読んだ本 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1242667
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八朔に白無垢を着事
これは元禄
年中江戸町壱丁目
巴屋源右衛門方の
高橋といへる
大夫そのころ
瘧をわづらひ
給けるか深く
いひかわせしきやく
八朔もん日のやくそく
にて来りしゆへうち
ふし居ける白むくの
まゝにてあげや
入しけるてい
まことに芙蓉
も不及美人の
粧その日入つどい
たり万きやく
たかはしがすがたを
これは元禄年中江戸町一丁目巴屋源右衛門方の高橋と言える太夫、その頃
瘧(きやく・おこり)を患い給いけるが、深く言い交せし客、八朔紋日の約束にて
来たりし故、うち臥し居ける白無垢のままにて揚屋入りしける体、誠に
芙蓉も不及(しかず)、美人の粧い。その日、入り集いたる万客、高橋が姿を
かんたんせざるはなし これか
後れいなりて
八朔に白無垢を着す
事になりたり
又道中といふは
江戸町の女郎
京丁へも行き
京町の女郎
江戸丁へも
きたるゆへに
道中の
名あり
感嘆せざるは無し。これが後例となりて、八朔に白無垢を着す事になりたり。又、
道中と言うは、江戸町の女郎京町へも行き、京町の女郎江戸町へも来たる故に道中の名有り。