読んだ本
https://www.wul.waseda.ac.jp/kotenseki/html/he13/he13_01961_0017/index.html
2
江戸生浮気蒲焼 京伝画作
3
こゝに
百万両
ふげんと
よは
れたる
あだ
きや
の
ひとり
むすこ
をえん
二郎とて
としも
つゞやはた
ちといふころ
なりしかひん
のやまひはくに
ならすほかの
やまいのなかれ
かしといふみなれ
ともしやうとく
うはきなことを
このみしんない
ぶしの正ほん
なぞをみてたま
きや伊太八うき
よ猿(猪)の介が身のうへを
うらやましくおもひ
一生のおもひでにこの
やうなうはきなうきな
のたつしうちもわらば
ゆく/\はいのちもすてやうとばからしき事と心かけいのちがけのおもひ付をしける
ここに百万両分限と呼ばれたる「あだきや」の一人息子を「えん二郎」とて、年も十九(つづ)や二十(はたち)という頃なりしが、貧の病は苦にならず、他の病の無かれかし、という身なれども、生得浮気な事を好み、新内節の正本「玉木屋伊太八」「浮世猪(猿)の介」が身の上を羨ましく思い、一生の思い出にこのような浮気な浮名の立つ仕打ちもわらば(あらば)、行く行くは命も捨てようと馬鹿らしき事を心掛け、命掛けの思い付きをしける。
(中)
こういふみのうへに
なつたらさぞ
おもしろからう
よい月日の
下で生れた
てやひだ
こういう身の上になったら嘸面白かろう。良い月日の下で生れた手合だ。
4
えん二郎はきん
じよのどうらく
むすこきたり
きのすけ
わるいしあん
といふた
こいしや
なぞと
やす
く
していよ/\うわきな
ことをくふうする
えん二郎は近所の道楽息子来り。「きのすけ」悪い思案と言うた。「恋しや」なぞと心安くして、いよいよ浮気な事を工夫する。
まづめりやすといふやつが
うはきにするやつさこいつを
しらねばなりやせん
およそひとのしつた
口ぢかひめりやすのぶん
にくちのところを申やしやう
先ずメリヤスという奴が浮気にするヤツさ。こいつを知らねばなりやせん。凡そ人の知った口近いメリヤスの文ぶ口の所を申しやしょう。
(以下略:メリヤス=主に長唄らしい曲名を並べている)
まづ、きゝす、むけんさかづき、とまさけ
ゆかりの月、三つのとり、三つぶとん
ふたつもん、四つのそて、かふろだち
おきのいし、はなのくも、あさがほ
六かせん、小丁 へんしやう
くろぬし、なりひら、やすひで
しらいと、ひとりしんぢう
ゆびきり、いれぼくろ、きしやう
むかしぐさ、まんねんさう
十三がね、水かゞみ、いなふね
まつよひ、わかれ
なとりのもみぢ、はりまくら
なつごろも、はるのよ、あきのよ
ますかゞみ、よわのかね、おぼる月
はるがすみ、みだれどり、おもひ川
おんなさんぐう、」げんぶく、まんぎく
九月がや、よしのぐさ、なつの月
あけがらす、むらがらす、あふぎ
はなのか、はなのえん、のこるあつさ
さしぐし、あのやま、とけず、そめいと
めいどのとり、こいざくら、あきの七くさ
ふたつもじ、ひだりもじ、わりこたつ
えとゆかた、たゝみさん
ひらつみぞ
こいばなし(略ここまで)
まだいつくらも
あれどちよつと
したところか
このくらいな
ものさアゝ
口がすく なつた
ふみのもんくには
たいぶでんしゆの
あることさふうじ
めをつけぬと
えんがきれると
申やすふみの
すへゝおさなを
かくよふになると
むづかしいね
まだ、いっくらも有れど、ちょっとした所がこのぐらいな物さ。アア、口がすくなった。文の文句には大分伝授の有る事さ。封じ目を付けぬと縁が切れると申しやす。文の末へ「おさな(幼名?)」を書くようになると難しいね。
(下)
ひつさきめに
くちべにの
ついてる
のは
いつでも
ちものゝ
ふみでは
ねへのさ
どねへに
しみでも
「引っ裂きめ(女のこと)」に口紅の付いてるのは、いつでもぢもの(地物?)の文ではねえのさ。どねえにしみでも。
英一蝶
(左下)
もの
わきに
まくら
たこの
あるので
しやうばい
あがりは
ソレしさに
しれやす
物脇に枕胼胝の有るので商売上りはソレしさに知れやす
5
えん二郎は
まづ
ほり
ものが
うは
きの
はじ
まり
なり
と
両
ほう
のうで
ゆび
の
またまで
