平の禅尼(まつだいらのぜんに)
禅尼(ぜんに)は秋田城之助景盛(じやうのすけかげもり)の娘にて
時氏(ときうぢ)の室(しつ) 時頼(ときより)の母堂なり さすが
時めく天下の執権の親人(おやびと)として
能(よく)倹約を守り 障子の破れを
自(みづか)ら張りて 質素の心を子に
導く事 古今の美談と
なりて人の能知る所なり
寔(まこと)や孟母(もうぼ)の子に道を
教へしにも比ぶべし 故に
時頼能(よく)国を治め給ふに依て
四海一元(しかいいちげん)に帰(き)して北條の下知を
聞(きく) 乍併(しかしながら)禅尼の功績(いさほし)なり 禅尼は
全身膚(はだへ)細(こまか)にして 爪長く尖り▲

▲胸広くして 臍深く 右の
足に黒き痣ありし 是
聡明類(たぐひ)なきを
相に顕然(けんぜん)たり