読んだ本 https://www.wul.waseda.ac.jp/kotenseki/html/wo06/wo06_01531_0006/index.html
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本舞台正面五十軒に簾(たれ)新(あたらし)き乗初(のりぞめ)の罵(よつでかご)見返柳の釣枝に大門の片
扉と細見の序を正本体に書(かき)いづれば柳巷(くるわ)ぞ春の戯場(かぶき)めき初道中の
裲襠(うちかけ)を紅(くれない)みゆる赤澤山に思(おもひ)を争ふ恋角力(こひずまひ)推積(うづたかくつむ)布初(しきぞめ)の蒲団の数の
三筒荘(さんがのしやう)彼(かの)兄弟か小袖の模様鵆(ちどり)胡蝶(こてふ)は女童(かぶろ)の名に呼(よび)彼画図(えづ)にいふ冨士峯(ふしがね)
の高さをしのぶ常燈明(じやうとうみやう)裾埜(すその)を囲む幕張(まくばり)さへ鳳妓(きく)が𤋜(てら)さす提燈の
紋尽(もんづくし)を比(くらぶ)れば普子(しんし)が吟(ぎん)の闇の夜(よ)も花街(さと)は明(あかる)き月小夜(つきさよ)十六夜(いざよひ)狐擬踊(きつねや)の
半臂(はつぴ)は鬼王団三(おにわうだうざ)の心に似て赤く大黒舞の頭巾は近江八幡(あふみやはた)の裃(かみしも)と共に
柿なり立寄らば大街(だいちやう)の蔭(かげ)長いものには好(このみ)の出る戯謔(だうけ)萬歳に籬(まがき)に
顔の竝(ならび)大名吉例の通(とほり)笑(わらふ)も興(きやう)ありおつこてェろとは口舌(くぜつ)の疳癪(かんしやく)おつとめタとは
後朝(きぬ/\)の別路(わかれぢ)廓中(くわくちう)総(すべ)て曽我(そが)狂言に縁語(えんご)なしといふべからず去(さ)れば五巷(ごちやう)と三街(さんちやう)の
間(あはひ)の堤(つゝみ)も八町に横雲(よこぐも)白(しら)む鴉(からす)飛(とび)見番(けんばん)の弦始(ひきぞめ)に九郎助稲荷の宮神楽(みやかぐら)を被(かぶり)
爰(こゝ)に正月二日の幕明(まくあく) 倣狂言方文法(ならつてきやうげんかたのぶんほふに)
嘉永四辛亥歳正月 柳下亭種員