二三十ほど
あてもなき
ほりものをし
いたいのをこらへて
こゝかいのちだと
よろこひけり
えん二郎は先ず彫物が浮気の始まり也と、両方の腕、指の股まで二、三十程宛も無き彫物をし、痛いのを堪えてここが命だと歓びけり。
いろおとこに
なるもとんだ
つらいものだ
色男になるも、とんだ辛いものだ
(下)
中に
ちと
きへ
たの
も
なく
ては
わるい
から
あとで
また
きう
を
すへ
やせう
中に、ちと消えたのも無くては悪いから後で又灸を据えやしょう
(左頁)
えん二郎はやくしやの
うちへうつくしき
むすめなどの
かけこむをうわ
きなことゝうら
やましく
おも
ひ
きん
じよ
の
ひや
う
ば
ん
の
げいしや
おえんといふおどりて
を五十両にてやとい
かけこませう
つもりにて
わるいしあん
たのみ
きたる
えん二郎は役者の家へ美しき娘などの駆け込むを浮気な事と羨ましく思い、近所の評判の芸者、おえん、という踊り手を五十両にて雇い、駆け込ましょうつもりにて、悪い思案頼み来たる
かけこむばかり
ならずいふん
しようちさ
駆け込むばかりなら、随分承知さ
(右下)
これがたのみの
ともかくも
おあやかり申て
ちと
これが頼みの兎も角もおあやかり申して、ちと
しゆつ
せの
すじ さ
出世の筋さ
6
かないの
下女
ども
のぞき
みて
おらが
わか
だんなに
ほれ
ろとは
せんけか
こりうか
えん
しうか
しらぬが
とんだ
ちや
しん
だと
さゝやく
「みづ
からと
申は
そも
よるべ
さだ
めぬ
ころひつまこのしんみちに
すみなれてひとのこゝろを
家内の下女ども覗き見て、おらが若旦那に惚れろとは千家か古流か遠州か知らぬが、とんだ茶人だと囁く。自らと申すは、抑寄る辺定めぬ転び妻、この新道に住み慣れて人の心を
うわきにする白びやうしで
ござんすかやば丁の
夕やくしでこちのえん二郎さんを
うえ木のかげから
みそめました
女ぼうにする
ことがならずは
おまんまなと
たいてもおりたいのさ
それもならぬと
おつしやれば
しぬかくごで
ござります
な
どゝ
ちう
もん
とをり
の
せりふ
をならべ
たてる
浮気にする白拍子でござんす。茅場町の夕薬師でこちのえん二郎さんを、植木の影から見初めました。女房にする事が成らずば、おまんまなと炊いても居りたいのさ。それも成らぬと仰れば死ぬ覚悟でござります。などと注文通りの科白を並べ立てる。
(右頁下)
ばんとう候兵衛
番頭候兵衛
(下)
わか
だんなの
おかほては
よもやこふ
いふ事は
あるまいと
おもつたに
コレ お 女中
かど
ちがい
では
ないか の
若旦那のお顔では、よもやこういう事はあるまいと思ったに、コレお女中、門違いではないかの
(左頁下)
えん二郎が
おや弥二えもん
たのんだことは
しらずきの
どくにおもひ
いろ/\と
いけんして
かへし ける
えん二郎が親、弥二衛門、頼んだ事は知らず気の毒に思い、色々と意見して帰しける
(左端上)
ハテ
いろおとこといふものはどんなことでなんぎを
しよふかしれぬものだぞもふ十両やらふからもちつと 大きなこへで となり あたり きこへるやうに
(下中)たのむ/\
ハテ、色男というものはどんな事で難義をしようか知れぬものだぞ。もう十両やろうから、もちっと大きな声で隣辺り聞こえるように頼む頼む
7
このうわさ
さぞせけんで
するだろうと
おもひのほか
となりでさへ
しらぬゆへ
はりあいぬけがして
よみうりをたのみ
此わけをはんこうに
をこして一人まへ
一両ツゝにてやとい
えど中をうらせる
この噂、嘸世間でするだろうと、思いの外隣でさえ知らぬ故、張り合い抜けがして、読売を頼みこの訳を版行に起こして一人前一両ずつにて雇い、江戸中を売らせる。
ひやうばん/\あたきやのむすこえん二郎といふ
いろおとこにうつくしいげいしやがほれて
かけこみましたとんだ事/\
ことめいさい/\
かみ代はんこうだいに
およばずたゞじや/\
評判評判、あだき屋の息子えん二郎という色男に美しい芸者が惚れて駆け込みました、とんだ事とんだ事。事明細明細、紙代版行代に及ばず、タダじゃタダじゃ。
なにさ
かたもない
ことだのさ
みんなこしらへ
ごとさ
たゞでも
よむがめん
