仮想空間

趣味の変体仮名

豆腐百珍続編 絶品

 

読んだ本 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2536546

 


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  絶品

九十五 豆腐飯 いかにも精(しろつき)の飯少し強(こわ)くすつくり
    と炊き前編「百」うどん豆腐の如くきりたる
    をよきほどにまぜ合を再びせいろうにて蒸す
    なり○麦飯(ばくはん)のだし汁にておろし大根 唐辛子の
    粉 白葱 いかにも細かに刻みたる 浅草海苔

    陳皮の粉
    △七八年のもみすりを塩なき茶飯に炊き笊
    籠(いかき)へあげ出ばなの茶をかけ又別の茶のうへに
    其いかきをのせ蒸しをき奈良茶碗へよそひお
    ぼろ豆腐の煮加減よきをざぶりとかけ右のだ
    し汁加料(かやく)にて用るをならちやとうふといふ
    △とうふ水をしぼり小賽にきりて山梔子に
    てよく染めて飯にまぜ蒸すを菜花(なたね)飯といふ

九十六 三清とうふ 大根のしぼり汁と水と等分にし


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    よく沸(にたゝ)し焼き塩にて加減しおぼろ豆腐
    入れ前編「九十七」湯やつこの煮加減にす○生(なま)大根の
    しぼり汁かけ出す○三清とは人の名なるやま
    た三つとうふ清(すむ)といふ意(こゝろ)にて名づけたるにや
    △尋常(つね)のとうふを大賽にきり右の調味にす
    るを塩とうふといふ

九十七 雲井とうふ 大釜に湯をくら/\沸かしをき
    鯛の切り身一寸あまりなるを板に並べ右の釜
    より筧(かけひ)をしかけ煮え湯をそゝぎて魚の油を除

    る さて豆腐も同じ大きさに切さつと炙て奈
    良茶碗にならべよそひ尤も随分熱きやうに
    したて生(き)の煮かへし醤油におろし大根をく

九十八 角(かく)おぼろ 禁裏様の御膳ものなり包丁家の
    秘伝にて世に伝へず博物のためしばらく名
    ばかいを出だして百珍のかずに入る

九十九 掬水(きくみ)とうふ 豆腐二丁に生鰹節(なまぶし)の大きなる
    を三本ほどの分量にてなまぶしをこぐち


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    切にし平鍋に密(ぴつしり)としきならべ生ぶしの浸かる
    限りに水を入れ豆腐を全(まる)ながらのせとうふは
    水に浸からぬやうにし炭火を最も強くして半日
    あまり煮る水渇(つく)ればとうふの浸からぬほどに
    水をさし/\して煮る○生ぶしを除(さ)りてとうふ
    ばかりを焼き塩じたての潮煮にするなりすい
    くちに白葱のざく/\に花油(はなゆ)にても木の芽
    にても○又薄葛におろし山葵にてもよろし
    ○掬水(きくみ)は浪華(おほさか)の人の名にて俳諧の名家也


百   紅ハンペン 豆腐よく水をしぼりよくすり
    山芋にてもながいもにてもおろし豆腐の二
    ぶどほり入れすりまぜ葛粉少しつなぎに
    入れ猶よくすり○古渡(こわたり)極上品の生臙脂(しやうえんじ)を砂
    糖湯にてよくしぼり尤も太白の砂糖を煎じ
    絹ごしにして熱き湯を用ゆ さて生臙脂をし
    ぼり出し湯煎にてよき加減に煎じつめ
    (常の画具につかふよりはあさく煎じつめるなり)右のすり豆腐へすりまぜ淡
    紅(もゝいろ)にすべし 凡そ豆腐二丁に生臙脂一葉(いちまい)の分量(つもり)
    なり濃きはよろしからずよきほどにとりて蒸す


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    なり蒸せば色少し濃くなる蒸すごすべからず又時
    の蒸しかげんにより皮を一ぺんとりておぼろ饅頭
    の如くす是はみあはせにすべし○白南京の
    蓋茶碗をよく温めをきしき葛あんにし
    ておろし山葵をおき上へよそひ其上へ薯屑(じよこ)
    をぱらりと少しおく○薯屑の製は前編
    百珍「五十四」瞿麦(なでしこ)とうふの下に見へたり