仮想空間

趣味の変体仮名

吉原細見序 寛政四年(1792) 

読んだ本

https://www.wul.waseda.ac.jp/kotenseki/html/wo06/wo06_01325_0002/index.html

 

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庭の焼火(たきび)の白/\とゝ謳(うた)ふけな。春の朝(あした)より小傾城(けいせい)行(ゆき)て

娗(なぶ)らんと口すさみたる歳(とし)の暮まで川竹の流(ながれ)は絶(たへ)すして

しかももとの水臭きまで。遂に後(のち)は誠(まこと)となる。いづこの誰(た)

そや。方燈(あんどう)のほかけにすれちがふて。貸編笠(かしあみかさ)の目にとま

れるも。あかぬわかれの暁傘(あかつきかさ)にもらさぬ盟(ちかひ)の始(はしめ)成(なる)べし。

或は月の眉を落(おと)して素人(しろと)と成り。或は花の姿を粧(よそほ)ひて

黒人(くろと)と成。浅茅(あさぢ)が原の露の間をまたで。彼(か)は誰(たれ)に馴染(なしみ)是(こ)はかれに

連添(つれそ)ふ。さりや贖身(ねひき)の黄金(こかね)は甘谷(かんごく)の菊水(きくすい)ひ(飛)計(ばか)り。

梳櫳(つきだし)の巵䚜(さかづき)は。隅田(すだ)の諸白(もろはく)を汲み。客草履(きやくさうり)の歩(あゆみ)

しげくして。五つの衢(ちまた)の毎(?)庶(にきはへる)。長生(ちやうせい)の揚屋(あげや)不老(らう)

の九門。三千の妓(きみ)か十年(とゝせ)のはるあきは。よく細見(さいけん)にとゝめたり尓云

  みつのえ 文月   山東亭主人