どうで
ござんす
何さ、型も無い事だのさ。タダでも読むが面倒でござんす
(左頁上)
えん二郎
くしやみ
をする
たび
せけんで
おれが
うわ
さを
する
だ
ろうと
おもへ
ども
いつ
かうに
町内でさへ
しらぬゆへ
此うへは女郎
かいをはじめて
うきなを
たてんとおもい
中の丁うはき
まつやへきたり
わる井しあん
きたりきのすけ
なぞかみにつれ
いつぱいに
しやれる
えん二郎、クシャミをする度世間で俺が噂をするだろう、と思えども、一向に町内でさえ知らぬ故、この上は女郎買いを始めて浮名を立てん、と思い、中之町浮気松屋へ来たり。悪井思案、きたりきのすけ、なぞ(等?)にかみ(上?)につれ一杯に洒落る。
女
「せ川さんとうた
ひめさんのうちを
きゝにつかわしましたが
さつき小まつやで
このもをみかけ
ましたから
うたひめ
さんは
てつきり
おわるう
ござり
ませふ
女
瀬川さんと歌姫さんの家を聞きに遣わしましたが、さっき小松屋で、このも(女子の名前)を見掛けましたから、歌姫さんはてっきりお悪うござりましょう。
(下)
こびき
丁で
かうらい
やが
ぼくが
さんを
する
そう
で
ご
ざり
ま す ね
木挽町で高麗屋が「ぼくが(役名?)」さんをするそうでござりますね。
8
えん二郎は
うきなやの
うきなと
いふての
ある女郎に
きめて
とうか
とうなから
ほれら
れるつもりにて
いつばいに
みへをし
ぢばんのはんえり
ばかりいぢつて
いていろおとこも
さて/\きのつまる
ことなりとおもふ
えん二郎は浮名屋の浮名という手の有る女郎に決めて十が十ながら惚れられるつもりにて、一杯に見栄をし、襦袢の半襟ばかり弄っていて、色男もさてさて気の詰まる事也と思う。
ちやを
いゝ
なんすな
おが みんす わへ
茶を言いなんすな、拝みんすわえ
(下)
大こくやじやァ
ねへが
なんでも
女郎衆 の
そ う
ろく
だね
大黒屋じゃあねえがなんでも女郎衆の総録だね
モシ
おいらん おまへを バ
せけんで
とんだてのある
女郎たと
申ます
もし花魁、お前をば世間でとんだ手の有る女郎だと申します
(左頁上)
えん二郎女郎かいに
でゝもうちへ
かへつてやき
もちを
やくものが
なければ
はり合が
ないかと
きも入
をたのみ
やきもち
さへよく
やけば
きりやうは
のぞまぬと
いふちうもん
にて四十ぢかい
女としたゝか
金二百両にて
めかけに
かゝえる
えん二郎、女郎買いに出ても家へ帰って焼き餅を焼く物が無ければ張り合いが無いかと肝入を頼み、焼き餅さえ良く焼けば器量は望まぬという注文にて四十近い女と強か金二百両にて妾に抱える。
(中)
しやう
べん
ぐみなどゝ
いふところは
ごめん
だよ
小便組などという所はごめんだよ
きよねんのはる
なかすてかつたぢこくでは
ねへかしらん
去年の春、中洲で買った地獄ではねえかしらん。
(下)
わたしをおかゝへ
なされましても
大かた女郎かいや
いろごとで
わたしを
おかまいは
なされます
まいと
もふすこし
てみせに
やき かける
私をお抱えなされましても大方女郎買いや色事で私をお構いはなされますまい、と、もう少しで店に焼きかける
9
えん二郎もとより
うわきもの
なれば
ふか川
しな川
新しゆくは
いふに
およはす
はし/\゛
まで
かつて みたれども
うきな ほどてのある女郎はないと
おもひし がひととふりてはおもしろからずと
おもへどもたゞまぶにならふと
いつてはむかふがふせうちゆへ
わるいしあんが名あてにてうきなを
あけづめにじぶんはしんぞうかいにて
あいおもいれかねをつかつて
此ふじゆうなところが
につぽんだとうれしがりけり
えん二郎、もとより浮気者なれば、深川、品川、新宿は言うに及ばず、端々まで買ってみたけれども、浮名程手の有る女郎は無いと思いしが、一通りでは面白からずと思えども、ただ間夫になろうと言ってはむこうが不承知故、悪井思案が名宛に浮名を明け詰めに自分は新造買いにて逢い、思入れ金を使ってこの不自由な所が日本だ、と嬉しがりけり。
おれが
やくも
つらい
やくだ
ざし きの
うちは
大じんて
とこが
おさ まると
まきへの
たばこ
ぼんと
おれ
ばかり
これも
とせい
