仮想空間

趣味の変体仮名

白拍子妓王(武者かゞみ 一名人相合 南伝二)

https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1312414

  白拍子妓王(しらびょうし ぎわう)
妓王は江州益須郡(やすごふり)中比(なかひ)の
里の産れなり 妹を妓女(ぎぢよ)
といふて 同胞(はらから)共に舞の上(じやう)
手(づ)なれば 清盛これを妾(せう)となして
寵愛限りなかりしに 佛御前(ほとけごぜん)の為に
寵(てう)衰へければ 忽(たちまち)発心(ほつしん)なして 栄枯を
述し歌を残し 姉妹(けうだい)ともに世を遁れて
嵯峨野の奥に庵(いほ)りを結びて一生を送り
ける 妓王は賤しき民の女(むすめ)なれど 産れ立(だち)清らかにして
両の眉毛の間へだゝり 併(しか)もその色黄紅(きあか)く艶(つや)ありて
きはめて貴(けたかき)相(さう)ありしとかや 発心せし時 妓王は
  二十一歳 妓女は十九歳なりしといへり