仮想空間

趣味の変体仮名

新吉原細見記序 安政五年(1858)

 

読んだ本 https://www.wul.waseda.ac.jp/kotenseki/html/wo06/wo06_01531_0009/index.html

 

2

江口(えぐち)神崎(かんざき)は昔に遠く。大磯(おほいそ)化粧坂(けはひざか)はを旧(ふり)たり。新吉原(しんよしはら)の

繁栄は古今(こゝん)に比(ひ)するものなきを。また新宅(しんたく)の洛成(なり)てより。

以前(さき)に増(まさり)し賑(にぎはし)さ。春と秋との中の街(なかのちやう)。客人(まろうど)の行(ゆき)かひ雁(かり)

と燕(つばめ)に等(ひとし)ければ。品定(しなさだめ)の山形に初夢の不尽(ふじ)の根を思ひ。合印(あいじるし)

の二星(ふたつほし)に初秋の乞巧奠(たなばたまつり)をも(しのば)め。おほかたにあらそふものと

いひながら(?)こゝろひとつに秋をさだめんと。四十二の物争(ものあらそひ)には詠(よみ)

つれども。朝桜(あさゞくら)の露の地を侵(おか)し。八朔(はつさく)の雪の天を欺(あざむく)など。何(いづ)れをか勝(まさり)

何れをか劣(おとる)とせん。只管四時歓楽北里(たゞしいじおもしろきさと)。といはんには不若(しかじ)。其面白章臺(そのおもしろきさと)に

遊(あそば)んには。此(この)花鏡(さいけん)を携(たづさへ)て。必(かならず)廓中(くるわ)を細見しむべし

       安政戊午春        香以山人述