だと
おもへば
はらも
たゝぬが
五つぶとん
にしきのよぎてねるだけ ぢにならねへ
俺が役も辛い役だ。座敷の内は大尽てとこは収まると蒔絵の煙草盆と俺ばかり、これも渡世だと思えば腹も立たぬが、五つ蒲団錦の夜着で寝るだけ。ぢにならねえ。
(右端下)
てまへがやれがとこへくるとあつちらの大しんが
やけをおこしてやりてやまわしをよんでこゞとを
いふうちのこゝろもちのよさはどうやすく
ふんでも五六百両がものはあるのさ
手前がやれのとこへ来ると、あっちらの大尽がヤケを起こして遣り手や廻しを呼んで小言を言う。うちの心持ちの良さは、どう安く踏んでも五六百両が物は有るさ。
(左下)
ほんに
ぬしは
すい
きやう
な
ひと
で
ござ
りんす
ほんに、ぬしは酔狂な人でござりんす。
10
えん二郎はいへざくらをおもひいだし
かへるさつけるいぬざくら
くぜつのつぼみ
ほころびし
そでをかぶろが
ちからぐさ
ひかれてゆくや
うしろがみ
こゝろつよくも
きりがやつといふ
もんくより
ほかのきやく人の
つかまるをうらやま
しきことにおもひ
何の事もないに
しんぞうやかぶろを
たのみこつちから
大門につけていて
つらまりはおり
ぐらいはひつさけても
だいぢないといふ
やくそくにて
ひきづられて
ゆく
えん二郎は家桜を思い出し、帰るさ付ける犬桜、口説の蕾ほころびし、袖を禿が力草、引かれて行くや後ろ髪、心強くも桐ヶ谷、という文句より他の客人の捕まるを羨ましき事に思い、何の事も無いに新造や禿頼み、こっちから大門に付けて居てつらまり、羽織ぐらいは引っ提げても大事無いと言う約束にて引きずられて行く。
(中)
これわまア
はなしてくれろ
こうひきづられて行所は
とんだぐわいぶんがいゝ
これはマア放してくれろ。こう引きずられて行く所はとんだ外聞が良い。
(下)
しんぞう
かぶろは
人形
を
もらふ
やくそく
にて
むだを
いゝ/\
ひき
ずつて
ゆく
新造、禿は人形を貰う約束にて、無駄を言い言い引きずって行く。
(左頁上)
えん二郎五六日
ぶりにてうちへ
かえりければ
まちまうけたる
めかけこゝぞ
ほうこうの
しところとかねて
ふくしておいた
ぞんぶんを
やきかける
えん二郎、五、六日ぶりにて家へ帰りければ、待ち設けたる妾、ここぞ奉公のしどころと、兼ねて服しておいた存分を焼き掛ける。
ほんにおとこといふ
ものはなぜ
そんなに
きづよい
もんだねへ
それほどに
ほれ
られる
がいや
なら
そん
な いゝ
おと
こに
ほんに男というものは、何故そんなに気強いもんだねえ。それほどに惚れられるが嫌なら、そんないい男に
(中段中央)
「き
しやう
さし」
うまれつかねへが
いゝのさまた
女郎も女郎だ
ひとの大じの
「起請差し」
生まれつかねえが良いのさ。又女郎も女郎だ。事人の大事の
(下段中央)
おとこを
とめて
やき
くさつ
て 又
おまへ
さん
も
おまへ
さん
だ
あい
そう
なすつ
たが
いゝの
さと
まづ
こゝ
ぎりに
しやせう
男を泊めて焼きくさって、又お前さんもお前さんだ。愛想なすったが良いのさ、と、先ずここ切りにしやしょう。
(中段右端)
はづかしいこつたがうまれてからはしめて
やきもちをやかれてみるどふもいへねへこゝろ もちだ
恥ずかしいこったが生まれてから初めて焼き餅を焼かれてみる。どうも言えねえ心持ちだ。
もちつと
たのむ /\
もちっと頼む頼む
(中段左端)
この
あとは
八丈
と
しま
ちりが
きてのことさ
この後は八丈と島縮が来ての事さ
11
えん
二郎 は
やく
しや
女郎
な
ど
の
こゝ
ろ
い
き
に
て
え
かう
いん とうりやうの
かい てうへちやう
ちんをほうのう
せんとおもひ
うきなとてまへの
もんをひよくもんに
つけさせるちうもん
にてきたりきの介
えん二郎は役者、女郎などの心意気にて、回向院道了の開帳(両国於回向院開帳境内繁栄集詣郡集之図に相州小田原道了大薩菩埵の記述あり)へ提燈を奉納せんと思い、浮名と手前の紋を比翼に付けさせる注文にて来たり。きの介
(左頁)
うけあいてたまちの
てうちんやへ
あつらへける
中やへは
ちやうづ
てぬぐい
を
あつらへ
これも
ひよく
もん
にて
しよ/\
のはやり
がみへ
ずい
ぶん
めにたつやうに
ほうのうするこれも
よつぽどのいたこと也
もちろん何のぐわんも
なけれどもこのやうに奉納ものは
なるほど うわきなさたなり
「小ちやうちん所」
請け合いて田町の提燈屋へ誂えける。中屋へは手水、手拭を誂え、これも比翼紋にて所々の流行り神へ随分目立つように奉納する。これも余っ程の痛事也。勿論何の願も無けれども、このように奉納物は成程浮気な沙汰也。
「小提燈所」
(右頁中段)
とんだいすぐねほねは
しげほねにしてかわゝ
ほんぬりにしんちうの
かなものいくらかゝつて
とんだ急ぐね、骨は繁骨にして側は本塗りに真鍮の金物、いくら掛かって
(下)
も
いゝ
から
ずい
ぶん
りつ
ぱに
してへ の
も良いから随分立派にしてえの。
(左頁下)
ちときうにはできかねます
このあいだはよしわらの
さくらのちやうちんをいたしております
ちと、急には出来かねます。この間は吉原の桜の提燈を致しております。
12
えん二郎しばいをみてとかくいろ男と
いふものはぶたれるものとおもひ
しきりにぶたれたくなりじまわり
のきおひをひとりまへ三両つゝにて
四五人たのみ中の丁の人高い
所にてぶたれるつもりで
ちややの二かいには藤兵衛を
やといおきてめりやすを
うたわせみだれたかみ
をうきなにすかせる
つもりにてさかやきへは
せいたいをぬりあげや
まちのぎんだしにて
さつとみつがみに
ゆひたぶさを
つかむとぢきにばら/\と
ほどけるよふにてしてぶたれけるが
ついぶちどころわるくかたいきに
なつてかみすき所ではなく
きつけよはりよと
さわぎてよふ/\
きがつきけり此時
よつぽとばかものだと
いふうきなすこし
ばかりたちけり
えん二郎、芝居を見て、兎角色男というものは打(ぶ)たれるものを思い、頻りに打たれたくなり、地廻りの気負いを一人前三両ずつにて四、五人頼み、中之町の人高い所にて打たれるつもりで、茶屋の二階には藤兵衛を雇い置きてメリヤスを歌わせ、乱れた髪を浮名に梳かせるつもりにて、月代へは青黛を塗り、揚屋町の銀出しにして、さっと三ツ髪に結い、髷を掴むと直にバラバラと解けるようにして打たれけるが、つい、打ち所が悪く片息になって髪梳きどころでは無く、気付けよ鍼よと騒ぎて、漸気が付きけり。この時余程馬鹿なものだという浮名少しばかり立ちけり。
(下)
その
にぎり
こぶしが
三分つゝ に
ついている
ちといたく
てもよいかな
だいぶん
みへの よい
やうに
たのむ /\
きりおとしから
ばちがあたると
いふばた
うぬかやふないゝおとこが
ちらつくと女郎しゆが
あたついてならぬゆへ
おいらもちつとやき
もちのすじだと
いふせりふは
こつちから
ちうもんて
いわせるの
なり
その握り拳が三分ずつに付いている。ちと痛くても良いかな?大分見栄の良いように頼む頼む。
切り落としから罰が当たるという場だ。
うぬが様な良い男がちらつくと女郎衆があだついてならぬ故おいらもちっと焼き餅の筋だという科白はこっちから注文で言わせるの也。
(左頁上)
えん二郎せけんのうわさするを
きく
に
金
持
ゆへ
みな
よく
でする
と
いふ
こと
を
きゝ
きうに
かねもちが
いやになり
どふぞ
かんどうを
うけたく
おもひ
両しんに
ねがいけれども
ひとりむすこの
ことゆへけつして
ならねどもよふ/\はゝのとりなしにて
えん二郎世間の噂するを聞くに、金持ち故皆欲でするという事を聞き、急に金持ちが嫌になり、どうぞ勘当を受けたく思い両親に願いけれども、一人息子の事故決してならねども、漸母の執り成しにて
(下左)
七十五日間の
かんどうにて日ぎりが
切れると早々うちへ
ひきとるとの事也
七十五日間の勘当にて日切が切れると早々家へ引き取るの事也。
(中段)
女
のぞみとある
からぜひが
ないはやく
てゝうせろ
女
望みとあるから是非が無い、早く出て失せろ
(下)
これは
わか
だんな
の
おぼし
めし
しかる
べう
ぞんじ
ませぬ
これは若旦那の思し召し、然るべう存じませぬ。
(中央)
ねかいのとふり
御かんどうとやあり
がたや/\四百???の
より
願いの通り御勘当とや有り難や有り難や。四百??の病より
(下)
??ち
ほと(?)
つらい
ものは
ないの
た
かわい
男は
なぜ
金持
じや
やら
?ち程辛いものは無いのだ。可愛い男は何故金持ちじゃやら
13
や
げん
ぼり
の
な
ある
げい
しや
七八人
えん二郎に
やとわれかんどうの
ゆりるよふにと
あさくさの
くわんのんへ
はだしまいりを
するなるほど
はだしまいりと
いふやつが大かたは
うわきなもの也
薬研堀の名有る芸者七、八人えん二郎に雇われ、勘当の許るようにと浅草の観音へ裸足参りをする。成程裸足参りというやつが大方は浮気なもの也。
(下)
十ど
まいり
くらいで
いゝのさ
十度参りくらいで良いのさ
えゝかげんに
なぐつてはやく
しまわをねへ
ええ加減に殴って早く仕舞おうねえ
(左頁)
えん二郎はのぞみのとふりかんどう
をうけけれどもはゝのかたより
金は入用次第におくる ゆへ
何ふそくなけれ
どもなんぞ
うわき
なしやう
ばいをして
みたく
いろ男の
するしやう
ばいはぢかみ
うりだろう
とまだなつ
もこぬに
ぢかみ
うりと
でかけ
一日
あるい
て
大キ
にあしへ豆を
でかしこれには
こり/\とする
此時
大きなすい
きやうものだと
よほどうきな立けり
えん二郎は望みの通り勘当を受けけれども、母の方より金は入用次第に送る故何不足無けれども、なんぞ浮気な商売をしてみたく、色男のする商売は地紙売りだろうと、まだ夏も来ぬに地紙売りと出掛け一日歩いて大きに足へ豆をでかし、これには懲り懲りとする。この時大きな酔狂者だと余程浮名立ちけり。
(中)
ヲヤとはえのやうなかほの
ひとがとふるみんな きて (下)みな せい
オヤ、鳥羽絵のような顔の人が通る。皆んな来て見なせい。
(下右)
そとを
あるくと日に
やけるで
あや
まる
こ
まつ た
もの だ
外を歩くと日に焼けるで誤る。困ったものだ。
また
ほれた
そふた
いろ
おとこ も
うる さいぞ
又惚れたそうだ。色男もうるさいぞ。
14
えん二郎いよ/\のりがきて
かれこれとするうち七十五日の
日ぎりがきれうちかたゟは
かんどうをゆるさんと
まい日のさいそく
なれども
いまだうわきを
したりねば
しんるい中の
とりなしにて
廿日の日のへ
をねがひ
どふして
もしんぢう
ほどうわ
きなものは
あるまいと
てまへはいのちも
すてるき
なれども
それではうきなか
ふしやうちゆへ
うそしんぢうの
つもりにて
さきへきのすけと
えん二郎弥よのりが来て、かれこれとする内七十五日の日切が切れ、家方よりは勘当を許さんと毎日の催促なれども、未だ浮気をしたりねば、親類中の執り成しにて二十日の日延べを願い、どうしても心中程浮気なものは有るまいと、手前は命も捨てる気なれども、それでは浮名が不承知故、嘘心中のつもりにて先へきの介と
(左頁)
しあんを
やつておき
なむあみ
だぶつと
いふをあいづに
とめさせる
ちうもんして
まづうきなを
千五百両にて
身うけてをし
しんぢうの道ぐ
だてをかいあつめる
ついの小そでの
もよふにはかたにかなてこ
すそにはいかりしちに
おいてもながれの
みといふ古かの
こゝろを
まなばれたり
これも中やと
やまざきの
もうけ
もの
なり
思案をやっておき、南無阿弥陀仏と言うを合図に止めさせる注文して、先ず浮名を千五百両にて身請けてをし、心中の道具立てを買い集める。対の小袖の模様には肩に金梃子、裾には碇、質に置いても流れの身という古歌の心を学ばれたり。これも中屋と山崎の儲け物也。
(右頁中段)
ふたりか
じせいの
ほうくは
すりものに
して
中の丁へ
くば
らせる
花らんが
二人が辞世の發句は摺物にして中之町へ配らせる。花魁が
(左頁)
かいたはすのえを
大ぼうしよへから
描いた蓮の絵を大奉書へ空(唐?)
(下)
すり
とは
いゝ
おほし
めし
つき だ
摺りとは良い思し召し付きだ。
(右頁右端下)
わきさしははくおきに
あつらへ まし た
脇差は箔置きに誂えました。
15
うきなは
たとへうそ
しんぢうに
もくわいぶん
わるいと
とんだふしやうちなりしが
此あんじをしゆびよくつとめたあと
ではすいたおとことそわせてやろうと
ゆらのすけがいふやうなせりふにて
よふ/\とくしんさせ此あききやうげんには
えん二郎がむ利息にて金もとをするやくそくにて
ざもとをたのみさくら田にいゝつけて此ことを
じやうるりにつくらせたちかたは門の介と
ろかうにてぶたいでさせるつもりはたき
そうなしばいなりもとよりすなをに
身うけしてはいろおとこでないと
かけ
おち の
ぶん
にて
れん
じ
を
こはし
て
浮名は例え嘘心中にても外聞悪いと、とんだ不承知なりしが、この暗示を首尾良く勤めた後では好いた男と添わせてやろうと由良助が言うような科白にて漸得心させ、この秋狂言にはえん二郎が無利息にて金元をする約束にて、座元を頼み桜田に言い付けて、この事を浄瑠璃に作らせ、立方は門之助と路考にて舞台でさせる。積りはたきそうな芝居也。固より素直に身請しては色男でないと駆け落ちの分にて櫺子を壊して
(左頁)
はし
ごを
かけ
二かい
から
身うけ
する
内しやう
では
どふて
身うけ
なされた
女郎ゆへ
おこゝろ
まかせに
なさるが
いゝが
れんしの
つくろ
い代は
二百両で
まけて
あけませう
とよくしんをぞ申ける
階子を掛け二階から身請けする。内證ではどうで身請けなされた。女郎故お心任せになさるが良いが、櫺子の繕い代は二百両で負けてあげましょう。と欲心をぞ申しける。
(右頁下)
二かいからめぐす
りとは
きいたが身うけ
とはこれが
はじめてじや
二階から目薬とは聞いたが身請けとはこれは初めてじゃ
(左頁中)
おあぶ
なふご
さります
御しづかに
おにげ
なさりませ
お危のうござります、お逃げなさりませ。
おいらん
ごきげん
よふ
おかけおち
なさ
れまし
花魁、御機嫌良うお駆け落ちなされまし。
(下)
わかいもの共は
御しうぎをし
ちやくふくして
にけたあとで
ほう/\へ
いゝふらせ
しの との
いゝつけ也
若い者共は御祝儀を着服して逃げた後で方々へ言いふらせしのとの言い付け。
16
さいごのばも
いきなはつとした
ところとの事にて
三めぐりのどてと
きめよがふけては
きみがわるいから
よいのうちの
つもりにて
えん二郎につとめ
たるちややふるやど
たいこまつしやげい
しやどもだい/\
こうのおくりの
やふにはかま
はおりにて
大川ばしまで
おくり申たゞの
やくしの
あたりにて
みな/\にわかれ
えん二郎は日ごろのねがい
かないしとこゝろうれしく
道行をしてゆきこゝこそ
よきさいごばとはくおきの
最後の場も粋なはっとした所との事にて、三囲(みめぐり)の土手と決め、夜が更けては気味が悪いから宵の内のつもりにて、えん二郎に勤めたる茶屋、古宿、牽頭、末社、芸者共、大々講の送りのように袴羽織にて、大川橋まで送り申す。多田の薬師の辺りにて皆々に別れ、えん二郎は日頃の願い叶いしと、心嬉しく、道行をして行き、此所こそ良き最期場と箔置きの
(左頁)
わきさしをぬていすでに
こふよとみへ
なむあみだぶつといふを
あいづにいなむらのかげゟ
くろしやうそくの
とろぼう
二人あら
われ
い
て
脇差を抜いて、すでにこうよと見え、南無阿弥陀仏と言うを合図に稲村の影より頃装束の泥棒二人現れ出で
ふ
た
り
を
まつ
ぱたかに
して
はぎ
とる
二人を真っ裸にして剥ぎ取る。
(中)
わいらは
とふで
しぬものだ から
おいらが
かいしやく
して
やろう
わいらはどうで死ぬ者だから、おいらが介錯してやろう。
(右頁下)
どうふでこんなことゝ
おもいん した
どうでこんな事と思いんした。
これ/\
はやまるまい
われ/\は
しぬための
しんちうでは
ないこゝへ
とめてが
でるはづだ
とふま
ちがつたか
しらん
きものはみんな
あげましやう
からいのちは
おたすけ/\
これこれ、早まるまい。我々は死ぬ為の心中では無い。ここへ止め手が出る筈だ。どう間違ったか知らん。着物は皆んなあげましょうから命はお助けお助け。
(左頁)
もうこれに
こりぬ事は
ごさり ません
もうこれに懲りぬ事はござりません。
(下)
此いご
こんな
おもい
つきは
せまいか
/\
これ以後こんな思い付きはせまいか、せまいか。
17
仇氣やえん二郎
浮名やうきな 道行興鮫肌(きやうがさめはだ)
〽朝に色をして夕(ゆふべ)に死(しす)とも可なり
とはさてもうはきなことのはぞそれはろん
ごのかたいもじこれはふんごのやわらかなはだと
はたかのふたりしてむすびしひもをひとりして
とくにとかれぬうたがひはふしんの土手のたかみから
とんとおちなば名やたゝんどこの女郎しゅかしらみ
ひもむすぶのかみもあちらむかさんしよじやうゆの
やきずるめぴんとひぞるも今ははやむかしと
なりし中の丁そと八もんじもこふなればうち七もんじに
たどりゆくなみだにまじる水ぱなにぬらさん
さんそではもたぬゆへ下たのおびをぞしぼりける
身にしみわたるこちかぜにとりはだたちし此すはだ
とのごのかほはうすゞみにかくたまづさとみる
かりにたよりきかんとかくふみのかなでかなてこ
すそも よふゆかりのいろも七つやのなになかれ
たる すみだ川たがいにむりをいをざきの
かねは四つ目や長命寺きみには
仇気屋えん二郎
浮名屋浮名 道行興鮫肌(きょうがさめはだ)
〽朝に色をして夕(ゆうべ)に死す共可也、とは、さても浮気な言の葉ぞ。それは論語の堅い文字、これは豊後の柔らかな肌と裸の二人して、結びし紐を一人して、解くに解かれぬ疑いは、ふしん(普請?不審?)の土手の高みから、とんと落ちなば名や立たん。どこの女郎衆か虱紐、結ぶの神も、あちら向かさんしょ(山椒)醤油の焼き鯣、ぴんと乾反るも今は早、昔となりし中之町、外八文字もこうなれば、内七文字に辿り行く、涙に混じる水鼻に、濡らさん袖は持たぬ故、下の帯をぞ絞りける、身に染み渡る東風風に、鳥肌立ちしこの素肌、殿御の顔は薄墨に、書く玉章と見る雁に、便り聞かんと書く文の、仮名で金梃子裾模様、所縁(ゆかり)の色も七つ屋の、何流れたる隅田川、互いに無理を五百(言お)崎の、鐘は四つ目や長命寺、君には
むねをあくる日のまた
四つ過のひちりめん
ふんどし
なかき
はるの
日の
日高
の
てら に
あらすして
はだかのてやい
いそき行 (引三重)
胸の明くる日の、又四つ過ぎの緋縮緬、褌長き春の日の、日高の寺にあらずして、裸の手合急ぎ行く。 引く三重(三味線で三重を弾く)
うしはねがいからはなを
とふすとえん二郎が
わるあんじのしんぢう
此とき世上へばつと
うきなたちしぶうちはの
えにまで
かいていだしけり
牛は願いから鼻を通すと、えん二郎が悪暗示の心中、この時世上へバッと浮名立ち、渋団扇の絵に迄描いて出(いだ)しけり。
(中)
おれはほんのすいきやうで した
事だからせいひがないが
そちはさぞさむかろう
せけんの道行はきものをきて
さいごのばへさるこつちのは
はだかでうちへ道行とは
大きなうらはらだ
ひちりめんのふんどしが
こゝで はへたも
おかしい/\
俺はほんの酔狂でした事だから成否が無いが、そちは嘸寒かろう。世間の道行きは着物を着て最期の場へ去る。こっちのは裸で家へ道行きとは大きな裏腹だ。緋縮緬の褌がここで栄えたもおかしい、おかしい。
(下)
ほんの
まき
ぞへ
で
なん
ぎ
さ
ほんの巻き添えで難義さ。
18
えん 二郎はちやうと
かん
どう
の
日のべ
きれ
けれ ば
こり /\としてうちへかへりてみれば
ゆか うに三めぐりにてはがれたる
小袖
かけ てあるゆへふしぎにおもうおりから一まより
おや 弥二衛門はんとうの候兵衛たちいでいけんする
えん 二郎ははじめてよの中をあきらめほんとう
のひとゝなりうきなもおとこのわるいも
ふせうしてほかへゆくきもなくふうふとなり
もとよりしんだいにふそくもなく
すへはんじやくのさかへ
しかし一生のうわきの
たちおさめに今まで
の事をくさそうしに して
せけんへひろめたく
京でんをたのみて世上の
うわきびとをきやう くんしける
わかきときはけつきいまだ
さたまらすいましゆる事いろ/\
ありといふことをしらぬかすべてあんじか
こうするとみなこうしたものだおそろしき
えん二郎は丁度勘当の日延切れければ、こりごりとして家へ帰りてみれば、衣桁に三囲りにて剥がれたる小袖掛けてある故不思議に思う折から、一間より親弥二衛門、番頭の候兵衛立出で意見する。えん二郎は初めて世の中を諦め、本当の人と成り、浮名も男の悪いも不承して、他へ行く気も無く夫婦と成り、もとより身代に不足も無く、末は盤石の栄え。然し一生の浮気の立ち納めに今迄の事を草双紙にして世間へ広めたく、京伝を頼みて世上の浮気人を教訓しける。若き時は血気未だ収まらず、今し得る事色々有りという事を知らぬか。全て案じが高ずると皆こうしたものだ、恐ろしき。
(下)
「北尾政演画」「京伝作」
わたしは
大きに
かぜをひき
ました
私は大きに風邪を引きました。
とろ
ぼうと
まで みを
やつせし
われ/\か
くふうの
きやう
げん
泥棒と迄身を窶せし我々が工夫の狂言
いこは
きつと
たしなみ おれ
きのすけや
わるい
しあん
とも
まう
つきあふ
まいか
かちばかりでは
ないかの中にたいふかういふ
こゝろいきのものがあるて
以後は急度嗜み居れ。きの介や悪い思案共もう付き合うまいか。形ばかりでは無い、彼(かの)中に大分こういう心意気の者があるて。
(下)
こゝ で
やき
もちを
やかれて は
大なんぎ
だから
めかけ も
どこ ぞへ
かた 付
ませふ
ここで焼き餅を焼かれては大難義だから妾もどこぞへ片付けましょう。